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態文法:態接辞「あす:強制」の意味(5)

2016/12/01(木)

5.態接辞「あす:強制」の意味

 前回の後尾部分に示した「態の双対環」全景を簡略再掲する。
(動詞語幹:D、挿入音素[][r][s][x]、態接辞・u/eru/aru/asuなど)
〇自律動詞の態動詞集団を能動系「態の双対環」でまとめます。
 能動系:D[r]:+u原形態/+eru可能態/+aru結果態/+areru受動態
〇強制動詞の態動詞集団を強制系「態の双対環」でまとめます。
 強制系:D[s]as[]:+u原形態/+eru可能態/+aru結果態/+areru受動態
〇使役動詞の態動詞集団を使役系「態の双対環」でまとめます。
 使役系:D[s]ase[r]:+u原形態/+eru可能態/+aru結果態/+areru受動態

 強制態の接辞「あす:asu」は、「他に動作をさす:[s]asu」という意味で、
・強制系:D[s]as[]:が強制系の原形態で、最初に態派生させます。
 その後の可能態、結果態、受動態への派生形態は能動系と同一です。
・「他に動作をさす:[s]asu」→強制態と、その可能態が次の使役形態となる
・「他に動作をさせる:[s]ase[r]u」→使役態、の意味の差異についても考察
 したい。

★実のところ、強制態、使役態のほかに、もう一つ似た態?があるのです。
 「使役態から「as」を除いた形態:[s]e[r]u」がつく派生動詞があります。
例:見る:見[r]u→見せる:見[s]e[r]u、同様に、着せる、似せる、乗せる、
  浴びせる、など。
→おそらく、「する」動詞の「態の双対環」でいうところの、
・する/せる/さる/される、の「せる」可能態もしくは、する活用の連用形
 が動詞母音語幹Dと挿入音素なしで結合する特異変化によって派生してき
 たものか。
★さらに、実は、「受動態[r]are[r]uから「ar」を除いた形態:[r]e[r]u」
 がつく派生形態というのが、おなじみの問題児:可能態です。
・もっとも、「態の双対環」文法では「可能態」をまったく正当にあつかいます
 し、まったく問題児としていません。
★この受動態-結果態=[r]可能態、の深層と、使役態-強制態=[s]可能態
 の深層がどんな相互関係の中でつながっているのだろうか。
 時は江戸後期、明治維新の大変革期であったから、国語学も十分な研究整
 理がなされないまま、西欧文法に飲み込まれたのだろうか。
・可能態が動詞活用の「て形連節形」や「連用形、已然形」の変遷から生まれた
 と思われますが、他動詞・強制動詞・使役動詞の使い方整理のためにも正し
 い解析がほしい。
★受動「ar」と強制「as」に含まれる(r)と(s)は、音素交替させると、態派生
 した動詞にあっても受動・強制が入れ替ります。
例:見[r→s]eru:見れる→見せる、考え[r→s]eru:考えれる→×考えせる
 考え[r→s]a(r→s)eru:考えられる→考えさせる、
 書k[]a(r→s)eru:書かれる→書かせる、
〇以上の4つ星事項は重要な事柄ですが、研究の方向性が見えていない。
 ここでは、思考実験中ですから、考察の及ぶ範囲での解釈をしたい。

 さて、本題にもどります。
〇強制系原形態:D[s]as[]uは「相手に動作Dをさす:[s]asu」の意味です
 から、本人はD動作をせずに、相手が自律動作でDをするように強制する。
・「動く」の他動詞:動k[]asuは対物動作では本人が「動かす動作」をします。
 動かす:が対人動作ならば、本人が指示して「他が自律動作として動く」
 有り様を見定めるだけです。(指示された時だけ、他が「他律動作する」のを
 だれも望まないはずです。相手の自律動作を指示します)
・強制態の基本的な意味構造:
 本人は直接動作に関わらず、相手が自律動作Dを行うことを指示、許可、
 容認、放任、すること。(本人の関与程度は動作Dの内容の軽重に因る)
(相手に動作Dをさすために、本人が別動作Dxを行うことがある。
 例:赤ちゃんを笑わすために「いない、いない、ばあ」をする)

 次に、使役態を考察します。
〇使役系原形態:D[s]ase[r]uは「相手に動作Dをさせる:[s]ase[r]u」の
 意味ですが、強制態との違いに「協同で動作Dをする」こともある。
・「相手に自律動作でD動作をするように本人が指示する。動作の難易により
 本人が相手の動作Dを介助、手助けすることを含む」
 (本人の関与程度は動作Dの内容の軽重に因る)
・使役態=強制態+可能態の態接辞合成により構成され、意味も複合化しま
 す。
〇次の例で強制態と使役態の意味の違いを感じとれますか。
・強制態:書かす、立たす、遊ばす、飲ます、泣かす、:asu接辞・強制態。
 (ごまかす):asu付きだが、他動詞ですから本人動作となる。
・使役態:書かせる、立たせる、遊ばせる、飲ませる、泣かせる、:aseru使役態。
 (ごまかせる):aseru付きだが、他動詞可能態ですから本人動作可能。
★強制態には、「asu」の「s:律他動詞」があり、他へ動作を指示するだけ。
★使役態には、「aseru」の「s:律他動詞」のあとに「r:自律動詞」の標識が
 つきます。他への動作指示だけでなく、本人への自律動作を含みます。
〇この「s」「r」の語尾音素には律他、自律の意味が埋め込まれています。
 日本語の動詞体系の深層にある意味構造を感じとれるようになってほしい
 です。そのことは、「見せる:見seru」接辞が教えてくれたことです。
★「見せる:見seru」には「s:律他動詞」+「r:自律動詞」の標識2つが付いてい
 ます。見せる/見さす/見させる、とでどんな意味の違いがあるのか、感覚
 としてつかんでいます。それを解説すると上記のようになります。あるい
 は、さらに上に記した4つ星事項につながります。
・「見せる」の動作には、相手に「見る動作をさせる:s動作」ため、本人が「見せ
 る物を提示するために何らかの動作をする:r動作」の2つが必要です。
 それが「seru」のなかに示されて在るのです。
 「着せる、乗せる」にも相手と本人との同時動作を促すように「s」と「r」が付
 いています。(単なる他動詞と見なしてもよいが、深読みで理解が深まる)

・次回には、可能態「える:eru」に向かいます。「r」可能態、「s」可能態にどれ
 ほど迫れるだろうか。

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