カテゴリー「日本語文法」の262件の記事

態文法:態文法を組み上げる7

2018/01/07(日)

4.「態のマトリクス図」とは:
 前回、態の「双対環、マトリクス」図、を載せました。「態のマトリクス図」について
その構造や考え方を説明します。
→態のすべてを表現するには、「双対環」図や「マトリクス」図のように座標軸が
 二軸ある平面を用意しておき、各個の「態」が平面のどの位置にあるのかを示す
 という方法が解りやすい。その意味では「マトリクス」図法が汎用的にも使える
 方法である。

4-1.「事象軸」と「事態軸」の二軸とは:
・動作関係を投影する平面として、座標軸は「事象軸」と「事態軸」の二軸を選ぶ。
〇事象の軸(横軸):
 動作による「事象・出来事の生起、収束、結果」を見つめる軸。
 左端が「出来事・事象の結果」←・→右端が「出来事・事象の生起」。
〇事態の軸(縦軸):
 「事象への反応・態応の仕方」を見つめる軸。
 上端が「事象の中心での態応」←・→下端が「事象の周辺を巻き込んでの態応」。
→「事象」と「事態」の単語を思い付いて手持の古語辞典を調べたが、見出し語に
 は載ってないから近代語らしい。今回の図解を制作する段階で「事象と事態の
 意味の差」を調べ直したから、事象と事態が明確に説明できるようになった。
・「事象」とは、出来事の目に見える形象、姿を意味する。現象として見える姿を意
 味する。(動作として見える姿・実体の「生起と結果」に注目する)
・「事態」とは、「事象・出来事」に対応した「反応、なりゆき」を意味する。
 (事態の中心にあるとは:主体・行為者、結果者など直接の関与者の態応)
 (事態の周辺にあるとは:客体・被行為者、対象物、周辺者などの直接・間接の関
  与者(中心との対峙態勢を含めて))
〇「マトリクス」構成の直交二軸の図を象限図法で考察すると、
・第一象限:動作生起(事象)・中心(事態)→動作現象・事態(中心の自律動作)
・第二象限:動作結果(事象)・中心(事態)→動作結果(成果が基で発する果律)
・第三象限:動作結果(事象)・周辺(事態)→結果と周辺の態応(果互律)
・第四象限:動作生起(事象)・周辺(事態)→動作進行と周辺関与(互律)
という動作概念を表している。
→各象限の右端に示す「自律/果律/果互律/互律」とは、事象・事態への態応の
 仕方、つまり「動作の律し方:律仕方」であり、「態の概念」そのものである。

4-2.「態の三系四態」とは:
 動作動詞には、自らの意図で動作を起すことを表す「能動系」のほか、相手に動
作を強制してやらす「強制系」と、やらせることを表す「使役系」の3つの動詞体系
がある。これを「態の三系」とすると、各系には「マトリクス」図で示す「四態」が付
随することになる。
★つまり、「態の三系四態」の「マトリクス」構成であり、簡潔に示すと、
・第一象限:原形態(能動系:自律/強制系:律他/使役系:律他互律→使役律)
・第二象限:結果態(能動系:果律/強制系:律他果律/使役系:使役果律)
・第三象限:受動態(能動系:果互律/強制系:律他果互律/使役系:使役果互律)
・第四象限:可能態(能動系:互律/強制系:律他互律/使役系:使役互律)
となる。(態の三系四態という考え方で、各系の象限平面を重畳して記述した)

→「態の三系四態」の組立て方、派生法を説明する。
〇まず、一般形式で表現するために、
 動詞語幹:D(子音語幹、母音語幹を共通表記)を一般共通化で認識しよう。
 例:D=aruk,kak,yom,tat,mi,tabe,de,
 (歩く、書く、読む、立つ、見る、食べる、出る、の動詞語幹:D)
★態動詞の派生方法を一般形式で表記する。
・能動系・動詞語幹:D[挿入音素]態接辞語幹[挿入音素]統語接辞(-u)、の形式で
 派生する。
・強制系・動詞語幹:D[挿入音素]強制接辞語幹[挿入音素]態接辞語幹+
 [挿入音素]統語接辞(-u)、のように一次派生、2次派生の二段階となる。
・使役系・動詞語幹:D[挿入音素]使役接辞語幹[挿入音素]態接辞語幹+
 [挿入音素]統語接辞(-u)、と二段階の派生となる。(使役は強制・可能態と同形
 なので、三段階の派生とも言える)
〇実際には前掲のマトリクス図を参照しながら一般形式を解釈なされば、直感的
 に理解しやすいだろう。
→「態の双対環」図、「態のマトリクス」図で、動詞語幹に[挿入音素]を付随させる
 という少し独特な表記法を採用した。
・能動系:D[・/r]、を一括りにして、共通原形化した。
・強制系:D[・/s]as[]、を一括りにして、共通原形化した。
・使役系:D[・/s]ase[r]、を一括りにして、共通原形化した。
〇それにより、態接辞がすっきり一本化して「共通四態」図が表現できる。
 各系にそれぞれの「四態」が存在するのであり、一つの「四態」を共有するのでは
 ない。
 (「態のマトリクス」図は四態を重ね合わせて示してあるが、各系ごとに「四態」
 がある)
→「態の三系四態」の概念がもっと広く認識され、理解されていく日を期待したい。
 実際に日本語のなかで日常的言語活動に使われている法則でありながら、
 「態のマトリクス的全体像」が公知・周知になっていないのはとても残念だ。

態文法:態接辞「ある/あす/え」考

2017/12/24(日)

 態文法を調べてきてようやくこの一年で全部の態接辞を見つけ出せた。
〇態接辞一覧:
①-ar-:結果態接辞(文語受動態接辞):[・/r]ar-(ある/らる)
②-as-:強制態接辞(文語使役態接辞):[・/s]as-(あす/さす)
③-e-:可能態接辞(文語已然・自発):[・/r]e-(え/れ)
④-are-:受動態接辞(文語受動態連用形):[・/r]are-(あれ/られ)
⑤-ase-:使役態接辞(文語使役態連用形):[・/s]ase-(あせ/させ)
⑥-ay-:現代例希少・(上代可能接辞):[・/r]ay-(あゆ/らゆ)
⑦-ak-:例希少・動名詞化(上代ク語法接辞):[・/r]ak-(あく/らく)

