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2013年5月

2013/05/31

組織の力の働かせ方:2

2013/05/30(木)

(1)米国の製造業の復活

 『シックスシグマ~品質立国ニッポン復活の経営手法』:青木保彦/三田昌弘/安藤紫:ダイアモンド社:1998年4月16日初版、6月26日5版
を借り出して読んだ。

 1970年~80年代の「日本の高度経済成長」を冷静に分析した『Japan as Number One』が契機になり、当時の米国産業界は、「日本型経営の良さ/悪さ」を具体的に把握し、研究していた。日本へ追いつき、追い越し逆襲する方策を探していた。
80年代初頭にモトローラによって開発された「シックスシグマ手法」は、長い景気停滞期にある米国の経済立て直しを目指した新経営手法だった。

 「シックスシグマ手法」を解説するのは書籍に任せるとして、書籍の「はじめに」の最後尾を引用する。
○シックスシグマ手法は品質立国ニッポンに突きつけられた挑戦状なのである。
○1998年になって全社的導入をトップダウンで決定したソニー出井伸之社長は導入理由を「気合だけでは米国に勝てない」からだと語った。

(2)トップダウン型とボトムアップ型

 これ以降には、読後の思考実験を記述します。
○「シックスシグマ手法」はトップダウン型の経営管理である。
○日本で定着した「TQC活動」や「PDCA/PDSA」活動はボトムアップ型の管理方法で、これを米国企業が採用するのは難しい。職業規範が違いすぎると判断したのだろう。
○「シックスシグマ手法」の活動形態は、プロジェクトチームを組み、4段階に構成した「MAIC」手順を繰り返し実施してシックスシグマ基準の品質へ高めていく。
①Measurement:測定
②Analysis:分析
③Improvement:改善
④Control:定着管理
の4段階です。
○安易な類推を許せば、(思考実験中)
・MAIC=CAPD/SAPD
 と見てもよい。
・PDCAサイクルのC→A→P→D繰返しに相当する。
・C→Aサイクルからのスタートとは、事故対応、緊急救済などの場合に経営上層部があわてふためいて実行するような印象になる。
○トップダウン型の「MAIC」は、スタートの「M→A→」が冷静で客観的な視点をもって的確な問題意識を拾い上げ、全社的な合意形成ができるとベストだ。
○モトローラ大学で薫陶を受けた受講者が「MAIC」実行要領を体得して各企業にもどって活動を主導する。まず先導役を育成することが必要だ。
 一方、
○稲盛方式の「アメーバ経営」は個々のチームはボトムアップ型ではあるが、これを統括する機構がどんな活動をしているのだろう? 実態についての知識がない。
(現場「ボトムアップ」だけが緻密であっても、その上のトップ段階の経営手法が「隠れた無力機構」であれば、企業は残れない)
○わたしが想定する「万有資源活用法」も「PDCA」サイクルを下敷にして、関連組織全体で
「→P→D→」=現有資源の活用、
「→C→A→」=創造資源の活用
と類推している。
 万有資源活用の規範としては、
人理・物理・事理・倫理の4法則を合理的で直感的にも心に響くような「社内常識」、「関連組織内常識」に整備していくこと。
(PDCAサイクルは現場レベルだけでなく、部レベル、事業所レベルで階層的にゆるく連結した構成で実施されるべきだ。重層的に結合したPDCAサイクルができているはずだ。欲目かもしれないが。経営上層部に対するCAPDサイクルが「シックスシグマ手法」だと言えるのか?)

(3)トップダウン型は最適化できるか?

 「シックスシグマ手法」が測定・分析の段階で、合理的で直感的にも心に響くまとめあげ(目標数値化、評価尺度)を作り上げるのに苦心する。
○米国の大企業:GEが苦境から復活したのは、「シックスシグマ導入」があったからという。
○しかし、会長ジャック・ウェルチの心に響いていたのは、ドラッカーの「自社の業績No.1、No2の分野はなにか? それに集中すればどうか?」の助言だろう。

(4)大企業病からの脱出

 2000年代日本企業も停滞期にあって、試行錯誤している。
東芝も早い時期にシックスシグマ導入を始めた企業であり、大規模な組織再編成があったようだ。
ソニーも大賀・出井社長時代にアナログからデジタル移行の大変革が従業員全体に波及していた。

