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日本語動詞:動詞態の双対環を操作-4

2014/01/29(水)

(1)寺村本の例文を題材にして:(受動態・可能態)つづき

 寺村本:『日本語のシンタクスと意味 第1巻』の第3章:態:受動態・可能態の節にある解説、例文を題材にして「態の双対環」を使う練習をしてみよう。

 前回の内容骨子は、
○「態の双対環」方式では:
・受動態接辞:語根+「・(r/s)ar・eru」と区切り、
 受動態=結果態・文語受動接辞:「aru」と可能態接辞:「eru」
 の両接辞の合成で生成したものと解釈しました。
○動詞例:「つかまれる」が二通りに使われる理由を解説しました。
・受動態=「aru:文語受動接辞」+「eru:可能接辞」→「腕をつかまれる」(受身文)
・受動態=「aru:結果態接辞」+「eru:可能接辞」→「つり革につかまれる(だから安心)」(可能文)
以上が前回の概要です。

(2)寺村本が見落したもの

 寺村本:「構文と意味」には、解析に必要なたくさんの例文が載っています。貴重な資料になります。
・また、動詞態が文法的「態」と語彙的「態」の両面から考察すべきだという提言が心強く感じました。
○しかし、寺村本の「態の解説」には、文法的「態」・語彙的「態」の関連を直接的に証拠立てるような考察がまったくありません。
○語彙的「態」の解説で、
・自動詞・他動詞の双対生成の接辞において、「aru/eru」接辞の組み合せで「自・他の対」になっている動詞が一番多い。とあります。
(受動態は「ar(u)+eru」であり、意味の深階層で語彙的「態」に結びつくものです)
○寺村本では、まったく見過して、
・受動態接辞:語根+「・(r/s)are・(ru)」と区切ります。
・「are」接辞自身の意味を考察せずに説明もしていません。
○寺村本の「使役態」でも見落しがあります。
・使役態接辞:語根+「・(r/s)ase・ru」と区切り、その短縮形が「+asu」だと無理な説明をしています。
・文語体の使役態(強制態)接辞:語根+「・(r/s)asu」が歴史的に早く誕生しているはず?です。
(語彙的「態」としても早い誕生のはず)

(3)態の接辞自身の意味

 寺村本では、動詞態を「接辞の意味」から解析する視点がよわいと思います。
○例文:可能態でも、受動態でも表現できる場合、
・どうしても行けない/どうしても行かれない
・そんなに一度に飲めない/そんなに一度に飲まれない
と、両用される。
○とくに、成句では、
・泣くに泣かれぬ気持だった
・止むに止まれぬ気持から・・・
・言うに言われぬ苦しみを・・・
のように、受動形が固定している。
 また、思考の動詞では、
・「思える」よりも、「思われる/思い出される/考えられる/信じられる」など「受動形」が多く用いられる。
○理由の説明がありません。
 (思考実験で考えたことは、受動形「結果態:思わる+可能態:える」が、「思う動作をした結果」を表現するので、受動形を使うのだろう。「思える」では現在時々刻々思っていることを表現することになる)

○「態の双対環」方式では、「接辞の意味づけ」をしてから「双対環」を構成しました。
・受動態=結果態(結果重視/結果受身/自他生成)+可能態(自他生成/自発/可能表現)という意味があります。
・上の例文の受動態は、すべて「受身」ではなく、「結果重視+可能表現」の文です。
(ものごとを為し遂げる「結果重視」の言わば「成就態」とでも呼べるもの)
・以前に<典Bのホームページ>:「関西語の文法」から引用した例文で
「(このスープ)熱つうて飲まれへん」があり、関西語では「飲まれへん/書かれへん」がふつうとのこと。
:飲まない/飲めない/飲まれない
:行かない/行けない/行かれない という各動詞態を比べたことがありました。
○短い動作しかしないなら、
:飲めない/行けない/泣けない/止めない/言えない で表現できそうです。
○思考の動詞や成し遂げる動作の表現には「結果重視の成就態」の表現が必要です。
:思える/思い出せる/考えれる は未完了の動作です。
:思われる/思い出される/考えられる は「成就態」です。
:泣かれる/止まれる/言われる
 は結果を出し成就するまで(の長い時間)を言外に含めた「成就態」表現でしょう。
○態の意味を正確に把握するには構成する態接辞の意味:文法的「態」と語彙的「態」の両面を考慮し、結びつきを解き明かす必要があります。
・先人たちは、小さな助動詞接辞だけど、接辞が持つ意味を最大限に拡張して動詞態の体系を作りあげてきたのでしょう。

 次回も受動態・可能態のつづきを予定します。

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