〇態接辞のローマ字つづりとかな文字つづり:
 上記の一覧を調べてください。
・左端:ローマ字つづりの接辞。(動詞語幹+[挿入音素]に同一形態で連結する)
・右端:かな文字つづりの接辞。(動詞語幹の子音/母音に合わせ異形態で示す)
だが通常、国語辞典表記は(る/らる)、(す/さす)のように最初の「あ」音がない。
(現状の学校文法では、五段活用の動詞は未然形活用語尾として「あ」音をもぎ取
る、という「かな文字」文法に則っているからだ)
→かな文字解釈をしている限り、「あ」音のあるなしにかかわらず(ある/らる)
 、(る/らる)のように異形態で表記するしかない。
 ローマ字つづり解釈を採れば、接辞を音素的に同一形態で表記できるし、説明
 も理解も簡単になる。
→文字がなかった「音素」の古代から、漢字の到来を受けてかな文字を作り出し
 た「音節」の上代時代になり、音素言葉からの離脱が始まったかもしれない。
 歴史的には記録に残る「かな文字」の影響が優勢になってしまうのは当然だろ
 う。

→口語文法の研究著作書のなかに、①~⑦のローマ字つづりの態接辞形態を個別
 的に指摘するものが存在しますから、当方にも見つけれた。(見つけられたと言
 えるほど実績がないので、見つけれたとしておきます)
〇かな文字/ローマ字での研究を市販本により概観して分ってきたのは、
・時枝誠記:態接辞は動詞直結の接尾語(詞に相当)とするべきもの。
・大野晋:文語受動「ある」は「生る(ある)」の意味で、活用形も「あれ、あれ、ある、
 あるる、・・」と古語辞典で記述する。
・→文語連用形が「あれ」だから、口語受動接辞「-are-」には馴染みやすいはず。
 使役接辞も文語(あせ、あせ、あす、あする、・・)で、口語接辞「-ase-」へ馴染や
 すい移行だったはず。
 (二段活用の広がった後の一段活用への収束だから、移行しやすかった)
・寺村秀夫:可能態接辞「-e-」を明確にしたが、母音語幹に連結する「-(r)e-」を
 許容していない。(可能・受動の意味が重なり合い、境界は曖昧だと記述あり)
・金谷武洋:動詞の自・他、態の受動・使役の意味を「自然の勢い←→人為的意図的
 行為」という直線軸に並べて(自他交替接辞や態接辞の機能を)解説した。
 自・他の対や態の対が鏡像関係にあるとの示唆あり。
 さらに、厄介な自他交替の事実として「可能態(と断定してないが)の振舞い」が
 自・他の直線軸に交差する様子を解説している。
 〇例:立つ(自)→立てる(他)、(自・可能):自動詞に可能態接辞を連結で対物・他
  動詞と自動詞の可能表現の2つの意味を持つことになる。
 〇例:割る(他)→割れる(自・自発)、(他・可能):他動詞に可能態接辞を連結で対
  物・自動詞・自発と他動詞の可能表現の2つの意味を持つことになる。
 (上例で、接辞-e-は可能態表現で自他交替への捻れがないのに、動作表現では
 他・自交替が起きている。接辞-e-は自動詞にも他動詞にも変えてしまう)

→金谷本:『日本語に主語はいらない』では、自・他動詞と受動・使役を一直線上の
 対向関係で考察開始しても、可能態が軸に交差し捻れた自他交替の姿が見えて
 しまうことを教えてくれる。
〇態接辞:①~⑦のうち、③可能態だけが「あ」音を持たない接辞であり、出自も
 今となっては特定しにくい。
★仮説を述べれば、接辞:-e-は「已然の概念」を表すだけの機能を持つ。
 自・他動詞の「動作が進んで已然状態になる」ことを表す。
 (いわゆる動詞活用の已然形(二段活用では連用形に相当)に[r]uがついて、新
 しい態動詞に生長した。態となる一方、已然概念は一段活用の流れに吸収され
 仮定形へ様変りすることになった)
→不思議なもので、かな文字解釈の立場にあっても「ある/あす」を他の助動詞か
 ら優先して扱う学者もいるし、ローマ字解釈の立場でも、「-e-」接辞を可能態
 と見抜きながら、出自が已然の必然にあるとの言及がない状況もある。
・可能態動作の律仕方を「互律」と見立てた。行為者が「動作できる」とき、対物が
 「動作の已然状態を受ける(それが自他交替動作に相当する場合もある)」とい
 う相互関係にあり、相互の動作関係が「物理、事理、人理、自然の理」に合うこと
 なら動作成立となる。

★「ある(受動)/あす(使役)/え(可能)」三態を考察するとき、
 (現代口語での三態は「え」がつき、「あれ(受動)/あせ(使役)/え(可能)」だ)
〇日本語の態機能の使い方は、西欧語などに比べてはるかに複雑だが、接辞の構
 造自体は単純だ。それに惑わされて、西欧語風の文法に習う思考に陥ると、「一
 本線に並んでいる」ように錯覚してしまう。
→態機能を正しく理解するための自習方法がある。
①一つの原動詞を書出し、能動系の態派生をすべて書き出す。
②その原動詞を使役系原形態に派生して、さらに使役態でのすべての態を派生さ
 せる。
③これで、能動系四態(原形態-可能態-結果態-受動態)、使役系四態(原形態-
 可能態-結果態-受動態)ができたでしょうか?
④おそらく(←osor[]ak[]u:⑦無律接辞の例)、1、2回の自習では二系四態に届
 かないでしょう。それは、
⑤日常的に使いこなしている動詞の基本構造のなかに結果態接辞や強制態接辞
 が含まれてあり、それを組み込まないと完全な理解に到達しないと気づくのに
 相当な自習時間がかかります。
・自習で完成した成果が、前回態の「双対環、マトリクス」図に図示したもので、
★三系四態の構成で、「態の双対環」もしくは「態のマトリクス」で把握するのが
 確実だと思う。
①自動詞・他動詞は行為者の「自律動作による事象の発生表現」であり、態として
 区別する必要がない。自・他動詞は能動系原形態と見なせばよい。
②強制・使役動詞は第一行為者が「自律意図により対他(人物)に命じ・指示して
 対他(第二行為者)の自律動作をさす(強制)、させる(使役)表現」であり、態とし
 て、強制系原形態と使役系原形態の二系別立てにする。
③能動系、強制系、使役系の三系はそれぞれ四態(二軸「双対環」、二軸「マトリク
 ス」)の態機能を持つ。つまり、原形態-可能態-結果態-受動態の四態がそれぞ
 れの系に付随する構成であり、「三平面の各面に四態が並ぶ」構造なのだ。
④各系が四態を含むので相互への「乗り移り」は少ないのだが、例はある。
・例:滝に打たれさせられる→ut[]are[s]ase[r]are[r]u:受動→使役受動への
 乗り移り。

