カテゴリー「日本語文法」の256件の記事

態文法:態文法を組み上げる3

2017/11/21(火)

 前回、動詞派生の一般形式を実例2つにより示した。連結した接辞は、
①D[・/r]are[a/・]na[・/k]a(r=0[Q])ta.:受動接辞、打消接辞、完了接辞。
②D[a/・]na[・/k]a(r=0[Q])ta.:打消接辞、完了接辞。
→動詞語幹に接辞(助動詞)が密に連結・派生していくのが動詞活用である。
 動詞は正に助動詞の活用に助けられるから、活用しているように見える。
 助動詞も接辞語幹に派生接辞が密に連結・派生して活用効果を出す。
 動詞も助動詞も派生構造は同じであり、「タマネギ、ラッキョの皮むき」と似て
 いる。剥いても剥いても接辞であり、最後に現れる芯は「変化のない語幹」だけ
 だ。
(このタマネギ構造は単純だが、強い法則性で均質的な派生概念が通用するとい
うことを示すもの)

1-2.動詞活用一覧表を見直す

 動詞語幹だけでは活用一覧表を作れないから、最小限の助動詞(接辞)を組み
合せて、その動詞自体の活用法を表現しなければならない。
〇国語辞典での動詞活用表は、未然、連用、終止、連体、仮定、命令の6形態を選択
 している。(概略、動詞アスペクトを表現した構成と思える)
〇国語辞典で示す「個々の活用形」は、あたかも動詞語幹に「あ、い、う、え、お」が
 標識音として付加され「区別可能な活用形態」になったような錯覚を与える。
 「あ、い、う、え、お」の由来を記述すると、決して合理的と言えない。
 あ=[a/・]から、い=[i/・]から、う=[・/r]u、[・/s]uから、え=[・/r]ebaか
 ら、お=[・/y]ooからの母音拾い出しで活用形の識別にしたものだろう。
〇特に国語辞典で言う「未然形」は打消接辞:[a/・]na(i)につながる形態や、態
 接辞:[・/r]are、[・/s]ase、につながる形態を想定している。しかし、これら
 の助動詞(機能接辞)には有用な特定意義があり、それが連結し派生すると動詞
 語幹の意味合いから外れて別動詞の意味合いになってしまう。
→動詞語幹の意味を保ち、かつ事象描写、相・アスペクト描写ができるための最
 小限の助動詞で派生を表現する「活用一覧表」を作りたい。
★最適な研究例がある。寺村秀夫:『日本語のシンタクスと意味Ⅱ』1984年9月
 20日、くろしお出版:の第4章 活用のなかの記述に詳しい説明を見た。
→特に抜群の研究成果であるのは、バーナード・ブロックの活用表だとして紹介
 してある。当ブログ思考実験でも、「未然形の空疎さ見直し」と「完了形の組み入
 れ」を思案していたので、「ブロック活用表」は形式上の一貫性がよいという点
 に感心した。
(ただし、「活用表」を使う目的が何とも不純であり、譬えで言えば、単語の「活用
の仕方」で動詞か、形容詞か、繋辞か、を振り分ける判定道具にするような構造論
理が基にあるようだ。逆にそれが用言の共通的活用形式を見抜くことにつながっ
たといえるのかもしれない。また、日本人は「派生分析:音素解析が重要」が苦手
でも「複合分析:意味解析が重要」には強みがある。ブロックは逆に「派生分析」に
強かったが「複合分析」には疑問を残す結果だったようだ)
→寺村本を読み直して、「ブロック活用表」を引用([挿入音素]、[複合:+]を付け
 て一般形式に修正して)表示することにした。
_fedewcl_2

〇表中の「派生」について補足説明する。(繋辞欄の「複合」は次回に説明予定)
①動詞欄のD[¥/・]tar[]ooを正確に記述すると、イ音便の規則に則り、
 D[i/・]tar[・/y]oo:→ka(k=0[i])tar[・]oo→kaitaroo、
 D[i/・]tar[・/y]oo:→tabe[・]tar[・]oo→tabetaroo、
 となる。派生接辞欄でtar[]ooと記したのは、二次派生の接辞構成を示した。
②形容詞欄のK[・/k]a(r=0[Q])ta:もイ音便であり、
 K[k]a(r=0[Q])ta:→samu[k]a[Q]ta→samuka[Q]ta→samukatta、
 となる。(形容詞語幹は常に母音末なので、挿入音素:[・/k]を[k]と略記)

つづく

態文法:態文法を組み上げる2

2017/11/15(水)

1.動詞活用には「派生:接尾辞の付加」と「複合:修飾語付加」の2通りあり

 国語辞典の付録ページにある品詞分類表での定義を確認しておくと、
〇単語→自立する→活用がある(用言)→終止形語尾がウ段:動詞/イ音:形容詞
 /ダ音:形容動詞(別称:名詞に似るので、形容名詞、名容詞などという)。
〇単語→自立する→活用がない→主語になる(体言)→:名詞。
〇単語→付属する→活用がある→:助動詞。  
以上の5つの品詞が文の述語要素になるもの。
 常識的に「終止形」概念が存在して、語尾音がウ段音/イ音/ダ音で分類できる
と仮定する。 念のため付録ページには、動詞・形容詞・形容名詞の「活用一覧表」
と「助動詞の活用一覧表」を載せる辞典が多い。
→用言活用に対する定義は説明不足の部分を「活用一覧表」で補っているが、根
源的な解釈から外れるところがある。(何行何段(かな音節)活用表では語幹把握
や派生法則を正確に記述できない) 
→新しい時代に向けて正確な音素解析(ローマ字表記)で「派生」「複合」を取り上
げる。

1-1.動詞の「派生」の法則は:(必要最小限の範囲で音素(ローマ字)表記する)

