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2014年1月

日本語動詞:動詞態の双対環を操作-4

2014/01/29(水)

(1)寺村本の例文を題材にして:(受動態・可能態)つづき

 寺村本:『日本語のシンタクスと意味 第1巻』の第3章:態:受動態・可能態の節にある解説、例文を題材にして「態の双対環」を使う練習をしてみよう。

 前回の内容骨子は、
○「態の双対環」方式では:
・受動態接辞:語根+「・(r/s)ar・eru」と区切り、
 受動態=結果態・文語受動接辞:「aru」と可能態接辞:「eru」
 の両接辞の合成で生成したものと解釈しました。
○動詞例:「つかまれる」が二通りに使われる理由を解説しました。
・受動態=「aru:文語受動接辞」+「eru:可能接辞」→「腕をつかまれる」(受身文)
・受動態=「aru:結果態接辞」+「eru:可能接辞」→「つり革につかまれる(だから安心)」(可能文)
以上が前回の概要です。

(2)寺村本が見落したもの

 寺村本:「構文と意味」には、解析に必要なたくさんの例文が載っています。貴重な資料になります。
・また、動詞態が文法的「態」と語彙的「態」の両面から考察すべきだという提言が心強く感じました。
○しかし、寺村本の「態の解説」には、文法的「態」・語彙的「態」の関連を直接的に証拠立てるような考察がまったくありません。
○語彙的「態」の解説で、
・自動詞・他動詞の双対生成の接辞において、「aru/eru」接辞の組み合せで「自・他の対」になっている動詞が一番多い。とあります。
(受動態は「ar(u)+eru」であり、意味の深階層で語彙的「態」に結びつくものです)
○寺村本では、まったく見過して、
・受動態接辞:語根+「・(r/s)are・(ru)」と区切ります。
・「are」接辞自身の意味を考察せずに説明もしていません。
○寺村本の「使役態」でも見落しがあります。
・使役態接辞:語根+「・(r/s)ase・ru」と区切り、その短縮形が「+asu」だと無理な説明をしています。
・文語体の使役態(強制態)接辞:語根+「・(r/s)asu」が歴史的に早く誕生しているはず?です。
(語彙的「態」としても早い誕生のはず)

(3)態の接辞自身の意味

 寺村本では、動詞態を「接辞の意味」から解析する視点がよわいと思います。
○例文:可能態でも、受動態でも表現できる場合、
・どうしても行けない/どうしても行かれない
・そんなに一度に飲めない/そんなに一度に飲まれない
と、両用される。
○とくに、成句では、
・泣くに泣かれぬ気持だった
・止むに止まれぬ気持から・・・
・言うに言われぬ苦しみを・・・
のように、受動形が固定している。
 また、思考の動詞では、
・「思える」よりも、「思われる/思い出される/考えられる/信じられる」など「受動形」が多く用いられる。
○理由の説明がありません。
 (思考実験で考えたことは、受動形「結果態:思わる+可能態:える」が、「思う動作をした結果」を表現するので、受動形を使うのだろう。「思える」では現在時々刻々思っていることを表現することになる)

○「態の双対環」方式では、「接辞の意味づけ」をしてから「双対環」を構成しました。
・受動態=結果態(結果重視/結果受身/自他生成)+可能態(自他生成/自発/可能表現)という意味があります。
・上の例文の受動態は、すべて「受身」ではなく、「結果重視+可能表現」の文です。
(ものごとを為し遂げる「結果重視」の言わば「成就態」とでも呼べるもの)
・以前に<典Bのホームページ>:「関西語の文法」から引用した例文で
「(このスープ)熱つうて飲まれへん」があり、関西語では「飲まれへん/書かれへん」がふつうとのこと。
:飲まない/飲めない/飲まれない
:行かない/行けない/行かれない という各動詞態を比べたことがありました。
○短い動作しかしないなら、
:飲めない/行けない/泣けない/止めない/言えない で表現できそうです。
○思考の動詞や成し遂げる動作の表現には「結果重視の成就態」の表現が必要です。
:思える/思い出せる/考えれる は未完了の動作です。
:思われる/思い出される/考えられる は「成就態」です。
:泣かれる/止まれる/言われる
 は結果を出し成就するまで(の長い時間)を言外に含めた「成就態」表現でしょう。
○態の意味を正確に把握するには構成する態接辞の意味:文法的「態」と語彙的「態」の両面を考慮し、結びつきを解き明かす必要があります。
・先人たちは、小さな助動詞接辞だけど、接辞が持つ意味を最大限に拡張して動詞態の体系を作りあげてきたのでしょう。

