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態文法:文語体の態は下二段活用だった

2017/01/26(木)

 前回の終わり部分で提起した項目の周辺事情を考察する。
〇態の「原形態構文と所動態構文の関係」を起点にして文章を区分する考え方を
 整理してみたい。簡単な側面で構文を区分すると、
①原形態動詞とは、能動系「双対環」の原形態や、強制系、使役系「双対環」の原形
 態動詞を総称する概念ですが、原形態動詞を述語に用いて描写する構文を「原
 形態構文」と呼び、「事象叙述文」に相当すると考える。
・自動詞、他動詞、自律動詞、律他動詞など区別しないで、事象生起の根源が原形
 態動詞による動作であると想定する。
②所動態動詞とは、3つの「態の双対環」の原形態を除いた態動詞:可能態、結果態
 受動態の各態動詞を総称する概念で、これを述語に用いて描写する構文を「所
 動態構文」と呼び、「属性叙述文」に相当すると考える。
・「属性叙述文」の中心的な意味領域は、実体の性質、属性を叙述することであり
 動作状態に関与するとしても心理的影響や感覚、感情、習慣などを表現するこ
 とが含まれるだけだろう。
 (態動詞が直接的に感情を描写するわけではないですが)
以上を前提として思考実験に入る。

 言語学の研究で「動詞」については、「目的語を/主語が」を取りうる動詞の存在
に注目する事例もあり、当方も調べ始めています。(ネットから情報論文探査)
〇たとえば、自他同形動詞:
・泥を/がはねる、扉を/がひらく、(自他交替(能格動詞):主語・目的語同一)
・盗みを働く/智恵が働く、(自他交替でない:主語・目的語が不一致)
〇たとえば、「事象表現と動作局面の表現」:疑似自動詞文
・イチゴが売っている、(イチゴを売る:事象が進行する局面表現なら許容内)
・映画がやっている、最新器具が置いている、付箋が貼っている、赤みが帯びてい
 る、更新が怠っている、名前が書き忘れている、など
 特に、疑似自動詞文は、無意識のうちに使用することが多いかもしれない。

〇イチゴが売る時期に、イチゴは売っている、イチゴの売っている、イチゴを売
 っている、イチゴが売られている、などの文章形態でいろいろな文節、連体修飾
 節に使われるだろう。
・「~ている」:動作進行相や、結果相にも利用されるが、本来は区別したほうがよい。
・「~てある」:完了結果相の表現にもっと使うとよいのではないだろうか。
 特に、最新器具が置いてある、付箋が貼ってある、など配置・存在の説明文には
 ピタリの表現になる。(ピタリ過ぎて動きが固定されて、存在感が強くなりすぎ
 てしまうが)

この「~てある」を態形式に引き当てると、結果態、受動態に相当します。
〇無対他動詞を自動詞化するには、自他交替の一手段として他動詞の結果態化、
 受動態化を用いるのが通常の文法的方法です。
・イチゴが売られている、最新器具が置かれる、付箋が貼られる、などの受動態化
 で表現できる。いくぶん意味が窮屈になります。
・映画がやられる、赤みが帯びられる、更新が怠られる、など受動態では(動作結
 果が出た状態だと受け取るから)まったく手が出せる感じがありません。
〇売る→売っている→売ってある→売りてある→売りたり→(態)売る+ある→
 売らる→売られ→売られている、

・「売らる→売られ」で気がついた。
 文語体時代には、「売られ」と受動表現を使えたが、「売る→売れて」と言える可
 能性がなかったのではないか。「売れば、売れども」という已然形の表現ができ
 たから、あるいは「売れて」のような表現があったのか、どうだろう。
〇『徒然草』をみると、「筆をとれば物書かれ、楽器をとれば音を立てんと思ふ。
 盃をとれば酒を思ひ、賽をとれば攤(博打)打たんことを思ふ。・・・」の文が思い
 浮ぶ。
 とれば=取るの四段活用仮定形、書かれ=受動:書かるの下二段連用形、
 立てん=立つの下二段未然形+ん:意思、他動詞:立てるのあつかい。四段仮定
 形+ん:意思?、
 打たん=打つの四段未然形+ん:意思?、と言うことが分かった。
〇古語辞典でも、「立て:下二段、他動詞」、「立ち:四段、自・連用形」との説明がある。
 自他交替の機能:立ち/立て、が四段活用と下二段活用の間で起きているのです
 ね。(だが、『徒然草』ではまだ「売れて」までにとどかないようだ)
 江戸時代になって下二段が下一段へ整理収束していく段階で、自他交替機能と
 同時に「態」としての汎用的な位置付けが確立しないうちに、「立てる」に可能動
 詞としての持味を感じてしまったのだろうか。

〇文語時代の態動詞の動詞活用を調べてみよう。
態の下二段活用:(未然/連用/終止/連体/已然/命令)
・読まる:読まれ/読まれ/読まる/読まるる/読まるれ/読まれよ
・見らる:見られ/見られ/見らる/見らるる/見らるれ/見られよ
・一般式→D[r]ar[]u:D[r]ar[](e/e/u/uru/ure/eyo)
・読ます:読ませ/読ませ/読ます/読まする/読ますれ/読ませよ
・見さす:見させ/見させ/見さす/見さする/見さすれ/見させよ
・一般式→D[s]as[]u:D[s]as[](e/e/u/uru/ure/eyo)
(文語時代では下二段活用を重用して、未然、連用に「e」形を得たようだ)

〇現代口語の態動詞は「e[r]」付き形態なら下一段活用となり、
態の一段活用:(未然/連用/終止/連体/仮定/命令)
・読まれる:読まれ/読まれ/読まれる/読まれる/読まれれ/読まれろ
・見られる:見られ/見られ/見られる/見られる/見られれ/見られろ
・一般式→D[r]are[r]u:D[r]are[r](-/-/u/u/e/o)、
 (未然、連用では[r]を引き去る意味で、-記号を表記)
・読ませる:読ませ/読ませ/読ませる/読ませる/読ませれ/読ませろ
・見させる:見させ/見させ/見させる/見させる/見させれ/見させろ
・一般式→D[s]ase[r]u:D[s]ase[r](-/-/u/u/e/o)
 (未然、連用では[r]を引き去る意味で、-記号を表記)
〇子音語幹の「ある:aru」、「あす:asu」付き形態なら五段(四段)活用となる。
「態の双対環」で扱う結果態(つかまる、受かる)、強制態の五段活用:
・つかまる:つかまら/つかまり/つかまる/つかまる/つかまれ/つかまれ
・受かる:受から/受かり/受かる/受かる/受かれ/受かれ
・一般式→D[r]ar[]u:D[r]ar[](a/i/u/u/e/e)
・読ます:読まさ/読まし/読ます/読ます/読ませ/読ませ
・見さす:見ささ/見さし/見さす/見さす/見させ/見させ
・一般式→D[s]as[]u:D[s]as[](a/i/u/u/e/e)

〇下二段から下一段への収束段階で、「e」、「eru」態接辞が生まれてきた。
 いわゆる可能態:D[r]eruは、Dが自動詞なら「える:eru」で他動詞化/自動詞
 ・可能の二義を持ち、Dが他動詞なら「える:eru」が自動詞化/他動詞・可能の二
 義を持つという(Dの意味に依存した)独特の意味合いなのです。
・「あれる:areru」、「あせる:aseru」など接辞合成では自他交替の機能は起きて
 いません。(可能の意味は残る)

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