→動詞語幹+[挿入音素]+機能接辞語幹(助動詞語幹)+[挿入音素]+機能接辞語
 幹(助動詞語幹)+・・+[挿入音素]+統語接辞。
 の連結構造で示すように、動詞語幹の後に「+[挿入音素]+接辞語幹」を繰返し
 付加し(後段の図参照)、意味を補足して述語を完成させる。
〇例(かな文字区切り):呼ばれなかった→呼ば・れ・な・かった。
〇ローマ字解析の一般形式:呼b[・/r]are[a/・]na[・/k]a(r=0[Q])ta.
 ・動詞語幹:呼b、
 ・[挿入音素]:[・/r]、動詞語幹が子音末なら[・:無音]、母音末なら[r]発音、
 ・受動態接辞:are、(ar[・/r]e→ar[・]e→areと派生したもの)
 ・[挿入音素]:[a/・]、先行語幹が子音末なら[a]発音、母音末なら[・:無音]、
 ・打消接辞:na(i)、
 ・[挿入音素]:[・/k]、簡略化で[k]としてもよい。
 ・ar助動詞[挿入音素]完了接辞:ar[i/・]ta→(ar[i]ta)→a(r=0[Q])ta.
  [Q]促音:あ[っ]た、の詰った音を表す。(イ音便の促音表記)
〇一般形式の特徴は、動詞語幹が子音末、母音末どちらであろうと、Dと表記し
 て「派生」を書き表せることだ。
→例:一般形式で、D[・/r]are[a/・]na[・/k]a(r=0[Q])ta.と書けば、
 ・打たれなかった、切られなかった、着られなかった、飲まれなかった、食べら
 れなかった、疑われなかった、見られなかった、忘れられなかった、渡されなか
 った、止められなかった、、、などを代表する表記となる。
 次例は、動詞語幹に打消接辞が連結する場合、
〇一般形式:呼b[a/・]na[・/k]a(r=0[Q])ta.→呼ばなかった。
→一般形式:D[a/・]na[・/k]a(r=0[Q])ta.と書けば、
 ・打たなかった、切らなかった、着なかった、飲まなかった、食べなかった、疑わ
  なかった、見なかった、忘れなかった、止めなかった、、、などを含む。
★[挿入音素]と機能接辞の関係は:
 ・機能接辞が子音語頭なら[a/・]、[i/・]のように [連結母音/無音]が配置さ
  れる。
 ・機能接辞が母音語頭なら[・/r]、[・/s]、[・/k]、[・/y]のように [無音/
  連結子音]が配置される。
→動詞「派生」の一般形式での表記法を理解するうえで、[挿入音素]の考え方が
 重要なので図を追加しておく。
(次回へつづく)
_fpne6lp


態文法:態文法を組み上げる1

2017/11/05(日)

 昨日4日(土)夜、今泉研究会に参加して、持込み演題の動詞派生の一般形式表記
法について説明した。 論点の中心は態派生時の[挿入音素]を一般形式:[連結母
音/無音]、[無音/連結子音]で表記することにより、現状文法の「可能態」、「命
令形」での子音幹/母音幹・動詞での異形態発生(解釈)がなくなり安定派生が見
込めるということ、更に応用して、動詞、形容詞の相派生(未然・連用・終止・・・)に
ついても一般形式[挿入音素]を用いれば統一的に派生が理解できる。・・・
(説明図表は補追して後日投稿する)

 先生からは指摘と質問が山ほどあったが、要点を記しておく。
古語、文語、口語とのつながりで論証できるか?
独自用語をしっかり定義して説明してほしい。
相派生の表中に完了形も含まれているが、時制(テンス)と相(アスペクト)が混
在するのは誤解の元になるが、相を新しくどう定義したのか?
形状動詞はシ活用・シク活用とカリ活用とが文語時代から併存しており、その流
れからすると、挿入音素:[・/k]はなじまないのでは。また、動詞派生での[k]も
特定語に限るものではないと言えるのか?
[挿入音素]の連結子音:[・/r]、[・/s]、[・/y]、[・/k]は意味合いと関係付け
があるというが、連結母音:[a/・]、[i/・]の音に意味があるか?

→これに対する我流の答えは当然に不十分であり、確かに新しい概念に明確な定
 義をなさずに論を進める手抜き状態であることは感じている。
→動詞活用表(未然・・・命令)の6形態のうち、「態の助動詞すべて」を未然に連結
 するのではないと新定義しているので、活用表は純粋に相派生の一覧表になる
 はずだ。 相派生に終止形(未完了形)しか考えないのはおかしいので、完了形態
 が並ぶのが当然であり混在ではない。
 (詳細な相活用は連用形に複合する形式で:~ている、てある、ておく、てくる、
 ~しはじめる、しおわる、などの補助動詞を付加して生成する)
→完了形は、文法的にもテンス・アスペクト・ムードのどれに属するのか議論が分
 れている。 動詞連用形の一般形式で:D[イ音便/・]ta:(書イ・た/食べ・た)と
 表記するように、完了形の出自は連用形からしか生成できない形態である。
→現代文法で未然形の枠に「読もう/食べよう」のD[・/y]ooを組み入れて五段
 活用表にしたのも、未然のアスペクト補強になっている。
 (文語では「読ま・む」が意思の未然形で使われたとの示唆あり。「食べ・む」もあ
 りか:D[a/・]m・uと一般化していたか)
 補強の実を上るため(命令・仮定の次枠に)「完了形」枠も組み入れるべきだろう。

 最後に私から質問した。
→助動詞の使い方に2通りあり、動詞語幹と接辞語幹とが密結合する「派生」のほ
 かに、修飾関係や語並べ的な緩い結合:「複合」がある。区別や識別を設けるべき
 ではなかろうか?
先生は悠然として回答された。
・助動詞の定義はなんですか。そうです、付属語であり・活用する語・辞は、すべて
 助動詞と品詞分類している。

→「そう/よう/らしい」は先行語に対しても後続語に対しても「複合」で連結す
 る。「そう+だ/よう+だ/らしい+のだ」は複合した形態で「緩い断定詞」各種の
 扱いにするのは、どうですか?
・(慣用度が高い形態なら)「~~基」という扱い方ができるでしょう。

 という助言をいただいて、今回1回限りの参加を終えた。
今後、「態文法を組み上げる」の考察を通して、助動詞の使い方を整理した一覧表
を作成したい。

態文法:形状動詞:こわかる?こわがる?

2017/10/08(日)

 態文法:形状動詞にも[挿入音素]が必要か態文法:動詞強制形由来の形容詞語幹
で記述したように、形容詞も形状動詞として扱う。
 落語ネタを短縮して一行で書き出すと、
「源さんは饅頭がこわかったが、こわがった後ではお茶がこわい、と言った」
を材料に考察してみよう。
こわかる?/こわがる?/こわい、の中で形状動詞の範疇に属すのは、
こわい/こわかる?、であり、「こわがる」は動作動詞に属する。
〇形状動詞の派生一般式:形容詞語幹:K+[k]+ar系接辞、
 こわい:kowa[k=0]i、こわかった:kowa[k]a(r=0[Q])ta、
 こわかろう:kowa[k]ar[・/y]oo、
 こわかる?:kowa[k]ar[]u?、←形状動詞の終止形には不採用(動作動詞と紛
 らわしい)
・「こわかる」は無律化したとはいえ、「饅頭」がこわかる動作をしたようにも感じ
 られ、やはり末尾に「る」音が付くと形容詞には向かない?
 だから、「る」音なしの地方言葉で「こわかぁ」と発話があれば共感できる。
 (あくまでも感情感覚の表現であり、こわがる動作の表現ではない)
 一方、動作動詞として考察すると、
★「こわがる」は動作動詞であり、「こわい」という感情が何らかの身体動作に
 よって体外に表出されることを意味している。
→感情の動作動詞として広く使われる接尾語:「+がる」と定義できる。
・名詞+がる:不思議がる/残念がる/気の毒がる/迷惑がる/
 (husigi[+]gar[]u/zannen[+]gar[]u/kinodoku[+]gar[]u/、)
・助動詞+がる(たがる):書きたい→書きたがる:kak[i]ta・gar[]u、
・動詞・形容詞+がる:楽しがる/うれしがる/痛がる/寒がる/
 (tanosi[+]gar[]u/uresi[+]gar[]u/ita[+]gar[]u/、)
〇助動詞:たい/たがる、は、動詞に連結する機能接辞として派生一般式で、
例:D[i/・]ta[k=0]i:形状動詞(状態形容の動詞)
 書きたい:kak[i]ta[k=0]i/食べたい:tabe[]ta[k=0]i、
例:D[i/・]tagar[]u:感情の動きを身体動作で表そうとする動作動詞であり、
 書きたがる:kak[i]tagar[]u/食べたがる:tabe[]tagar[]u、
という「挿入音素:[i/・]の連結」で表記できる。

