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日本語文法の論理7

2016/04/20(水)

★時枝誠記:『国語学原論』1941年:上・下巻の内容に共感しつつ、関連考察を引き続き述べたい。
〇時枝文法は問題提起の着眼が奇抜に見えても、意外なほど論述展開・結論が自然で柔軟な着地点に到達します。
 前回の「論理6」で記述した【2】、【3】の実験思考に込めた新しい態動詞生成方法をご理解いただけただろうか。
〇態の助動詞を「詞」あつかいすると初めて聞かれた方にとっては、理解・容認の範囲を超えているかもしれません。(態接辞の由来が「動詞自他交代の機能接辞の再利用である」ことを感得できれば、自然な着地点に着くはずです。動詞の未然形に接辞をつなぐと言うのは間違いです)
〇小島剛一:『再構築した日本語文法』2012年の書中では、「ら抜き可能」を非文法としています。
・後にご自身のブログ記述で、「(ra)reru:ら抜き」ではなく「r(ar)eru:ある抜き可能」だと気づいて、文法的側面を考慮し直したようです。
・しかし、「入れれれば:可能仮定」など「れれれ:3連続」に辟易だという。「入れられれば:受動仮定」ならばOKで、「入れれれば」が容認できないという。
〇外山滋比古:『日本語の絶対語感』2015年9月の後半部分で「ら抜き可能」に触れている。
・用例の1つに「~行けれる」を上げているが、「行け(る)+れる」では二重可能となり誤用に相当する。(校正もれ?)
・五段活用/一段活用、「れる/られる」との受動態の文法説明はあるが、その問題点の洗い出しがない上、新しい流れの可能態に対する文法形態の説明も不十分。
・若い世代に「「~れる」がつけば、可能形だ」と反射的に思わせてしまうのがこわい。
 正しい「可能態接辞:eru」が定着してほしい。

【4】[詞]辞)入れ子型の本領:
 態動詞の文法を先行したが、やはり、本来の[詞]辞)入れ子型の文法にもどろう。
★時枝文法:[詞]辞)では辞が詞を総括し、次段の[詞]辞)が前段入れ子を総括する。
最後の[詞]辞)が表現の完結を果す述語形式を持ち、全体を一文に統合(統括)し、意味を完結させる。

【4:思考実験】確かに入れ子型は風呂敷統一形式:
 入れ子を入れ子が総括することを、風呂敷包みを風呂敷が包むと類推する。
★風呂敷総括の原則を構文のなかで応用すると、特に形容詞や動詞の連体修飾句の扱い方に威力を発揮する。
【例】被修飾語を含めた入れ子型を風呂敷型:【】)で強調してみよう。
・[源さん]が)こわい]φ=その)饅頭]とは、)→【[源さん]が)こわい])饅頭】とは、)
〇関係代名詞句を使う言語では、
~こわい]、その)饅頭]と言う形式で表現するが、関係修飾句を使う日本語では~こわい]φ)饅頭】という直結形式で風呂敷型表現を常用する。
 ~こわい]φ)と饅頭]が直結できるように、~こわい])には辞が付かない。
・[女]は)なぐられた]φ=その)男]に)復讐]した。)→【[女]は)なぐられた])男】に)復讐]した。)
〇風呂敷の中が男だけならば、
・【[なぐった])男】は)女]に)復讐]された。):男の立場での動作修飾により表現される。
★ここまでの論旨:日本語の関係修飾句は、そこまでの語順全体を風呂敷型総括することで意味が固定する。また、【~[修飾語])被修飾語】の間は無辞で直結します。

 寺村秀夫:関係修飾句の被修飾語を「底」と名付け、修飾語と底の関係を内の関係/外の関係と見分ける認識を示した。
【例】内の関係修飾:
・【[私]が)買った])本】。)←[私]が)本]を)買った]。):構文中にあった「本」を「底」にした関係修飾文。
【例】外の関係修飾:
・【[さんま]を)焼く])煙】が)すごい]。)←[さんま]を)焼く]と、)煙]が)すごい]。):条件構文からの変化?通常、外の関係修飾としているが、境界はむずかしい。

★修飾機能の結合力を強く表現するために「=記号」を使い、
・【[私]が)買った=本】。)
・【[さんま]を)焼く=煙】が)すごい]。)
・【[源さん]が)こわい=饅頭】とは、)
・【[女]は)なぐられた=男】に)復讐]した。)
・【[太郎]は)明日]、)大阪]に)行く=予定】だ。)
のように記述したいですね。
(=記号:文章中の視認性が高く、日本語の繋辞とは区別可能だろう)

★なお、修飾機能「=記号」に対しては、西欧語では、関係代名詞を使う。
・買った(、その、)本/さんまを焼く(、ときの、)煙/源さんがこわい(、と言うその、)饅頭/女はなぐられた(、その、)男に/太郎は大阪に行く(、のが、)予定/
などの()内の語句は、日本語では通常明示しなくても、修飾機能力が十分に働くから意味が通じる。
★日本語の形容詞・動詞が持つ連体修飾の結合力と、風呂敷統一形式の概念との2つを確実に作用させれば、西欧語の関係修飾よりも柔軟な構文が作れる。
・名詞修飾、形容名詞(:形容動詞)修飾の場合には、【~[名詞]の)修飾】)や【~[形容名詞]な)修飾】)と助辞が間に入ります。だから余計に連体修飾句(と「底」)の結合力には自信を持って語感を高めていきたいですね。
【例】
・【~[トンネル]を)抜ける]と、)雪国】だった。)
・【~[トンネル]の)向う側]は、)雪国】だった。)
機関車などを登場させなくても、時空間の広がり、移動感を直接感じることができる。
日本語が持っている風呂敷統括作用の効果です。

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