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日本語動詞:動詞態の双対環を操作-7

2014/02/04(火)

(1)動詞態の接辞:文法的「態」と語彙的「態」の連係を解明する(つづき)

 寺村本:『日本語のシンタクスと意味 第1巻』の第3章:態:受動態・可能態の節にある解説、例文を題材にして「態の双対環」を使う練習をしてみよう。
 前回の内容骨子は、
○態接辞冒頭にある「+(r/s)」の用法と意味を思考実験しました。
・動詞語幹が母音終り(上、下一段活用動詞)の場合に、母音連続を避けるため、+(r)か+(s)か選択して接辞します。
・動詞語幹が子音終り(五段活用動詞)の場合には、(r/s)を使いません。
○+(r/s)の意味、選択判断は
・(r):能動性を表す接辞です。
 たとえ、強制的な場合でも相手の能動意図を勘案した表現です。
・(s):相手に動作を強制する接辞です。
 相手の能動意図を越えた強制力を想定した表現です。
・どちらも相手が無情物なら他動詞となるわけです。
以上が前回の概要です。

(2)関西語の+(r/s)接辞

 <典Bのホームページ>にある関西語文法を読んでの知識しかありませんが、いままでの考察を少し広げてみます。
○関西語では「強制態」を態の機能として意識した使い方が定着しているようです。
・当然、+(r/s)冒頭接辞もきっちりしています。

○ところで、尊敬態の接辞・動詞(~なはる/~はる)には関西語の独自性がでています。
(誕生の経緯を推測する)
・動詞:「成る:na・(ru)/為す:na・(su)」の自・他双対の動詞と見るか、
 「成る:n・(aru)結果態/為す:n・(asu)強制態」という双対と見るか、
これ自体も語彙的「態」の領域で深く関わる課題かもしれない。
○「態の双対環」方式で操作すると
・能:「為す」/可:なせる/結:「なさる」/受:なされる と双対環ができます。
 あるとき、結果態は文語受動態なので、尊敬態の意味で「なさる:+(nasaru)」を汎用的に活用できないかと(先人が)考えた。
・東京圏では、
 立ちなさる/食べなさる/歩きなさる/信じなさる(連用形つながり)で動詞形で使われた。
・「~なさい」用法も多いから、動詞形だとしても年少者にとっては尊敬態では使いにくいものでした。

・関西圏では、強制態の使い方に感度が高いですから、尊敬態に「な(さ)る」の(さ音)が邪魔になります。
 尊敬態接辞で使うなら:「+(n)as・aru」という形態になりますが、これでは、子音語幹の動詞では、「立たさる/歩かさる」(強制結果態)と同形態になり「強制色」が飛び出してきます。
 そこで「な(は)る:+((n)a)haru」と(さ音→は音)に変換するという関西語の伝統を生かしたのですね。
・立たはる・立ち(な)はる/食べ(な)はる/歩かはる・歩き(な)はる/信じ(な)はる という表現ならば尊敬態接辞としても、連結動詞としても便利に使えるようになったわけですね。

○推測実験のついでに、「為す」の類推から、
・動詞「成る」=「語彙的態と見なして結果態接辞:+(n)aru」が尊敬態に変身可能か?と試してみた。
 立たる・立ちなる?/食べなる?/歩かる・歩きなる?/信じなる?
・やはり中途半端ですね。 
・動詞「ならる」=「結果態接辞:+(n)araru」が尊敬態になれるか?試してみよう。
 立たらる・立ちならる/食べならる/歩からる・歩きならる/信じならる
・「お立ちにならる」のような動詞形ならつながるが、尊敬表現力があるとは言えない。

○思考実験して再確認できるは、
・「な(ら)る」の(r):自動詞(動作主自身が動作する)の意味合いを持つ。
・「な(さ)る」の(s):他動詞(動作主が他を動かす)の意味合いを持つ。
・「な(は)る」の(h):五十音表で見ても、まさに「サ行」と「ラ行」の中間が「ハ行」だから!?自・他動詞のどちらとも相性がよいのかもしれない。
(実際、「ハ音」選択の幅は、なかる・なたる・ななる・なはる・なまる・なやる・なわるの中に限定されるわけですから、「なはる」が一番据わりがいいですね)
○関西語の底力ですね。
・語彙的にも文法的(構文的)にも日本語の「態」が相互に関連していることを学習する上でも「態の双対環」方式が役立つように思います。

(3)態の全体構成を習熟するには

 日本語は、いわゆる関係代名詞節を使わずに、連体修飾節などで複文化(原因結果など主文・従属文を連結して一文化)します。
○関係代名詞節の方式では、主文と副文の動詞態は相互依存せずに勝手に選択できます。
・「コウモリ」が勝手に主文に飛んでいき動作を報告し、また、勝手に副文に飛んでいき動作を報告する。それをつなげて複文構成にします。
(勝手命名:「コウモリ文」ですね)
○連体修飾節で複文化する日本語では、「コウモリ方式」の動作報告で従属文を作りません。
・因果関係などを説明する従属文は、主文と同じ立場・視点で見た動詞態で動作報告することが求められます。
・観察者が見る主文が基点となりますから、修飾節文(従属文)の動作も主文側視点からの「態表現」にします。(虫の目視点ですね)
・主文/従属文の相互動作が密なほど、主文基点で動作報告することが必要です。
○「態の双対環」方式で態の全体構成を確実に習熟できるようになるといいですね。

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