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日本語文法:動詞の原形語幹とは3

2015/02/28(土)

(5)最新の日本語学が近づいてきます

 図書館で見つけた本を読んで感心しました。
国広哲弥:『日本語学を斬る』:研究社:2015年1月30日初版
東大名誉教授で意味論を専門に研究なさった方で、
>はしがきに「多少おこがましくはありますが、私しか言っていないと思
 われる考えをとにかく集めてみようということです。そうして出来上が
 ったのが本書です。」とある。
序章・言語観、第一章・日本語音素体系:動詞の活用体系を分析するのに
ローマ字正書法が必要、第二章・動詞形態論:動詞に活用体系は存在しな
い、が目に留まります。第八章、あとがきに代えて、と続きます。<

 国広哲弥本の第二章が動詞の活用に関係する部分です。
>動詞の語幹を母音語幹、子音語幹で区別する方法は、アメリカ構造言語
 学者のバーナード・ブロックが調査研究したもので、太平洋戦争中に米
 国政府の要請で進められたのが最初らしい。やはり日本人の「仮名の呪
 縛」を打ち破るのはローマ字解析(音素解析)だった。<
○国広本では動詞の原形「る形」と「た形」の活用に関して、
 岡田英俊(1987)「日本語の自動詞・他動詞の音韻分析」、『東大言語学論集
 87』の説明を引いています。端折りすぎで間違いの反論の手掛かりにもで
 きませんが。
・一目で分かる部分は国広作例の考えで、
・kak+rare・ru→kak+are・ru「書かれる」
・kak+re・ru→kak+e・ru「書ける」
(国広、岡田:る形の接辞の場合、子音語幹につなぐには後続接辞の頭文字を
落とすのが規則という)
○書ける:可能形の説明には驚かされた。国広本は、書k+(ra抜き)re・ru→
 書k+(r落とし)e・ruで可能形:書けるが生成されると言う。
 これを「ラ抜き形」と呼ばれる。(世評に気がついたという感じで、無策?)
・世間の「ら抜き言葉」に言及していないから、むちゃくちゃ過ぎて、本気の
 話なのかどうかにわかに信じれません。(信じれない:信じようにも確証が
 ない。信じられない:まゆつばには、はなから信じられない)
例文の直後に(付記)がある。
>脱稿後に清瀬義三郎則府著『日本語文法体系新論』:ひつじ書房:2013、を
 入手し、(中略)、子音語幹、母音語幹の区分は同じ、語幹と助動詞の接続の
 方向が我々と全く逆ですので、本文の記述変更は必要ない、と記述あり。<
 と言うことは、本気の話なのだ。
○国広本で記述のある清瀬義三郎則府本の例文は、
・連結子音 kak-(s落とし)aseru、 mi-saseru
・連結母音 kak-anai、 mi-(a落とし)nai
 の2例だけです。
○清瀬本の考え方は理解できますし、思考実験でつい2、3カ月前まで清
 瀬風に語幹と接辞の間に挿入子音/挿入母音をはさむことを考えていま
 した。今は態の接辞に対しては*動詞原形語幹に接合することに気づき、
 すっきりしています。
<★追記:2015年末~2016年始めに、思考が進展して「動詞原形語幹」の
 表現をやめて、一般化した語幹+「挿入音素」と呼ぶことにしました。
 「挿入音素」なら助動詞を含めて他接辞の接続にも対応できるからです>

 国広本、清瀬本ともに従前の動詞活用表から距離を取って、動詞形態を
見直そうとしています。すばらしいです。
ただし、態の接辞については日本語で特徴となる「自他対応・自他交替の
原点」を見失わないでほしいですね。
・可能態には、動作可能の意味と自他交替による意味とが常に共存してい
 ます。
・受動態には、結果態の自他交替と結果の2つと、可能態の2つの意味が
 ないまぜになっています。
・自他交替の接辞:aru、asu、eru、をきちんと理解しておかないと応用が
 利きません。
 (動詞の態が変わると意味が多面化することにもっと注意する必要があ
 ります)
★子音語幹、母音語幹の区別も大切ですが、動詞原形(辞書形)語幹の考
 え方を採用すると、すべての動詞を子音語幹で扱える。
・未然形に接続するという呪縛から自由になれます。
・態の接辞を本来の姿で接合できます。足したり、引いたりの必要はあり
 ません。
★態動詞は原形(終止形・辞書形)の語幹であつかうべきです。
・思考実験では、書k・areru、と表記して、書k・are(ru)とは表記しない
 ように留意しています。
 つまり、「書かれる」となった受動態動詞の原形語幹は「書かれr+」
 となって、次の態につながります。
ダメ例ですが、「書かれ(r→s)aser+arer+arer+arer+arer+are・た」
などと冗談が言えます。
・この冗談の最後:+are(r落とし)+た、の操作を正確に定義することも課題
 になりますね。
○国広本で「た形」解説部分に内容の飛びがあるようで、一部欠落したと
 思われる。
・思考するに、母音語幹動詞は語尾子音を受け入れやすいから、
 ・見る、見(r→s)asu、見た、食べる、食べ(r→s)asu、
  食べた、と変わり身が早い。
 ・子音語幹動詞は、読む、読ます、読m+?+た/だ、書く、書かす、
  書k+?+た、となり、「た形の?法則」を分かりやすく作らなけれ
  ばならない。(音便法則あり)
○冗談で態の連鎖を記述したが、
>国広本第八章展望のなかに記されている「動詞活用体系が姿を消した
 代わりに出てきたのは、動詞の語幹に続く「助動詞の連鎖」です。
 助動詞の順序には一定の制約があり、流れ図(flow chart)の形で記述す
 ることができます。
 図例のなかで「サセ+ラレ」は許されるが、「*ラレ+サセ」は許され
 ないことが示してあります。・・・」<

に対して、反論の意味もあり、書かれさせ・・・と記述しました。
・以前、「打たれさせる」、「見られさせる」の例を記述したと思う。
・流れ図の着想を進めるためにも広く検証がなされるといいですね。

<★追記:2016年11月、清瀬義三郎則府:『日本語文法新論-派生文法序説
 -』:桜楓社:1989年2月、を読みはじめて理解できたのは、膠着語に活用
 はなく、単語に接辞が連結・派生していくことで意味や構文を作り出すの
 だということ。派生文法体系の骨格が出来上がっている。
 国広本も同方向を目差しているが、「助動詞の連鎖」でとまっているようだ。>

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