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態文法:未然形はあるのか?1

2018/03/02(金)

 日本語動詞の活用法で疑問点にあげるべきものの筆頭は、「未然形」の可否、
正否だろう。
まず準備を兼ねて、活用形の全体に注目してみよう。
〇学校文法や国語辞典では、動詞活用を「かな音節で解析」するから、
実例:(各「活用形の形態素」は語尾のカタカナ部分を除いた「・」前までで示す)
・子音語幹動詞:書く→未然:書か・ナイ/連用:書き・マス/終止・連体:書く・
 /已然・仮定:書け・バ/命令:書け・。 (カ行四段活用)
・母音語幹動詞:食べる→未然:食べ・ナイ/連用:食べ・マス/終止・連体:食べる・
 /已然・仮定:食べれ・バ/命令:食べろ・。 (バ行下一段活用)
という活用形式を示す。
〇ここまでの説明ならば、慣用的に「活用形:未然・連用・終止・連体・已然・仮定
 ・命令」を理解できるし、また、活用形の並び方を検証すると「未然:動作未満、
 打消/連用:動作進行/終止・連体:動作事象化/已然(仮定、命令):動作着手・
 敢行、動作指示、命令」という「動作事象の実行局面を順番に描写する相・アスペ
 クト感覚」が伝わってくる。(←当方の得心だが、一般論で成立するか不明)
〇さらに「活用形の概念」が優れているのは、「活用形の末尾」に後続の詞・辞を連
 結できることを示せる点です。膠着語の特長は単語末に助動詞、接続助辞を連
 結して意味を深めていけるから、学習の場での演習には効果があるだろう。
実例:ここは都合のよい例だけを示す。(態動詞の生成を含めない)
・未然:書か・ズニ、食べ・ズニ、書か・ヌ、食べ・ヌ、(既出:書か・ナイ、食べ・ナイ)
・連用:書き[+]オワル、食べ[+]オワル、書き[+]タガル、食べ[+]タガル、
 書き[+]ナガラ、食べ[+]ナガラ、(連用形:用言などに複合[+]連結する)
・連体・終止:書く[+]方法、食べる[+]方法、書く[+]ノダ、食べる[+]ノダ、
 (連体形、終止形:体言、断定辞に複合[+]連結する)
・已然:(敢行可能)書け・ル、食べれ・ル、(敢行条件)書け・テモ、食べれ・テモ、
・命令:(敢行指示)書け・(ヨ)←(e・【[y]o】)、食べ(れ・ヨ)ロ←(r【e[y]】o)、
★已然形:動作の着手、敢行の状態相と解釈したので、仮定・命令の深層意味を
 持つと表現した。残念ながら学校文法や国語辞典の説明と異なるが、文法構造
 を維持したまま、「食べれ・ル、見れ・ル、来れ・ル、」などを正当な可能態動詞と
 して「派生(造語)」できる、という特長がある。(下一段化で定着している)
★→同じく未然形にも大きな特長:「派生(造語)」機能を秘めている。
 ①未然形が連結する接尾辞は、ナイ、ヌ、ズ、マイ、など助動詞である。
  (連用形、終止・連体形、仮定形、命令形に連結する辞は、「ウ、ル、ロ、れ、など
  文法的統括辞」とか、比較的緩やかな複合[+]連結でつながる体言・用言・断定
  辞とか接続助辞:バ、テモ、である。 つまり、連用形~命令形はその形態だけ
  でも意味に一定の自立性があり、後続に複合[+]連結でゆるく接続できる)
 ②未然形は、助動詞(特定の機能を持った接辞)と密結合(派生・造語の一般法則
  に相当)することで動詞活用の新しい意味・方向性が決る。
  つまり、動詞活用表の未然形は、動作相・アスペクトの位置づけとして「事象生
  起の前段階の概念」を描写する役割を担わされるが、「未然形のあ段音」語形が
  必然的にその意味を決めているわけではない。
  (態接辞が密結合し態動詞が派生することを「未然形に接続した」と解釈する
  のはあまりにも無茶だ)

