日本語動詞:「態の双対環」で蘇る伝承文法3
2014/02/21(金)
(1)「学校文法」が失ったもの
「学校文法」で失ってしまったものを「態の双対環」で取り戻せたらなあと思いめぐらしています。
「学校文法」で受動態、使役態しか習っていない世代が「態の双対環」方式になじむのに時間がかかりますね。
そこで、今回のシリーズでは、可能態、結果態、強制態に焦点をあてて、「学校文法」の落し物を拾い直してみたい。
(2)「受動態」の怪
中学参考教材、国語辞典には「受動態」という括りではなく、「受身・可能・自発・尊敬」の用途に使われる助動詞としての説明があります。
○寺村本の「態」では、受動態(直接受身・間接受身)、可能態、自発態、使役態の節立てのなかで、
・受動態としては「受身(直接・間接)」だけの意味に限定しています。しかし、受動態の「接辞」がほかの可能態や自発態にも使用されることを「態の連続性」と見なして寛容的なので、法則性を弱めています。
○「態の双対環」方式では、自・他動詞を問わず、動詞語幹の子音/母音を問わずに、「可能態」、「結果態」、「強制態」を明確に接辞定義をしてあります。
・「態の双対環」方式の「受動態」とは、「受動態接辞:+(r/s)ar・eru」の形態を持つものだけを認めます。
この接辞形態で表現する受身態、尊敬態、規範態、成就(可能)態などをそっくり包含しています。
つまり、「態の双対環」でいう「受動態」とは、他人が行った行為、自分が行った行為の「結果の達成、未達成に対する反応、反省、感情」を表現するものです。
○ここでもう一度、「可能態」について確認しておきしょう。
・「学校文法」、寺村本でいう「可能態」形態:、
・子音語幹に+eru/母音語幹に+rareru を接続する。(母音語幹に+reruを付ける選択が合理的なのに、、、)
・「態の双対環」方式の「可能態」は、「動作開始時点の可能態」と見なして、
・子音(母音)問わず語幹+(r/s)eru が接辞です。 (つまり「ら抜き」可能態を推奨します)
・「動作した結果の可能態」は、「態の双対環」方式の「受動態」にあり、当然「ら有り」形態です。
(3)「態の双対環」受動態接辞:+(r/s)ar・eru
「態の双対環」方式では、受動態を(法則として)明示します。
・子音語幹、母音語幹を問わずにすべての動詞を受動態にできます。
・例:能動:起き・(r)u/可能:起き・(r)eru/結果:起き・(r)aru/受動:起き・(r)ar・eru
・能動:休m・u/可能:休m・eru/結果:休m・aru/受動:休m・ar・eru
・能動:調べ・(r)u/可能:調べ・(r)eru/結果:調べ・(r)aru/受動:調べ・(r)ar・eru
・強制:飲m・asu/強制可能:飲m・as・eru/強制結果:飲m・as・aru/強制受動:飲m・as・ar・eru
○受動態の形態:子音語幹、母音語幹に関わりなく、
・受動態接辞:+(r/s)ar・eru が接続されています。 (「学校文法」、寺村本も同様)
(4)受動態の意味
受動態接辞の構造が「結果態」+「可能態」の合成で生成されています。(と分析するのが「態の双対環」方式ですが)
・基本的な意味は、
自分や他人が行った行為での「動作の結果状態:達成、未達成」を認識して、どう「反応することが可能」か という意味です。
・または、単に「動作の結果状態」に「なるのを開始します」という構造だと解釈します。
例:起き・れる:可能態/起き・られる:受動態(=結果可能態)
・夜「明日、早く起き・れるかなぁ」 翌朝「や、起き・られたぁ」
例:受動態(=規範:反復行為)
・「明日までは、ここから出・れますが、明後日からは出・られませんのでご了承ください」
例:受動態(=尊敬態)
・先生が来・られます。
例:受動態(=尊敬/受身)
・先生が君の絵を褒め・られていましたから、その場に君もいたら、直接褒め・られたでしょう。
例:受動態(=自発・共感)
・亡き父のことが偲・ばれる。
例:受動態(=規範から外れるほどのことの表現:否定形が多い、結果に到達できない!)
・「熱うて飲・まれへん」→(飲むことを完遂できない)
・「どうしても行・かれない」→(行って帰るための条件が閉ざされた)
・止むに止・まれぬ気持から・・・→(止めてしまって放り出すわけにいかない)
・食わなければ生き・られない→(生き抜く手段)。
比較:食わなければ生き・れない→(今日、明日の手段)。
例:受動態(=受身)
・先生に叱・られた。
・雨に降・られて、雨宿り。
○受動態の意味による区分けを簡単に示しました。
・どの分類の受動態に対しても、「動作の結果状態」を共感すると意味が分ってくるように思います。
・日本語学習者にも共感してもらいやすい方法は?
・「態の双対環」要領で、「先生に叱らる」:結果態で一度止って情景を思い浮べてから「叱らr・eru」、「叱られた」と続ける。
・日本語は比較的に「動詞文法」に例外がないので、練習すれば応用が効きます。
次回、強制態、使役態を解説します。
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