 次回も受動態・可能態のつづきを予定します。

日本語動詞:動詞態の双対環を操作-3

2014/01/28(火)

(1)寺村本の例文を題材にして:(受動態・可能態)つづき

 寺村本:『日本語のシンタクスと意味 第1巻』の第3章:態:受動態・可能態の節にある解説、例文を題材にして「態の双対環」を使う練習をしてみよう。

 前回、寺村本:受動態(受身)の接辞解説を引用した。本では図解でも記述があった。
○模式表記で引用する。
・Xが←[Yに V1・are・(ru)]
・Xが←[Yに V2・rare・(ru)]
・(Y:Vの動作・変化・出来事の主体)
・(X:[YがV~する]ことによって影響を受ける主体)
 と受身概念を解説されてある。
○また、可能態の形態について
・Xに←[Yが V1・e・(ru)]
・Xに←[Yが V2・rare・(ru)]
・(Y:V~することが可能・不可能かの事柄主体)
・(X:[YをV~する]ことが可能か、能力がある者)
 と解説されてある。
○つまり、受動態接辞を
・「are・ru」、「rare・ru」との区切りで考察している。
○可能態接辞を「e・ru」との区切りで考察している。
・これが大失敗だと感じます。
 (are:では接辞自身の意味が不明です。e:では接辞自身の意味が不明です)

○「態の双対環」方式では、受動態接辞を
・「ar・eru」、「rar・eru」、「sar・eru」と区切り、
・結果態接辞:「aru」と可能態接辞:「eru」とを合成したものと解釈しました。
・当然、可能態でも「eru」、「reru」、「seru」が接辞であると解釈しました。
(可能態と受動態の「・eru」要素が共通なのが明確になります)
以上が前回の概要です。

(2)「つかまれる」と「つかまれる」に有意差ありか?

○「態の双対環」方式で思考実験してみましょう。
・動詞「つかむ」の双対環
 能:つかむ/可:つかめる/結:つかまる/受:つかまれる
・動詞「つかまる」の双対環
 能:つかまる/可:つかまれる/結:つかまらる/受:つかまられる
○さて、
・「つかむ」の受動態:「つかまれる」と
・「つかまる」の可能態:「つかまれる」と
 同一の形態ですが、有意差があるのだろうか?

○まず、寺村本では、
・「つかまる」の例文や解釈が3か所ほどに記載されていますが、すっきりしない説明です。
・受動:「つかまれる」がふつうで、受動態で可能表現できる。と説明する。(理由の説明がない)
○可能態をとれない動詞の例:
①(雨が)降る/やむ、(人、物が)落ちる、かぶさる、きまる、広まる、消える
②ふさがる、つかまる、またがる、つながる
③あく、かたむく
を記載している。
・説明に、②の動詞に(e・ru)をつけられるが、可能形でなく受身の形と解釈される、とある。
・③の動詞は「(戸を)あける」、「(コップを)かたむける」と他動詞化と解釈される、とある。