→古語辞典で調べてみると、「まほし」、「たし」、「たがり」は古代にも記録がある。
 特に注目したのは、「~たい」が発話者の希望感情だけでなく他者の感情記述に
 も適用したし、「~たがる」は動作動詞として発話者、他者ともに適用したらし
 いこと。 また、「ク語法」の無律接辞:-ak-が盛んな時代と重なるのだが、形容
 詞の「シク活用/ク活用」の混在時代でもあり、形状動詞活用表の整理が遅れて
 いて、「こわかる」が「こわがる」生成に寄与・影響したと論じる条件はなかった
 かもしれない。
〇国語辞典で「がる」:接尾語(複合単語)として記載があり、「たい」/「たがる」:
 助動詞(たがる:連結した形態で機能接辞)として記載がある。(助動詞活用表)
〇助動詞たい:ta[k=0]i、は形状動詞の形態で用いられるし、動作動詞と見られ
 る助動詞たがる:ta・gar[]u、も、どちらも機能接辞として差別なく使われる。
→以下、記述の整理のため補足書きする。
 「がる」接尾語を分析するつもりで、kowa[・/g]ar[]uと想定してみた。
 論証するには、husigi[g]ar[]u、nozomasi[g]ar[]uなどを含めて[g]の意義
 を見つけ出す必要がある。しかし、見つからない。
 また、成立する子音挿入音素には対応する機能接辞が存在するはずで、
例:[・/r]:自律:ar[]u/s[]u/sur[]uの動詞統語接辞-u-との連結用。
 :[・/s]:律他:as-/ase-の強制、使役接辞との連結用。
 :[・/y]:互律:ay-(古語可能接辞)、現在のmi[y]oo/tabe[y]oo:勧奨推量
  の接辞との連結用。
 :[・/k]:無律:ak-(古語ク語法)、現在の散らかる:tir[]ak[]ar[]u/寝かす
 :ne[k]as[]uとの連結用。
などのように、現用の[挿入音素]には対応する機能接辞が存在しており、それに
由来する「子音」が[挿入音素:子音]で使われている。
 ところが、[・/g]ar[]uには、ag-とかの接辞が成立せず、何律の動作律仕方に
なるのか思いつかない。だから、派生形式でなく、複合化の個別的な接尾語の位
置付けで使われるのだろう。
〇なお、古語「ク語法」に対する先行研究で大野晋(古語辞典)が記述する内容:
 「あこがれ」の原意は「あく・がる」であり、「ak-」は場所を意味し、「gar-」は離
 れるを意味する。「この場を離れる高い願望を表す」と解説する。
(古語辞典に:「ある、かる、」が「離る」だと解釈するのを確認した。だが、がる?は)
この「ク語法」に関わる「あく」推論には、当方は共感がわかない。
当ブログ文法では、
・「接辞:ak-は動作意図を無律化し動名詞化する機能」と捉える。
・「gar-」については前述のように的確な解釈を示し得ない状態だ。

態文法:態の律仕方を伝える4

2017/09/27(水)

 今回も可能態接辞:e-に関する機能について新論を記述する。
〇文語文法では、「え音」の已然形(すでにそうなっている事態を表す)の概念は
 係り結びの用法で使うのだという印象が強い。 が、単独でも使える。
〇現代の学校文法でも、仮定形(そうなっていると仮定する)に接辞:eba-が使
 われる。「え音」の已然形の概念が潜在するのだが明確な解説はない。
★今回の伝える主題は、動詞活用表の「命令形」に対する律仕方である。
 江戸期の国学者・本居春庭(「詞八街」、「詞通路」)が最初に表した活用表は、
 「未然・連用・終止・連体・已然」の5形態だったので、後継学者が「命令形」を追加
 した。学校文法でも「未然・連用・終止・連体・仮定(已然)・命令」の6形態で継承
 する。

→当ブログ態文法では、6形態「活用表」が、動詞の相(アスペクト)派生の模式表
 なのだと解釈する。その意味で「国文法の工夫の産物」と評価する。
→模式表の価値を高めるためにも次の2点を明確にしたい。
①追加した「命令形」が配置される位置は、6形態の6番目でよいのか?
②配置を決めるためには、「命令形」が意味する「動作の律仕方」を定義する必要
 がある。特に現代口語では子音幹動詞と母音幹動詞の命令形が見かけ上の形態
 が違っているので、注意深く一般化して定義すべきだろう。
→では、「命令形」の配置と律仕方の検証・考察を開始する。
★文語文法の命令形(一般形式):
 D[・/r]e:→D[]e-:(子音幹動詞):書け、読め、走れ、飛べ、(已然手前の概念)
 D[i/・]Ø[・/y]o:(母音幹動詞):見よ、食べよ、乗せよ、走らせよ(連用勧奨的)
〇文語での命令形は、「連用以上で已然手前の概念」を表現するようだ。
★口語文法の命令形(一般式):
 D[・/r]e[・/y]o:(子音幹・母音幹両動詞):書けよ、読めよ、見れよ、乗せれよ
 D[・/r]e【省略[・/y]o】:→D[]e-:書け、読め、走れ、飛べ、(子音幹動詞)
 D[・/r]【省略e[・/y]】o:→D[r]o-:見ろ、食べろ、乗せろ、(母音幹動詞)
〇口語の命令形は、「終止連体以上で已然手前の概念」を表現するようだ。

