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態文法:「態の双対環」でアスペクトも感じとる

2017/01/09(月)

〇「態の双対環」は、
・原形態と受動態の対向関係の軸と、
・可能態と結果態の対向関係の軸を 直交させた「双対環」を想定したものです。
〇「双対環」を文字列表記するときには、簡略のために一行で、
・原形態-可能態-結果態-受動態、の形式で記述しています。
〇「態の双対環」では、4つの態を残さず正確に組み合せたお蔭で、4つの態動詞が
 醸し出す「絶妙なアスペクト」が感じられます。
・それは、動作主体が行う動作の局面を4つの態動詞を使って順次描写できるか
 らです。

 「態の双対環」で表すアスペクト:動作事象の推移を描写する。
〇原形態:動作・行為の中心(出来事、事態そのもの)を表現する。
・可能態:意思的に動作開始できる状態にある。
・結果態:動作の結果状態を表現する。
・受動態:(動作主体が)動作の結果を実績として叙述する。
〇事象の進行局面に沿って態動詞を並べると、(未来時間の流れは右へ)
・可能態動詞:開始→【原形態動詞:事象】→結果:結果態、受動態動詞。
という動作の流れが読み取れる。

例:SMAPの曲「夜空ノムコウ」の主要歌詞:「あれからぼくたちは 何かを信じて
 これたかなぁ」の「来る」で考察してみよう。(~てくる:補助動詞の来る)
①来れる【来る】(来らる)来られる:態動詞によるアスペクト表現を試す。
・来れる:意識として来る動作ができる状態を表現。はじめる段階。
・【来る】:事象:動作種別・来るを明言する。
・来られる:目的場所に姿を表すことが成就すると明言する。
②来れた【来た】来られた:時制が過去・完了のアスペクト表現を試す。
・来れた:意図の動作可能、始める段階だった。ただし、来る事象での動作達成を
 「来れた」で表現することもある。
・【来た】:事象:動作・来るの過去事象を言う。ただし、来る事象での動作終わりを
 「来た」で表現することもある。
・来られた:目的場所に姿を表すことが成就したと明言する。

①来れる【来る】来られる:現在、未来の時制表現、未完了表現。
②来れた【来た】来られた:過去の時制表現、完了表現。
が原則的な並び方だが、現実には事象が完了すると、①と②が意識のなかで合体
して、
①来れる【来る】②来れた、【来た】、来られた、のような表現形式になりやすいと
 推測する。完了を感じたときから②アスペクト側に移ってしまう。

 そう考えると、SMAP曲の「あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ」
には、3通りの歌詞があってもよいわけです。
・「何かを信じてこれたかなぁ」、「信じてきた(の)かなぁ」、「信じてこられたかなぁ」
この3通りの歌詞を想定できるのは、どんな動詞でも起きることです。
例:子音語幹動詞:行くの場合でも同様です。
・「何かを信じていけたかなぁ」、「信じていったかなぁ」、「信じていかれたかなぁ」
つまり、問題が「ら抜き言葉」だけに関わることでなく、態表現の基本問題なのです。
「態の双対環」がすべての態形態を「双対環」に組み合せた構造になっているので
最初から「ら抜き言葉」は母音語幹動詞の可能態として正当に組み入れています。
「ら抜き言葉」を問題にすること自体が間違いなのだ、最初から正当に採用して
いればよかったのだ、との視点に川上さんが立たれたのだと思いたい。

 では、来れる:可能態と、来られる:受動態の選択は、どちらがよいのか・正しい
のか。違いは何か。
この両者の違いについては、大阪人なら即答できるのではないだろうか。
「のり・つっこみ」の要領で考えると分かりやすい。
・可能態:のりで「できる」と心で思いながら「試し行動」をやってみせる。
・受動態:つっこみで、「試し結果が成就する」ことを「明言」する。
 通常、つっこみの受動態は打消し表現なので、「試し結果が成就する」はずがな
 いことを「明言」する形式になる。
つまり、可能態は(個人の)意図として「できる」状態を表現する。
受動態は実行(予定も含め)の結果(見通しを含め)を明言する。相手に対して結
果を明示できることを表現する。
だから、公の場では、可能態を多用して話したら信用されない。「ら抜き言葉」が
悪いのではなく、可能態そのものが「内心の意図の可能状態」を表現するものだ
から、公の場では多用しないほうがよいのです。
逆に、受動態を仲間内で多用すると、自分の実績経験を自慢するように周囲の人
が感じてしまうだろう。

 だから、SMAP曲の「あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ」が表現
する「内心の試しながらの可能性」を感じられて、ぴったりするのでは。

(次回へつづく)

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