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2013/06/21

日本語文法:「する」と「やる」の区別

日本語文法:「する」と「やる」の区別
2013/06/20(木)
 
(1)「する」/「やる」の違いは?
 前回、読書中だった図書を読み終えた。
『日本語を「外」から見る ~留学生たちと解く日本語の謎~』
佐々木瑞枝:小学館:2010年2月6日
 
留学生の会話:
〇「日光へ旅行をやりました」
 というやり取りのあとで、「する/やる」談義がはじまった。
・「する」と「やる」の使い分けを合理的に納得させる教授法・
 文例が書かれてある。
・最少ルールで文法則を説明できるといいですね。
 
〇佐々木本では、
①「する」:自分の意思で行う=意志動詞。
 (旅行する、洗濯する、発表する、スタートする)
②また、状態変化(自動詞的)の表現動詞。
 (上達する、合格する、成功する)
 これらを「やる」に置き換えできない。
 
③「やる」:基本は授受動詞。(物や行為をやらせる、やらされ
 る関係)(餌をやる、一杯やりましょう)
 これらを「する」に置き換えできない。
④両方使える:共同動作。
 (PTA活動をする/やる、留学生祭りをする/やる、会議を
 する/やる、試合をする/やる)
 
(2)寝も「やらず」に考えて、二晩「する」と、ようやくわか
 った。(↑国語辞典の用例を応用しました)
 当方も幾晩か寝ながら考えて、最少ルールにたどりついた(か
 も)。
〇辞典には
・「する」:サ変他動詞:行う。なす:サ変自動詞(自然):
 (音がする、3千円もする、五年もすると)。
・「やる」:五段他動詞:行かせる、遣わせる、相手の利益とし
 て与える。
 (使いをやる、金をやる、(飲食)一杯やる、書いてやる)
 
<ここから思考実験をはじめる。
・「やる」の原意には、行為や物の授受をする動作や、使役的動
 作(行かせる、遣わす)が想起され、行為者以外に相手が存在
 するのだと推測できる。
・この使役感覚が変化して、話者自身が「やらされる」と思い込
 んで、『すぐ宿題をやるから、おやつ、ちょうだい!』などと
 言うかもしれない。
・何度も「やりなさい!」「やりなさい!」と言われていると、
 相手は「やります!」と応答してしまう。
・自分が使役の請負をしたつもりになって、「やる」、「やりま
 す!」という言い方がでてきたと推測したわけです。
・つまり、義務感や責任感をもって(成果を期待して)行なう=
 「やる」の意味へ拡張されたのか。
(「やらされる」感じが薄まり、「する」と同義に近づいた理由
 なのでしょう)
・「やる」=自分をしてやらせるという再帰的動詞なのかもしれ
 ない。>
 
(3)「やる」の原意を大切に
 「やる」=授受動詞、使役動詞、を使う場面での「登場人物」
 を想定することが大事です。
〇登場するのは、
①行為者、②被行為者(使い、受け手)、③使命・餌・課題(明
 確な目標)の3つです。
 この情景を必ず思い浮べることができれば、「やる」が仕事や
 課題を仕上げる、あるいは、相手に「ものをやる」とか推測で
 きるのではないか。
〇行為者、被行為者がともに「やる」、「やりましょう」と言い
 うる。どちらが話者であっても成立する言回しと受け止められ
 たのではないか。
〇さらに重要な点は、③やるべき事柄が①行為者、②被行為者と
 もに「理解しあえる明確な内容」だということ。
〇この2つの条件で、「やる」表現が「共同で、グループで、特
 定目的のために行動する」意味にも活用しやすくなったのだろ
 う。
 
 話が飛躍するが、
・たとえば、不正行為や犯罪行為が発覚した際には、『なんで、
 そんなことをしたのか?』ではなく、『なんで、そんなことを
 やったのか?』を追求する。
・「双方が理解しうる説明」、「納得がいく説明』が必要だから
 だろう。
・念のために「する」場面の登場人物について考察しておくと、
 ①行為者、②動作目的、の二者(補語)があれば十分な状況説
 明になる。
 だから、行為者だけの「する」説明では、うその理屈で動作を
 言い繕うかもしれない。
 
 ネット上の「する/やる」区別に関する書込みを調べてみると
 、文例として佐々木本に近いものが多い。が、
・「やる」を考察した書込みに、「再帰動詞」を指摘するものも
 、「登場人物」分析のようなものも見当らない。
 
(次回に続く)
 

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