→以上の考察から、口語体の命令形は、
★動詞相派生の順序として「未然・連用・終止・連体・命令・仮定(已然)」の配置が
 ピタリなのだろう。
★命令形の一般式:D[・/r]e/o:の形態について吟味すると、
 ←D[・/r]e【省略[・/y]o】:子音幹動詞での変遷、
 ←D[・/r]【省略e[・/y]】o:母音幹動詞での変遷、
 が省力化・短縮化の結果であると説明できる。この一般式表示で問題ない。
〇可能接辞:e-(律仕方が互律)、[・/y]oo接尾辞(勧奨の互律動作)に近い呼掛
 け接辞:[・/y]oと見なせば、「互律動作」形態の動詞でも相手に対する指示命
 令の言葉になる。
 つまり、命令一般式:D[・/r]e/o:の形態は、一見すると異形態であり不安定
 に思えるが、実際は共通形態から生まれたものだといえる。
 時代変化で子音幹/母音幹での省略化に違いが生じたが、基本の相派生の位置
 も律仕方の意味も矛盾がないと分かる。

態文法:態の律仕方を伝える3

2017/09/23(土)

 前回の記事途中にて、言いさして寸止めした「可能態接辞」について態文法に関
わる重要な部分を補足したい。
〇平安期から江戸期にわたり大規模な言語社会実験のように、動詞形態の一部が
 「二段活用から一段活用への変移」した。 これを仔細に述べる能力はないので
 深入りしないが、可能態接辞が果す「態の役割」実態を指摘しておきたい。
★すべての動詞(事象動詞:D[・/r]u、D[・/r]ar[]u、D[・/r]as[]u)には、
 可能態接辞-e-を連結でき、「態の万能継手:ユニバーサル・ジョイント」の役割
 を果すことができる。

 「態の万能継手:ユニバーサル・ジョイント」を例文で示す。
★例:滝に打たれ-させ-られ-る:ut[]ar[]e-[s]as[]e-[r]ar[]e-[r]u.
 (かな解釈に合せて「-記号」を挿入して区切りを示した)
→受動-使役-受動の態動詞が継手:e[r]、e[s]で連結される。
 可能接辞:母音単音だから、e[r]/e[s]のように、[挿入音素]を[r]:自律、
 [s]:律他のどちらにも連結でき、その意味で万能継手だ。
★例:祖父が父に私を大学に行かせ-させ-た:ik[]as[]e-[s]as[]e-[]ta.
→使役-使役、二重使役の構文。
★例:父が祖父に私を大学に行かせ-させ-られ-た:
 ik[]as[]e-[s]as[]e-[r]ar[]e-[]ta. →使役-使役-受動の構文。

〇「え音」は、いわゆる動詞活用表の感覚でいうと、「四段活用の已然形、仮定形」
 であり、「下二段活用、下一段活用の未然・連用形」に相当する。
 少なくとも「動作に取りかかり、動作に目鼻がついた」状態を表現する機能を
 発揮している。(已然形の概念を端的に表す)
→対比のため、「い音」の連用形に代えると、「取りかかったままの動作」が、いく
 つも併存することなって、話し手、聞手のお互いの互律・納得の感じが進まない。
×滝に打たり-さし-らり-る:ut[]ar[i]Ø-[s]as[i]Ø-[r]ar[i]Ø-[r]u.
×大学に行かし-さし-た:ik[]as[i]Ø-[s]as[i]Ø-[]ta.
×大学に行かし-さし-らり-た:ik[]as[i]Ø-[s]as[i]Ø-[r]ar[i]Ø-[]ta.
「い音」連用形も母音単音の挿入音素:[i]と無音接辞:Øとで構成できる万能継手
であるが、自律動作の意思・意向が強く前面に出てしまい、話し手、聞手のお互い
の互律・共感が涌いてこない。

★古語時代から「ある・さす」の受動・使役動詞に対しては四段活用を用いるので
 はなく、「あれ・させ」の二段・一段活用を優先してきたのは、「え音」が持つ已然
 感覚と互律感覚が殊更に有用であったからなのだと思う。
→互律感覚とは、「互に勧奨・誘導し合うような意図的な動作:やろう、しよう」か
 ら始まり、「動作がぶつかり合う使役・受動の動作」や「大事件の不可抗力的な動
 作・被害」を含めた事態・事象に対して、「物の道理」「事の道理」「人の道理」「自然
 の摂理」に則った動作・事象であると感じ取り得心できる感覚のことである。
 「法の道理」は「物・事・人・自然の道理」を調整総合して成立つもので後追いの道
 理であるが、言語のなかでは「文法の道理」も後追いながら同様に論理の整理に
 役立つはずだ。
→冒頭に記したように、すべての動詞が可能態を派生できる。
 一般式で表現すると、D[・/r]e[r]uである。
 (「ら抜き」でなく、受動態から「ar抜き」したと見るのが可能態である)
例:watas[・/r]e[r]u→watas[]e[r]u:渡せる(子音幹動詞→母音幹動詞)
 (渡される:渡すことができると、渡すことをされる意味もある)
 nose[・/r]e[r]u→nose[r]e[r]u:乗せれる(母音幹動詞→母音幹動詞)
 mi[・/r]e[r]u→mi[r]e[r]u:見れる(母音幹動詞→母音幹動詞)
 sagas[・/r]e[r]u→sagas[]e[r]u:探せる(子音幹動詞→母音幹動詞)
 abi[・/r]e[r]u→abi[r]e[r]u:浴びれる(母音幹動詞→母音幹動詞)

例:別の派生形式で子音幹/母音幹の動詞を試す。
〇子音幹動詞の例
 ・連用形:D[i/・]te:渡して、探して(-s[i]te)、
 已然連用:D[・/r]ete:渡せて、探せて(-s[]ete)、
 受動態:D[・/r]ar[]ete:渡されて、探されて(-s[]ar[]ete)、
〇母音幹動詞の例
 ・連用形:D[i/・]te:乗せて、見て、浴びて(-e/i[]te)、
 已然連用:D[・/r]ete:乗せれて、見れて、浴びれて(-e/i[r]ete)
 受動態:D[・/r]ar[]ete:乗せられて、見られて、浴びられて(-e/i[r]ar[]ete)
→この連用形の例で分かることは、子音幹動詞よりも母音幹動詞のほうが一段
 早く已然傾向に染まっている。(当然と言えば当然だが)
・子音幹動詞の已然連用が母音幹動詞の連用形に相当し、子音幹動詞の受動態が
 母音幹動詞の已然連用の形態と似たような印象になる。
 (つまり、母音幹動詞の已然連用は、子音幹動詞の受動態と遜色ないほど可能態
 としての機能を果せる形態である)
〇後追いながらこの「態文法の道理」も役立ときが早く来てほしいと思う。
 (動詞派生を一般式表現することで新しい文法則をいくつか見つけて、投稿を
  しているわけだ)

態文法:態の律仕方を伝える2

2017/09/14(木)