 この「三系四態の態構造」の説明は随時追加を載せたい。

態文法:態文法を組み上げる6

2017/12/16(土)

3.「態の双対環」とは:
 日本語動詞の「態の表現」も動詞派生の方法を用いて、動詞語幹に態接辞を付け
替えて使役・受動などを表現する。
西欧語では他動詞に限り「受け身文型」を作るが、日本語では自動詞でも他動詞
でも受動態を構成するし、その他の態派生にも制限はない。
(制限は、状態動詞(所動性)を態派生させて意味不明となる場合だけ)
〇なぜ自動詞、他動詞ともに受動態が派生できるかといえば、
 ・受動態は「動作の結果」に対応する事態(行為者、被行為者、対象物)を表現する
  形式であり、動作結果は必ずあり得るから自・他動詞の制限は生じない。
 ・つまり、受動態は受け身だけを表現するのではなく、動作結果への対応表現だ
  ということを理解しておきたい。
→従来の学校文法の概念を離れて、新しい設計図を眺めるつもりで見てほしい。
 態接辞の付け替え法則を図形的な態配列で示したのが「態の双対環」である。
(参照図2種:「態の双対環」図と「態のマトリクス」図) 
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★「態の双対環」図は、態のすべてを組み合せることを目標に
 ・原形態-受動態の:能(動)-受(動作結果への対応)の対向関係、と
 ・可能態-結果態の:動(手掛け)-静(動作結果)の対向関係、の「2つの対」を
  直交配置させて環状に「双対で環」を創作した図形である。
〇簡略的に文字列で表記する場合は、原形態-可能態-結果態-受動態の並び方
 にすれば、動作発意-着手態勢-結果状態-受動態勢を表現する構文の流れに
 合致する気分になる。
★「態のマトリクス」図は、態表現使用の局面を事象軸(出来事)と事態軸(態勢)
 の2つの尺度で区分けしたものです。
 ・原形態:事象の生起・事態の中心:自律/律他:動作の起点であり、「能動性」。
 ・可能態:事象の生起・事態の周辺を含む:互律:対他と協調動作、「所動性」。
 ・結果態:事象の結果・事態の中心:果律:動作の結果を表現、「所動性」。
 ・受動態:事象の結果・事態の周辺を含む:果互律:動作結果に対応、「所動性」。
〇両方の図で示す一般形式とは、原動詞が自動詞/他動詞の両方を対象にでき、
 また、動詞語幹が子音末/母音末のどちらでも処理できるということ。
〇両図で示すように可能態を正式な態動詞として扱うのが正道だといえる。
 (ら抜き言葉を排除する概念は賢くない)

つづく

態文法:態文法を組み上げる5

2017/12/10(日)

2.自他交替派生と態派生
 動詞を生み出す法則のなかで重要なものは、まず、動作表現の種類を十分に増
やすことだ。動詞を生み出すには、「自他交替派生」と「態派生」という2つの派生
法則がある。

2-1.「自他交替派生」とは:
 一つの原動詞から「有対」になる自動詞/他動詞の対を生み出すために、特定の
 機能接辞を連結して派生する法則をいう。
〇有対動詞の例:休む→休める(自律)/休まる(自発・果律)、動く(自律)→動か
 す(自律・律他)、割る(自律)→割れる(自発・互律)、移る(自律)→移す(自律)、
 見る(自律)→見せる(互律)、
 (日本語では自他交替派生で有対動詞が多く、機能接辞にもなじみが深い)
→有対自動詞/有対他動詞:動詞語幹に特定の機能接辞を連結して対応する自動
 詞もしくは他動詞を派生する。(自動詞化接辞/他動詞化接辞、変化接辞などの
 機能接辞がある)

 なお、動詞のなかで有対でない「無対動詞」や「両用動詞」もある。
〇無対自動詞/無対他動詞:意味の上で対となる他動詞や自動詞が不必要な動詞
 で、「無対動詞」として扱われる。 もし、どうしても必要ならば、使役・受動の態
 動詞を援用して表現する。
例:歩く(自律)→歩かす(強制態・律他)、読む(自律)→読まれる(受動態・果互律)、
 (態の機能接辞も自他交替接辞に由来する)
〇両用動詞:それ自身が自動詞、他動詞どちらにも使われる。
例:ひらく(自律)、とじる(自律)、わらう(自律)、

2-2.「態派生」とは:
 動詞の行為者が自己の意思で自ら行う動作を「自律動作」とすれば、自動詞・他
動詞ともに一括して「自律」動詞と見なせる。
一方、行為者が自己の意思で他者に行わせる動作を「律他動作」と名付けるとし
て、たとえば、「強制的(命令、指示、許可)に相手に動作をやらせる」事態は日常
生活で起りうるし、多くの動詞を「律他:強制・使役」的に造語派生したい。
つまり、行為態度(意図識別:自律/律他など)を明示するための文法則として、
原動詞の語幹に「態」機能接辞を連結して態動詞を派生させる方法を用いる。
→態の接辞には、行為態度(自律/律他)のほか、各種の機能があり、動作可能(互
 律/自発)、動作結果(果律/果互律:受動)などの識別に利用される。

