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日本語動詞:動詞態の双対環を操作-6

2014/02/02(日)

(1)動詞態の接辞:文法的「態」と語彙的「態」の連係を解明する(つづき)

 寺村本:『日本語のシンタクスと意味 第1巻』の第3章:態:受動態・可能態の節にある解説、例文を題材にして「態の双対環」を使う練習をしてみよう。

 前回の内容骨子は、
○思考実験している「態の双対環」方式が解析した動詞態の各接辞について一覧表形式で「意味づけ」を示しました。(一覧表を再掲します)
Photo_3
以上が前回の概要です。

 一覧表を見ながら、復習してみましょう。
○実際に思い浮んだ動詞を調べてみてください。
・動詞語幹は? 子音語幹ですか? 母音語幹ですか?
・態の接辞が付加されていますか? 何態ですか?
・実際にその動詞で「態の双対環」を作成してみてください。

(2)各接辞冒頭にある「+(r/s)」の用法

 一覧表にある各態接辞の冒頭に、+(r/s)がつけてあります。
この表現を学んだのは金谷武洋本によります。
○動詞語幹が子音終り(五段活用動詞)の場合には、(r/s)を無視して+ar・eru(例:受動態接辞)を接辞します。
○動詞語幹が母音終り(上、下一段活用動詞)の場合に、母音連続を避けるため、+r・ar・eruか、+s・ar・eruか選択して接辞されます。(例:受動態接辞)

(3)(r/s)の意味は重要です

○「態の双対環」方式で動詞態を観察してきて、得心できたことです。
・子音語幹の動詞では(r/s)が現れません。
・母音語幹の動詞で、母音連続を避けるため、(r)か(s)を接辞先頭に挿入します。
○(r)を選ぶか、(s)を選ぶかの判断は:
・(r):能動性を表す接辞です。
 たとえ、強制的な場合でも相手の能動意図を勘案した表現です。
・(s):相手に動作を強制する接辞です。
 相手の能動意図を越えた強制力を想定した表現です。
・どちらも相手が無情物なら他動詞となるわけです。

○(r/s)選択に迷う場面で、先人の智恵を(2例)見つけました。
①蒸す(自動詞、他動詞両用あり)
・mus・u/mus・ar・eru(蒸す:能動系)
・mus・asu/mus・as・ar・eru(蒸さす:強制系)
・mu・r・asu/mu・r・as・ar・eru(蒸らす:強制系→他動詞化)
○子音語幹ですから、「蒸さす」が順当な強制系なのだが、子音語幹の(s)を強引に(r)に取り替えた新語「蒸らす」を作ってまでも(r)を挿入した理由はなんでしょうか。
・「蒸さす」=相手を強制して蒸す動作をさせること。あまり言わず。
・「蒸らす」=自分で蒸す動作をすること。(物に対する強制=他動詞)
②寝る/寝さす/寝かす(語幹不明)
・寝さす=相手が寝れるように仕向ける、寝る許可をすること。
(相手の能動意図は考慮されていない)
(話者が「寝さしてくれ」と頼むこともあり)
・×寝らす=言わず。催眠術士が言う「眠むらす」とは違います。
(幼児・大人でも寝る過程での能動意図があると勘案し得ないからですね)
・寝かす=相手(幼児)が寝れるように抱き上げる、添寝するなど自分の行動もする。
・×:ne(r)・asu/ne(s)・asu/ne(k)・asu
 「寝らす」を取らず「寝かす」を新語生成した先人の智恵に感心します。
○(r/s)が醸し出す「能動動詞」と「強制動詞:他人を強制動作させる」の意味合いの差を敏感に感じて峻別してきた歴史があるんですね。
○「態の双対環」方式でも、能動系と強制系の差を実感できる仕掛けになっています。
・能動系の態双対環と強制系の態双対環は相似形ですが、相互の接続・分岐はありません。
(必要に応じて、「態付き動詞」を他の双対環へ移動させることで操作として連接できます)

 次回の1回分つづきます。

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