日本語の基本文型:人魚構文は無用に
2013/03/08(金)
3月5日、朝日新聞夕刊文化面に載った国立国語研名誉教授・角田太作:「人魚構文」取材記事から話を先にすすめたい。
(1)角田例文:「太郎は明日、大阪に行く予定です」
「人魚構文」とは、動詞述語文と名詞(+だ)述語文とが合体して一つの文になった構文です。
角田解釈では、「太郎は人間なのに『太郎は予定です』と表現するのは意味の点でおかしい。奇妙な文だ」というのが出発点でした。 (この出発点に得心が行かない。直前に基本文型を思考実験したばかりだから・・・)
(2)動詞:活用俯瞰図で確認
すでに思考実験中の動詞:活用俯瞰図で人魚構文の論点を整理する。
日本語の動詞:活用俯瞰図
○文例の「~行く+予定です」は、活用俯瞰図表の「語句連結(+動詞/+名詞)」×「連体形」の交差欄の「書く+方法/考える+葦」に該当する活用が基本となるものだろう。
○「連体修飾」節が後続の「名詞」を修飾する形式で、さらには「名詞+通常の述語文」を修飾できる。
○角田論文は「人魚構文」のとらえ方を「考える+はずだ/書く+ところだ」などのムード・アスペクトに近い活用を想定している。
○なぜ、角田論文が「連体修飾」を採らず、接尾辞(ムード、アスペクト)的な位置づけにこだわるのだろう。
○後続の「名詞」は相当自由に選択可能だから、一々接尾辞と認定して文法化していくならば、ややこしくなるだけだ。
(3)提案:「人魚構文」の定義を廃止する。
○「動詞(イ形容詞/ナ形容詞)述語文」に「+(の)だ/+なのだ」を付加して名詞述語化する構文を、いわゆる人魚構文とみなす。
○つまり、(表2)日本語の基本文型:全部が名詞述語化へ変化できる(次節の図表参照)
で示した文型がいわゆる人魚構文でしょう。
○ことさら人魚構文と名付ける必要がないのですが・・・
○角田論文でいう人魚構文=「動詞述語文」+「名詞+だ」は、文法則を膨大化するだけで利点が少ないので廃止する。
○その代わり、「動詞述語文」+「名詞」=「連体修飾節」による「関係構文」という文法則でまとめる。
(4)全部名詞述語化(表2)基本文型
バカボン父の「~のだ!」構文を仮に「のだ構文」と呼ぼう。
○この「のだ構文」も欧州語圏の方々にはまったくなじみがないものらしい。
○(表2)基本文型の
・「動詞→名詞述語化例」の各例文
・「イ形容詞→名詞述語化例」の各例文
・「ナ形容詞→名詞述語化例」の各例文
が、「(な)のだ構文」に相当する。
○残りの名詞述語文「名詞+だ」は変換の必要はないので、(表1)、(表2)とも同じ文例を載せてあります。
○②、⑤文型例に現れる「名詞」が漢字による「動名詞」形であることに注目したいですね。
意味的に動詞であり、文型的に名詞扱いしてでき上がる構文です。
(②、⑤文型:「~を」補語を求める形容詞述語はない。強いて言えば、②~を「嫌いなのだ」と(形容)動詞扱いした場合か)
○動名詞も基本文型として定着していくと思います。
○和語による「動名詞」の文例も多くあるはずです。
・②~が~を「上手投げ+です」
・⑤~が~に~を「橋渡し+です」
○この文形は実況中継の語り口にぴったりですし、紙面の小見出し文の用途にも合います。
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