 今回は、律仕方のうち「果律」:結果態、「果互律」:受動態について解説する。
★態動詞の動作の仕方:一般式=動詞語幹:D+[挿入音素]+態接辞
①能動原形態:D[・/r]u→動作:Dを「自律」でする。(自・他動詞ともに)
②可能態:D[・/r]e[r]u→動作:Dを「互律」でする。(主体・客体が互いに)
③結果態:D[・/r]ar[]u→動作:Dの「果律」がある。(結果が主・客に)
④受動態:D[・/r]are[r]u→動作:Dの「果互律」がある。(結果が主・客全体に)
〇文語体でも、④「書かれ」:未然・連用、③「書かる」:終止という下二段活用で使
 われていたから、結果・受動の形態を知っていたはずだが、次への変移:下一段
 化(終止・連体の同形化と連動)して④「書かれる」終止形態:独立単語になるた
 めには大きな言語上の社会実験を経なければならなかった。
〇今でも、ひらがな解釈に留まり続ける口語体の学校文法や国語辞典では、接辞
 形態:-ar-や-are-を音素把握していないし、説明できていない。

→「二段活用から一段活用への変移」については深入りしないが、可能態接辞が
 二次派生する実態を指摘しておこう。
★注目点は一般式:上例①~④、(前回投稿記事の強制系⑤~⑧、使役系⑨~⑫)
 の偶数丸数字の動詞には、必ず可能態接辞が付く。二次派生している。
→③結果態から④受動態への二次派生:-ar[]e[r]uの方法は、①→②と同様に
 ②可能態接辞-e-を汎用的に使用し二次派生の連結をするものである。
→同様に前回記事で⑤強制→⑥使役(強制可能)、⑨使役→⑩使役可能などでも
 ②可能態接辞-e-を汎用的に使用し二次派生の連結をするとを記述した。
★すべての動詞(事象動詞:D[・/r]u、D[・/r]ar[]u、D[・/r]as[]u)には、
  可能態接辞-e-/-e[r]u-を付加して二次派生させることができる。
→可能態接辞-e-を付けると、相・アスペクト的には「動作実行、已然状態」を表
 出できる。

 実際の受動態例文を見ながら、果律、果互律の律仕方を解釈する。
→結果態派生:D[・/r]ar-で一瞬の間をおいてから、可能態接辞:e-を連結して
 受動態:D[・/r]ar[]e-を生成すると思いながら意味を考えてください。
例:受動態の機能は「果互律」であり、「受身」専用の意味ではない。
「昨夜、隣家が泥棒に(入られ)た」:hair[]ar[]e-
「買物メモを(渡され)たが、夕方には買物自体を忘れていた」:watas[]ar[]e-
「熱くてコーヒーが(飲まれ)ない」:nom[]ar[]e-
「ゆっくりして(いられ)ない」:i[r]ar[]e-
「旅行に(行かれ)なくなった」:ik[]ar[]e-
「彼は納豆が(食べられ)る」:tabe[r]ar[]e-
「滝に(打たれ)(させられ)る」:ut[]ar[]e[s]as[]e[r]ar[]e-
「妹が小鳥を猫に(殺され)た」:koros[]ar[]e-
「そこに(立たれ)ると、何も見えない」:tat[]ar[]e-
「橋が新しく(架け替えられ)た」:kake[+]kae[r]ar[]e-
→受動態は、「動作結果のある、在る、有る」ことと、動作主体、客体、対象、事象
 (物の道理、自然の摂理)などとの互律関係を描写する機能がある。
 そのため、動作結果に至る要因や心理を説明する語句があると分かりやすい
 構文になる。
→一方、可能態:D[・/r]e[r]u、は、受動態:D[・/r]ar[]e[r]u、から結果態
 接辞:ar-を取り外して現れる形態と同じになる。(俗称「ら抜き」というが、
 本当は「ar抜き」だ) 可能態:D[・/r]e-は「動作:Dを互律でする」ことを表現
 する、つまり「事象:Dでの即応的な動作互律」を表現対象にしている。
→動作結果を洞察するような配慮を表すのは受動態の機能である。
例:泥棒が(入れ)ないように施錠する:hair[]e-、外出時の即応的な対策。
 (入られない)対策:hair[]ar[]e[]na[k=0]i、には厳重な恒久対策が必要。
 納豆が(食べれ)る:tabe[r]e-、納豆を食べる(動作)ができる。
 関西では納豆が(食べられていない):tabe[r]ar[]e[]te[+]i[]na[k=0]i、
 食べる習慣、実績・結果(=食べる+ある)がないという意味を表す。
〇行ける/行けない、考えれる/考えれない、可能態での可否表現をした場合、
 動作に対して即応的な軽い気持・意思だけの反映と感じる。
 だが、行けた/行けなかった、考えれた/考えれなかった、完了形可能態なら、
 結果を含めた述懐・回想だとの実感が強くなるが、あくまでも出来事の一場面
 での可否の対応行動に限定した述懐、個人体験の述懐だと感じられる。
〇行かれる/行かれない、考えられる/考えられない、受動態での可否表現は
 動作に対して結果状態まで予測・経験した結論的な判断だと感じる。
 受動態の場合には、行かれた/行かれなかった、考えられた/考えられなかっ
 た、と完了形になっても、時制の差を感じるが、出来事の結論的な結果に影響し
 ていないと感じる。熟慮結論型の可否判断、習慣・実績の判断表現である。

態文法:態の律仕方を伝える1

2017/09/07(木)

 江戸期の国学者・本居春庭(「詞八街」、「詞通路」)の「動詞の自他」説明に記述さ
れた独特な考え方に強い魅力を感じたことがある。
態文法を考える上で「受動-能動-使役」が直線状態でなく、平面状態なのだと気
づく手掛りにもなった。
例:「動詞の自他」説明:(文法辞典引用)
①おのずから然る、みずから然(す)る、 ②ものを然(す)る、 ③他に然(す)る、
 ④他に然さする、 ⑤おのずから然せらるる、 ⑥他に然せらるる。
改めて文法辞典での解説文で①~⑥を見ると、不満な点も見えてくる。
→「然る:そうである」そのものが現代人には分かりにくい。
 「然る」自身の派生:然る/然する/然りになる/然りにする/然さす/然りに
 させる/然りにさせらる:などを曖昧に使っていては、意味の曖昧さを克服で
 きない。
〇また、先行研究として『三上章は「能動」「所動」概念の説明』で、次のような動詞
 区分を記述した、と寺村秀夫『日本語のシンタクスと意味(1)』にある。
引用:(三上章が「能動/所動と受身」を自・他動詞の区分(権田直助記述)と対比)
 能動詞→直接、間接受身=他動詞(コワス、作ル)←ものを然する(権田直助) 
 能動詞→×、間接受身のみ=自動詞(死ヌ、泣ク)←みずから然する(権田直助)
 所動詞→×、×受身なし=自動詞(アル、要ル)←おのずから然る(権田直助)
 自動詞のなかには受身にならない所動性の動詞もある。(要約:引用終わり)
→能動/所動の概念は重要なのだが、動詞は自他交替、態派生、相派生の操作に
 より簡単に能動→所動、所動→能動が瞬時に入れ替るのだ。
だから、「おのずから然る/みずから然する/ものを然する」などと悠長に思考し
ていられない。

