日本語動詞:受動態の多面性-2
2013/12/24(火)
(1)受動態と可能態が同形の場合
自動詞・他動詞の双対生成の例:曲がる/曲げる を模式表記で表すと、
能動態 ・・・・・ 能動態 ・・・・・・・ 能動態
曲ぐ:文語 曲がる:自動詞 曲げる:他動詞
/ \ / \ / \
結果態 可能態 結果態 可能態 結果態 可能態
曲がる 曲げる 曲がらる 曲がれる 曲げらる 曲げれる
\ / \ / \ /
受動態 ・・・・・ 受動態 ・・・・・・ 受動態
曲がれる 曲がられる 曲げられる
○文語:曲ぐ→受動態:曲がれる と、
口語:曲がる→可能態:曲がれる が同形になります。
○これが受動態に「可能」のニュアンスが含まれる下地になっているかもしれません。
○模式表記の3つの可能態:
・曲げる/曲がれる/曲げれる
のうち、「可能」の意味が明白なのは、曲がれる/曲げれるです。
・一方、曲げる:は、「動作」を意味する感じがつよいですね。
・別例:立つ→可能態:立てるの場合、「可能:立てるようになった」、「動作:門松を立てる」のように両面を持ちます。
・動作:立てる→可能態:立てれる となれば、「可能」の意味がつよくなります。
○文語動詞から口語動詞への変換で、可能接辞:eruが「動作」の意味で使われている。
・流る→流れる/離る→離れる/乱る→乱れる/こぼる→こぼれる
(流るる、離るる、乱るる、こぼるる から転換してきた)
(2)受動態と結果態との関係
文語受動態=口語結果態である。
もっとも、思考実験のなかで「結果態」と命名しただけなので、知名度は低いでしょう。
○結果態:「動作・変化が行われた結果の状態」を表す述語と定義した。
・文語では「受動・受身」の意味合いですが、思考のなかの「結果態」としては「結果」に重点があり、「受動・受身」は付属的なものと考える。
・口語での「受動態」は「結果態+可能態接辞:eru」の合成によるもの。
会話のなかで結果態が単独で使われる機会は少ないですね。
(ただし電車内放送で車掌さんが「ドアが閉まります」とアナウンスする発想は、「動作」を言わず「結果の表現」を好む日本語流の言語方式ですから、必ずしも結果態が見過ごされているというわけではない)
○口語動詞の生成段階では遺伝子的な作用で、
・曲ぐ→曲がる/曲げる、つなぐ→つながる/つなげる、休む→休まる/休める、上ぐ→上がる/上げる など自動詞/他動詞の双対生成に使われている。
(休まる:休んだ結果の効果状態を意味する)
(3)単文での結果表現
では、会話のなかで結果表現はどうするのか?
○通常は動詞・能動態の完了形で表すことが多い。
・「この町にも高層マンションが建ちましたねぇ」:×建てられましたねぇ。
・「謎が解けたぞ」:×解かれたぞ。
・「鍵が見つかった」:×見つけられた。 (見つかる:見つk・aru=結果態かも)
・「アワビ 獲ったどォ」
○日本語の特徴的な一面が出ています。
・「ものごと」自体の動作・変化の状態を言い表すときには、能動態で表現する方法をとる。
・補語「登場人・物」が「ものごと」だけで済むからでしょう。
・受動態での表現にすると、「行為者」が誰なのか詮索したくなります。
(4)複文での受動態・使役態表現
ものごとの因果関係を説明するのに補語(登場人・物)が必要になり、行為のやりとりが受動態や使役態で表現される。
・「高層マンションに建たれてしまったから、遠くの眺めがきかなくなったね」:×建てられてしまった。
・「女はなぐられた男に復讐した」:×女はなぐった男に復讐した。
・「青年は瞳を輝かせて入ってきた」:×瞳が輝いて入ってきた。
・きのう買った本はおもしろかった。:×買われた本。(行為者の視点で:買った本でよい)
・「先生、こどもを休まさせてください、インフルエンザだと医者に言われました」:×休ませてください。
(二重強制:先生が保護者にこどもを休まさせる:×休ませさせる)
« 日本語動詞:受動態の多面性-1 | トップページ | 二分合体思考法の効用:動詞の態双対環 »
「日本語文法」カテゴリの記事
- 述語律を記号で表す-3(2021.05.09)
- 述語律を記号で表す-2(2021.02.14)
- 述語律を記号で表す-1(2021.02.06)
- 態派生のしくみ−3(2021.01.17)
- 態派生のしくみ−2(2021.01.12)
コメント