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態文法:態の律仕方を伝える1

2017/09/07(木)

 江戸期の国学者・本居春庭(「詞八街」、「詞通路」)の「動詞の自他」説明に記述さ
れた独特な考え方に強い魅力を感じたことがある。
態文法を考える上で「受動-能動-使役」が直線状態でなく、平面状態なのだと気
づく手掛りにもなった。
例:「動詞の自他」説明:(文法辞典引用)
①おのずから然る、みずから然(す)る、 ②ものを然(す)る、 ③他に然(す)る、
 ④他に然さする、 ⑤おのずから然せらるる、 ⑥他に然せらるる。
改めて文法辞典での解説文で①~⑥を見ると、不満な点も見えてくる。
→「然る:そうである」そのものが現代人には分かりにくい。
 「然る」自身の派生:然る/然する/然りになる/然りにする/然さす/然りに
 させる/然りにさせらる:などを曖昧に使っていては、意味の曖昧さを克服で
 きない。
〇また、先行研究として『三上章は「能動」「所動」概念の説明』で、次のような動詞
 区分を記述した、と寺村秀夫『日本語のシンタクスと意味(1)』にある。
引用:(三上章が「能動/所動と受身」を自・他動詞の区分(権田直助記述)と対比)
 能動詞→直接、間接受身=他動詞(コワス、作ル)←ものを然する(権田直助) 
 能動詞→×、間接受身のみ=自動詞(死ヌ、泣ク)←みずから然する(権田直助)
 所動詞→×、×受身なし=自動詞(アル、要ル)←おのずから然る(権田直助)
 自動詞のなかには受身にならない所動性の動詞もある。(要約:引用終わり)
→能動/所動の概念は重要なのだが、動詞は自他交替、態派生、相派生の操作に
 より簡単に能動→所動、所動→能動が瞬時に入れ替るのだ。
だから、「おのずから然る/みずから然する/ものを然する」などと悠長に思考し
ていられない。

★「態の双対環」文法では、動詞の動作の仕方を識別する言葉として「律する」を
 選定した。
〇国語辞典:律する:①さだめる、きめる②ある規律にあてはめて処置する。
→解釈②の「ある規律」とは、物の道理、事の道理、人の道理、自然の摂理などを
 引き当てることで、それを行動基準として「律する」のだと理解できる。
★態動詞の動作の仕方:一般式=動詞語幹:D+[挿入音素]+態接辞
①能動原形態:D[・/r]u→動作:Dを「自律」でする。(自・他動詞ともに)
②可能態:D[・/r]e[r]u→動作:Dを「互律」でする。(主体・客体が互いに)
③結果態:D[・/r]ar[]u→動作:Dの「果律」がある。(結果が主・客に)
④受動態:D[・/r]are[r]u→動作:Dの「果互律」がある。(結果が主・客全体に)

⑤強制原形態:D[・/s]as[]u→動作:Dを「律他」する。(他に自律:Dをやらす)
⑥可能態:D[・/s]ase[r]u→動作:Dを「律他互律」する。
 (他に自律:Dをやらせる。互律付きだから、主体が他に介助、手助けするも可)
⑦結果態:D[・/s]as[]ar[]u→動作:Dの「律他果律」がある。
 (他に自律:Dをやらす結果が主・客を律する)
⑧受動態:D[・/s]as[]are[r]u→動作:Dの「律他果互律」がある。
 (他に自律:Dをやらす結果が主・客全体を律する)

⑨使役原形態:D[・/s]ase[r]u→動作:Dを「律他互律」する。
 (他に自律:Dをやらせる。互律付きだから、主体が他に介助、手助けするも可)
⑩可能態:D[・/s]ase[r]e[r]u→動作:Dを「律他互律・互律」する。(使役互律)
 (他に自律:Dを使役させるのが可能:道理に適う)
⑪結果態:D[・/s]ase[r]ar[]u→動作:Dの「律他互・果律」がある。(使役果律)
 (他に自律:Dを使役させる結果が主・客を律する)
⑫受動態:D[・/s]ase[r]are[r]u→動作:Dの「律他互・果互律」がある。
 (使役果互律:→使役受動と呼んで「律他互・果互律」と分析できるだろうか)
 (他に自律:Dを使役させる結果が主・客全体を律する)
→以上の①~④、⑤、⑨、の律仕方が重要な概念を持っている。

★もう一つ、「無律」という概念があります。古語では「ク語法」と呼んだ派生法で
 江戸期でも使用例が少なってしまい、誤解釈もあったようだ。現代の使い道は
 無律接辞-ak-で脱動詞概念名詞(曰く、老いらく、願わくは)などの派生や、
 [挿入音素]に転用して、挿入音素:[k]の形態で動詞(寝かす、笑かす)、形状動
 詞の派生(tanosi[k]ereba、rasi[k]u[+]na[k=0]i)などに活躍している。
→「然る:si[k]ari,si[k]ar[]abaの転用」自体にも人知れずに活躍する。
 ([挿入音素:k]転用の解釈は当ブログ発案の用法だが、有用性の高い仮説だ)
→現代でも「無律」が使われる理由は、「自律」「律他」の識別を意図的に無効化し
 たい場合に役立つし、有用であるからだ。
例:赤児を寝さす:親の「律他:指示動作」で赤児に自律動作をさすのは無理だ。
 つまり、赤児の「自律」動作が心もとない状態を斟酌すべきだから、別表現で
 :赤児を寝せる:「互律」感が効くが、「物を横にする」表現とも解釈できる。
 :赤児を寝かす:(ne[k]as[]u)「無律化」した動作をやる→単純な他動詞化へ
  変換できたから、親の「自律」動作だけで「赤児を寝かす」と表現できる。
 :赤児を寝かせる:(ne[k]ase[r]u)親の「自律・互律」が明確になり心理的にも
  ぴったりの表現。(赤児は自然の摂理に従うだけの互律動作でよい。親が添い
  寝してもよい)
互律の例:ついでに「可能態=互律」を解釈する。
 :彼は英語が話せる:互律で「話す」→彼と英語が互に言語法則に則り「話す」動
 作をする。
 :彼女はピアノが弾ける:互律で「弾く」→彼女とピアノが互に音楽の道理に則
 り「弾く」動作をする。
 :窓ガラスが割れる:互律で「割る」→何かがガラスと物理反応を起こし「割る」
 動作をする。(自然の摂理に従い「割れる」、と考える手もある)

→日本語は動作の律仕方について以上のような細かい心理描写を込めて発話す
 るし、おそらく他のアルタイ諸言語でも同様な派生描写を行うのだろう。
〇律仕方を身につけた後は、能動態(=自律)、可能態(=互律)、結果態(=果律)、
 受動態(=果互律)、強制態(=律他)、使役態(=律他互律)、と態名称を聞いたら
 カッコ内の(律名称)が思い浮ぶようになってくると心強い。
〇律仕方を考えるとき、自動詞/他動詞の区別は不要であり、自律動作か/律他
 動作かの区別をはっきりと表現しようとする意識が大事だ。

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