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2014/01/26

日本語動詞:動詞態の双対環を操作-2

2014/01/26(日)

(1)寺村本の例文を題材にして:(受動態・可能態)

 寺村本:『日本語のシンタクスと意味 第1巻』寺村秀夫:くろしお出版:1982年11月10日第1刷/2005年1月20日第17刷
「第1巻」の第3章:態:可能態の節にある解説、例文を題材にして「態の双対環」を使う練習をしてみよう。

 前回の「つかまる」は、寺村本の態の冒頭・前説部分の例文でした。
(最初の節:受動態に入るまえの部分でした)

 寺村本:受動態の接辞
○態の接辞を動詞語幹につなげる手順が解説され、動詞V語幹の種別分けが示されている。
・V1:語幹が子音で終る動詞(五段活用動詞)
 語幹+are(ru) 例:sinu→sin・are・ru
・V2:語幹が母音(i,e)で終る動詞(上、下一段活用動詞)
 語幹+rare(ru) 例:sodateru→sodate・rare・ru
・V3:不規則動詞(サ行、カ行変格活用動詞)
 suru→s・are(ru)
 kuru→ko・rare(ru)

 「態の双対環」方式の受動態接辞
・V1:子音語幹
 語幹+ar・eru (能動系統)
 例:otosu→otos・ar・eru
 語幹+as・ar・eru (強制系統:強制接辞を先行付加)
 例:nom・asu→nom・as・ar・eru
・V2:母音語幹
 語幹+rar・eru (能動系統)
 例:sodateru→sodate・rar・eru
 語幹+sas・ar・eru (強制系統:強制態接辞を先行付加)
 例:tabe・sasu→tabe・sas・ar・eru
・V3:不規則動詞
 suru→s・ar・eru (能動系統)
 sasu→s・as・ar・eru (強制系統:強制態接辞を先行付加)
 kuru→ko・rar・eru (能動系統)
 ko・sasu→ko・sas・ar・eru (強制系統:強制態接辞を先行付加)
○双対環方式では
・受動態の成立ちを「結果態:aru+可能態:eruの合成」と解釈することが合理的と考える。
・強制受動態の成立ちを「強制態:asu+結果態:aru+可能態:eruの合成」と解釈することが合理的と考える。
・この合成法で生成すれば間違いなく受動態を導き出せるところが合理的という理由です。
・もちろん、試しに合成した受動態が運悪く日常の言語使用に供していないかも知れません。
(受動態に受動態を重ねたり、受動態に強制態を重ねたりしないように、双対環方式では語幹に接辞合成する方法を勧めたい)

(2)寺村動詞態の残念な結果

 寺村文法は構文と意味を詳細に分析しているが、非常に残念に感じることがある。
○寺村文法:
・V1の受動態接辞:+are(ru) 
 と解釈し、
また、受動態には可能の表現もあるとして、
・V1可能態接辞:+e(ru)
 V2(可能表現)受動態接辞:+rare(ru)
 とした。
・V2可能態は受動態と同じ形態である、とした。
・V1例:hanasu→hanas・eru
 V2例:sodat・eru→sodate・rare・ru
○残念なことは、
・V2(可能表現)受動態接辞を
 +(r/s)ar・eruと分解せずに、
 +(r/s)are・ru と思い込んでいたことです。
・「+ar・eru」と分解しておけば、後尾の「eru接辞」がV1可能態接辞と合致します。
○また、「+ar・eru」と区切る解釈が定着していれば、頭部の「aru接辞」への関心が深くなったはずです。
(寺村文法の影響で結局、aru:結果態接辞、eru:可能態接辞ともに不十分な文法則を引きずった状態なのですね)
○金谷本も「aru」に注目していますが、受動態接辞を「+are・ru」と見ることから抜け出せないようです。

 可能態での「態の双対環」操作を実行する余地がなくなりました。
次回につづきを載せます。

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