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日本語文法:「ら抜き言葉」は、「ar抜き:結果抜き可能」です

2016/10/31(月)

少し旧聞になるが、9月21日文化庁が発表した「国語に関する世論調査」の
結果概要をネット入手して再確認しています。
関心があるところ、態文法に関する世論調査の部分:「ら抜き言葉」について
記述します。

>資料を抜粋引用、省略的に再録します。
結果数値:各年代を含めた回答の全体平均で示す。(平成28年2月~3月調査)
(1)こんなにたくさんは:食べられない(60.8%)/食べれない(32%)
(2)朝5時に:来られますか(45.4%)/来れますか(44.1%)
(3)彼が来るなんて:考えられない(88.6%)/考えれない(7.8%)
(4)今年の初日の出が:見られた(44.6%)/見れた(48.4%)
(5)早く:出られる?(44.3%)/出れる?(45.1%)
今回の調査において初めて(4)、(5)の「ら抜き」が上回った。
・10代~40代まで「見れた、出れる」が優勢になり、10~20年代では圧倒的
 (70 ~60%)に「ら抜き」となる。
・一方、(3)考えられない/考えれない は、すべての年代で90%弱で「考えられ
 な い」となり、過去の調査結果とも同様で変化は見られない。
・(1)の結果は中高年が食べられない(60%台)、10代が食べれない(48.8%)
 を多用する傾向にあるが、過去の調査結果と同様に変化速度はゆるやか。
・(2)の結果は50代より若い世代で「来れますか」が過半数であり、過去の結果
 からも「ら抜き」傾向へ向かっている。
<引用おわり。

さて、この5問だけの調査結果を読んでの思考実験をしてみたい。
文化庁の調査担当部所において、「ら抜き言葉」の本当の形態をどのように捉え
ているのか判断できる記述が見当らないのだが、本来は「ar抜き言葉」と呼ぶべ
き言葉の用法なのです。
・食べr(ar)eru/食べreru、来r(ar)eru/来reru、考えr(ar)eru/考えreru、
 見r(ar)eru/見reru、出r(ar)eru/出reru、という(ar)抜き形態です。
これは、行k(ar)eru/行keru、殴r(ar)eru/殴reru、読m(ar)eru/読meru、
の可能動詞の生成と全く同じ(ar)抜き方法で派生する形態です。
ですから、
①すべての動詞に対して同一の生成法則で可能態動詞を作れる。(ゆっくりと
 公知の事柄になりつつあります)
②では、「ar抜き」の(ar)とはなんでしょうか。
・やすm(ar)u、つかm(ar)u、かさn(ar)u、はじm(ar)u、おw(ar)u、の「ある」
 が結果態接辞(文語体の受動態)につながる形態素です。
・やすm(er)u、つかm(er)u、かさn(er)u、はじm(er)u、お[w](er)u、の
 「える」が可能態接辞につながる形態素です。
・現代の口語体での受動態接辞は、結果態接辞(ar)+可能態接辞(er)の合成なの
 です。
・受動態(ar+er)から「ar抜き」すれば、可能態(er)が残る、可能態(er)になるのは
 当然のことです。日本語の歴史としても室町、江戸期に始まった可能態への
 流れが、明治期で、まず必要な共通語制定をいそぐ動きによって停滞してしまっ
 たのか。
・また、「ある:動作結果」抜きの可能態(erのみ)は「動作の開始」に対する意思
 可能を表すことになります。(結果をおもんばかる表現ではありません)
・つまり、可能態:eruは、動作開始に向かっての意志的可能を表出する動詞で
 あり、受動態の可能:areruは、動作が結果として完遂できる、できる見通しだ
 ということを表出する動詞です。

(ar)が持っている深層の意味は、「ある:在る、有る、ある」です。
・やすむ+ある=やすまる(休む結果がある→休まる)、つまり動作結果、動作が
 ある状態、動作を目の当りにする状態を描写する。
 受動態:動作+在る=受身表現/動作+在る=結果可能・完了可能/動作+ある
 =自発、尊敬、などに機能する。
(er)が持っている深層の意味は、「~なる、~なす」です。
・やすむ+える=休める(休む+なす=休める:他動詞、休む+なる=休める
 :自動詞可能)、自他交替機能と交替無しの可能表現機能の2本立ての意味を持
 っている。

 もう一度、世論調査の結果を概観すると、日本語を母語として話す日本人が
持つ「生来の語感」が浮き上がってきます。
つまり、「ある」の意味を肌感覚として大多数が身につけていると判ります。
(4)今年の初日の出が:見られた(44.6%)/見れた(48.4%)
(5)早く:出られる?(44.3%)/出れる?(45.1%)
・見れる、出れる:瞬間的な動作での可能判断なので、意思だけで決ります。
・見られる、出られる:動作の結果をおもんばかる判断です。(少数派へ)
(設問での見る、出る動作には即時動作で済むと判断する人が多いのだ)
(1)こんなにたくさんは:食べられない(60.8%)/食べれない(32%)
(2)朝5時に:来られますか(45.4%)/来れますか(44.1%)
・食べられない、来られない:動作の経過や結果がどんな影響をもたらすか
 を判断に含めています。(まだ多数派)
・食べれない、来れない:動作開始について意思可能・不可能を判断している。
(3)彼が来るなんて:考えられない(88.6%)/考えれない(7.8%)
・考えられない:思考の結果を自己判断しての発話。(大多数を継続)
・考えれない:思考の開始もできない状態を意味する。(少数派継続)
以上のように分析してみました。

「ある」付き受動態の結果可能表現、結果の深層心理が確かに浸透しているし、
「える」のみ可能態が表現するのは、意思の可能、即時的な瞬間動作の可能判断
、あるいは開始可能の判断表現だという深層心理が確実に働いていると見て
おきたい。
(ところが、世に名の通った文筆家などが発する論評は、「短い動詞:見れる、来れ
る、の可能態には寛容的であるが、長い動詞:考えられない、では受動態可能が
優勢な状況を続けている」とか、「普段の身内言葉でら抜きを使う人でも、公の
場では受動態を使う」という我田引水的考察で思考停止している。冷静に考えれば、
公の場での報告は結果確定の状態を表すために受動態が使われるのですから)

いずれにしろ、「ある」付の受動態結果可能の表現と、「える」のみ可能態の意思
可能、開始可能の表現は共存共栄させたい日本語の態表現です。

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