 未然形の概念定義をもう一度検証する。
〇未然の概念として「動作をしない、していない、これからしよう」などの動作相
 を描写する、と狭義に解釈しているならば、問題は(陰に隠れて)現れない。
実例:(動作しよう、動作しまい、など事象生起の前での意思・推量を描写する)
・動作の意思:(動作しよう、との意思・推量を描写する)
 (文語体)未然形:書か・ム、食べ・ム、 (派生解釈:D[a/・]m[・]u)
 (口語体)未然形:書こ・ウ、食べ・ヨウ、(派生解釈:D[・/y]ou)
・打消の推量:(動作しないだろう、との意思・推量を描写する)
 未然形:書か・マイ(カ)、食べ・マイ(カ)、 (マイカを付けて逆説の動作勧誘を
       表すことあり) →(派生解釈:D[a/・]mai)
 終止形:書く[+]マイ、食べる[+]マイ、 (言い切り表現)
      →(派生+複合解釈:D[・/r]u[+]mai)
・動作の未然仮定:(未然の動作仮定を条件に描写する)
 (文語体)未然形:書か・バ、?食べら・バ、→(派生解釈:D[・/r]a[+]ba)
       ←:a・ba-の「a」を機能接辞と認める根拠がない。(定着していない)
 (口語体)已然・仮定形:書け・バ、食べれ・バ、→(派生解釈:D[・/r]e[+]ba)
      →已然・仮定形は(未然の概念から外れて)既然状態の条件を想定する。
      ←:e・ba-の「e」を已然の「機能接辞」と認める根拠がある。(定着)

★一方、広義に解釈する未然形は、使役態や受動態の接辞と連結するとも規定さ
 れ、「事象未然の動作相」を遙かに超えた概念に変ってしまう。
→「全然形」とでも命名すべき活用形式の概念だろう。
 全然形→自他交替派生/態動詞派生/未然形(未然打消・未然推量・未然勧奨)
 派生、などを含む広範囲な概念になる。
 当然、文法学者は態接辞を未然形の枠(助動詞の枠)から外して、態動詞として
 独立させるべきだと主張する方もいる。 その説に賛成だが、現代の文法界でも
 百家争鳴である。
〇なぜ、単語創世時代のような「未然形=全然形」が続いてきたのだろう。
 古語辞典の見出し語の五十音各行「う段」(助動詞語尾)を眺めてみよう。
実例:(機能接辞:ak/ah/am/ay/使役:as/受動:ar、で「a付き」ばかり・・)
・く:ak-:ク語法(動詞概念の名詞化、無律化):願わく・は、老いらく、散らく→
 散らかす:→(未然+く/らく:異形態)←(派生解釈:D[・/r]ak[]u)
 (古代上代までか)派生原理が浸透せず:のぞまく(正)、のぞむらく(誤)、混在。
・つ:[i]tu:完了→現在の完了[i]ta:→(連用+た)
・ぬ:[i]nu:完了→上段「た」に収束し現在口語に使用なし
・ふ:ah-:動作継続、反復:住まふ、語らふ、戦ふ:→(四段未然+ふ)単語化
 ←(派生解釈:D[・/r]ah[]u、汎用性なしか:?書かふ、?食べらふ、?見らふ)
・む:am-:意思、推量、勧誘:→(未然+む/む) 前段に解説済
・らむ:ram-:現在の推量(離れた場所から心配する):→(未然+らむ/らむ)
・ゆ:ay-:可能、自発:→(未然+ゆ/らゆ:異形態)←(派生解釈:D[・/r]ay[]u
 :古語・いわゆる、あらゆる、単語化・見ゆ、聞こゆ→見える、聞える)
★上例の古語辞典「う段」接辞のごとく、「a」始まりの機能接辞が多く、また、態接
 辞:ar-/as-も含まれてしまう。これらの接辞(a*-)で派生する一般形式は、
→母音語頭の接辞に対する動詞派生一般形式:D[・/r]a*[]u、(自律動作)
 強制態や使役態の派生では、D[・/s]as[]u、D[・/s]as[]e[r]u、(律他動作)
 となる。
→子音語頭の接辞:naiで未然形を派生する一般形式:D[a/・]na・i、となる。
〇このように、古代上代の派生法則では、機能接辞で意味構造が決る動詞活用に
 対しては、活用語尾が四段:「あ段」音/一段:「ら」音、「さ」音、「無:D語尾」音、
 という暗黙の文法則があったのだろう。活用語尾がこうなる動詞形態を未然形
 と(江戸期に)命名したとみえる。(江戸期の文法書でも「かな音節」解析が反映
 するのだろう)

つづく

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