○「態の双対環」方式では、当然ながら両者の意味の違いを感得できます。
・能:「つかまる」の可能態:「つかまれる」は受身の意味を含まないのです。
・可能態:「しっかりつかまって(結果として)体を安定することが可能であること」を表現する。
 (純粋に「結果+可能」の意味です。日本語話者なら受身と区別して話しているはず)
・受:「つかまれる」は受身を表し、「腕をつかまれる」ことを表現する。
 (「結果(文語受動)+可能=受動態」の意味です)
・③の動詞:1回の可能態接辞の付加では、「あける」、「かたむける」(自・他動詞の双対生成機能がはたらき)であり、
 2回目の可能接辞で「あけれる」、「かたむけれる」という正式(ら無し)の可能態表現にできるのです。
・一度も「結果態」を経由しないで可能態が生成される場合には、「ら無し」は正しい可能態表現だというのが「双対環」方式の解釈です。
・このように説明根拠を(誰でも)明快に示せるのが「態の双対環」方式の利点です。

○なお、可能態表現とは「動作(開始すること)が可能だ」ということを表します。
 (読める/書ける/開けれる/傾けれる:可能だから行為をしますの意味)
・一方、受動態で表す可能表現は、
 本来「動作し終って結果が出た段階で異常なく無事に達成できる」ことを意味します。
  「くり返しおこなっても問題ありません」という規範・世間常識として「可能です」の意味です。
・「おれはこの魚を食べれるよ」は個人の食事開始の言葉です。
・「この魚は(汚染がない、食用魚だから)食べられます」は行政のお墨付・規範として発表する言葉です。
・受動態=結果+可能の原意があり、結果を得たうえでの可能判断の意味だからです。

 次回も受動態・可能態のつづきを予定します。

日本語動詞:動詞態の双対環を操作-2

2014/01/26(日)

(1)寺村本の例文を題材にして:(受動態・可能態)

 寺村本:『日本語のシンタクスと意味 第1巻』寺村秀夫:くろしお出版:1982年11月10日第1刷/2005年1月20日第17刷
「第1巻」の第3章:態:可能態の節にある解説、例文を題材にして「態の双対環」を使う練習をしてみよう。

 前回の「つかまる」は、寺村本の態の冒頭・前説部分の例文でした。
(最初の節:受動態に入るまえの部分でした)

 寺村本:受動態の接辞
○態の接辞を動詞語幹につなげる手順が解説され、動詞V語幹の種別分けが示されている。
・V1:語幹が子音で終る動詞(五段活用動詞)
 語幹+are(ru) 例:sinu→sin・are・ru
・V2:語幹が母音(i,e)で終る動詞(上、下一段活用動詞)
 語幹+rare(ru) 例:sodateru→sodate・rare・ru
・V3:不規則動詞(サ行、カ行変格活用動詞)
 suru→s・are(ru)
 kuru→ko・rare(ru)

 「態の双対環」方式の受動態接辞
・V1:子音語幹
 語幹+ar・eru (能動系統)
 例:otosu→otos・ar・eru
 語幹+as・ar・eru (強制系統:強制接辞を先行付加)
 例:nom・asu→nom・as・ar・eru
・V2:母音語幹
 語幹+rar・eru (能動系統)
 例:sodateru→sodate・rar・eru
 語幹+sas・ar・eru (強制系統:強制態接辞を先行付加)
 例:tabe・sasu→tabe・sas・ar・eru
・V3:不規則動詞
 suru→s・ar・eru (能動系統)
 sasu→s・as・ar・eru (強制系統:強制態接辞を先行付加)
 kuru→ko・rar・eru (能動系統)
 ko・sasu→ko・sas・ar・eru (強制系統:強制態接辞を先行付加)
○双対環方式では
・受動態の成立ちを「結果態:aru+可能態:eruの合成」と解釈することが合理的と考える。
・強制受動態の成立ちを「強制態:asu+結果態:aru+可能態:eruの合成」と解釈することが合理的と考える。
・この合成法で生成すれば間違いなく受動態を導き出せるところが合理的という理由です。
・もちろん、試しに合成した受動態が運悪く日常の言語使用に供していないかも知れません。
(受動態に受動態を重ねたり、受動態に強制態を重ねたりしないように、双対環方式では語幹に接辞合成する方法を勧めたい)

