『人類哲学序説』梅原猛を読んで-1
2013/07/03(水)
『人類哲学序説』:梅原猛:岩波新書:2013年4月19日
を読み終えた。
哲学書ですが、講義口調の文体で分かりやすいです。
梅原は西洋哲学の原理:「人間中心主義」に疑問を感じて、40歳ごろ、研究対象を主として日本文化に変更したという。
(1)日本文化の原理:「草木国土悉皆成仏」という思想
梅原本は、日本文化の中核的な思想として「草木国土悉皆成仏」という天台本覚思想を指摘しましたと記述する。
人類哲学の基底になる思想だということです。
この基底になる思想は、同時に世界の原初的文化の狩猟採取・漁労採取文化の共通の思想ではないか。
現在の西洋文化の思想、哲学がどうして基底思想から離れていったのか?
梅原本では、もう一つの基本思想として稲作農業が広がった弥生時代以降の「太陽と水の神仏崇拝」の思想をあげている。
つまり、「太陽、水、草木、国土という自然環境」そのものに対して崇拝の念を持ち、打揃って悉皆成仏するのだという哲学原理なのだろう。
(2)「人間中心主義」では立ち行かない
思考実験の態勢は未完ですが、現時点での当方の考察を始めたい。
○人類哲学の基底思想:「草木国土悉皆成仏」の概念を正しく理解すべきだ。
○人間中心主義を捨て去り、「草木国土悉皆成仏」と同列に「人間動物生き物悉皆成仏」を同等に扱う思想が必要になっている。
○有情の人間、生き物が成仏するのは当然で、無情の草木国土も成仏できるのだと序列で考えてしまっては、西洋哲学と変らない。
○人類哲学の基底思想には、「草木国土人間動物生き物悉皆成仏」を据えるべきだろう。
・一度は「宇宙まるごと悉皆成仏」を頭に描きあげて、人類哲学の基底思想をしっかり根づかせるとよいのではなかろうか。
○また、「無情の草木国土が成仏できる」という事態は、「何も為さずに自然に成仏できる」ことを意味していない。
・一度は「地球まるごと、環境まるごと悉皆成仏」を頭に描きあげて、人類哲学の基底思想をしっかり根づかせるとよいだろう。
(3)「悉皆成仏」を得るには?
「悉皆仏性」であることと、実際に「悉皆成仏」することとは同一ではないだろう。
○人類が「成仏する哲学」とは何か?
○「解脱して悟りを得るもの」なのか、死を前にして「極楽行の証しを得るもの」なのか。
・日本文化の原理:インド→中国→日本に伝わった「大乗仏教」が風土に定着するなかで日本流に解釈され、神社思想も加わりつつ編み出されたのが、「悉皆成仏」思想なのではないか。
「悉皆成仏」を得るには、二つの悟りが必要になるのではないか。
①この世に存在するものすべてが「生存するその環境で生態学的に共存循環、相互依存、相互利他の関係にあることを深く悟り、実践し合うこと」
②諸行無常の世にあって、「共生互助の悟り」が消えかけるときがあっても、「他に道なしと悟りを保持し続けること」
この二つの悟りを実践することが肝要だが、人類が産み出している具体的実践方法を意図的に整理、解釈して広めていくことが哲学の役目だろう。(宗教の役目でもあるが)
(以下次回へ)
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