日本語の動詞:「さ入れ言葉」の正しい理解法
2013/10/29(火)
日本語の自・他動詞ともに態(ボイス)は「自発能動系統/動作強制系統」が鏡像関係、双対性があるとの考察に思い至りました。
どうぞ、日本語文法:ら抜き・さ入れ言葉の存在証明、日本語動詞:態の双対図表(後半)、日本語動詞:態の双対図表 をご参照してください。
○「動詞の態双対環」模式表記:(思考実験の結論として追記挿入)
能動態 ・・・・・ 強制態 ・・・・・・・ 二重強制態
/ \ / \(使役態) 二重 / \二重
結果態 可能態 強制結果態 強制可能態 強制結果態 強制可能態
\ / \ / \ /
受動態 ・・・・・ 強制受動態 ・・・・・・ 二重強制受動態
2013/01/18(金)
(1)「休まさせてください」の正しさとは
もう一度、『日本人のための日本語文法入門』原沢伊都夫:講談社現代新書:2012年9月20日
にもどって、「さ入れ言葉」を考察しましょう。
日本語の自動詞/他動詞の対応図表を作成していると、使役/受身の変換法則に注目させられます。
添付図表では、自動詞を他動詞化する使役的な接辞にしぼって変換例をのせました。
(図表の「休む/休ます」の欄を見比べてください。 「休む」の活用でなく、
使役形の「休ます」活用の 二重使役形:「休まさ+せる」を使っているのです。
無理やり「さ」を入れたと考えることが間違いです)
原沢本で
○「休ませてください」/「休まさせてください」の対比調査にふれています。
○また、選挙キャンペーン中「頑張らさせてください」/「政権を取らさせてください」などの
「さ入れ言葉」を聞いたとのこと。
○「さ入れ言葉」には丁寧度をあげる効果があるのではないか。
という部分が気にかかったのです。
単に丁寧度があがる、さがるの問題ではなく、人間模様の違いを表現しているのですから。
使役/受身を考えてきて、
○「さ無し言葉」と「さ入れ言葉」では登場人物の背景が違います。それを正確に把握すれば、
「さ入れ言葉」が正しく理解できるものと思います。
○(言外に:私の都合・意志で)「明日、休ませてください」という。
○(言外に:医者の指示により私を、または我子を)「明日、休まさせてください」という。
(その時の「私」の頭には、「休ますべき」という医者の指示が鳴り響いているはず)
○(言外に:私の決意により)「頑張らせてください」
○(言外に:皆様の支持・一票により私を)「頑張らさせてください」
○(言外に:皆様の支持・一票により私に)「政権を取らさせてください」という。
(選挙期間中には、立候補者に「頑張らす」「政権を取らす」という思いが一杯だから)
つまり、使役形が持つ「第三者の存在」を想起させる言語表現であり、日本語の動詞述語の便利さ、多様性なのでしょう。
○ただし、(自分の意志で)やるべきことを、(第三者の指示で)やらされたと言い逃れる用法・場面には十分に気をつけたいですね。 不適切な使用、乱用を戒めて。
(メディア的に問題になるのは、第三者におもねるような責任逃れの「~させていただく」の
連発だからなのでしょう)
○学校、大学の日本語専門家が「さ入れ言葉」について、正確に理解されていないのが不思議です。
使役文語体が基本で、活用形が「スマート」なので定着しているのです。
「さ」をわざわざ挿入したのではありません。
(2)日本語の自動詞/他動詞の対応
次回には、図表をもう少し詳しく考察してみます。
(辞書形:常体終止形と同じ。
参考辞書:新版国語辞典:講談社学術文庫:昭和61/4/25:2刷)
○見出し語に載らない使役形動詞が、それなりに活用され定着している。
○使用禁止というわけではない。
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