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日本語文法:「虫の目」、「話者の目」視点の言語

2013/03/30(土)

(1)日本語の立ち位置

 再読:『英語にも主語はなかった』金谷武洋:講談社選書メチエ:2004年1月10日
 初読:『日本語の深層』<話者のイマ・ココ>を生きることば:熊倉千之:筑摩選書:2011年7月15日

○どちらの本も、日本語の本質を分析したもので、
日本語の構文が印欧語・中国語のような「神の目:客観・遠景の目」から陳述されるものでなく、「虫の目、話者の目:主観・近景の目」で語られるものだという。

○どちらの本も、時間表現の比較では、
・印欧語は「過去・現在・未来:絶対時制(テンス)」を持つが、日本語は「完了・未完了:相対時制(テンスよりアスペクト)」をもとにするという。
・日本語文法書で、「過去形=過去」/「非過去形=現在・未来」との表現をするものもあるが、
 絶対時制と混同しやすい「過去形/非過去形」用語は使わないほうがよい。
・相対時制と絶対時制の関係は、「完了=過去・現在・未来」、「未完了=過去・現在・未来」と見るべきなので、文章の時制は、文脈の中の相対時間に拘束されるだけです。

○どちらの本も、「モノ」と「コト」のとらえ方を解析しています。
・印欧語では、「主語+述語+目的語」構文を述べる必要から、「モノ」を拾い上げて「モノ」に役割・所作を与えます。
・日本語では、関わる「モノ」がどういう状態になるかの「デキゴト」を述べます。
○熊倉本には、もっと「日本語の深層」を体験できる内容が述べられてあります。
(ぜひ、一度お読みください)

(2)主観的と客観的/能動と受動

 虫の目、話者の目が主観的な語法であり、神の目が客観的な語法なのだと一応の区分けする。
○しかし、「神の目:上から目線」で「行為者」、「被行為者」、「対格物」を説明することで、客観的な表現が可能になるわけではない。
注意しないと、他動詞を多用する言語では、攻撃的な文化を誘発してしまう。
 日本語の場合、
○他動詞が行為者と被行為者の間での行為を表現する。能動行為と受動行為が双対で存在する。
○自動詞が行為者(自然物も含め)の行為・状態を表現する。
話者の目から見ると、行為者の能動行為によって、直接または間接に影響を受けると感じるコトを受動行為で表現する。
つまり、自動詞でも能動と受動の双対関係が確立されている。
○これは言語文化として望ましいと言える。主観的な「話者の目」とは言え、行為者・被行為者のどちらの立場になったとしても、能動/受動で事態を表現できるのだから。

(3)例文:「ドアが閉ります」

 金谷本の例文:
「ドアが閉ります。ご注意ください」と言う電車内の車掌アナウンスについて、日本語勉学者から
○なぜ「ドアを閉めます」とアナウンスする車掌がいないのか?
と質問があったそうだ。

○車掌が自分の能動行為を明言すると、乗客は「閉められる」という受動行為を感じてしまう。
○閉める結果で「ドアが閉まる状態」をアナウンスする方法なら、車掌も乗客も直接の行為(能動/受動)を感じない。

 印欧語の場合、行為者が能動行為をする構文が好まれる。
○受動行為の表現では、対格物が主語になる。(被行為者が対格でない場合の受動表現は少ない)
・「本が贈られる」、「足が踏まれる」、「財布が盗まれる」が印欧語の受動表現です。
○一方、日本語話者ならば、
・「本を贈られる」、「足を踏まれる」、「財布を盗まれる」というのが普通でしょう。
○これが、被行為者として話者が受動行為を表現する文法則ですね。
○行為者に能動述語を、被行為者に受動述語を組み合せるという原則があるから、構文のなかで人称名詞を立てなくても意味が十分に通じます。
○行為者が能動述語を使う場合にも、同様の配慮があります。
「ドアが閉ります」のように「対格物の結果状態」を示して、行為の能動性を弱める言語活用です。
○「お茶がはいりました」、「用意ができました」などと自動詞構文にするという言語文化です。

(4)「モノ」と「コト」の撚り合せ

 熊倉本の「はじめに・あとがき」に記された思いの底流には、
○日本語の主観性が「モノ造り」技術に活かされている。しかし残念ながら世界を動かす「コト造り」には期待されていない。
○日本語は使い方次第で「世界のコト」を動かせるのではないか。
○印欧語・中国語の「客観」の良い部分を使い分けながら、日本語の良さとも共存させれば「コト」を成就できるのではないか。
○日本語での抽象単語は漢字・印欧語を援用する場合が多いが、事態の「~するコト」表現は慣用されている。
○能動重視的な印欧語・中国語が世界を救えるとは思えない。日本語話者が双方のよいところを撚り合せて貢献する余地は大きい。
○主観と客観がしっかりと二重らせんのように撚り合される状態を保つ努力が必要なのだろう。

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