(2)寺村動詞態の残念な結果

 寺村文法は構文と意味を詳細に分析しているが、非常に残念に感じることがある。
○寺村文法:
・V1の受動態接辞:+are(ru) 
 と解釈し、
また、受動態には可能の表現もあるとして、
・V1可能態接辞:+e(ru)
 V2(可能表現)受動態接辞:+rare(ru)
 とした。
・V2可能態は受動態と同じ形態である、とした。
・V1例:hanasu→hanas・eru
 V2例:sodat・eru→sodate・rare・ru
○残念なことは、
・V2(可能表現)受動態接辞を
 +(r/s)ar・eruと分解せずに、
 +(r/s)are・ru と思い込んでいたことです。
・「+ar・eru」と分解しておけば、後尾の「eru接辞」がV1可能態接辞と合致します。
○また、「+ar・eru」と区切る解釈が定着していれば、頭部の「aru接辞」への関心が深くなったはずです。
(寺村文法の影響で結局、aru:結果態接辞、eru:可能態接辞ともに不十分な文法則を引きずった状態なのですね)
○金谷本も「aru」に注目していますが、受動態接辞を「+are・ru」と見ることから抜け出せないようです。

 可能態での「態の双対環」操作を実行する余地がなくなりました。
次回につづきを載せます。

日本語動詞:動詞態の双対環を操作-1

2014/01/24(金)

(1)寺村本の例文を題材にして

寺村本:『日本語のシンタクスと意味 第1巻』寺村秀夫:くろしお出版:1982年11月10日第1刷/2005年1月20日第17刷
「第1巻」の第3章:態 の冒頭部分にある例文を題材にして「態の双対環」を使う練習をしてみよう。

○寺村本の例文:(カナ文をひらがな文に変えた)
①太郎が浜辺で亀をつかまえた。
②亀が浜辺で太郎につかまえられた。
  (②は受身文:つかまえ「られ」た:「られ」文法的な態の形態素)
③亀が浜辺で太郎につかまった。
  (③は規則的な派生ではない。語彙的な検討が必要)

○「態の双対環」の操作で検討する。
(寺村式:まず「態の接辞」を抜き出しているので、同様に)
態の接辞は3+(2:合成接辞)ですから、比較的簡単に初学者でも抜き出し操作をこなせるでしょう。
○動詞:つかまえる(辞書形):
・能動:①つかまえる/可能:つかまえ「れる」/結果:つかまえ「らる」/受動:②つかまえ「られる」
・同じ双対環のなかに①、②の述語動詞が含まれています。(同一の動詞語根です)
○動詞:つかまる(辞書形):
2つの解釈ができます。
・能動:③つかまる/可能:つかま「れる」/結果:つかま「らる」/受動:つかま「られる」

○能動:「つか「まる」」は結果態接辞を含んでいるので、試しに接辞を外して、
語根「つかむ」の双対環を作ってみます。
・能動:つかむ/可能:つか「める」/結果:③つか「まる」/受動:つかま「れる」
・2つの双対環をよく見ると、
可能:つかま「れる」が他方の受動:つかま「れる」と同形になっています。
・一方、受動態:つかま「られる」/つかま「れる」は両者の間では微妙にニュアンスが異なります。
 (つかまられる:長時間つかまれ続けるような感じ)
・この2つの双対環は語彙的「態」としての関係性があるわけですね。
 (余力があれば、「つか「める」」、「つか「ます」」などの双対環を作ってみると楽しいかも)

(2)「つかまる」と「つかむ」の態

寺村本で「解答」が記述されるのは、語彙的「態」:動詞の自他の類型の節になったところです。
○「解答」を読むまでもなく、おそらく「態の双対環」操作をした後ならば自力で判断ができるかもしれません。
○もし、日本語学習者が双対環操作をしたあとで質問に来たとしたら、日本語教師が「双対環」で解説しやすいでしょう。
○寺村本:辞書(学研国語大辞典)
・「つかまる」(自)
①とらえられる、ひきとめられる。(受身表現)
②手でにぎって、また、しっかりととりすがって体をささえる。
・「つかむ」(他)
①物を手でしっかりと握り持つ。
②自分のものにする。手に入れる。
③(正体・要点などを)心にとらえる。
 -と字引したあとで、15行程度の解説をして、「つかまる」が持つ受身表現を指摘している。
・だが寺村本の残念なところは、「つかまる」活用例を挙げて
 「あの枝につかまろう」、「私の手につかまれ」などは別の動詞と見るべきだと記述している。
 (動作主体の意志性がつよく出すぎているとの理由で別動詞にしなければいけないのか?理解し難い感じがする)

