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2014/02/19

日本語動詞:「態の双対環」で蘇る伝承文法2

2014/02/19(水)

(1)「学校文法」が失ったもの

 「学校文法」で失ってしまったものを「態の双対環」で取り戻せたらなあと思いめぐらしています。
「学校文法」で受動態、使役態しか習っていない世代が「態の双対環」方式になじむのに時間がかかりますね。
 そこで、今回のシリーズでは、可能態、結果態、強制態に焦点をあてて、「学校文法」の落し物を拾い直してみたい。

(2)「結果動詞」の怪

 中学参考教材、国語辞典には「結果動詞」や「結果態」に関する説明がありません。
・ないことが怪です。
○日本語の文法界ではまったく着目していない動詞態のようです。
・しかし、日本語の語彙生成の仕組を考察すると、自動詞・他動詞の相対生成の接辞が、短い音素の組み合せながら文法的に強力な法則性を発揮していることがわかります。
○語彙段階の生成で
・他動詞とその動作結果の状態を表す自動詞との対構成が数多くあります。
・寺村本例:重ねる→重なる、固める→固まる、決める→決まる、備える→備わる、高める→高まる、伝える→伝わる、集める→集まる、変える→変わる、助ける→助かる、曲げる→曲がる、見つける→見つかる など。
・語尾を一見して、:eru:他動詞/:aru:自動詞(結果表現)だと感じます。
○無理やり共通語幹を比べると、
・kasan(e)/kasan(ar)、 katam(e)/katam(ar)、 kim(e)/kim(ar)、、、
のようになります。
・仮に共通語幹だとして、「態の双対環」風に表現すれば、
・能動:重(さ)ぬ/可能:重ねる/結果:重なる/受動:重なれる
・能動:固む/可能:固める/結果:固まる/受動:固まれる
と言うような推測ができますが、まったくダイナミックな感じがしません。
○他動詞に注目して、
・能動:重ねる/可能:重ねれる/結果:重ねらる/受動:重ねられる
・能動:固める/可能:固めれる/結果:固めらる/受動:固められる
というふうに双対環を操作する方がわかりやすいですね。
・もしかすると、文語体時代に語彙変化の波が起きて、結果:重ねらる→重なる/固めらる→固まる と一連の「結果動詞」が誕生したのかもしれない。
○以上の考察から、「重なる、固まる、決まる、助かる」などの自動詞が「動作や変化を受けた結果状態」を表すためのほぼ専用の動詞形態だということがわかります。
・日本語には「動作の結果」を表す動詞が多数ありますが、なぜか「結果動詞」との呼び方がありません。
・さらに、なぜか「結果態」という概念が文法に定着していません。(受動態=結果態+可能態=動作の結果を受けて、どう対応するか、の意味が十分理解されていません)
・「結果動詞の怪」の間違いとは、
文法的な「結果態」を見落していることです。
(「結果動詞」命名は不必要ですが)

(3)「態の双対環」結果態接辞:+(r/s)aru

 「態の双対環」方式では、結果態を(法則として)明示します。
・子音語幹、母音語幹を問わずにすべての動詞を結果態にできます。
・例:能動:開k・eru/可能:開け・(r)eru/結果:開け・(r)aru/受動:開け・(r)ar・eru
・能動:起き・(r)u/可能:起き・(r)eru/結果:起き・(r)aru/受動:起き・(r)ar・eru
・能動:休m・u/可能:休m・eru/結果:休m・aru/受動:休m・ar・eru
・強制:飲m・asu/強制可能:飲m・as・eru/強制結果:飲m・as・aru/強制受動:飲m・as・ar・eru

○動詞「結果態」を口語で使う場面は、自動詞の動作の結果:
・休まる(ゆっくり休んだ結果の状態)、
・つかまる(しっかりつかんだ結果として態勢を保持する)、
・わかる(仕分けして区別ができる)、
とか少ないのですが、受動態につながる態ですから重要です。
・また、結果態:「なさる」、「なはる、~はる」が直接(受動態を経ずに)、尊敬態として使われる例もあります。


(4)結果態の意味

 すべての動詞が「結果態」になれます。
 (結果動詞をさらに結果態にすると意味不明になりますが)
・基本的な意味は「その動詞の動作が行われた結果の状態」を表すことです。
・「態の双対環」方式で、結果態、可能態を明示する理由は、受動態への合成生成のほかに、動詞の「動作の開始」、「動作の結果」を表現すべきだと考えたからです。
・動作の開始:可能態で表現する。
・動作の結果:結果態で表現する。動作を続けたあとの結果状態を推論した表現の場合もある。
 すべての動作の開始と結果が対ペアで表せるとなれば、「態の双対環」がダイナミックな形式になります。
 「動詞の働き」を確実に理解できるはずだと推測しました。
・「結果動詞」を「態の双対環」方式で操作しても、ダイナミックさが感じられません。操作をして不思議な感じがするものにはなにか理由があります。思考の道具としても双対環操作は役立ちます。

次回、結果態、受動態を解説します。

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