日本語の動詞:受身形と使役形の考察
2014/06/10(火)
態の双対多重環の図をリンク追記しました。
日本語動詞:「態の双対多重環」図
2013/10/29(火)
日本語の自・他動詞ともに態(ボイス)は「自発能動系統/動作強制系統」が鏡像関係、双対性があるとの考察に思い至りました。
どうぞ、日本語文法:ら抜き・さ入れ言葉の存在証明、日本語動詞:態の双対図表(後半)、日本語動詞:態の双対図表 をご参照してください。
○「動詞の態双対環」模式表記:(思考実験の結論として追記挿入)
能動態 ・・・・・ 強制態 ・・・・・・・ 二重強制態
/ \ / \(使役態) 二重 / \二重
結果態 可能態 強制結果態 強制可能態 強制結果態 強制可能態
\ / \ / \ /
受動態 ・・・・・ 強制受動態 ・・・・・・ 二重強制受動態
2012/10/21(日)
今回読了した書籍:
『日本人のための日本語文法入門』原沢伊都夫:講談社現代新書:2012年9月20日
を読み終りました。
日本語文の表現形式:ボイス(態)、アスペクト(相)、テンス(時制)、ムード(心情)などを平明に解説されている。終章では複文にふれている。
これで日本語表現の全体像を簡潔に解説した構成です。
アスペクト(相)の解説には力がはいっています。
(1)「受身形」と「使役形」
前回の「ら抜き」「さ入れ」言葉も、原沢本のボイス(態)により触発されたものでした。
○原沢本でも、「~れる」可能表現(終止形語幹+eru)の形式を考察している。これが論理的でもあり、他と紛れもなく統一的に扱える利点があるとの見解ですね。
(本来はもっと明確に、動詞:子音語幹には+eru、母音語幹には+(r/s)eruを付加すると説明するところまでいくと教育的指導になるのでしょう。母音語幹の動詞にr・ar・eru:ら・れるが付加される場合、可能態でなく受動態になってしまいます。)
○使役形の「さ入れ言葉」については、論理的な正当性を挙られないが、心情的な「ていねいさ」を表現できるかもしれないとの見解です。
○原沢本:受身形と使役形の分析で、それぞれ二通りの使われ方があるという。
・出来事からの影響→受身形で表現する/出来事への関与→使役形で表現する。
・受身形:直接受身形/間接受身形の二種あり。
・使役形:積極的関与/消極的関与の二種あり。
○無対自動詞を使役活用して他動詞化したり、反対に無対他動詞を受身活用して自動詞化したり、という文法則があります。
○原沢著書:「使役形」を「関与の動作の程度を測る」だけのような認識・解説であって、情緒的な関与の差を解説したもの。使役動詞を理解するには、話者の動作に注目し直接的だの間接的だのと認識しているだけでは甘すぎる。
○話者が指示して使役される人物が、どのような動作をするかに注目しなければならない。
残念ながら、原沢本の内容からは指示者/受命者/対象者に関わる出来事だという提起が読み取れない。
当方の思考実験として
○この文法則を日本語動詞全体に統一的に適用できると図表にしたのが「能動/受動の双対性」です。
○「双対性」図表のなかで能動「使役形」を3種に区分した。
○「使役形」出来事の場における:話者/受命者/対格者の三者関係を表現する仕組があるはずだとの提起も含む。
○使役動詞形=3種:「強要・介助動詞」/「使役動詞」/「介助使役動詞」という提案です。
(2)「する/させる/ささせる」の定着!?
不規則動詞:「する」の場合、
○二者間使役:『何があっても君にそんなことを(僕は)させないから、安心してくれ』
○三者間使役:『誰がなんと言おうと君にそんなことを(僕は)ささせないから、安心してくれ』
という使い分けができているのではないだろうか。
○ネット上で「使役」関連を調べてみると、
・「使役形動詞で表現されるのは:<服務>の場合と<服務><担当>の場合がある」
と記述する文法サイトがわずか一つ見つかった。
○二者間使役:服務=強要・介助に相当し、
○三者間使役:服務/担当=指令者・受命者・対格者の関係性を想定したものになると思考実験の結果と結びつけられる。
○関西弁の例をあげるサイトもあり、
・させない→させん/させへん
・ささせない→ささせん/ささへん/(ささん?)
という記述を見つけた。
(3)使役動詞?他動詞?
「見せる/着せる」は「見る/着る」とは全く別の他動詞だろうか?
思考実験では「見る/着る」動詞の「強要・介助形」だと考えた。
○見る(一者動詞)/見せる(二者間動詞)/見させる(三者間動詞)という構造なのだと結論した。
(動詞連続線:能動/受動双対性に「見せる」を単独他動詞として載せていくと意味論的に破綻してしまいます)
日本語の動詞:能動形・受動形の双対性
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