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態文法:態接辞「える:可能」の意味(6)

2016/12/03(土)

6.態接辞「える:可能」の意味

 「態の双対環」方式で能動系、強制系、使役系の「可能態」と「受動態」を簡略
再掲する。
(動詞語幹:D、挿入音素[][r][s][x]、態接辞・u/eru/aru/asuなど)
〇能動系:D[r]eru:可能態/D[r]areru:受動態
〇強制系:D[s]as[]eru:可能態/D[s]as[]areru:受動態
〇使役系:D[s]ase[r]eru:可能態/D[s]ase[r]areru受動態
★この中で、可能態の解釈に欠かせない態の形態は、
〇能動系の可能態と受動態、強制系の可能態=使役態の3つです。
 以下、可能態、受動態、使役態を簡単に記述します。
・可能態:D[r]eru、←可能態の意味を考えるために工夫します。
・受動態:D[r]areru、←またの名を「ar付き可能態」なのです。
・使役態:D[s]as[]eru、←またの名を「as付き可能態」なのです。
この接辞の派生状態を分析して意味を感じてみたい。
〇可能態=受動態-結果態(ar)、つまり受動の「ar抜きの可能態」、
〇可能態=使役態-強制態(as)、つまり使役の「as抜きの可能態」であり、
 可能態はこの両方「ar/as抜きの可能態」に近い意味を持っています。
〇つまり、可能態:D[r]eruは、受動態:D[r](ar)eruの(ar)がない状態
 の(本人が結果を目指してD[r]eruを行う)自律動作を表現します。
・また、可能態:D[s→r]eruは、使役態:D[r→s](as)eruの(as)がない
 状態の(本人が強制されてD[r]eruを成り代って行う)自律動作を表現し
 ます。
・今まで可能態の意味:「~になる」、「~になす」の両方の意味があると解釈
 していたことをこれで証明したい。

★実際の動詞で試してみよう。(結果ar/強制as)をカッコでくくる。
・つかまれる:tukam(ar)eru:自律動作→つかめる:tukameru(可能)
・つかませる:tukam(as)eru:律他動作→つかめる:tukameru(可能)
・立たれる:tat(ar)eru:自律動作→立てる:tateru、(可能表現)
・立たせる:tat(as)eru:律他動作→立てる:tateru、(他動詞化)
・届かれる:todok(ar)eru:自律→届ける:todokeru(受身→他動詞化)
・届かせる:todok(as)eru:律他→届ける:todokeru(他動詞化)
・届けられる:todoke[r](ar)eru:自律→届けれる:todoke[r]eru(可能)
・届けさせる:todoke[r→s](as)eru:律他→届けれる:todoke[s→r]eru(可能)
(母音語幹動詞の挿入音素[r→s]交替は、また[s→r]eru復元が必要です)
・取られる:tor(ar)eru:自律動作→取れる:toreru、(自発態)
・取らせる:tor(as)eru:律他動作→取れる:toreru、(可能)
・流される:nagas(ar)eru:自律動作→流せる:nagaseru:(可能)
・流させる:nagas(as)eru:律他動作→流せる:nagaseru:(可能)
・流れられる:nagare[r](ar)eru:自律→流れれる:nagare[r]eru(可能)
・流れさせる:nagare[r→s](as)eru:律他→流れれる:nagare[s→r]eru(可能)
・生きられる:iki[r](ar)eru:自律→生きれる:iki[r]eru(可能)
・生きさせる:iki[r→s](as)eru:律他→生きれる:iki[s→r]eru(可能)
(母音語幹動詞の挿入音素[r→s]交替は、また[s→r]eru復元が必要です)
・歩かれる:aruk(ar)eru:自律→歩ける:arukeru、(可能)
・歩かせる:aruk(as)eru:律他→歩ける:arukeru、(可能)
・見られる:mi[r](ar)eru:自律→見れる:mi[r]eru、(可能)
・見させる:mi[r→s](as)eru:律他→見れる:mi[s→r]eru(可能)
・食べられる:tabe[r](ar)eru:自律→食べれる:tabe[r]eru(可能)
・食べさせる:tabe[r→s](as)eru:律他→食べれる:tabe[s→r]eru(可能)
(母音語幹動詞の挿入音素[r→s]交替は、また[s→r]eru復元が必要です)