★「態の双対環」文法では、動詞の動作の仕方を識別する言葉として「律する」を
 選定した。
〇国語辞典:律する:①さだめる、きめる②ある規律にあてはめて処置する。
→解釈②の「ある規律」とは、物の道理、事の道理、人の道理、自然の摂理などを
 引き当てることで、それを行動基準として「律する」のだと理解できる。
★態動詞の動作の仕方:一般式=動詞語幹:D+[挿入音素]+態接辞
①能動原形態:D[・/r]u→動作:Dを「自律」でする。(自・他動詞ともに)
②可能態:D[・/r]e[r]u→動作:Dを「互律」でする。(主体・客体が互いに)
③結果態:D[・/r]ar[]u→動作:Dの「果律」がある。(結果が主・客に)
④受動態:D[・/r]are[r]u→動作:Dの「果互律」がある。(結果が主・客全体に)

⑤強制原形態:D[・/s]as[]u→動作:Dを「律他」する。(他に自律:Dをやらす)
⑥可能態:D[・/s]ase[r]u→動作:Dを「律他互律」する。
 (他に自律:Dをやらせる。互律付きだから、主体が他に介助、手助けするも可)
⑦結果態:D[・/s]as[]ar[]u→動作:Dの「律他果律」がある。
 (他に自律:Dをやらす結果が主・客を律する)
⑧受動態:D[・/s]as[]are[r]u→動作:Dの「律他果互律」がある。
 (他に自律:Dをやらす結果が主・客全体を律する)

⑨使役原形態:D[・/s]ase[r]u→動作:Dを「律他互律」する。
 (他に自律:Dをやらせる。互律付きだから、主体が他に介助、手助けするも可)
⑩可能態:D[・/s]ase[r]e[r]u→動作:Dを「律他互律・互律」する。(使役互律)
 (他に自律:Dを使役させるのが可能:道理に適う)
⑪結果態:D[・/s]ase[r]ar[]u→動作:Dの「律他互・果律」がある。(使役果律)
 (他に自律:Dを使役させる結果が主・客を律する)
⑫受動態:D[・/s]ase[r]are[r]u→動作:Dの「律他互・果互律」がある。
 (使役果互律:→使役受動と呼んで「律他互・果互律」と分析できるだろうか)
 (他に自律:Dを使役させる結果が主・客全体を律する)
→以上の①~④、⑤、⑨、の律仕方が重要な概念を持っている。

★もう一つ、「無律」という概念があります。古語では「ク語法」と呼んだ派生法で
 江戸期でも使用例が少なってしまい、誤解釈もあったようだ。現代の使い道は
 無律接辞-ak-で脱動詞概念名詞(曰く、老いらく、願わくは)などの派生や、
 [挿入音素]に転用して、挿入音素:[k]の形態で動詞(寝かす、笑かす)、形状動
 詞の派生(tanosi[k]ereba、rasi[k]u[+]na[k=0]i)などに活躍している。
→「然る:si[k]ari,si[k]ar[]abaの転用」自体にも人知れずに活躍する。
 ([挿入音素:k]転用の解釈は当ブログ発案の用法だが、有用性の高い仮説だ)
→現代でも「無律」が使われる理由は、「自律」「律他」の識別を意図的に無効化し
 たい場合に役立つし、有用であるからだ。
例:赤児を寝さす:親の「律他:指示動作」で赤児に自律動作をさすのは無理だ。
 つまり、赤児の「自律」動作が心もとない状態を斟酌すべきだから、別表現で
 :赤児を寝せる:「互律」感が効くが、「物を横にする」表現とも解釈できる。
 :赤児を寝かす:(ne[k]as[]u)「無律化」した動作をやる→単純な他動詞化へ
  変換できたから、親の「自律」動作だけで「赤児を寝かす」と表現できる。
 :赤児を寝かせる:(ne[k]ase[r]u)親の「自律・互律」が明確になり心理的にも
  ぴったりの表現。(赤児は自然の摂理に従うだけの互律動作でよい。親が添い
  寝してもよい)
互律の例:ついでに「可能態=互律」を解釈する。
 :彼は英語が話せる:互律で「話す」→彼と英語が互に言語法則に則り「話す」動
 作をする。
 :彼女はピアノが弾ける:互律で「弾く」→彼女とピアノが互に音楽の道理に則
 り「弾く」動作をする。
 :窓ガラスが割れる:互律で「割る」→何かがガラスと物理反応を起こし「割る」
 動作をする。(自然の摂理に従い「割れる」、と考える手もある)

→日本語は動作の律仕方について以上のような細かい心理描写を込めて発話す
 るし、おそらく他のアルタイ諸言語でも同様な派生描写を行うのだろう。
〇律仕方を身につけた後は、能動態(=自律)、可能態(=互律)、結果態(=果律)、
 受動態(=果互律)、強制態(=律他)、使役態(=律他互律)、と態名称を聞いたら
 カッコ内の(律名称)が思い浮ぶようになってくると心強い。
〇律仕方を考えるとき、自動詞/他動詞の区別は不要であり、自律動作か/律他
 動作かの区別をはっきりと表現しようとする意識が大事だ。

態文法:解説6:そこで探査用「双対環」を

2017/08/28(月)

 今回は解説のしめくくりとして、次の2点に触れておきたい。
・強制系、使役系の「態の双対環」2組両方を常に併記するのは何故か?
・能動系にも対になる別組の「双対環」があるのか?
(「態の双対環」考察の背景事象をふりかえり、自問自答する)
★「動詞派生」の順序は、動詞の自他選択、態形態選択、相形態選択、助動詞選択、
 統語選択、接続選択、とつづく。このうち、自他・態・相選択が基本的な機能接辞
 による派生であり、自他交替と相派生の中間にある「態派生」は、言語変化の歴
 史のなかで両者との兼合いで影響を受け合ってきただろう。
〇特に相形態の変化(動詞二段活用から一段化)は、自他の有対・無対動詞の新旧
 交替を加速し、已然・可能態の強力化?・普遍化、相形態の終止・連体同形化など
 の広範囲にわたって影響した。平安期から江戸期にわたる自然発生的な言語社
 会実験だったろう。

