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態文法:未然形はあるのか?3

2018/03/16(金)

 前回の後段で、『岩波古語辞典机上版』:大野晋・佐竹昭広・前田金五郎:1982/
11/12の巻頭の凡例に書かれた「ク語法」の具体解説に対する感想を記した。
改めて、大野晋:「ク語法」解説にある論理手順を検証する。
①ク語法の接辞:aku、の解釈:「すべからく:するべきコト」のごとく、~コト、~
 トコロ、など動名詞化の機能であり、名詞扱いできる。あこがれ:語源→アク:場
 所、ガレ:離れる、を想定し、アクの二文字を名詞と見なす。
②奈良時代に多用された「有らく、老ゆらく、語らく、来らく、すらく、」をみると
 、未然形に「ク」接続でなく、連体形に「アク」接続するという解釈が実態に適合
 する。 (連体形~(r)u:+aku→~(r)aku、に母音結合変化するから)
③造語の場合、単語と単語の複合つなぎの例が多く、母音の重なりが一音に変換
 されて連結する。(u+a→a、i+a→e、など)

→★手順骨子を記憶から抜き書きした。①~③全体は古語時代を読み解く論理だ
 が、ただ一つ、現代でも共感できる視点は、②未然形に「ク」接続でなく(未然形
 接続が通用しないから)別の道が必要だ、という指摘である。
・未然形に「ク」接続とは、一般形式:D[a/・]ku:で表記する形態である。
 「曰く、すべからく、語らく、」の四段活用動詞には成立するが、二段・一段活用
 の「有(あ)らく、見らく、すらく、老いらく」の説明根拠に未然形は役立たない。
・連体形に「アク」接続とは、現代では一般形式:D[・/r]ak[]u:で表記する形態
 である。(上代の二段活用では終止形と連体形が異なる形態だった)
・「かな音節解析」では、接辞を「アク」と見なしても、未然形に(ア)が取られて、
 残りの(ク)が接辞となる。また、二段・一段活用に対しては(ラク)が異形態の
 接辞になる。つまり、(ク)と(ラク)の二形態の使い分けが必要となる。
・「ローマ字解析」で一般形式を正確に理解して使い分けできないとすれば、現状
 でも、(ク)と(ラク)異形態の混乱が起きる。
正誤例:現代口語として正誤が混在している。
 (古語)〇惜しけく:wosikeku ← wosiki+aku、
 〇惜しまく、 ×惜しむらく   〇望まく、 ×望むらく
 〇思はく(思惑は当て字)、 ×思うらく、(×?思えらく) 
 などが、間違い形態のままで(文語文法の丸写しで)国語辞典に載っている。
(善くも悪くも大野古語辞典には啓発される。後に続く方々に現代口語文法への
 解釈改訂を期待したい)

→敢えて改訂に向けて、古語解釈の論理を見直すと、
・古語辞典の凡例手順①「アク」が動名詞化の接辞であり、②未然形でなく、連体
 形に、③[+]複合語的に連結する、との論理構成は、現代の終止形・連体形の共
 通化時代に適合しない。
→★正しいと信じる新手順を提示する。(ク語法の現代的解釈)
・新手順①機能接辞:ak-:動作主体の動作意識を無意思化=無律化する機能。
・新手順②終止形態(語幹)に派生(密結合)接続する:一般形式:D[・/r]ak[]u:
・新手順③(態接辞と同様に)新手順②に従って動詞派生(密結合)し、次の二次
 派生に備える。
★実際にク語法・現代解釈による派生の仕方を新手順に従って習ってみよう。
〇無律化動詞の例:一般形式:D[・/r]ak[]as[]u、D[・/r]ak[]ar[]u、:
・あそばかす:asob[]ak[]as[]u:「若君を遊ばかし奉るほどに」<今昔>
 強制態:遊ばす:asob‐as‐u:の意味構造を分析すると、
 →主体は律他動作(指示するだけで放任する、遠隔指示するだけ)、
 →客体・若君は自律動作(指示を受けて具体行動を自律で行う)、
 つまり、「若君を遊ばす」の表現では、主体が放任の律他動作を若君にする
 と見なされる。 それを避けるために、
・動作の無意思化=無律化:asob‐ak‐u:遊ばく:遊びの概念化、を活用して、
 無律事象の他動詞化:遊ばかす:asob‐ak‐as‐u:主体が主導して自律動作する。
 →主体が自律動作で、客体の若君に対して遊びを勧奨・誘引して手助けする、と
  の意味構造に仕立てて派生造語する。
(現代語の使役態「遊ばせる」は敢行可能形なので、律他互律(手助けあり)で、
 放任の「遊ばす」よりも相互動作があると見なされる。自覚やありか?)
・あまやかす、おびやかす:amay[]ak[]as[]u、obiy[]ak[]as[]u、:
 「あまえさす、おびえさす」では、相手の自律動作のままに放任(律他)する、の
 意味に取られる。 そこで自律動詞:「あまゆ、おびゆ」を「あまやく、おびやく」
 と概念化したうえで、他動詞:「あまやかす、おびやかす」と派生造語したもの。
→他動詞ならば、動作主体が自律動作で対他・相手を律する、と表現できる。
・ちらかす、ちらかる:tir[]ak[]as[]u、tir[]ak[]ar[]u、:
 散る:という事象現象を無意思化・無律化する→「散らく」:これを他動詞化する
 と→「散らかす」:また、散らく状態になる結果を「散らかる」:と表現する。

〇無律化動詞への派生原理を習う:
 無律転換の表記:律他:D[・/s]as‐u→無律他動詞化:D[・/r]ak‐as‐u、
・強制態(律他):寝さす、笑わす、たぶらす、やらす、:放任?で相手が自律動作。
 無律他動詞化:寝かす、笑わかす、たぶらかす、やらかす、:相手を律する動作。
 ne[k]as‐u、wara【w‐a】k‐as‐u、tabur[]ak‐as‐u、yar[]ak‐as‐u、
 赤児を寝さす、でなく「寝かす・寝かせる」(赤児に任さず自律互律動作で律す)
 両者の了承事項を「やらす」、一方の勝手自律で「やらかす」。
 相手に任して笑わすは序の口、格段に強烈な仕掛けで笑わかす、笑かす(無律・
 無意識で笑ってしまうように工夫し敢行する)
〇無律他動詞化は、敢えて、主体が主導権を持って事象を律する(客体の自律動
 作を規制する)という強制優先動作の構造にする、という工夫であり、それを古
 代、上代から実行していた語法なのだ。
〇無律化接辞:ak-は汎用的に応用が利くわけでないが、強引な使い方もある。
・だます→だまかす→だまくらかす:damas‐u→dam‐ak‐as‐u→dam‐akur‐ak‐
 as‐u、
・また、無律化したその動作結果を表現する方法もある。
 おそらく:osor‐ak‐u、ク語法を近代の造語に生かしたものだろう。
→ずる:zur‐u→ずらく:zur‐ak‐u→ずらかる:zur‐ak‐ar‐u、:さぼりや悪事をし
 て、その場から姿を消して、行方をくらました結果を言う。
・「ずらく:ずらかる」、「ちらく:散らかる」のように、概念化の際に「ずる」「散る」
 :原動詞の動作が引き起す事態を含み込んだ情景として動名詞化をすることも
 あるから、派生した動詞も意味が膨らんで来る。

〇現代口語文法がク語法の「無律化」機能を正しく解釈・説明していないと感じて
 いる。 また、「態接辞」も未然形に接続するのではない、に該当する。

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