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態文法:態文法を組み上げる5

2017/12/10(日)

2.自他交替派生と態派生
 動詞を生み出す法則のなかで重要なものは、まず、動作表現の種類を十分に増
やすことだ。動詞を生み出すには、「自他交替派生」と「態派生」という2つの派生
法則がある。

2-1.「自他交替派生」とは:
 一つの原動詞から「有対」になる自動詞/他動詞の対を生み出すために、特定の
 機能接辞を連結して派生する法則をいう。
〇有対動詞の例:休む→休める(自律)/休まる(自発・果律)、動く(自律)→動か
 す(自律・律他)、割る(自律)→割れる(自発・互律)、移る(自律)→移す(自律)、
 見る(自律)→見せる(互律)、
 (日本語では自他交替派生で有対動詞が多く、機能接辞にもなじみが深い)
→有対自動詞/有対他動詞:動詞語幹に特定の機能接辞を連結して対応する自動
 詞もしくは他動詞を派生する。(自動詞化接辞/他動詞化接辞、変化接辞などの
 機能接辞がある)

 なお、動詞のなかで有対でない「無対動詞」や「両用動詞」もある。
〇無対自動詞/無対他動詞:意味の上で対となる他動詞や自動詞が不必要な動詞
 で、「無対動詞」として扱われる。 もし、どうしても必要ならば、使役・受動の態
 動詞を援用して表現する。
例:歩く(自律)→歩かす(強制態・律他)、読む(自律)→読まれる(受動態・果互律)、
 (態の機能接辞も自他交替接辞に由来する)
〇両用動詞:それ自身が自動詞、他動詞どちらにも使われる。
例:ひらく(自律)、とじる(自律)、わらう(自律)、

2-2.「態派生」とは:
 動詞の行為者が自己の意思で自ら行う動作を「自律動作」とすれば、自動詞・他
動詞ともに一括して「自律」動詞と見なせる。
一方、行為者が自己の意思で他者に行わせる動作を「律他動作」と名付けるとし
て、たとえば、「強制的(命令、指示、許可)に相手に動作をやらせる」事態は日常
生活で起りうるし、多くの動詞を「律他:強制・使役」的に造語派生したい。
つまり、行為態度(意図識別:自律/律他など)を明示するための文法則として、
原動詞の語幹に「態」機能接辞を連結して態動詞を派生させる方法を用いる。
→態の接辞には、行為態度(自律/律他)のほか、各種の機能があり、動作可能(互
 律/自発)、動作結果(果律/果互律:受動)などの識別に利用される。

★行為者の視点で動作態度を語るとき、
→「自律動作」には、自ら実行する自動詞と他動詞が含まれる。
 「律他動作」には、他者に実行させる強制動詞と使役動詞が含まれる。
 (行為者が律他の意図を発し、被強制者はそれを受けて「自律」動作をする)
 の3つの態:能動態/強制態/使役態に区別できる。
〇「動く」の他動詞/強制態動詞:「動かす」などは、動作に関与する登場人物の役
 割により「自律/律他」が交差する。
・机を動かす(意図者=行為者:自律・他動詞/対象物:動作受容)、
・担当者を動かす(意図者:律他/担当者:自律・自他動詞)
 (担当者は命じられた事柄を解釈して自律動作をする)
〇もちろん、担当者を動かす:担務替え、配置替えの場合ならば、意図者の自律・
 他動詞の動作であるかもしれない。
→「自律か/律他か」解釈が交錯するのは、被動作者が対象物(無情)なら他動詞
 に解釈されるから問題ない。ところが、上記のように対象が担当者(有情)だと
 他動詞(自律)か、強制態動詞(律他)か、事例ごとに検証が必要になる。
★上代の動詞造語の知恵を顧みるとき、
 「律他」動詞を単純な「対他(有情)他動詞」へ変換させる機能を持った接辞を使
 っている。その機能接辞は「無律接辞:ak-」であり、古語での「ク語法」という用
 法だ。残念ながら現代口語では文法的な説明がほとんどないが、単語としては
 現役ばりばりなのだ。
・「甘えさせる」:amae[s]as[]e[r]u(律他)を推奨せずに、
 「あまゆ」:amayu(自律)→「あまやく」:amay[]ak[]u(甘えるの無律化)→
 「あまやかす」:amayak[]as[]u(無律対他・他動詞化)が意味明瞭である。
・「おびえさせる」:obie[s]as[]e[r]u(律他)を推奨せずに、
 「おびやかす」:obiy[]ak[]as[]u(無律対他・他動詞化)が意味明瞭である。
・「わらわす」:waraw[]as[]u(律他)よりも「強烈・強引な笑い取り」を表現する
 には、「笑わかす」:wara【w[]a】k[]as[]u(次第に【w[]a】が省略されて)→
 「笑かす」:wara[k]as[]u(無律対他・他動詞化)が使われる。
 (対他が自律で笑うのではなく、対他に有無を言わさず笑う動作を行わせる)
・「寝さす」:ne[s]as[]u(律他)は対他の寝る(自律)をさせること。
 「寝かす」:ne[k]as[]u(無律対他・他動詞化)は対他(無情の赤児)・対物を横た
 わらせること。
・「だます」:damas[]u(自律・他動詞)だが、相手は(自律)で自己思案するうちに
 間違った判断へ到達する(ように誘導する)。
 「だまかす」:dama[k]as[]u(無律対他・他動詞化)は、相手に(自律)冷静な判
 断をさせないように大げさに話しを盛って間違わせること。
 「だまくらかす」:dam[]ak[]u[r]ak[]as[]u:余程の複雑なだまし手口だ。
・「散る」自動詞の事象をふくらませて、「散り積む概念=散らく」:tir[]ak[]u→
 「散らかる」:tir[]ak[]ar[]u(結果動詞・果律)、「散らかす」:tir[]ak[]as[]u
 (無律・対物他動詞)が生み出された。
・「ずる、ずるい、ずるける」→「ずらく=ずる行為の概念化」:zur[]ak[]u→
 「ずらかる」:zur[]ak[]ar[]u:サボって逃げ出す、姿を隠す(自律)が現代国語
 辞典に載ってある。(だが当然、紛らわしい「ずらかす」:zur[]ak[]as[]u:は通
 用しない。無律・他動詞(自律)の「ずらかす」が意味するところは、行為者自身が
 「ずらかす」動作を全部やり遂げなければならないからだ。つまり「ずらかる」と
 同じことをやり遂げなければならないからだ。どうしても言いたいなら「ずらかる」
 を「ずらからす」(律他)と言えば通じる)
〇無律接辞:ak-は、汎用的に使い回せる機能接辞ではないので、自ら造語派生
 する機会はないでしょうが、文章、単語の中で見つけ出したらこの解説を思い
 出してください。

つづく

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