〇「える:eru」を可能態接辞だと呼ぶことに疑問はありませんね。
〇受動態と使役態の関係も鏡に写る鏡像関係にあることが分かります。
・食べられる:tabe[r](ar)eru:→食べさせる:tabe[r→s](ar→s)eru:
 のように、挿入音素の[r→s]交替、接辞の(r→s)交替で受動態と使役態が
 きれいに入れ替ります。
★使役・受動の結合で鏡像が虚像になり、可能態の誘導ができますね。
・D[r→s](as・ar)eru→D[s→r]eruで、(as・ar)が打ち消されれば可能態。
例:歩かされる:歩k[](asar)eru:と思わずに、歩ける:歩k[]eru:と思え。
・立たされる:立t[](asar)eru:前に、立てる:立t[]eru:ので。
★受動・使役の結合で鏡像が虚像になり、可能態の誘導ができます。
・D[r](ar・as)eru→D[r]eruで、(ar・as)が打ち消されれば可能態。
例:始める:始m[]eru:とは、始まらせる:始m[](aras)eru:ことである。
・上らせる:あg[](aras)eru:とは、上げる:あg[]eru:ことです。
(自・他交替で、閉まる/閉める、あたる/あてる、変わる/変える、など
 「ある/える:aru/eru」形式がいちばんに多いのも納得です)

 さて、可能態「える:eru」の発生にはもう一つの由来があると思う。
・可能態の接辞が「える」だが、「得る」という明確な意味を持っていない。
 動詞活用の下二段活用が一段活用に収れんしていく江戸期の段階で、連体
 形「[r]uru」語尾などが変化し、終止形と同形になるとか、「て形連節形」や
 「連用形、已然形」の変遷から「える:eru」が生まれたと思われます。
★「て形連節形」を段階分けして考察すると、(↓四態て形列記法と命名)
・書いて、走って、見て、食べて、:D[i]te、原態形連結、
・書けて、走れて、見れて、食べれて、:D[r]ete、可能形連結、
・書かれて、走られて、見られて、食べられて、:D[r]ar[]ete、受動形連結、
・書かせて、走らせて、見させて、食べさせて、:D[s]as[]ete、使役形連結
などが広く使われているから、本来は活用段「-え-」段として正式に已然形
や将然形の名称で残すべきだった。
〇文法的には「-e-」形態で可能接辞と説明する書籍が多い。
 已然形、将然形には直接「できる」の意味はないだろうが、動作には取りか
 かっている意味と「~て:完了辞」があるから、動作を進めている意味を表
 すことに間違いはない。
・eru、ete、eta、emasu、などの形態で連結して使われますが、「態の双対
 環」方式では、「e」単独でなく「eru」または「e[r]u」の形式で表記します。
 「う~、える、ある、あれる」や、「ある、あす、える」の語呂合せもあり、また
 態の各接辞を原形態で正確に示したいと考えるからです。

追実験:「態の双対環」の隣接態で自他を表現する動詞を追試する。
自/他①aru/u:隣接、②aru/eru:対向、③u/eru:隣接④eru/u:隣接
★隣接性があり、「て形連節形」の段階分けで、競合が出現する。
 (文脈で判断できる。説明用に「四態て形列記法」が分かりやすいかも)
①自:つかまって、(つかまれて)、つかまられて、つかまらせて、↓隣接関係
①他:つかんで、つかめて、(つかまれて)、つかませて、↑隣接関係
②自:始まって、始まれて、始まられて、始まらせて、↓対向関係ありOK。
②他:始めて、始めれて、始められて、始めさせて、↑対向関係ありOK。
③自:届いて、(届けて)、届かれて、届かせて、↓隣接関係
③他:(届けて)、届けれて、届けられて、届けさせて↑隣接関係
③自:進んで、(進めて)、進まれて、進ませて、↓隣接関係
③他:(進めて)、進めれて、進められて、進めさせて、↑隣接関係
④自:(割れて)、割れれて、割れられて、割れさせて、↓隣接関係
④他:割って、(割れて)、割られて、割らせて、↑隣接関係
この思考実験もおもしろい結果ですね。

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