○「態の双対環」方式の立場では、
・「つかまる」(自):結果態と命名する。
①結果態:つかむ動作をした結果により体勢が安定していること。
②(文語体での受動態を継承):つかむ動作(被動作)を「身に受けて」(受動態)逃げれない状態であること。
・「つかむ」(他):能動態で辞書通り。
○寺村本でも「つかまる」が動作を受けた結果に重きをおく表現であり、多くの類例動詞があるとの記述です。
・「態の双対環」では、これを「結果態」と名付けて「文法則にすべき」だと提起したのです。
○結果態が文語体起源とは言え、いまでも日常的に使います。
・車内放送で、「ドアが/しまり/ます」、「手すりやつり革に/おつかまり/ください」と毎日使われています。

<参考>日本語動詞「態の双対環」基本図


日本語動詞:寺村文法の動詞態

2014/01/23(木)

(1)寺村秀夫の動詞態

 動詞態の復習をしてきましたが、いまいち得心がいかない心境なので専門書を調べてみようと決心しました。
○もっと早く読むべき本でしたが、近くの図書館にはなく今回ネット注文しました。
○『日本語のシンタクスと意味 第1巻』寺村秀夫:くろしお出版:1982年11月10日第1刷/2005年1月20日第17刷
と第2、3巻をあわせて購入しました。
○現時点で「第1巻」の第3章:態 の部分を通し読みしたところです。

 寺村研究の一端にふれたばかりですが、概要を抜き出してみます。
・第3章の節立てとして冒頭に
     /文法的「態」:受動態/可能態/自発態/使役態
・第3章:態{
     \語彙的「態」:(同一語根から分れた)自動詞・他動詞の対立
 が示される。
・末尾節の「まとめ」には「態の全体像」が2つの図表で示されてある。
 くしくも「受動態・可能態・自発態・自動詞・他動詞・使役態」の連続線上に並ぶ動詞機能の図表です。
・一つは「本居春庭の自他動詞の態+補足」、他の一つは「日本語の態の体系:受動態・自動詞・他動詞・使役態(ローマ字表記)」です。
○この図表を見て、
・金谷本が提起する「態の連続線」考察は原初的には寺村文法の考え方の流れをつなぐものだ。
・本居春庭、佐久間鼎などの研究もベースになっているのだ。
と気づきました。
・「日本語の態の体系:(動詞をローマ字書き)」の図表からは、大きな得心(落胆も)を得ました。次節に記述します。
○寺村本は「構文と意味」を系統立てて説明したもので、氏は生れが関西ですから「強制態:さす/使役態:させる」についてのこだわり解説があるだろうと期待していたが、ほとんどありません。
 残念至極ですね。
○また、寺村本の受動態は「受身:直接、間接」だけを意味していると区別しながら、受動態形式が可能態にも使われていることに寛容で、逆に「ら抜き」可能態(母音語幹の動詞も子音語幹の動詞と同じ可能態接辞:+(r/s)eru を付加する合理的な形態)を「乱れ」と見ることにも寛容なので、結局のところ、「態」の境界はなだらかに連続しているとし、本質的な整理がされていない。

