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態文法:日本語を研究するための道具4

2018/05/03(木)

 日本語の研究道具連載を締めくくるための補足的道具について記述する。
前回、任す/任せる、の意味・機能を対比しての独自の考察を記したので、世間の
用法と合っているのか、違っているか、ネット情報を検索してみた。
 中でもすぐに目に付いたのは、
〇松下電器創業者・松下幸之助の名言「任せて任さず」・・・(独自考察と合致例)
という検索情報が複数件ある。
また、この名言を引用しての個人記事の検索事例も多くあり、
〇検索事例:「任せて任せず」、「任せっぱなしはダメ」、「任して任さず」・・・など、
名言をうろ覚えなのか、任す/任せるの違いが判らないのか、どちらだろう?
〇国語辞典の「任す、任せる」の説明:ほとんど他動詞的な例文が多い。強制、使役
 の意味付けがなく、「相手に任して放任する」のが「任す、任せる」だという印象
 を持ってしまう。(任す=放任ではない。命令服従・任用服務・指示工夫・許可裁量)
→せっかくの名言:「任せて任さず」の深層心理や深い意味を理解するのは、今の
 ところ少数派らしい。

 実際の言語活動で短い一言の深層心理を理解するには、基本の道具①~道具③
を使いこなす「頭の回転力」が必要で、それが補助的道具④だと言えるだろう。
(1)日本語動詞の活用は、古代から現代への変化・変遷があるものの、比較的連続
  性が保たれてる。 「係り結びや、候文、奉る文」は消滅していったが、残った形
  態素に連続性を見出すことが重要だ。 動詞の四段活用などは古代から現代ま
  で基本的に不変である。 (不変の四段活用に対して、二段から一段へ変化を
  した必然性を感じ取れるだろうか)
(2)動詞活用は、動詞語幹に機能接辞(接辞や助動詞)が密結合して派生・造語さ
  れる。造語法則を身につけ、単語内の機能接辞を見つけ出せることを目指す。
(3)見つけ出した機能接辞を意図的に特長を強調して(他と区別して)意味付け
  する。(接辞発見の練習には自他交替接辞、態接辞を抜き出すのが効果あり)
(4)国語辞典では、任す/任せる、の意味の違いを説明するものは少ない。どちら
  かを説明し、他方の見出し語では既出の説明を参照させる印を付す。
  mak[]as[]u/mak[]as[]e[r]u、で接辞:as、e、as‐e、などの形態素に対す
  る意味付けの注意喚起がない。 個人の知識に任してしまう。
(5)要するに、道具①~③までを上手に使う道具④を働かせなさいということ。
  (接辞の連結を見つけ出す道具①~③を使えるように、まず練習が必要だが)
  学校文法や国語辞典には規定概念のしがらみが多いし、専門家には道具④の
  働き方は規定概念に長く浸かってるので、知識の再整理をした後を期待した
  い。

→★松下電器創業者・松下幸之助の格言「任せて任さず」・・・道具④を意識して、
 深層心理を解読しよう。
〇「任せて」は、2通りの発生源がある。
・任す:①任さず、任し、任す、任す、②任せて、任せ、の五段活用已然・仮定形、
・任せる:③任せず、④任せて、任せる、任せる、任せれて、任せろ、の一段連用形
★当然、②任せて(任すの已然)、④任せて(任せるの連用)は形態も意味も同じ。
 また、打消の①任さず、は(任すの打消)が発生源であり、他にない。
 つまり、松下名言は「②④任せて①任さず」という構文である。
〇②mak[]as[]e[]te、④mak[]as‐e[]te、:任せて、には接辞:asと:eの2つが
 連結してるから、「律他互律」の動作である。
〇①mak[]as[a/・]zu:任さず、には接辞:asと:zuの2つが連結してるから、
 「律他・打消」の動作である。
→②④任せて:律他互律:上司が部下に(任務を)指示して、部下は指示に則り
 自律動作(で任務を)する(←律他:as)。 (互律:e→)完遂(成就可能にする)の
 ため必要なら上司は部下を手助け(改善、助言)する。
→①任さず:律他打消:指示して他者に服従自律動作をさす(←律他:as)、ことを
 (打消:zu→)しないでいる。
★名言「②④任せて(律他互律)①任さず(律他打消)」は、律他が打消されて互律
 だけが残る:完遂に向けて互に助け合いなさい、(経営者は部下に任しっぱなし
 ではなく、常々注目して手を抜かないことが大事)ということ。
・因みに、「④任せて(律他互律)③任せず(律他互律打消)」句では、同一の「任せ」
 が打消されて何も残らない無意味な構文だと分る。
 (「任して任さず」無意味な文、「任して任せず」→互律打消が残り最悪な格言)

→★任す/任せるの例:「す」語尾の動詞に対する考察:
・他動詞/使役、強制/使役の関係になる動詞は、接辞:e‐、e[r]uが連結して
 ②D[・/s]as[]e[]te、④D[・/s]as‐e[]te、のような活用が使われる。
 両動詞ともに「互律」:動作完遂をめざす意味を含む能動性を示す。だから、連用
 形として、「任せ・っぱなし、任せ・ながら」の用法が辛うじて成立する。
〇特に強制/使役を派生する動詞は、「任して/任せて」形式で使われることが多
 いので、「揺れのある表現」である。
★任すの連用形で「任し・っぱなし、任し・ながら」というのは正当な用法で清雅
 な表現である。避けたい言い方:「任しっぱなし」なのに、完遂したら「任せてた
 から」と言うのは見苦しい。
・果す/果せるの例:他動詞/他動詞可能態で、動詞自体が完遂動作を意味するの
 だが、「果せ・っぱなし、果せ・ながら」は不自然な表現となり、次に述べる一般
 的な可能動詞と同様の扱いとなる。
〇「行ける、書ける」の可能態(所動性)の接辞:e‐、e[r]uは「互律」の意味を持つ
 が、この連用形:「行け・っぱなし、書け・ながら」の表現には抵抗感がわく。
 (自動詞の自律・連用「行き・っぱなし、書き・ながら」が自然な用法)
〇抵抗感が生じる同様の例:走れ・ながら、歩け・っぱなし、見れ・ながら、食べれ
 ・っぱなし、渡せ・ながら、泳げ・っぱなし:可能態・可能動詞は能動性が減じて、
 動作完遂相の表現に近づくから、進行相(~ながら、~っぱなし)に戻ると抵抗
 感が強くなる。(互律=動作完遂に向かう意欲+相互介助・好条件整備)
〇また、「折れる、割れる」の自発態にも接辞:e‐、e[r]uがつき、「互律」の意味を
 持つが、物理法則との互律だから、連用形で「折れ・っぱなし、割れ・ながら」も
 自然な用法に感じる。(動作相・アスペクト変化も生じてる)
 (折り・っぱなし、割り・ながら、も他動詞の自律・連用で自然である)

 態の接辞の一つ一つを識別し、律仕方を接辞一つ一つに対応させる考え方を
採用したので、接辞が連続した文章を読むときに誰でも動詞の接辞を分解できる
ようになり、接辞が違えば意味解釈に差がつくことを理解しやすくなるだろう、
と期待している。
完遂。

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