日本語の動詞:日本語文法学問の3盲点
2013/01/20(日)
(1)自動詞/他動詞/受動/使役の活用法則を解明しきること
『日本語文法の謎を解く--「ある」日本語と「する」英語』金谷武洋:ちくま新書:2003年1月20日
のなかに、著者のつよい思いが書かれている。
○日本語文法(学問)の三大欠点は
①明治以来、外来の概念に引きずられて、日本語では不要な「主語」を使い続けていること。
②日本語本来の自動詞/他動詞/受身/使役の言語運用メカニズムが全く誤解、忘却されていること。(動詞の自・他の派生方法、動詞態の使い方の深層原理が忘却されている)
③平仮名分析に固執していること。(音韻分析:ローマ字つづり:にこそ西洋音韻学の手順を取り入れるべきだった)
と指摘がある。
この学問分野の欠点を超えて、日本語の日常活用は進んでいる。
○「明日、(((休m+as)+as・e)+て)+ください」の例文ひとつ考察しても「三大欠点」が実感できる。
①例文でも「主語」なしで通用している。
②動詞語幹に+各種接辞を付加して活用する。「(子を休ます)ことを(親の私にさせる許可を、先生、お願いします)」というのが、「明日、休まさせてください」(母親が子の休みを教師に願い出る連絡構文)です。 普通の人が言語運用法則に則って話す「3者間使役態」の文章例です。
逆に本来の動詞活用を忘却した方々は、これを「さ入れ言葉」などと誤解してしまいます。
③日本語などの膠着語では、+接辞の付加結果は語幹と連結してしまう。音韻分析で子音/母音の組み合せを解明して、接辞の姿を調べるべきでしょう。それで法則が理解できるのですから。
(2)なぜ「主語なし」で通用するのか?
金谷本では、副題に「ある」日本語と「する」英語とあります。
○日本語では、ものごとの状態や存在、行為の結果を「+ある」で表す。英語では「する」行為を表すのが得意。
○日本語では自動詞を多用、英語では他動詞が多用される。
○日本語では受身形の意味範囲が広く多用される。使役形は限定的。
○英語では自動詞/他動詞と受身/使役に形態上の関連が少ない。
日本語では自動詞/他動詞から受身/使役が派生し、「+ある」と「+する/+す」が接辞として使われている。
と考察している。
すばらしい考察ですが、大きな疑問点:
○なぜ、例文が「主語なし」で通用するのか?
それにつながるヒントは見つかりますか。
○「主語」だけでなく「登場人物」がだれも表現されてないのです。
○動詞「休ます」の活用だけで通用する例文です。
「休む」(自動詞)を「強制態:他者に動作をさせる」他動詞化した「休ます」です。
(文法扱い者が「休ます」を二重に活用したものだと見抜けないのが残念ですね)
こういう「主語なし」の大きな仮説を丹念に説明できるかどうか、こころもとないかぎりですが、
○端的に言えば、「動詞の活用」のなかに「凝縮された人間模様がある」と思うのです。
まずは、日本語の自動詞/他動詞の対応図表をもう一度じっくり見てください。
(添付図表では、自動詞を他動詞化する使役的な接辞にしぼって変換例をのせてあります)
(辞書形:常体終止形と同じ。参考辞書:新版国語辞典:講談社学術文庫:昭和61/4/25:2刷)
○さらに、日本語の動詞:活用俯瞰図の例に示した「全体俯瞰」も参照してください。
どれも思考実験中のもので、間違い部分も多いかも知れません。
(つづく)
参考:日本語文法の論理8
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