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日本語構造伝達文法12年版を独習する5

2015/04/13(月)

(5)問題の突破貫通力は

 今泉ネットPDF本から「日本語構造伝達文法」による動詞態の構造モデルの考え方を「態の双対環」方式と対比させながら考察しています。
〇今泉本では、語彙の解析にローマ字つづりによる音素解析を行いすばらしい成果をあげています。
〇今泉本の態の構造モデルも順次研究が発展して、分類が詳細になっています。
 それにもかかわらず、原点での問題点を手つかずのまま残しているように感じます。
〇学校文法の受動・使役の助動詞に対して、
 「動詞の未然形に接続すると説明するは間違いだ」と提起して
 「動詞の語幹に接続する」のだと述べる。だが、子音語幹、母音語幹の壁を突破できないでいる。
〇その先への突破貫通力が不十分であり、既存の研究を飛び越えられないでいる。
 原点での問題は、
①態の助動詞(態接辞)の正しい形態、意味は何か?
②動詞と態接辞の接合規則は何か?
③可能態(可能動詞)と受動態による可能表現との違いを明確に説明できるか?
④受動態の多義性を明解に説明できるか?
⑤「ら抜き言葉、さ入れ言葉、れ足す言葉」などに明確な可否指針を導き出せるか?
などがあり、重要なのは①~③の項目だろう。
 なかでも、問題の突破貫通力を生み出すのは「②態接辞の接合規則」だと思う。
思考実験をしてきた「態の双対環」方式でも、突破貫通力を実感したのは今年初めになってからです。

(6)すべての動詞を子音語幹であつかえる→動詞原形語幹!

 動詞原形語幹とは、動詞の終止形、辞書形の語尾子音までの形態を想定します。
まず例示します。
①通常の子音語幹動詞:読む、書く、泳ぐ→原形語幹:読m、書k、泳g。
②通常の母音語幹動詞:食べる、流れる、忘れる→原形語幹:食べ(r)、流れ(r)、忘れ(r)。
③通常の語幹無し、変則動詞:着る、見る、す(る)、来る→原形語幹:着(r)、見(r)、(S)、来(r)。
〇原形語幹を接合対象にすれば、すべて①~③のように子音語幹の形態になります。
(②、③の語尾子音は()付きで示しています。原形語幹方式で得られる語尾子音です)
〇変則動詞の「す(る)」は、仮に語幹と語尾子音が同じの扱いをして(S)とします。
 原形語幹の考えにたどりついた経緯については、
日本語文法:動詞原形語幹+態の接辞や、日本語文法:動詞の原形語幹とは、に
すでに記述した記事がありますから、ごらんください。

 今回は日本語動詞の特徴である「ある:r」と「する:s」について考察しよう。
(7)動詞語尾の(r)と(s)の意味の違い

 前節の②、③の動詞では、原形語幹が(r)付きがほとんどです。
〇能動系では、食べる、流れる、忘れる、着る、見る、する、来る。
〇能動系結果態では、食べ(r)aru、流れ(r)aru、忘れ(r)aru、着(r)aru、見(r)aru、(S)aru、来(r)aru。
〇強制系では、食べ(s)asu、流れ(s)asu、忘れ(s)asu、着(s)asu、見(s)asu、(S)asu、来(s)asu。
・強制系では語幹語尾に(r)→(s)の交替:能動強制交替(使役交替)が規則的に起きています。
 さらに、a(r)u→a(s)u:(文語体での受動:「ある」と使役:「あす」の交替に相当)の交替が規則的に起きています。
〇受動使役交替(aru→asuのr→s交替)は、当然①動詞でも規則的に起きることです。
・読m・aru/読m・asu、書k・aru/書k・asu、泳g・aru/泳g・asu。

 r/sの交替がこれだけ規則的に行われるからには、文法的な意味合いがあるはずです。
〇文語体では、
・流る/流す(naga・ru/naga・su、またはnag・aru/nag・asu)の対比があったであろうし、
・流r・eru/流s・eruの対比もできたかもしれない。
〇可能態接辞:eruも江戸時代の誕生時期では、①動詞にしか接続しなかったけれども、戦後は②、③動詞にも「原形語幹に接合する法則」により広がりを見せて、食べ(r)eru、見(r)eru、来(r)eru、が使われようになった。(日本語学界が「間違った未然形に接合する」に決別できないでいる現実がある)

 動詞語尾の(r)と(s)の意味の違いをきちんと文法化する必要があります。
試みに定義実験してみる。
〇②、③形式動詞の原形語幹語尾につく(r)とは:内在する意思や意図を持って自身が行う動作や状態を表す。(自・他動詞に共通する)
〇②、③形式動詞では、他者に対し意図を理解させ、動作を強制する場合、
・原形語幹語尾の(r)を(s)に交替させた語彙を使い、
・さらに(s)のあとに、強制態接辞:asuを接続して強制態を作ります。
〇一方、①形式動詞では、本来の原形語幹が子音で意味上固まっていますから、
・強制態の場合も、語尾の変化はなく(r→s交替は起きず)、
・直接的に強制接辞:asuを接合するだけで生成できます。
〇また、(s)→(r)交替例もあり:「蒸す→蒸らす」が自然で、「蒸さす」は他者への強制感が強すぎます。
・rでもsでもない(k)交替例:寝かす(←寝らす、寝さす)、笑かす(←笑わす)などもある。
・この(k)は語幹語尾ではなく、意味の変更を目的に交替したものだろう。
・(k)の意味:他者の意思に忖度・推察せずに動作を強制する場合、~(k)asuを使う、と仮定義しておく。

 また、結果態接辞:aruと強制態接辞:asuについても全く同様の理由で、文語体の時代に
・受動助辞の語尾:a(r)u→(r)が(s)に交替し新たな対の接辞を作りだし、
・使役の助辞:a(s)u になったのだろう。
(「ある、なる」に対する「さす、なす」の対応なのでしょう。往時の先人がrとsに対して感得した含意を共感できるといいのですが)

 動詞原形語幹方式を採用すれば、すべての動詞を子音語幹の扱いで態の構造、態接辞の形態、態の意味を統一的に把握できます。
態に関するほとんどの問題は、「未然形に態接辞を接合する」という文法間違いから発生するから、これを正せば、すべてが解明への道に向かいます。

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