(2)「強制態・使役態」で思考停止?
 寺村本での「態のまとめ図表」を見ていると、思考範囲が「強制態・使役態(=強制可能態)」までしか届いていない。
・「強制結果態・強制受動態」への言及がない。
(使役態が強制可能態に相当するとの言及もない)
・「強制受動態」、「使役受動態」の存在や両者併存の適否にも言及がない。
・寺村本での「態」解釈の範囲設定が文法的「態」と語彙的「態」の両面であるから、さすがに周到で抜かりはない。
○語彙的「態」(自他の対立)の説明で、
・化ける←・→化かす(他動詞化) と
・化ける←・→化けさせる(使役化) との違いを解説している。
その部分で解説がほしいのは、
・化ける←・→化けさす(強制態)←・→化けさせる(使役態)という段階を踏んだ思考です。
・「化けさす」(強制態)という劇的な態変換がなければ、「化けさせる」(使役態)へ移行できないはずですから。
・「化ける」→「化かす」の「+asu接辞」も言語の深階層では強制態接辞と同じ概念で生成されたものでしょう。
・「化ける」の「+eru接辞」も同様に言語の深階層では可能態接辞と同じ概念で生成されたものでしょう。
・「見つかる」と「見つける」の自他の対から、「+aru接辞」が結果態接辞であると見なせるでしょう。
○つまり、思考停止させずに自動詞・他動詞の双対生成を仔細に、大胆に分析すれば「動詞態の基本接辞」がすべて見つかるのになぁと感じている。

(3)思考停止させずに大胆に「動詞態の基本接辞」を提言する

 前回の日本語動詞:受動態の多面性-4に記述したように、
最新考察に置き直して図示すると、日本語動詞「態の双対環」基本図、のような提言となる。

○「態の双対環」に取り上げた態の接辞:①~③は、文法的「態」の範疇としても適合するし、自動詞・他動詞のペア生成に関与する語彙的「態」の範疇にも適合しており、日本語の深階層で概念を共有していると思う。
○日本語の動詞は、印欧語などより格段に、自動詞・他動詞が双対(語根同一で語尾の接辞で自・他を区別する)となるものが多いから、語彙的「態」のルールが確立していると実感する。
○日本語学習者にも「態の双対環」で日本語の動詞態になじむ機会を増やすと効果があるだろう。


日本語動詞:受動態の多面性-4

2014/01/19(日)

(1)動詞態の復習の総括

前回、日本語動詞の態(ヴォイス)について、手持の新書本3冊を調べ直したことを述べました。
○大野晋本、中島文雄本、金田一春彦本の3冊でした。
○もともと金谷武洋本に傾倒する部分がありますが、
・動詞の受動態←自動詞・他動詞→使役態:「1本の連続線上に並べる着想」はおもしろいですが、その座標軸の意味設定に違和感があり追従できないでいます。
○上記の4冊本の復習で分ることは、いまだ「日本語の動詞態」を十分に説明する文法解説書が現れていないということです。

(2)動詞態の再提起:「態の双対環」

思考実験で昨年末に「態の双対環」を記載して提起しました。
ここに最新考察の図で置き換えます。
Photo

○「態の双対環」では、考察する動詞語幹に直接、「可能態」、「結果態」、「強制態」接辞をつなぎ合せる方式ですから、
・「態の概念」と「自・他動詞のペア誕生の仕組」を同時に実感できるでしょう。
・「二重強制態」への拡張も容易に可能です。
・この態の文法則ならば、日本語学習者に「動詞態の仕組」を確実に教えられると思います。
(動詞語尾に接辞しているものが、可能態か結果態か強制態かを判別するのは比較的簡単に習熟できるのでは?)
(可能態、結果態、強制態を使えると、自分で新しい動詞を作り出す技を身につけたことになります)

