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態文法:「つ、たり、かり、なり」の今

2018/11/14(水)

     19.完了相:「つ、たり」の今
-古語時代から時制:テンスに対する日本語表現は、相対的な時間感覚であり、
通常の動詞活用形が「「非完了」の叙述であるから、先行事象を表わすには新たに
「完了の接辞」を連結して既に完了した動作として時間情報を加える。
〇古語時代の完了接辞には「つ、ぬ」が、また存続・持続の接辞に「り、たり」が使わ
 れた。変遷の末、今に引継がれた接辞は「つ→て、てる、たり→た」に一応は収れ
 んした。
-現代口語での完了接辞は「た」であり、持続接辞は「て、てる」が担っている。
 完了相:「た」の活用形態は将然、終止・連体と狭く、不足の部分は「て、てる」、
 「たる」の活用枠組を流用する。
★完了相:時制・テンスに関わる接辞に対して「相」を付けて呼ぶ。
 アスペクトを然相と名付けたのは、動作性の意味が強い「然」と状態性を含んだ
 「相」との混在を想定しているからである。
・それゆえ、活用枠幅が狭い完了相「た」には他の接辞から援用して、持続然:「て
 、てる」、存続然:「たる」との流用・混在がある。以下に練習解説を述べる。
     〇完了接辞「つ」の変化を一般形式で表記する。
・完了相:古語・つ:D[i/・](te、te、tu、tu[r]u、tu[r]e、te+yo):二段活用。
→現代口語・てる:D[i/・](te、te、te[r]u、te[r]u、te[r]e、te[r]o):一段。
 (注:イ音便による転調がある:書いてる、泳いでる、読んでる、渡ってる)
     ・「つ」が「てる」の一段活用に収れんしたことをまず認めておきたい。
      つまり、~ている、~てある、の複合動詞でなく、「~てる」の接辞単独
      で(完了相よりも、)持続然を表現できる。

     〇持続接辞「たり」の変化を一般形式で表記する。
     ・古語時代に二段活用の不便さを大幅に緩和して、逆に一段活用への
      転換を何世紀も遅らせたのが、「~てあり」の簡略形→「~たり」です。
     ・D[i/・]te[i/・]ar[]i→D[i/・]t【e[i/・]】ar[]i→D[i/・]tar[]i
      「たり」と簡略化して平安時代から便利に使われた。
・持続然:古語・たり:D[i/・](tar[a/・]、tar[i/・]、tar[・/r]i、tar[・/r]u、
 tar[・/r]e、tar[・/r]e):ラ変活用:書きたり、書けたり、食べたり、起きたり
 と表現できた。(見れたり、乗れたり、食べれたり、起きれたり、なども本来なら
 一般形式に合致するから、記録例が残ってるだろうか)
→現代口語・た:D[i/・]tar[・/r]u→D[i/・]ta【r[・/r]u】と簡略化した接辞:
 「た」で(持続然よりも)完了相を表現するように変化した。
 (「たり」が四段(五段)活用に変化すると並行して「た」接辞独立したのか、どち
 らかが先行したのか、未確認です)
 (注:イ音便による転調がある:書いた、泳いだ、読んだ、渡った、行った)
     ・現代口語では「た(だ:音便)」が完了の接辞として専用に使われる。
      ただし、「た」の活用枠組は狭く、冒頭に触れたように「てる」「たる」活用
      と混用する実態がある。(完了・持続・存続が混在している)
★現代口語の「た」「てる」「たる」の活用枠組を一般形式で一覧する。
・完了相:た:D[i/・](te、tarou、te、ta、ta、tara、tare):イ音便で転調あり。
・持続然:てる:D[i/・](te、te、te[r]u、tere、tero):イ音便あり。
・存続然:たる:D[i/・](tara、tarou、tari、taru、tare、tare):イ音便あり。

     20.形容然:「く、かり」の今
-古語時代の形状動詞の活用枠組には、「く/しく」活用の他、「かり/しかり」活
 用があった。(語幹解釈を直せば、「く」、「かり」活用に収れんする)
・形容詞語幹:K:(taka[s]i/kanasi[s]i→K[s]i)
・「く」:K(-、[k]u、[s]i/【[s]i同音省略】、[k]i、[k]ere、-)
・「かり」:K[k](ar[a]、ar[i]、-、ar[]u、ar[]e、ar[]e)
-現代口語の形状動詞の活用枠組は、
〇形容然:K[k](u/ar[a]、ar[]ou、u、【k0】i、【k0】i、ere、ar[]e)
 となり、[k]u活用と[k]ar[]u活用が混在する枠組である。
 (注:イ音便があり、K[k0]i、K[k]a(r[i]=Q)ta、などに習熟がいる)
     ★詳細は前回18節の[挿入音素:k]説明、形状動詞の基本活用枠組を
      参照してください。

     21.指定相:「たり、なり」の今
-古語時代の「たり」「なり」には2種類の区別があり、動詞に密に連結するものと
 体言(名詞、名容詞←形容動詞)に緩やかに連結する接辞があった。
・体言に緩やかに連結する:複合接辞が「たり←と(して)あり」、「なり←に(特徴
 )あり」である。体言の様態、様態から受ける感覚表現を指定する意味を持つ。
〇体言単語(M:名詞、My:名容詞)として一般形式で活用枠組を表記すると、
・指定相:たり:M[+]tar([a]、[i]、[i]、[]u、[]e、[]e、)、ラ変活用で、
・指定相:なり:My[+]nar([a]、[i]、[i]、[]u、[]e、[]e、)、と同じラ変だった。
〇現代口語では、「たる」「なる」で基本的には(五段活用か)、連体形のみを使用す
 る。
・指定相:たる:M[+]tar[]u:連体形で、
 例:経営者たる者、堂々たる建物、など文語体と同形なので硬い感じである。
・指定相:なる:My[+]nar[]u:連体形で、また[+]na【r[]u省略】→「な」:助詞的
 な形態で使われ、
 例:盛大なる歓迎式、元気な子、静かな車内、など名容詞の連体接辞で活躍。
      現代口語では活用枠組を意識するほど活用されていないが、「な」だけは
      名容詞(形容動詞)の連体修飾に欠かせない接辞(複合接辞、格助詞的)と
      して使われる。
     比較:元気の子、元気のある子→元気な子、元気なる子、元気にある子、
      元気がある子、元気たる?子、通常の意味では「元気な子」が簡単で的確
      な表現と思える。

〇今回の記述で、接辞の今昔を比べるなかで意識的に「然」形態と「相」形態の区
 別を試してみた。
・接辞の基本活用枠組が全幅(未然~命令)にわたり活用できるものを、「然」とし
 、限定幅でしか成立しない(他の接辞活用を混在させる)ものを、「相」とした。
・この区別概念が有効・有益なものであるか、まだ明確ではない。

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