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日本語動詞:受動態の多面性-4

2014/01/19(日)

(1)動詞態の復習の総括

前回、日本語動詞の態(ヴォイス)について、手持の新書本3冊を調べ直したことを述べました。
○大野晋本、中島文雄本、金田一春彦本の3冊でした。
○もともと金谷武洋本に傾倒する部分がありますが、
・動詞の受動態←自動詞・他動詞→使役態:「1本の連続線上に並べる着想」はおもしろいですが、その座標軸の意味設定に違和感があり追従できないでいます。
○上記の4冊本の復習で分ることは、いまだ「日本語の動詞態」を十分に説明する文法解説書が現れていないということです。

(2)動詞態の再提起:「態の双対環」

思考実験で昨年末に「態の双対環」を記載して提起しました。
ここに最新考察の図で置き換えます。
Photo

○「態の双対環」では、考察する動詞語幹に直接、「可能態」、「結果態」、「強制態」接辞をつなぎ合せる方式ですから、
・「態の概念」と「自・他動詞のペア誕生の仕組」を同時に実感できるでしょう。
・「二重強制態」への拡張も容易に可能です。
・この態の文法則ならば、日本語学習者に「動詞態の仕組」を確実に教えられると思います。
(動詞語尾に接辞しているものが、可能態か結果態か強制態かを判別するのは比較的簡単に習熟できるのでは?)
(可能態、結果態、強制態を使えると、自分で新しい動詞を作り出す技を身につけたことになります)

(3)二種類の受動態形式

現在の学校文法や国語辞典では、「強制態」が古語扱いになっており、「使役態」(=強制態+可能態の合成)しか表舞台に現れません。
○強制態の動詞例:
・任す/済ます/逃す/驚かす/どかす/飲ます/乾かす/ぬらす:(国語辞典に見出し語あり)
・歩かす/立たす/読ます/食べさす/しゃべらす:(辞典に見出し語なし)
○これらの動詞語尾には、「+asu:強制態接辞」が付いています。
○昔から使っていた「まかす:任す」強制態動詞を「まかせる:任せる」使役態動詞に言い換えることが学校文法の基本方針でしょうか。
それでは日本語が持っている造語力・単語派生力をそぎ落とすことになってしまいます。
○現在は「任す/任せる」の両方が通用しており、
・任す(強制)→任される(強制受動:mak・as・ar・eru)と
・任せる(使役)→任せられる(使役受動:mak・as・e(r)ar・eru)の
二種類の受動態形式が使われています。(態接辞の長蛇を日本人はよく使いこなしているのですね)
○「態の双対環」を提起する立場からは「強制/強制受動」に肩入れします。同時に学校文法のなかでも二種類の受動態形式があることを教えてほしい。
○残念ながら現状では、冒頭の4冊本の内容に「強制/強制受動」に関する説明がありません。まったく気づいていないようです。
(おそらく、ほとんどの文法書でも解説されていないだろう。それでも「強制/強制受動」は深く根づいたものなので、伝承させたい)
○強制態の概念が教育されていないための混乱・誤解が続いています。
・「ら抜き/さ入れ」言葉などへの間違った排斥を早く解消したいですね。

○ネット上で「任す 任される」検索すると、二種類の受動態形式をきちんと把握している方がおられます。
「ネット氏」は二種類の受動態を聞き分けての語感を
・「泣かされる」:泣かす行為者の憎らしい顔が目に浮ぶ。
・「泣かせられる」:被行為者の泣き顔が目に浮ぶ。
のように述べている。
・さらに氏は、最近のマスコミ報道では強制態動詞の場合には、「強制受動態」を多く使っていると指摘(ほんとうに?)して、ニュアンスの違いを大事にするので二種併用を望まれています。

○「思考実験子」の語感としては
・「強制態」:行為者が直接相手に動作を強制する。(直接強制)
・「使役態」:行為者が(別人を仲介に立てて)目指す相手に動作をやらせる、あるいは動作を許可する。
 (弱い間接強制。本当に仲介表現をするには二重強制可能態が最適だろう)
・「強制受動態」:強制された行為の結果が身に染みる。
・「使役受動態」:強制行為が進行している印象がつよく、「結果が身に染みる」感じがうすい。
例:泣かせ(→強制の含意あり)+られる(→能動の含意あり:受動態接辞:(r)ar・eru)
例:泣かせ(→強制の含意あり)+される(→強制の含意あり:受動態接辞:(s)ar・eru)
・泣か(せ)される:使役受動態(S付き)は強制受動態(泣かされる)と同義と見なせる。
・泣かせ・られる:使役受動態(R付き)は強制+能動が合体した態ですから、ぎくしゃくした感じが残ります。
○強制態/使役態(←強制可能態)が併存することが必要なので、語感を大切にしながら広く全国的に語感のすり合せができるといいですね。(将来的には「強制態の双対環」が定着するとスッキリします)

○強制態/使役態(←強制可能態)が併存することが必要なので、語感を大切にしながら広く全国的に語感のすり合せができるといいですね。(将来的には「強制態の双対環」が定着するとスッキリします)


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