 「態の双対環」文法を考え始めたきっかけは、受動態の多義性を解明する方法を
探し求めたことだった。
①「態動詞を幅広く把握する」には、能動-受動の対向区間の中間に、可能態(已
 然相)・結果態(文語受動)を並べるべきだと思いついた。
②通常、能動を中心に「受動-能動-使役」の鏡像模式設定するが、使役にも使役
 受動態があるから、一直線でなく、平面で考えるべきだ。
③「能動-可能-結果-受動」、「強制-可能-結果-受動」、「使役-可能-結果-受動」
 3系で4態が相似的な双対形式(能動-受動の対と可能-結果の対が直交する)
 に見立てる構造図へとたどりついた。(簡略的には一行文字列表記する)
④3系4態が「相似的な双対形式」だということを目に見えるようにする。
 (因数分解の要領で一般式にする)
→能動原動詞語幹:Dとして、一般化:D(原形態-可能態-結果態-受動態)
★一般式:D([・/r]u、[・/r]e[r]u、[・/r]ar[]u、[・/r]ar[]e[r]u)
→強制派生語幹:D[s]as→これを新語幹:Dとして、
 一般式:D([・/r]u、[・/r]e[r]u、[・/r]ar[]u、[・/r]ar[]e[r]u)、または
 派生:D[s]as([・/r]u、[・/r]e[r]u、[・/r]ar[]u、[・/r]ar[]e[r]u)、
→使役派生語幹:D[s]as[]e→これを新語幹:Dとして、
 一般式:D([・/r]u、[・/r]e[r]u、[・/r]ar[]u、[・/r]ar[]e[r]u)、または
 派生:D[s]as[]e([・/r]u、[・/r]e[r]u、[・/r]ar[]u、[・/r]ar[]e[r]u)、
〇このように「原形態」概念を導入すると、一次派生、二次派生の語幹に対しても
 相似形式で「双対環」を操作できる。
★これを標準「双対環」と定義する。
→一般式:D[・/r]u、D[・/r]e[r]u、D[・/r]ar[]u、D[・/r]ar[]e[r]u、
→一般式:D([・/r]u、[・/r]e[r]u、[・/r]ar[]u、[・/r]ar[]e[r]u)←Dが各
 項に掛る形式である。
⑤すべての原動詞:Dに対して、強制態、使役態が例外なしに成立する。
・強制態接辞-as-が強い律他動詞性(他者を動かす)を持ち、D動作をやらす。
・使役態接辞-as[]e-は律他動詞性に併せて、手助けの互律でD動作をやらせる。
 使役態=強制可能態でも十分に動作性が残る動詞である。
〇「態の双対環」文法で「強制(文語使役)」と「使役(強制可能)」の並立を採用する
 理由は、現代口語の中で両系統ともに使われること、また、態動詞を幅広く把握
 できることだ。(教育現場で強制系の除外化をしないでほしい)

 さて、2件目の課題は、・能動系にも対になる別組があるのか? だ。
⑥能動系原動詞には「自動詞に属する」か「他動詞に属する」かの違いがある。
 はじめから自動詞/他動詞と別々(機能接辞を持つ)の動詞であれば、それぞれ
 を「態の双対環」に適用して「3系4態の「双対環」形式に書き出せる。
・つまり、能動系動詞は3組の「双対環」を派生できるのが、普通なのだ。
⑦「対になる別組の「双対環」を派生できるか」とは、一次派生(強制接辞-as-)、
 二次派生(使役接辞-as[]e-)のような機能接辞が他にもあるのか、という意味
 でもある。また、態接辞を重ねて二重可能態(れ足す言葉)や二重使役態(さ入れ
 言葉)などの使い方に関わることか。
〇現代語で新たな態接辞は現れていないし、態の律仕方に追加すべき「律の在り
 方」を新しく提案するものはない。
〇「態接辞の二重化」は正当な使用法である場合と不都合な誤用とがある。
→正当な使用法:立てる、進める、上げる、など他動詞(自律動作)扱いができる
 動詞(主体・対物の互律だが自律優勢で実現する)であれば、
正当例:立てれる、進めれる、上げれる:形態的には互律互律だが、自律互律の感
 覚で意味を理解できる。(二重化後は自律性は弱くなり、性状属性表現になる)
→不都合を招く:行ける、割れる、書ける、など可能動詞(自発動詞も含む)は互律
 動作で主体自律は弱く、事象条件の都合性が優勢である。(二重可能化↓ダメ)
誤用例:行けれる、割れれる、書けれる:形態どおりの互律互律が感じられ、意味
 が不安定で収れんしない。

 以上、「態の双対環」と「態動詞の律仕方」を解説してきた。
標準「双対環」の使い方の実例を付記しておきたい。
実例:古い単語に対して若い世代が意味を理解できない事例
 (実体験)今回の解説連載では、述語を終止形で締めることを試している。
 記事を推敲するうちに、「~操作で正しい語幹が求まる。」と書き下して、ふと考
 えた。動詞「求まる」はパソコン漢字変換で失敗する、若者に通用するのか?と。
 ネット検索してみたら、やはり「求まる」を質疑応答する記事がけっこう並ぶ。
 質問者が自分の疑問をネット質問する前に、自分で探査するための探査用「双
 対環」を使えるとよいと思う。
・標準「双対環」が探査用に使える。
→「求まる」:MOTOM・aruだから、-aru-接辞を捨て、語幹:MOTOMにたどり
 着けば、標準「双対環」:MOTOM[]u-MOTOM[]e[r]u-MOTOM[]ar[]u-
 MOTOM[]ar[]e[r]u-、求む-求める-求まる-求まれる、を書き出せる。
 他動詞:「求める」、自動詞:「求まる」(結果態の感じ)が納得できるだろう。
→古い単語の例をもう一つ、
 「受く」(下二段から下一段化でお蔵入りした原動詞)を漢字変換してみた。
 UK[]u-UK[]e[r]u-UK[]ar[]u-UK[]ar[]e[r]u、
 受く-受ける-受かる-受かれる、のうち、「受ける/受かる」だけが漢字変換で
 きた。(これは有対の他・自動詞の扱いで漢字変換登録済みだからだろう)

★標準「双対環」は態や派生接辞の付け外し操作ができる方にとっては探査用、
 あるいは説明用「双対環」になる。また、機能接辞を見つけ出す操作を正しく
 できるようになれば、昔の原動詞の姿を見れて、江戸期の壮大な言語社会実験
 に対する実感が湧いてくるかもしれない。

解説完了

態文法:解説5:態動詞に律仕方あり

2017/08/26(土)

 膠着語である日本語の動詞(などの用言)は、動詞「語幹」に「機能接尾辞」を順次
「連結していく」ことで新しい意味を「派生」する。
〇「派生一般式」は、動詞語幹+[挿入音素]+機能接辞語幹+、・、・+[挿入音素]+
 統語接辞で表現する。