(3)二種類の受動態形式

現在の学校文法や国語辞典では、「強制態」が古語扱いになっており、「使役態」(=強制態+可能態の合成)しか表舞台に現れません。
○強制態の動詞例:
・任す/済ます/逃す/驚かす/どかす/飲ます/乾かす/ぬらす:(国語辞典に見出し語あり)
・歩かす/立たす/読ます/食べさす/しゃべらす:(辞典に見出し語なし)
○これらの動詞語尾には、「+asu:強制態接辞」が付いています。
○昔から使っていた「まかす:任す」強制態動詞を「まかせる:任せる」使役態動詞に言い換えることが学校文法の基本方針でしょうか。
それでは日本語が持っている造語力・単語派生力をそぎ落とすことになってしまいます。
○現在は「任す/任せる」の両方が通用しており、
・任す(強制)→任される(強制受動:mak・as・ar・eru)と
・任せる(使役)→任せられる(使役受動:mak・as・e(r)ar・eru)の
二種類の受動態形式が使われています。(態接辞の長蛇を日本人はよく使いこなしているのですね)
○「態の双対環」を提起する立場からは「強制/強制受動」に肩入れします。同時に学校文法のなかでも二種類の受動態形式があることを教えてほしい。
○残念ながら現状では、冒頭の4冊本の内容に「強制/強制受動」に関する説明がありません。まったく気づいていないようです。
(おそらく、ほとんどの文法書でも解説されていないだろう。それでも「強制/強制受動」は深く根づいたものなので、伝承させたい)
○強制態の概念が教育されていないための混乱・誤解が続いています。
・「ら抜き/さ入れ」言葉などへの間違った排斥を早く解消したいですね。

○ネット上で「任す 任される」検索すると、二種類の受動態形式をきちんと把握している方がおられます。
「ネット氏」は二種類の受動態を聞き分けての語感を
・「泣かされる」:泣かす行為者の憎らしい顔が目に浮ぶ。
・「泣かせられる」:被行為者の泣き顔が目に浮ぶ。
のように述べている。
・さらに氏は、最近のマスコミ報道では強制態動詞の場合には、「強制受動態」を多く使っていると指摘(ほんとうに?)して、ニュアンスの違いを大事にするので二種併用を望まれています。

○「思考実験子」の語感としては
・「強制態」:行為者が直接相手に動作を強制する。(直接強制)
・「使役態」:行為者が(別人を仲介に立てて)目指す相手に動作をやらせる、あるいは動作を許可する。
 (弱い間接強制。本当に仲介表現をするには二重強制可能態が最適だろう)
・「強制受動態」:強制された行為の結果が身に染みる。
・「使役受動態」:強制行為が進行している印象がつよく、「結果が身に染みる」感じがうすい。
例:泣かせ(→強制の含意あり)+られる(→能動の含意あり:受動態接辞:(r)ar・eru)
例:泣かせ(→強制の含意あり)+される(→強制の含意あり:受動態接辞:(s)ar・eru)
・泣か(せ)される:使役受動態(S付き)は強制受動態(泣かされる)と同義と見なせる。
・泣かせ・られる:使役受動態(R付き)は強制+能動が合体した態ですから、ぎくしゃくした感じが残ります。
○強制態/使役態(←強制可能態)が併存することが必要なので、語感を大切にしながら広く全国的に語感のすり合せができるといいですね。(将来的には「強制態の双対環」が定着するとスッキリします)

○強制態/使役態(←強制可能態)が併存することが必要なので、語感を大切にしながら広く全国的に語感のすり合せができるといいですね。(将来的には「強制態の双対環」が定着するとスッキリします)


日本語動詞:受動態の多面性-3

2014/01/08(水)

(1)動詞態の復習

 日本語動詞の態(ヴォイス)について、手持の新書本を調べ直してみました。
○『日本語の文法を考える』大野晋:岩波新書:1978年7月20日第一刷/2001年11月5日第44刷
○『日本語の構造-英語との対比-』中島文雄:岩波新書:1987年05月20日第一刷
○『日本語』新版(下):金田一春彦:岩波新書:1988年3月22日第一刷/1997年4月7日第24刷

要点を抜粋すると、
○大野本:講演録の口述内容を元にした構成で、説明用の各種語形表なども加筆されている。
・態については、「ル・ラルとス・サスの役目」と項立したが、
・着眼は「自発か作為かの区別」におかれ、自動詞と他動詞の対生成に「ル・ス」が係わる点に力が入っている。
(また、他の助動詞接辞の説明とも同列的あつかいにとどまる感じ)