 2007年わが家でもテレビをデジタル対応に買い替えをした。
○機種選択では、プラズマ画面×、液晶画面◎、
パナソニック×、ソニー×、シャープ×、日立×、東芝◎
と評価した。
○東芝を選んだ理由は、機能・性能が統一され、液晶画面の寸法に左右されないという設計思想に納得したからだ。
○他社には統一した設計思想が感じられず、画面寸法が変ると機能項目ががらりと変る。誠実さが感じられなかった。

 結論を急ぐと、組織の力の働かせ方を見直すときではないか。
大企業である必要がないのに、大企業になったのが間違いのもとか。
○グローバル市場に出て、後進国の基盤インフラから開拓していくつもりなら、大企業の総合組織力を使う必要もあるだろう。
○そうでなければ、小さく分解するのがよいだろう。
○経営上層部がトップダウンで的確な改善指示できる範囲は大きくない。
○「トップダウン」と「ボトムアップ」がほどよく重なり合う階層が描ける程度の規模がよい。

2013/05/24

組織の力の働かせ方

2013/05/23(木)

(1)日本の製造業の場合

 『NHKスペシャル:メイドインジャパン 逆襲のシナリオⅡ
  (1)ニッポンの会社をこう変えろ』:5月11日(土)放送、
 『NHKスペシャル:メイドインジャパン 逆襲のシナリオⅡ
  (2)新成長戦略 国家の攻防』:5月12日(日)放送
を2夜連続で視聴しました。
(前回シリーズは部分的に見たかもしれない。NHKオンラインの過去資料ページを見て、前回シリーズの概説を理解しました)

 日本の製造業が再び立上がり逆襲するために何をどうすればよいのか?
○昭和の経済成長時代の成功体験はすでに形骸化してしまい、核心を引き継ぐ者がいなかった。
○その時代の「勤勉、改善、TQC、系列業者連携、愛社精神」などが自然消滅してしまった。
○また政策的な「落ちこぼれ金融対策:護送船団方式」や「次世代半導体開発:超LSI技術研究組合」に象徴される官民一体型経営が大きな成果をあげた反面、「日本株式会社」、「エコノミックアニマル」との反感や攻撃を外国から受けることになった。
○だが本来、経済成長の基本は「最先端技術集団方式」や「改善・系列集団方式」、「改善・護送船団方式」など各種の組織形態が公正な工夫を凝らして前進すればよいはずです。
○グローバル化した経済市場のなかで組織も社会倫理も改善しながら「日本+外国」に通用するように構成すればよいだけだろう。
○停滞した組織は変化を見逃し、現状が継続する方向しか見えていない。
○新たな視点で創造資源の活用をめざすべきだろう。

(2)60年代の米国「アポロ計画」の場合

 『CosmicFront:モンスターテクノロジーを支配せよ
  ~アポロ計画 知られざる成功の鍵~』:1月17日BSプレミアム 放送。
個人録画を残してあったので、思い出して再度見直しました。

 日本の経済成長期に重なっているが、米国が国威をかけた先駆的巨大事業でした。
○アポロ計画:60年代中に有人月面探査を実行し安全に帰還させること。
・NASAアポロ計画本部:(ワシントンDC)
・初代責任者:ブレナード・ホームズ
・開発規模:総予算240億ドル、技術関係者40万人。
・宇宙機材部品:1500万点
・開発3拠点:マーシャル宇宙飛行センター(推進ロケット:アラバマ)、
 有人宇宙船センター(テキサス)、打上運用センター(フロリダ)
○開発目標の策定が大まかに決っても、実行はほとんど進まず。
 責任者を1年9カ月で解任。
・NASA長官は、全米から公募し民間の専門家を任命。
2代目責任者:ジョージ・E・ミラー:優れた改革を行い開発の道筋を作り上げ、完遂に導いた。

(3)巨大プロジェクト成功の鍵

 1960年代、マイクロエレクトロニクス技術の幕開けの前でのアポロ計画・有人月面着陸プロジェクトは大きな賭けであり、課題を的確に把握して解決策を提案・実行しなければ成功しない。
 2代目責任者が着眼した改革要点は3つ。
①コミュニケーション改革:開発3拠点の相互意志疎通の確立、相互課題交流・克服法の検討。進捗度の洞察。(専任情報管に空軍将校から50名選抜・NASA本部と各拠点部門を情報仲介させる。各拠点部門間ホットライン敷設:従前の閉塞状態を打破)
②オールアップ方式:全部品類の(99.9999%)高信頼性追求。全部を一気に打上げて検査できるような短期効率開発体制。(ステップ・バイ・ステップ開発では時間の無駄、信頼度確保が無理)
③コンピュータ革命:アタッシュケースサイズに収まる宇宙船操縦装置の開発(真空管コンピュータ時代での大改革:MIT委託開発:初期 IC回路素子改良、コアメモリー高容量化)