★態動詞の「動作の律仕方」を解説する。
 主要な態動詞を選択して解説する。前回、律動作の名称を各系で同一化したの
で、主要でなくとも同じ律名称は同じ意味に応用解釈してほしい。
〇「主要態動詞の律仕方」を選ぶ。
・能動系については、全部が大事な律動作。
①原形態:D[・/r]u:★「自律動作」(自他動詞ともに)自己意思で動作する。
②可能態:D[・/r]e[r]u:★「互律動作」自律で対象の動作法則に従い動作する。
③結果態:D[・/r]ar[]u:★「果律動作」動作結果に対する動作叙述。
④受動態:D[・/r]ar[]e[r]u:★「果互律動作」動作結果に応じる動作叙述。
・強制系については、原形態(基本強制動詞)を選び解説する。
⑤原形態:D[・/s]as[]u:★「律他動作」他者にD動作をやらす。(指示、命じる)
・使役系についても、原形態(基本使役動詞)を選び解説する。
⑨原形態:D[・/s]as[]e[r]u:★「使役動作」←「律他互律動作」と同じ。
 (律他互律の互の意味は、被律者と主体律者の間で、律者に戻る動作だから、
  主体が手助けや、介助、心理的な補助動作などをする意味となる)

★「律仕方」の基本視点は、動作の意図、意思の在り場所、方向の見立てにある。
〇「原形態の律仕方」:自律(自・他動詞)/律他(強制)/律他互律(使役)
①「動作・行動」を→自分みずから行う:自律動作。(自・他動詞で区別しない)
⑤「動作・行動」を→他者に自律動作としてやらす:律他動作。(1を命じて10をさ
  す)
⑨「動作・行動」を→他者に自律動作としてやらせる。心配なら手助けする:律他
  ・互律動作。(1~3を命じて10~8をさせる)
〇強制「さす、やらす」と使役「させる、やらせる」は文語体の時点で、下二段活用
 (させ:未然・連用、さす:終止)であったから、下一段化(させる:終止)で態動詞
 :させる、やらせる、に移行しやすかった。
★使役態は強制態に可能態接辞-e[r]u-を付加した形態であり、意味も上乗せ
 するのが文法則である。
(同時に、強制態接辞-as-は、自他交替接辞として単語派生に使われているから
、動詞語彙の財産になっている。文法的にきちんと解釈するのがよいはずだ)

〇「可能態の律仕方」:互律動作(文法的には已然形の概念が深層にある)
②「動作・行動」が→すでに行われる状態である。(態でもあり、相でもある)
 ・「動作・行動」が→自律の対物動作ならば、立つ→立てる:自他交替。
 (他動詞へ交替後の力量配分は客体1、主体9の労力を継続する他動詞となる)
 ・「動作・行動」が→自律の対物動作ならば、割る→割れる:他自交替。(自発)
 (自動詞へ交替後の力量配分は主体1、客体9の物理法則に従う。所動化)
 ・「動作・行動」が→自律の対自解釈ならば、立てる、割れる:自他可能表現。
 (自律で可能を表現する場合、主体5、客体5程度の物理条件が必要か。所動化)
〇互律動作とは、自律主体は意思で実行可能と感じる、対象客体は動作を受けて
 物理法則に従い状態変化する。
★「可能態の意味」の深層は、仮定形:D[・/r]eba:の確定条件に対して肯定的に
 呼応して、D[・/r]e[r]u:と表現する状態なのだろう。
例:書けば→書ける、読めば→読める、見れば→見れる、食べれば→食べれる
 のように解釈するのが一番話しの筋が通る。(動作相は可能状態の表出、動作性
 は失っている)
〇互律動作とは、自律動作で書ける、読める、見れる、食べれる、立てる、割れる
 の行為だけでなく、書く・読む法則・見る・食べる・立つ・割るの物理的法則、条件
 に従った矛盾のない状況との相互律関係にあることが不可欠である。
例:彼は英語が話せる:彼と英語とが言語法則に従った互律動作ができる。
 ・窓のガラスが割れた:ガラス(と自然と)が物理法則に従って互律動作した。
〇使役態の律他互律動作は、他者に律他動作を指示し、あわせて他者の動作法則
 ・力量を見計らって助勢するという互律動作で動作性が残る。
 (いま流行りの忖度と解釈するなかれ。昔ながらの物の道理:物理法則に従った
 互律動作である)

〇「③結果態の律仕方」:果律動作、「④受動態の律仕方」:果互律動作、
 (結果律が基本で果律と簡略化した。動作性は弱く、所動性になる)
③「動作(結果)」が→目の前に「ある」:結果態:D[・/r]ar[]u:
 (文語体の受動態だった)→★自・他動詞の「動作結果」が周囲を律する。
④「動作(結果)」が→目の前に「ある」「あれる」:受動態:D[・/r]ar[]e[r]u:
 (現代口語体の受動態である)→★自・他動詞の「動作結果」が周囲を律する。
〇文語体の結果態は、下二段活用(書かれ:未然・連用、書かる:終止)であったか
 ら、下一段活用(書かれる:終止)で、書かれる:が受動態動詞の形態となって、
 現在の口語体で使われる。
〇受動態は結果態に可能態接辞-e[r]u-を付加した形態となり、意味も上乗せ
 するのが文法則である。(ただし、「ある」は状態動詞だから、動作可能より已然
 概念に重点がある)
(同時に、結果態接辞-ar-は自他交替接辞として単語派生に使われているから
、動詞語彙の財産になっている。文法的にきちんと解釈するのがよいはずだ)
★「受動態の果互律動作」の基本は、「動作の結果が出ている、在る、有る、ある」
 状態で主体、客体がどう関わるかを叙述するものである。
・動作結果が果互律動作源だから、自動詞であれ、他動詞であれ物理法則に従う
 範囲で主・客へ関わりを持つ。
・「動作結果」の捉え方に多様性があり、継続的な「動作実績」「動作習慣」などを
 「動作結果」と見なした使い方もできる。また、「動作を見通し予測した結果」を
 「動作結果」に見立てることもできる。
 (一方、可能態は「動作時点での互律動作」を表現するだけである)
例:(直接受身、間接受身、実績・習慣可能、自発・事象可能、尊敬・他者発話、など
 個別に区分した例文は巷に溢れているので、省略する。もし興味があれば、各例
 文が「ある」、「在る」、「有る」、「受ける」のどれに合うのか試験なさることを勧
 めます)

 次回は解説の最後を目指して、関連項目を自問、に挑みたい。
・強制系、使役系の「態の双対環」2組両方を常に併記するのは何故か?
・能動系にも対になる別組の「双対環」があるのか? 検討を記述する。

より以前の記事一覧

最近のトラックバック

無料ブログはココログ