★行為者の視点で動作態度を語るとき、
→「自律動作」には、自ら実行する自動詞と他動詞が含まれる。
 「律他動作」には、他者に実行させる強制動詞と使役動詞が含まれる。
 (行為者が律他の意図を発し、被強制者はそれを受けて「自律」動作をする)
 の3つの態:能動態/強制態/使役態に区別できる。
〇「動く」の他動詞/強制態動詞:「動かす」などは、動作に関与する登場人物の役
 割により「自律/律他」が交差する。
・机を動かす(意図者=行為者:自律・他動詞/対象物:動作受容)、
・担当者を動かす(意図者:律他/担当者:自律・自他動詞)
 (担当者は命じられた事柄を解釈して自律動作をする)
〇もちろん、担当者を動かす:担務替え、配置替えの場合ならば、意図者の自律・
 他動詞の動作であるかもしれない。
→「自律か/律他か」解釈が交錯するのは、被動作者が対象物(無情)なら他動詞
 に解釈されるから問題ない。ところが、上記のように対象が担当者(有情)だと
 他動詞(自律)か、強制態動詞(律他)か、事例ごとに検証が必要になる。
★上代の動詞造語の知恵を顧みるとき、
 「律他」動詞を単純な「対他(有情)他動詞」へ変換させる機能を持った接辞を使
 っている。その機能接辞は「無律接辞:ak-」であり、古語での「ク語法」という用
 法だ。残念ながら現代口語では文法的な説明がほとんどないが、単語としては
 現役ばりばりなのだ。
・「甘えさせる」:amae[s]as[]e[r]u(律他)を推奨せずに、
 「あまゆ」:amayu(自律)→「あまやく」:amay[]ak[]u(甘えるの無律化)→
 「あまやかす」:amayak[]as[]u(無律対他・他動詞化)が意味明瞭である。
・「おびえさせる」:obie[s]as[]e[r]u(律他)を推奨せずに、
 「おびやかす」:obiy[]ak[]as[]u(無律対他・他動詞化)が意味明瞭である。
・「わらわす」:waraw[]as[]u(律他)よりも「強烈・強引な笑い取り」を表現する
 には、「笑わかす」:wara【w[]a】k[]as[]u(次第に【w[]a】が省略されて)→
 「笑かす」:wara[k]as[]u(無律対他・他動詞化)が使われる。
 (対他が自律で笑うのではなく、対他に有無を言わさず笑う動作を行わせる)
・「寝さす」:ne[s]as[]u(律他)は対他の寝る(自律)をさせること。
 「寝かす」:ne[k]as[]u(無律対他・他動詞化)は対他(無情の赤児)・対物を横た
 わらせること。
・「だます」:damas[]u(自律・他動詞)だが、相手は(自律)で自己思案するうちに
 間違った判断へ到達する(ように誘導する)。
 「だまかす」:dama[k]as[]u(無律対他・他動詞化)は、相手に(自律)冷静な判
 断をさせないように大げさに話しを盛って間違わせること。
 「だまくらかす」:dam[]ak[]u[r]ak[]as[]u:余程の複雑なだまし手口だ。
・「散る」自動詞の事象をふくらませて、「散り積む概念=散らく」:tir[]ak[]u→
 「散らかる」:tir[]ak[]ar[]u(結果動詞・果律)、「散らかす」:tir[]ak[]as[]u
 (無律・対物他動詞)が生み出された。
・「ずる、ずるい、ずるける」→「ずらく=ずる行為の概念化」:zur[]ak[]u→
 「ずらかる」:zur[]ak[]ar[]u:サボって逃げ出す、姿を隠す(自律)が現代国語
 辞典に載ってある。(だが当然、紛らわしい「ずらかす」:zur[]ak[]as[]u:は通
 用しない。無律・他動詞(自律)の「ずらかす」が意味するところは、行為者自身が
 「ずらかす」動作を全部やり遂げなければならないからだ。つまり「ずらかる」と
 同じことをやり遂げなければならないからだ。どうしても言いたいなら「ずらかる」
 を「ずらからす」(律他)と言えば通じる)
〇無律接辞:ak-は、汎用的に使い回せる機能接辞ではないので、自ら造語派生
 する機会はないでしょうが、文章、単語の中で見つけ出したらこの解説を思い
 出してください。

つづく

態文法:「やる」と「やらかす」の差は?

2017/12/03(日)

 本屋の立読みでノウハウ新刊本に1冊、目に留り手に取った。
 『「売れる営業」がやっていること。「売れない営業」がやらかしていること』
:松橋良紀:大和書房:2017/6/25第一刷、2017/11/25第五刷。
なかなか内容は役立ちそうだ。目次を走り見した程度であるが、売れる/売れな
いの対比で構成されているようだ。
 たまたま、新書判の棚で『富士そば~(経営者)』の本を立読みした後だったので
営業の話し内容で繰返しになる感じがして、奥付の発行日だけ確認した。短期間
で第5刷まで到達しているから、評判を得ているのですね。

 ここで気に入った言葉の対比:「やる/やらかす」を整理しておこう。
→動詞「やる」と「やらかす」の意味の差については、当ブログでも思考対象にし
 てきたので、今年に入ってようやく説明できる段階にある。
 やらかすには、無律接辞:ak-、が組み込まれて単純他動詞化した動詞です。

まず、順番に動詞派生の状況をみよう。
①やる(律他):yar[]u:行かせる/与える(原則的な動作の構図)
 →主体(律他)が客体(自律)に共有の課題(対象物)を実行するよう仕向ける。
 (あるいは主体が律他・自律の二役をやるという想定も可能だ)
②やらす(強制・律他):yar[]as[]u:主体(律他)が客体(自律)に(課題)をさす。
③やらせる(使役・律他互律):yar[]as[]e[r]u:主体(律他)が客体(自律)に
  (課題)をさせる(互律:主体が補助してもよい)。
④やらかす(律他無律化・単純他動詞化):yar[]ak[]as[]u:主体(自律)が企図し
 た課題を動作・実行する。(やらく:やろうとすることの概念化・名詞化)
→「何をやらかしたのだ?」と詰問するのは、何を意図しどんなやり方で実行した
 のか、を聞き出すためだろう。 ついでに、「仕出かす」自律他動詞:sidekas[]u
 :(ak接辞なし)ならば、「やってしまった結果状態」に描写の重点がある。
→本来、④やらかす:という動詞は、「やらす」と言うべき相手が自律動作をやれ
 ない状態・条件にある場合に「やってやる」という理屈が通る機能でもあるが、
 「宿題や調査を本人に代ってやらかしました」は通用しにくい。「やる:遣る」の
 原意が恣意的な代行や共有性のない意図行為を許さないのだろう。
(無律接辞:ak-の例:D[・/r]ak[]u→曰く、願わく、望まく:nozom[]ak[]u、
 散らかる/散らかす:tir[]ak[]ar[]u/tir[]ak[]as[]u、ずらかる:zur[]ak
 []ar[]u、など。古い上代語に使われたク語法:無律:ak-だが、ずる→ずらかる
 が出現したのは明治期になってかららしい。古語辞典には載っていない)

