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態文法:哲学でする動詞活用5

2018/09/02(日)

 現代動詞活用法のなかで用法が揺れている?もう一つの問題を考察しよう。

8.(正然)連用形と(已然)連用形を使い分ける
 国語学者のなかで動詞活用の揺れ問題と捉える方々がある。
〇他動詞を使うか、使役動詞を使うかの用法が揺らいでいる、ということ。
実例:任す:他動詞、任せる:使役動詞、の使い分けについて
 ①その件は彼に任してある。(←清雅な表現ではない:国語学の評価)
 ②その件は彼に任せてある。(←こちらが清雅な表現:国語学の評価)
→当態文法の視点からは、何らの問題でもなく、①任す②任せるの両者の意味の
 違いが表現された文章だと捉える。 清雅であるかないか、ではなく、意味の違
 いをしっかりと講釈してほしい。
 (理由なく「任して」を避けて、「任せて」を優遇するのは筋が通らない)
〇この実例の動詞については、ひとつだけ補足しておく。
・古語:任く:mak[]u→任す:mak[]as[]u→任せる:mak[]as[]e[r]u、とい
 う単語派生の流れが想定できる。
・任す:対人他動詞→強制態動詞とも解釈でき、律仕方は律他動作を表す。
・任せる:使役他動詞→強制+e[r]u(已然接辞、可能態接辞)で、律他互律動作と
 解釈する。
 →すでにこの実例については、態文法:日本語を研究するための道具4のなかに、
 (部分:松下電器創業者・松下幸之助の名言「任せて任さず」)で詳細に説明して
 あるので、省略する。 用法に揺れはない。

 この問題を一般形式で表記すると、
〇強制:D[・/s]as[]uと、使役:D[・/s]as[]e[r]u、の選択問題である。
 特に強制動詞の場合には、e[r]uが付加されて使役動詞に変わっても、意味の
 大部分は能動的な対人他動詞性(律他:他を律する)が残ってる。
〇さらに一般化して、自律・能動動詞:D[・/r]uと、D[・/r]e[r]u、の場合
例:戻る:modor[]u、を検討すると、
・「無事に戻って来れてうれしい」
 →「戻って」:戻るの連用形、「来れて」:可能動詞の連用形とみるのが普通か。
 (来るの已然仮定形は「くれば」で、可能の連用形「これて」と形態が違う)が、
 または、「来れて」:来るの已然形と見るか。
・「無事に戻れてうれしい」
 →「戻れて」:可能動詞の連用形と分析するのが普通か。
 または、戻るの已然・連用形とも考え得る。
→★この例を哲学活用の立場から解釈すると、
・可能動詞、可能態の由来が、動詞活用の已然形:D[・/r]e、にあると見てるので
 、「戻れ・ば:已然・仮定形」「戻れ・て:已然・連用形」、「戻れ・!:已然・命令形」のよ
 うに解釈することが全く自然に思える。
・つまり、「戻る」の活用形のなかに、戻って(正然:まさに然る)、戻れて(已然:
 すでに然る)、の二つの連用形が同列に並んでるように感じられる。
・また、戻るの已然形:戻れ、と、可能動詞:戻れるの連用形:戻れ、は同形、同義で
 あると解釈できる。 だからというか、だけれどと言うべきか、「戻れて」を「戻
 ることができて」と可能流儀で毎回感じる必要はないだろう。
 「戻れて」に対して、「戻るを完遂するため懸命に尽力をして」と已然形で感得す
 る人々が存在することも当然である。
〇「戻って」は自律動作であり、「戻れて」は自律・互律動作である。
 互律動作とは、動作主体が動作を完遂するにあたり対人、対物、対自然、対環境
 の助力や順法適合などの条件を得て成就することを言う。
・「戻れて」には努力の末の成就だという万感の思いが内包される。
 「戻って来れて」も「来れて」があるので、同じく万感の思いを感じるが、
 「戻って来てうれしい」だけでは成就の万感の思いが伝わらない。

→★整理:連用形には、2種類あり、動作相:アスペクトの視点から区別すると、
 ①正然:せいぜん=まさに然る、(通常の連用形)→正然連用形、
 ②已然:いぜん=すでに然る、(通常の已然形)→已然連用形、
 と命名しておこう。(新定義)
〇未然、正然、已然という名称は、動詞活用のアスペクト側面を明確に表現する
 もので、連用形・仮定形は文章構造に関連した用法名称である。
(試しに、動詞活用形の全体を動作相:アスペクトで区分する方式を考察して
みたい。
<実験例はじめ:動詞語幹Dと[挿入音素]で一般形式の表記で示す。
・未然:D[a/・]nai打消形、将然:D[・/y]oo意向、勧奨形、
・正然:D[i/・]Ø中止形、te連用形、
・事然:D[・/r]u終止、u連体形、
 →事然:じぜん=事象が/を然る(事象が出来する)
・已然:D[・/r]e[]te連用、e[]ba仮定、e!【yo略】命令形/【ey略】o!命令形、
〇事然:D[・/r]、D[・/s]からは態各種の態動詞へ派生する。
実験例おわり>)

 最後にもう一つ、正然・已然の連用形を示す。
例:正然連用形と已然連用形の使い分け(動詞活用の揺らぎではない)
〇「さすが、名人の落語は全席をしっかり笑わしますね」:笑わし:律他、正然、
 名人の語り口が律他か自律か判らぬくらい自然に、おのずと客の笑いを引き出
 す様子が目に浮ぶ。
〇「人気の漫才コンビ、全席をしっかり笑わせますね」:笑わせ:律他互律、已然、
 漫才コンビが客を笑わそうと反応や手応えを斟酌しながら、ネタを盛り上げる
 様子が目に浮ぶ。

→国語学では動詞活用の全体像(自他交替、態派生、動作相、切れ続き、構文法)
 を個々の活用として、ばらばらに「かな文字の字面に従った解釈」をしてきたの
 だろう。 だが、実際の日本語は全体像を一貫して、「共通の接辞は共通の深層
 意味を持つ」という透徹した機能接辞、助動詞を駆使して発展して来れたのだ
 と思う。

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