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日本語の基本文型:人魚構文を捨てる理由

2013/03/12(火)

 3月5日、朝日新聞夕刊文化面に載った国立国語研名誉教授・角田太作:「人魚構文」取材記事や角田論文PDFに対して、すでに2回も当方の感想を記述してきた。
この3回目で人魚構文を離れることにする。

(1)なぜ既知の落し穴に落ちますか
 角田例文:「太郎は明日、大阪に行く予定です」

 「動詞述語文:太郎は明日、大阪に行く」と「名詞(+だ)述語文:予定です」が合体する構文が人魚構文とのこと。
角田解釈では、名詞文での言い切り『太郎は予定です』に通じるから「奇妙な文」だという。
○では、(作例)「太郎は勘違いして時々、嘘を言う人間だ」を角田解釈すると、
 『太郎は人間だ』となり「奇妙な文」というのだろうか。
○統語的には同じ構造だから、両方ともに「奇妙な文」と解釈できる。そうでしょうか。
○問題は名詞文に対する角田解釈の仕方がそもそも間違いだと思う。
○名詞文は「予定です」、「人間だ」と考えればよいのです。
○名詞文に名目上の主格語がなくてもよいのです。
○「落し穴:文には主語が必須だと思うこと」
 日本語文では不要な補語は付けなくてよいのですから。
○「動詞述語文」と「名詞述語文」が連結して「意味の相互作用」が文章の意味を決めるのです。
○「意味の相互作用」とは、意味の重点が動詞述語部分にあるのか、名詞部分にあるのか、発話情景で決まる力関係のことです。
○後段の「名詞述語文」は(動詞述語文の意味作用を受けて)
 「(こういうことをする)予定です」、「(こういうことをする)人間だ」という構造になります。
○落し穴に入ったままだと、
 「こういうことをする」のが「予定です」
 「こういうことをする」のが「人間だ」
と解釈してしまう。(角田論文では言及していないが)

(2)知らぬ間に落し穴を作っていたのですか

○「(こういうことをする)予定です」という構文は、(連体修飾節)で「予定:被修飾語」を修飾していると考えるものですね。
○角田解釈では、
 「(こういうことをする)予定です」文型に焦点を当て、「(こういうことをする)予定を取りやめる」などの通常の動詞述語文型への拡がりは別扱いにします。
○角田解釈では、
 「(こういうことをする)予定です」文型にしぼったうえで、少し解釈を変形して
 「こういうことをする(予定です)」という方向へ向かいます。
○つまり、(予定です)は文章の付足し、文法上のムード・接尾辞のように位置づけたいようだ。
○ネットから入手したPDF角田論文を読んでいると、筋道がわかる。
・通常、「名詞述語文」=「主格語+名詞+だ」であるべきだ。
・だから、主格語がない「(こういうことをする)予定です」を「(連体修飾節)+予定」と解釈したくない。(なぜか?)
・主格語がないならば、動詞述語文のほうを主要構成とする。
・後続の名詞文を副助詞や、終助詞、ムード接尾辞的に解釈する。
・「大阪へ行く(だけ)です」の「だけ」と似たような機能を想定する。
という研究方針になっているように感じる。

(3)落し穴から出たほうが楽ですよ

 角田論文には前段の述語文に動詞文、形容詞文、形容動詞文、名詞文を据えて考察している。
後段の名詞についても各種考察がある。
・用例考察の方法・深さに問題があり、
×[花子は名古屋に行く]急な予定だ。(人魚構文では、「急な」の挿入はないという)
◎急な予定ができた。(通常の述語文なら挿入できるという)
○「予定」を接辞扱いするうえでは、「急な」挿入ができないほうがよいだろうが・・・
○しかし、用例を思考実験すれば、
「君には悪いが、太郎は明日、大阪へ行く楽な予定なんだよ」とか、
「太郎は今日、新潟に、明日、大阪へ行く強行予定なんだ」とか
なんの制限もないことがわかる。

○角田論文の随所に考証が不十分な部分があり、意図的に寸止めされて「連体修飾節」を避ける印象がある。
○人魚構文に限定するあまり、前段の述語文を「終止形述語」と見なしたいとの思惑が強すぎる。
 角田論文では、「な-形容詞」が非過去形の場合だけ「連体形述語」で名詞修飾するという。
 現在の口語文では、終止形と連体形がすべて同形になっている。(な-形容詞以外)
 また、過去形助動詞「~た」も動詞、形容詞の連用形に接続して過去終止形をつくる。
 これも終止形と連体形が同形ですから、すべての人魚構文の「前段の述語文」は「連体修飾節」構造と見るほうが、合理的で応用範囲も広くなります。
 (「前段の述語節」が「終止形」である例文を区別して提示していない)

○角田解釈に従っても「すっきり納得の文法則」を得られそうにない。

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