「やる」が描き出す現場:
①原動詞:yar[]uの語幹:yarに、接辞:as(強制)がついて②yar[]as[]u、さらに
接辞:e(可能)がついて③yar[]as[]e[r]u、となり、強制+可能は現代口語では
使役態として使われている。
〇原動詞:やる、は主体・客体が同一化すると単純他動詞のように課題を実行す
 る意味にも使われることがある。(主体:律他を胸に秘めての)客体自律の動作
 と見なせる。それでも、やる動作に第3者が絡んだ局面では、主体が客体の意図
 を誘導して賛意(自律)を得なければ課題実行を果せない。
つまり、①やる、②やらす、③やらせる、には主体(律他)客体(自律)が共通意図
での動作をするという原則が存在する。
→「売れる営業」がやる:営業職(律他)が顧客職(自律)に企図する販売・購買(課
 題)を納得させる。つまり顧客が自律で購買を判断するように誘導する。
 顧客の自律が優先なので、営業が勝手に命じて待つものではない。
①やると②やらす、は動作の律仕方が主体(律他)客体(自律)で似ている。元来の
 意味が「やる=遣る、遣わす」であり、主客の力関係がはっきりしており、かつ、
 「やり遂げる課題」も明確に共有している前提だ。

「やらかす」が描き出す現場:
④やらかす:(単純な他動詞(自律)として)意図する計画を実行する。
 やらく:やる意図のもの:計画、戦術。(公式でなく、自己発想でのやる気計画)
→「売れない営業」がやらかす:営業職(自律)が自身の企図・計画(課題)を客筋に
 勧誘する。客筋の反応を顧みずに営業戦略に走るだけでは結果が成らない。

以上、新刊書の立読みで見つけた言葉の対比:「やる」と「やらかす」、の視点を解
釈してみました。

態文法:態文法を組み上げる4

2017/11/28(火)

1-3.動詞の「複合:修飾語付加」の法則:
 前節で示した「ブロック活用表」を寺村本でも採用して寺村自身の活用表を公
表している。ブロックも寺村も活用表の中で「用言の派生と複合」の違いを明確
に説明していないが、当ブログでは派生:[挿入音素]、複合:[+]を付加して区別
する。
・派生は先行語と接辞が密結合する。(先行語幹[挿入音素]接辞語幹[挿入音素]
 接辞、、、)
・複合は先行語と助動詞が疎結合する。(先行語[+]助詞・助動詞、、、)
また、後続助動詞がそれ自身で活用するために派生を起すことがある。
同様に派生した用言が連用形・連体形の修飾機能を果す場合、複合[+]機能が働
いたと想定すると分かりやすい。
 日本語の態動詞の連体修飾と連用修飾の使い分けに関しては、特に工夫が必要
になる。
例:女は殴られた[+]男に復讐した。(連体修飾:男から殴られた)
別例:女は、殴った[+]男に/を復讐した。(連体修飾:男が殴った)
〇構文中に能動/受動の主・客が同居して、相互に修飾表現をすることが日本語
 としては可能なのだが、間違いなく理解するには慣れが必要だ。
工夫例:女は男に殴られて[+]、復讐した。(連用修飾:殴られたのは女)
別例:殴られて[+]、男に復讐した[+]女は、、、(連用修飾+連体修飾)
〇会話では、連用修飾:分詞形で表現することに違和感が少ないが、文章では連
 体修飾の構文構造が好まれるかもしれない。
関係詞を使わない日本語の場合、連体修飾と連用修飾で、表現主体の移動が起き
ることを考慮してなんとか工夫をしたいもの。
〇明確に「殴られた[+]により/から/(の)で、男に復讐した」、「殴った[+]から
 /ので、女に復讐された」というような補完(判定詞)要素が必要なのだろう。

★そこで「寺村の活用表」に加筆追加して投稿する。
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〇「ブロック活用表」では、コプラ・繋辞の活用と規定ありなので、先行単語を名
 詞 ・名容詞と想定して加筆した。やはり、コプラ・繋辞の概念を超えるべきだ。
〇「寺村活用表」では、(繋辞でなく)判定詞:ダの活用だとの規定ありなので、先
 行単語の範囲を広げて、体言・用言・説明詞(形式名詞)が複合機能で連結すると
 想定して加筆した。

→活用表右端の判定詞:ダの[+]連結できる単語を大幅に拡大して体言・用言・説
 明詞(形式名詞など)としたのは当ブログの独断なのだが、寺村一覧表では、動
 詞・形容詞の活用表と判定詞:ダの活用表は別表になっている。
 (さらに残念なのは、寺村の判定詞活用原表には複合するための先行単語につ
 いては記述がない。体言:名詞、名容詞のみを想定しているらしい。他の助動詞
 活用も同様なムード仕分けによる個別的な活用表である)
→判定詞活用を拡大する理由は、「確言ムード」を受けて、連体修飾や連用修飾を
 構成させる場合の「理由付け」「説明付け」を簡単に実現している現行文法の方
 法を活用表に採り入れるべきだからだ。
例:体言に判定詞が複合連結するとき:もう師走[+]だ。と「だ」が直接連結する。
例:用言に連結する場合:書く[+]のだ。食べた[+]のだ。寒い[+]のだ。と「の」が
 間に入る。「の」は形式名詞で先行用言を事象概念化し説明付けの態勢にする。
例:殴った[+]ので、復讐された[+]のだ。 この表現方法が使えての日本語だ。
  殴られた[+]ので、復讐を考えた[+]のだ。 この表現方法が使える。
例:形式名詞を説明付けのために使う。(簡略のために[+]形式名詞を「」で示す)
 太郎は、あす大阪に行く「予定」だ。(太郎の予定を説明付け)
 次郎は、あす東京に行く「の」が予定だ。
 犬が嫌いな「の」に猫は知らんぷり。 犬が嫌う「はず」の猫は知らんぷり。
 今、出かける「ところ」だった。

