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2013/03/06

日本語の基本文型:人魚構文のこと

2013/03/05(火)

 偶然のことか、本日の朝日新聞夕刊文化面に日本語研究の記事が載っていました。
見出し:「人魚構文」なぜか東アジアに
小見出し:日本で多用の奇妙な表現 20言語で確認
の記事で、
国立国語研究所の共同研究によって東アジアを中心に約20の言語で同じ構文の存在が確認されたとの記述がありました。
「人魚構文」とは、動詞述語文(イ形容詞述語文、ナ形容詞述語文)と名詞(述語文)とが合体して一つの文になった構文です。
言語学者の角田太作(国語研名誉教授)が20年前に「奇妙な文だな」と思ったそうだ。

(1)例:「太郎は明日、大阪に行く予定です」

 記事を抜書きすると、
「太郎は人間なのに『太郎は予定です』と表現するのは意味の点でおかしい。前半は『太郎は行く』という動詞述語文、後半は『予定です』という名詞述語文。こんな人魚のような構造の文は、たとえば英語では成り立たない。しかし従来の日本語研究には、これを奇妙な文ととらえる見方がなかった」・・・

(2)世界的共同研究:人魚構文の存在は?

 記事を抜書きすると、
「人魚構文は日本語固有のものなのか」と疑問をもつ角田が中心になり、2009年から12年まで共同研究が行われ、世界の諸言語の研究者40人が参加した。
その結果、アイヌ語、朝鮮語、中国語、モンゴル語、サハ語(シベリア)、ビルマ語、ネワール語(ネパール)タガログ語(フィリピン)、ヒンディー語(インド)など約20の言語で人魚構文が確認された。
東アジア以外ではエチオピアのシダーマ語だけ。
日本語の場合、万葉集などの古典にも人魚構文はあった。
・・・
「・・・日本語は特殊とよくいわれるが、世界の数多くの言語と比べてみて初めて類似点と相違点がわかる」という。

(3)記事を読んで感じたこと

 「人魚構文」の呼び名を初めて認識し、最近の研究対象として国際的な共同研究がなされていたのだと初めて知らされました。
○欧州語にはなくて、日本語の特長の一つだと考えていましたが、東アジアには同類の言語があるとわかり安心しました。
○ネット上から、「人魚構文:日本語学から一般言語学への貢献」PDFの角田論文を見つけて読みました。
○専門的記述、術語解釈に理解が及ばないのが残念です。
○論文のなかで「奇妙な文構造だ」と着目されて、深く類例を研究されています。専門分野が言語対照研究系ですから当然でしょうが、国際共同研究のテーマに取り上げ、調査を主導されたのですね。
○当方浅学の身で考えた範囲は前回に記述した「日本語の基本文型」のごとく、「動詞述語文、形容詞述語文を名詞化述語文へ転換する」文法則を想定しています。
○つまり、「人魚構文」でなく、先行の述語文が「連体修飾節」であり、後続の「名詞」と結合して「大きな名詞文」になると考えている。
○「連体修飾節」に後続する「名詞」の出現関係を「内の関係/外の関係」と分析する方法があり、「連体修飾節」でほとんどの事例を解釈できるのではないか。(次節に思いを書く)
○ただ、連体修飾節だと想定してしまうと無難な文法になる。
 「主格者が結びつくのは動詞述語文であり、後続の名詞述語文に結びつくのも動詞述語ですから」と解釈できる。 「太郎は予定です」とはなりません。
○「奇妙な文」だと着眼し「人魚構文」と把握すれば、国際研究テーマとして比較対照の視点がはっきりする。(特異な構文として研究目標を明確にできる)

(4)「関係(代名詞)節」との関係は?

 「人魚構文」の呼び名は、殊更に異種文連結を連想させる。
角田論文や夕刊記事のなかで肝心な比較対照論点が抜けている。
○「人魚構文」を有する言語には、「関係(代名詞)節」がなく、
「関係(代名詞)節」を有する言語には、「人魚構文」がないというだけのこと??
共同研究の結果にその真偽を見たかった。

○「連体修飾節」が「内の関係/外の関係」とに両用され、この修飾方法が「関係節構文」を作れる重要な文法則だからです。
○冒頭の文例:「太郎は明日、大阪に行く予定です」に対して、情景を想像すると
 「予定として、太郎は明日、大阪に行く」という事態をわかっていることの表現でしょう。
 「太郎は予定です」とは考えていない。だから冒頭の文例のように言うのでしょう。
○角田論文では「太郎は明日、大阪に行く予定がある」の構文は、人魚構文ではないと判定する。
 「予定がある」は動詞述語文になるからだろう。前段の連体修飾節に何らの差もないのにです。
○論文内でも、動詞述語文、イ形容詞述語文、ナ形容詞述語文と後続の「名詞+だ」との結合を多数検討している。(4つの述語文を常に考えることが大切だと思う)残念ながら連体修飾節を避けたがっているような論調に感じる。
○人魚構文の解析の落しどころとして「動詞述部と名詞述部の複合述部とみなす」考え方を推している。
 動詞述語文と名詞述語文の「人魚構造」を隠蔽するために、例文で言えば「行く+予定だ」=「複合述部:行く予定だ」をひねり出したことになる。
その結果、「欧州語の文型に当てはめて説明できる」というのが根拠になっている。どうしても合体させて一文章と解釈したいらしい。
○「行く+予定だ」を連体修飾節「・・・行く」が名詞述部「予定だ」を修飾しているのだと解釈すればよいだけのことではないか。「行く予定がある」も同様に連体修飾節で解釈できるのだから。

○角田論文の「人魚構文の分析方法」で不可解な点がある。
・「動詞述語文」の動詞活用部分を連体形だと明言していないこと。
 (ナ形容詞述語文は連体形と言及するが、動詞、イ形容詞は違うと表現)
・「動詞述語文+名詞」を「連体修飾節」扱いして、格助詞の統語論を展開している。
・説明文中では「連体修飾節」を前段の「動詞述語文」とすることが多いのだが。

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