○中島本:日本語の構造を考察した文法書で、英語と対比させた考察なので両者の差がわかりやすい。
・動詞の種類:「ある/する/なる/なす」が基礎にあり、自発動詞と行為動詞が自動詞/他動詞の対形式となるものが多い。自・他動詞の生成例を詳しく提示。
・使役態:文語での「す」は使役態接辞に、「る」は受動態接辞に転用されたと推察する。
・日本語動詞の性格-自発・可能・受動・尊敬:日本語的発想は「事が起こるのは自然の成り行きによるもの」と見る傾向がつよい。
・「動作主が事を起す」陳述ではなく「事柄を主観的に受け止めて陳述する」形式だから、事柄が自動詞であれ他動詞であれ、能動態や受動態で陳述できる。
(英語の受動態では他動詞の目的語を主語にした構文となる)
・江戸時代に行為動詞+eru:可能接辞で「産める」「立てる」など可能動詞できて、多義の受動態から区別できるようになった。 戦後「来れる/見れる/食べれる」など可能形が広がっている。
・受動態:自発・受身(・迷惑)(・可能)・尊敬と多面的に使われるが、自発表現が拡張されたものと解釈できる。

○金田一本:日本語の特徴を多面的、博学的に説明した内容で、「文法からみた日本語」の項目で態について記述がある。
・受動態:自・他動詞に「れる/られる」を接辞して使う。
・自動詞の受動態は東アジアの諸言語で多く、日本語が珍しいわけではない。
・使役態:「せる/させる」を接辞して使う。
 使役の意味は、①他のものを動かす②他の意志どおりの行動を許す、の二面性がある。
・使役態用法:受動態と同様、非情物を主格とする例は少ない/他動詞・能動態で代用することがある。
・態の項目冒頭に『世界の言語』書籍のなかの「日本語」項を紹介してある。 動詞:「打たれさせる」が受動態+使役態の連結で珍しいと。こういう言語は地球上に少ないものと見える。

(2)思考実験の復習

 中島本での使役態の説明は少ないので、思考実験で復習してみよう。
また、金田一本の「打たれさせる」受動態+使役態も思考実験してみたい。

思考実験復習:
①中島本:使役態の生成(思考実験:態の双対環方式)
○「す/する」:単音なので動詞語幹:「S」と想定(実験前提)。
   能動態  ・・・・・・・・・・ 強制態
   す(su)           さす(s・asu)
  /   \      強制/    \強制
 結果態 可能態  結果態     可能態 (使役態)
 さる   せる    ささる      させる
   \   /        \ 強制 /
   受動態          受動態
   される           さされる
○使役態は必ず強制系の強制可能態として生成されるものです。
 「使役態:+(r/s)as・eru:が接辞の正式記法。つまり五段動詞:(+a・)せる/一段動詞:させる」
○能動系例(発見す/発見せる/発見さる/発見される)のごとく、能動系の可能態は使役の意味を持たない。

②金田一本:受動・使役態「打たれさせる」の解析(思考実験:態の双対環方式)
○受動態「打たれる」をまず「強制態」に乗せてから「使役態」にする。
   能動態         (受動+)強制態
   打つ(A者)       打たれさす(+S・asu)(B者)
  /    \      強制/    \強制
 結果態  可能態   結果態    可能態 (使役態)
 打たる  打てる   打たれささる   打たれさせる(?B者/?C者)
  \    /         \ 強制 /
   受動態            受動態
   打たれる(Z者)       打たれさされる(Y者=Z者)
○態の双対環で考察する利点は構文中の登場人・物を把握できることです。
 能動:打つ(A者)と受動:打たれる(Z者)、
 強制:打たれさす(B者)と強制受動:打たれさされる(Y者=Z者)
 のように、最低限3人が登場します。
○一段の強制態の使役態:「打たれさせる」では、
・「打たれさせて・やる」(?B者)、「打たれさせて・ください」(?C者)のどちらにも解釈できます。
 使役者が別人格のC者だと明示するのが、二重強制態、二重強制使役態になるのですね。
○(受動+)強制受動態:「打たれさされる」を(受動+)使役受動態:「打たれさせられる」に変換する方法は態の双対環でも表記できますが、省略します。

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