 判定詞活用になじんでくると、~「の」だ構文を流用すると連体修飾になるのが
わかるはずだ。つまり、関係詞構文のように使うこともできる。
例:殴られた「理由」が今もって納得できない「なぞ」だ。

つづく

態文法:態文法を組み上げる3

2017/11/21(火)

 前回、動詞派生の一般形式を実例2つにより示した。連結した接辞は、
①D[・/r]are[a/・]na[・/k]a(r=0[Q])ta.:受動接辞、打消接辞、完了接辞。
②D[a/・]na[・/k]a(r=0[Q])ta.:打消接辞、完了接辞。
→動詞語幹に接辞(助動詞)が密に連結・派生していくのが動詞活用である。
 動詞は正に助動詞の活用に助けられるから、活用しているように見える。
 助動詞も接辞語幹に派生接辞が密に連結・派生して活用効果を出す。
 動詞も助動詞も派生構造は同じであり、「タマネギ、ラッキョの皮むき」と似て
 いる。剥いても剥いても接辞であり、最後に現れる芯は「変化のない語幹」だけ
 だ。
(このタマネギ構造は単純だが、強い法則性で均質的な派生概念が通用するとい
うことを示すもの)

1-2.動詞活用一覧表を見直す

 動詞語幹だけでは活用一覧表を作れないから、最小限の助動詞(接辞)を組み
合せて、その動詞自体の活用法を表現しなければならない。
〇国語辞典での動詞活用表は、未然、連用、終止、連体、仮定、命令の6形態を選択
 している。(概略、動詞アスペクトを表現した構成と思える)
〇国語辞典で示す「個々の活用形」は、あたかも動詞語幹に「あ、い、う、え、お」が
 標識音として付加され「区別可能な活用形態」になったような錯覚を与える。
 「あ、い、う、え、お」の由来を記述すると、決して合理的と言えない。
 あ=[a/・]から、い=[i/・]から、う=[・/r]u、[・/s]uから、え=[・/r]ebaか
 ら、お=[・/y]ooからの母音拾い出しで活用形の識別にしたものだろう。
〇特に国語辞典で言う「未然形」は打消接辞:[a/・]na(i)につながる形態や、態
 接辞:[・/r]are、[・/s]ase、につながる形態を想定している。しかし、これら
 の助動詞(機能接辞)には有用な特定意義があり、それが連結し派生すると動詞
 語幹の意味合いから外れて別動詞の意味合いになってしまう。
→動詞語幹の意味を保ち、かつ事象描写、相・アスペクト描写ができるための最
 小限の助動詞で派生を表現する「活用一覧表」を作りたい。
★最適な研究例がある。寺村秀夫:『日本語のシンタクスと意味Ⅱ』1984年9月
 20日、くろしお出版:の第4章 活用のなかの記述に詳しい説明を見た。
→特に抜群の研究成果であるのは、バーナード・ブロックの活用表だとして紹介
 してある。当ブログ思考実験でも、「未然形の空疎さ見直し」と「完了形の組み入
 れ」を思案していたので、「ブロック活用表」は形式上の一貫性がよいという点
 に感心した。
(ただし、「活用表」を使う目的が何とも不純であり、譬えで言えば、単語の「活用
の仕方」で動詞か、形容詞か、繋辞か、を振り分ける判定道具にするような構造論
理が基にあるようだ。逆にそれが用言の共通的活用形式を見抜くことにつながっ
たといえるのかもしれない。また、日本人は「派生分析:音素解析が重要」が苦手
でも「複合分析:意味解析が重要」には強みがある。ブロックは逆に「派生分析」に
強かったが「複合分析」には疑問を残す結果だったようだ)
→寺村本を読み直して、「ブロック活用表」を引用([挿入音素]、[複合:+]を付け
 て一般形式に修正して)表示することにした。
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〇表中の「派生」について補足説明する。(繋辞欄の「複合」は次回に説明予定)
①動詞欄のD[¥/・]tar[]ooを正確に記述すると、イ音便の規則に則り、
 D[i/・]tar[・/y]oo:→ka(k=0[i])tar[・]oo→kaitaroo、
 D[i/・]tar[・/y]oo:→tabe[・]tar[・]oo→tabetaroo、
 となる。派生接辞欄でtar[]ooと記したのは、二次派生の接辞構成を示した。
②形容詞欄のK[・/k]a(r=0[Q])ta:もイ音便であり、
 K[k]a(r=0[Q])ta:→samu[k]a[Q]ta→samuka[Q]ta→samukatta、
 となる。(形容詞語幹は常に母音末なので、挿入音素:[・/k]を[k]と略記)

つづく

態文法:態文法を組み上げる2

2017/11/15(水)

1.動詞活用には「派生:接尾辞の付加」と「複合:修飾語付加」の2通りあり

 国語辞典の付録ページにある品詞分類表での定義を確認しておくと、
〇単語→自立する→活用がある(用言)→終止形語尾がウ段:動詞/イ音:形容詞
 /ダ音:形容動詞(別称:名詞に似るので、形容名詞、名容詞などという)。
〇単語→自立する→活用がない→主語になる(体言)→:名詞。
〇単語→付属する→活用がある→:助動詞。  
以上の5つの品詞が文の述語要素になるもの。
 常識的に「終止形」概念が存在して、語尾音がウ段音/イ音/ダ音で分類できる
と仮定する。 念のため付録ページには、動詞・形容詞・形容名詞の「活用一覧表」
と「助動詞の活用一覧表」を載せる辞典が多い。
→用言活用に対する定義は説明不足の部分を「活用一覧表」で補っているが、根
源的な解釈から外れるところがある。(何行何段(かな音節)活用表では語幹把握
や派生法則を正確に記述できない) 
→新しい時代に向けて正確な音素解析(ローマ字表記)で「派生」「複合」を取り上
げる。