 ジョージ・ミラー責任者が就任後の早い時点から、成功への鍵を確実に把握して論理的に思考し抜いたから成し遂げられた改革だった。

 いかに高い開発目標だったか、1970年代半ばでの自分の経験を思い出すとよくわかった。
○当時、自己設計でLSI回路を多用した「シーケンスコントローラ」を制作した。制御記憶にはダイオードマトリクスを半田ごてで手作りという状態だった。
(市販マイコン基板が出始めた頃で、内心では自分の出遅れ感を感じていたが、)
○基板用のLED発光素子を米国モンサント社へ注文したら、驚くほど数量超過で到着した。LED光軸が曲った不良品も含まれており、良品を選ぶとほぼ希望数になる。
(当時の米国企業の検品管理の雑なことに驚いた)
という時代背景だった。

2013/05/12

書見台改修-上下反転、拡大工作

2013/05/12(日)

 図書の電子ファイル化(自炊式電子書籍化)をしやすくするため、書見台を改修工作してみました。

Photo


2013/05/06

実践哲学「生き方」稲盛和夫

2013/05/06(月)

 『生き方』稲盛和夫:サンマーク出版:2004年8月10日初版、
 2013年2月5日第81刷
を一気に読み終りました。
内容は人間として一番大切な「生き方」を主眼に実践哲学したもので、直接の会社経営の手順を説くものではありません。
「人生をどのように生きるか」を深く考える、哲学することをていねいに書き示したものです。

 わたしの「万有資源活用法」は自分なりの実践哲学を思考していますが、「人生の生き方」にまで深く思考がおよびません。
組織的な事業企画を実行する一員として、「どうしたら任務責任を果せるか」を思考した程度です。
思考実験の結果は、
○「万有資源活用法」=現有資源(人・物・金・組織)の活用法
 +創造資源(検証・調査・改善・研究・経営規範)の創出法
 =PDCAサイクルの高速最適化の継続。
と、
○「万有資源活用4法則」=
 ①人理法則=人的資源の義務・責任を果すための法則:
 ②物理法則=物的資源(部材、製品、設計)の物性を曲げずに活かす法則:
 ③事理法則=資金資源(経理、事務処理)の適正法則:
 ④倫理法則=組織資源の社内外連携の適正法則:
  広義に解釈すれば社会倫理につながる:
の2つです。

 稲盛本 第1章 思いを実現させる
の部分で、『現実になる姿が「カラー」で見えているか』という節があります。
わたしも共感しました。
あらたに創り出すものをどれだけ確実な姿で想像できるか。

 わたしのささやかな経験で置き換えてみると、例えば、大規模修繕で新設設備や改善工事の事例です。
(組織のしばりがゆるやかな例です)
○修繕委員会や総合定例打合で議論して改善設計図が作成、提示される。
○「設計図」をどれだけ深く読みこなすかが工事の成否を決める。
○修繕委員側要望の真意が組み込まれていない機能不十分な設計、付随処理を見落した設計などがそのまま「設計図」に隠れています。
○どれほど「きれいな設計図」を目にしたとしても、それを検証しなければ意味がありません。
○「設計図どおりに製作されたら、完成した姿がどうなるか」を想起して検証する必要があります。
○この「検証の重要性」を素人の修繕委員が気づかないこともありえます。
 わたしも席上では気づかなかったが、次回の会合までの間に資料や設計図を復習、予習することで「設計図に潜む不足部分」を見つけることができました。
 (3、4回ありました)
○「検証の重要性」をおろそかにしているのは、設計事務所も元請施工業者も同様です。
・設計図を下請担当、下請業者に任せてしまい、会議要望の内容が消化不良のまま図面化されたり、
・修繕委員からの「検証結果:ダメ出し」を受けても全体意見だと把握しない。
 真剣に考えないで、改修案を次回に再提出しない。
・「設計図」への質問に対して、元請現場事務所長が設計構造を説明しない。
 『その点は十分考慮してありますので、お任せください』と言う。
 (これは悪質業者の常套句でもあり、要注意です)
○『思い』(修繕委員会)を
 『実現させる』(設計事務所、施工業者)が
 バラバラになっていては成立しない。
○身近な小さな事業企画の『思いを実現させる』ためにも、大いに参考になります。

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