1-1.動詞の「派生」の法則は:(必要最小限の範囲で音素(ローマ字)表記する)

→動詞語幹+[挿入音素]+機能接辞語幹(助動詞語幹)+[挿入音素]+機能接辞語
 幹(助動詞語幹)+・・+[挿入音素]+統語接辞。
 の連結構造で示すように、動詞語幹の後に「+[挿入音素]+接辞語幹」を繰返し
 付加し(後段の図参照)、意味を補足して述語を完成させる。
〇例(かな文字区切り):呼ばれなかった→呼ば・れ・な・かった。
〇ローマ字解析の一般形式:呼b[・/r]are[a/・]na[・/k]a(r=0[Q])ta.
 ・動詞語幹:呼b、
 ・[挿入音素]:[・/r]、動詞語幹が子音末なら[・:無音]、母音末なら[r]発音、
 ・受動態接辞:are、(ar[・/r]e→ar[・]e→areと派生したもの)
 ・[挿入音素]:[a/・]、先行語幹が子音末なら[a]発音、母音末なら[・:無音]、
 ・打消接辞:na(i)、
 ・[挿入音素]:[・/k]、簡略化で[k]としてもよい。
 ・ar助動詞[挿入音素]完了接辞:ar[i/・]ta→(ar[i]ta)→a(r=0[Q])ta.
  [Q]促音:あ[っ]た、の詰った音を表す。(イ音便の促音表記)
〇一般形式の特徴は、動詞語幹が子音末、母音末どちらであろうと、Dと表記し
 て「派生」を書き表せることだ。
→例:一般形式で、D[・/r]are[a/・]na[・/k]a(r=0[Q])ta.と書けば、
 ・打たれなかった、切られなかった、着られなかった、飲まれなかった、食べら
 れなかった、疑われなかった、見られなかった、忘れられなかった、渡されなか
 った、止められなかった、、、などを代表する表記となる。
 次例は、動詞語幹に打消接辞が連結する場合、
〇一般形式:呼b[a/・]na[・/k]a(r=0[Q])ta.→呼ばなかった。
→一般形式:D[a/・]na[・/k]a(r=0[Q])ta.と書けば、
 ・打たなかった、切らなかった、着なかった、飲まなかった、食べなかった、疑わ
  なかった、見なかった、忘れなかった、止めなかった、、、などを含む。
★[挿入音素]と機能接辞の関係は:
 ・機能接辞が子音語頭なら[a/・]、[i/・]のように [連結母音/無音]が配置さ
  れる。
 ・機能接辞が母音語頭なら[・/r]、[・/s]、[・/k]、[・/y]のように [無音/
  連結子音]が配置される。
→動詞「派生」の一般形式での表記法を理解するうえで、[挿入音素]の考え方が
 重要なので図を追加しておく。
(次回へつづく)
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態文法:態文法を組み上げる1

2017/11/05(日)

 昨日4日(土)夜、今泉研究会に参加して、持込み演題の動詞派生の一般形式表記
法について説明した。 論点の中心は態派生時の[挿入音素]を一般形式:[連結母
音/無音]、[無音/連結子音]で表記することにより、現状文法の「可能態」、「命
令形」での子音幹/母音幹・動詞での異形態発生(解釈)がなくなり安定派生が見
込めるということ、更に応用して、動詞、形容詞の相派生(未然・連用・終止・・・)に
ついても一般形式[挿入音素]を用いれば統一的に派生が理解できる。・・・
(説明図表は補追して後日投稿する)

 先生からは指摘と質問が山ほどあったが、要点を記しておく。
古語、文語、口語とのつながりで論証できるか?
独自用語をしっかり定義して説明してほしい。
相派生の表中に完了形も含まれているが、時制(テンス)と相(アスペクト)が混
在するのは誤解の元になるが、相を新しくどう定義したのか?
形状動詞はシ活用・シク活用とカリ活用とが文語時代から併存しており、その流
れからすると、挿入音素:[・/k]はなじまないのでは。また、動詞派生での[k]も
特定語に限るものではないと言えるのか?
[挿入音素]の連結子音:[・/r]、[・/s]、[・/y]、[・/k]は意味合いと関係付け
があるというが、連結母音:[a/・]、[i/・]の音に意味があるか?

→これに対する我流の答えは当然に不十分であり、確かに新しい概念に明確な定
 義をなさずに論を進める手抜き状態であることは感じている。
→動詞活用表(未然・・・命令)の6形態のうち、「態の助動詞すべて」を未然に連結
 するのではないと新定義しているので、活用表は純粋に相派生の一覧表になる
 はずだ。 相派生に終止形(未完了形)しか考えないのはおかしいので、完了形態
 が並ぶのが当然であり混在ではない。
 (詳細な相活用は連用形に複合する形式で:~ている、てある、ておく、てくる、
 ~しはじめる、しおわる、などの補助動詞を付加して生成する)
→完了形は、文法的にもテンス・アスペクト・ムードのどれに属するのか議論が分
 れている。 動詞連用形の一般形式で:D[イ音便/・]ta:(書イ・た/食べ・た)と
 表記するように、完了形の出自は連用形からしか生成できない形態である。
→現代文法で未然形の枠に「読もう/食べよう」のD[・/y]ooを組み入れて五段
 活用表にしたのも、未然のアスペクト補強になっている。
 (文語では「読ま・む」が意思の未然形で使われたとの示唆あり。「食べ・む」もあ
 りか:D[a/・]m・uと一般化していたか)
 補強の実を上るため(命令・仮定の次枠に)「完了形」枠も組み入れるべきだろう。

 最後に私から質問した。
→助動詞の使い方に2通りあり、動詞語幹と接辞語幹とが密結合する「派生」のほ
 かに、修飾関係や語並べ的な緩い結合:「複合」がある。区別や識別を設けるべき
 ではなかろうか?
先生は悠然として回答された。
・助動詞の定義はなんですか。そうです、付属語であり・活用する語・辞は、すべて
 助動詞と品詞分類している。

→「そう/よう/らしい」は先行語に対しても後続語に対しても「複合」で連結す
 る。「そう+だ/よう+だ/らしい+のだ」は複合した形態で「緩い断定詞」各種の
 扱いにするのは、どうですか?
・(慣用度が高い形態なら)「~~基」という扱い方ができるでしょう。

 という助言をいただいて、今回1回限りの参加を終えた。
今後、「態文法を組み上げる」の考察を通して、助動詞の使い方を整理した一覧表
を作成したい。

態文法:形状動詞:こわかる?こわがる?

2017/10/08(日)

 態文法:形状動詞にも[挿入音素]が必要か態文法:動詞強制形由来の形容詞語幹
で記述したように、形容詞も形状動詞として扱う。
 落語ネタを短縮して一行で書き出すと、
「源さんは饅頭がこわかったが、こわがった後ではお茶がこわい、と言った」
を材料に考察してみよう。
こわかる?/こわがる?/こわい、の中で形状動詞の範疇に属すのは、
こわい/こわかる?、であり、「こわがる」は動作動詞に属する。
〇形状動詞の派生一般式:形容詞語幹:K+[k]+ar系接辞、
 こわい:kowa[k=0]i、こわかった:kowa[k]a(r=0[Q])ta、
 こわかろう:kowa[k]ar[・/y]oo、
 こわかる?:kowa[k]ar[]u?、←形状動詞の終止形には不採用(動作動詞と紛
 らわしい)
・「こわかる」は無律化したとはいえ、「饅頭」がこわかる動作をしたようにも感じ
 られ、やはり末尾に「る」音が付くと形容詞には向かない?
 だから、「る」音なしの地方言葉で「こわかぁ」と発話があれば共感できる。
 (あくまでも感情感覚の表現であり、こわがる動作の表現ではない)
 一方、動作動詞として考察すると、
★「こわがる」は動作動詞であり、「こわい」という感情が何らかの身体動作に
 よって体外に表出されることを意味している。
→感情の動作動詞として広く使われる接尾語:「+がる」と定義できる。
・名詞+がる:不思議がる/残念がる/気の毒がる/迷惑がる/
 (husigi[+]gar[]u/zannen[+]gar[]u/kinodoku[+]gar[]u/、)
・助動詞+がる(たがる):書きたい→書きたがる:kak[i]ta・gar[]u、
・動詞・形容詞+がる:楽しがる/うれしがる/痛がる/寒がる/
 (tanosi[+]gar[]u/uresi[+]gar[]u/ita[+]gar[]u/、)
〇助動詞:たい/たがる、は、動詞に連結する機能接辞として派生一般式で、
例:D[i/・]ta[k=0]i:形状動詞(状態形容の動詞)
 書きたい:kak[i]ta[k=0]i/食べたい:tabe[]ta[k=0]i、
例:D[i/・]tagar[]u:感情の動きを身体動作で表そうとする動作動詞であり、
 書きたがる:kak[i]tagar[]u/食べたがる:tabe[]tagar[]u、
という「挿入音素:[i/・]の連結」で表記できる。

→古語辞典で調べてみると、「まほし」、「たし」、「たがり」は古代にも記録がある。
 特に注目したのは、「~たい」が発話者の希望感情だけでなく他者の感情記述に
 も適用したし、「~たがる」は動作動詞として発話者、他者ともに適用したらし
 いこと。 また、「ク語法」の無律接辞:-ak-が盛んな時代と重なるのだが、形容
 詞の「シク活用/ク活用」の混在時代でもあり、形状動詞活用表の整理が遅れて
 いて、「こわかる」が「こわがる」生成に寄与・影響したと論じる条件はなかった
 かもしれない。
〇国語辞典で「がる」:接尾語(複合単語)として記載があり、「たい」/「たがる」:
 助動詞(たがる:連結した形態で機能接辞)として記載がある。(助動詞活用表)
〇助動詞たい:ta[k=0]i、は形状動詞の形態で用いられるし、動作動詞と見られ
 る助動詞たがる:ta・gar[]u、も、どちらも機能接辞として差別なく使われる。
→以下、記述の整理のため補足書きする。
 「がる」接尾語を分析するつもりで、kowa[・/g]ar[]uと想定してみた。
 論証するには、husigi[g]ar[]u、nozomasi[g]ar[]uなどを含めて[g]の意義
 を見つけ出す必要がある。しかし、見つからない。
 また、成立する子音挿入音素には対応する機能接辞が存在するはずで、
例:[・/r]:自律:ar[]u/s[]u/sur[]uの動詞統語接辞-u-との連結用。
 :[・/s]:律他:as-/ase-の強制、使役接辞との連結用。
 :[・/y]:互律:ay-(古語可能接辞)、現在のmi[y]oo/tabe[y]oo:勧奨推量
  の接辞との連結用。
 :[・/k]:無律:ak-(古語ク語法)、現在の散らかる:tir[]ak[]ar[]u/寝かす
 :ne[k]as[]uとの連結用。
などのように、現用の[挿入音素]には対応する機能接辞が存在しており、それに
由来する「子音」が[挿入音素:子音]で使われている。
 ところが、[・/g]ar[]uには、ag-とかの接辞が成立せず、何律の動作律仕方に
なるのか思いつかない。だから、派生形式でなく、複合化の個別的な接尾語の位
置付けで使われるのだろう。
〇なお、古語「ク語法」に対する先行研究で大野晋(古語辞典)が記述する内容:
 「あこがれ」の原意は「あく・がる」であり、「ak-」は場所を意味し、「gar-」は離
 れるを意味する。「この場を離れる高い願望を表す」と解説する。
(古語辞典に:「ある、かる、」が「離る」だと解釈するのを確認した。だが、がる?は)
この「ク語法」に関わる「あく」推論には、当方は共感がわかない。
当ブログ文法では、
・「接辞:ak-は動作意図を無律化し動名詞化する機能」と捉える。
・「gar-」については前述のように的確な解釈を示し得ない状態だ。

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