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2014/07/15

日本語文法:動詞語幹と態接辞の接合法2

2014/07/15(火)

 『日本語が世界を平和にするこれだけの理由』金谷武洋:飛鳥新社:2014年6月25日
金谷氏の新刊本が出版されたとのこと、直接の文法解説書ではなさそうだが、日本語の「虫の目」視点を基礎にした解説本だろうと推測する。4日前に店頭では在庫なしだったので取り寄せ注文したところです。
金谷文法の「盆栽型構文」や「虫の目」視点には大いに共感しています。しかし、自他動詞相関に対する「動詞態の連続一本線」考察という旧弊思考では、「現代文法家がぶつかる壁」を越えられずにいるようです。

(2)「動詞態の接辞」最初のヒントは金谷本から

 金谷本の最新刊にはまだ言及できませんが、日本語文法の最先端を切り拓いて来たことに敬意を感じています。
ただ、『日本語は敬語があって主語がない 「地上の視点」の日本文化論』金谷武洋:光文社新書:2010年9月20日
の中で、金谷の限界を見ています。
「ら抜き言葉」「さ入れ言葉」に対する見解が、他の多くの日本語学者と同様な解釈の範囲に留まっています。
○「ら抜き言葉」「さ入れ言葉」が、もしも「間違い」ならば、その言葉が「どんな意味を表すのか」を真剣に解説する視点が欠けている。
○「動詞態の接辞接合法」の原理を忠実に貫けば、「ら抜き言葉」こそ正しい「可能態」表現ですし、「さ入れ言葉」は二重強制「可能態」の正しい表現です。

 思考実験では、金谷本から多くの示唆を得て考える視点を定めました。
①動詞(態)の活用は、動詞語幹(音素解析:ローマ字つづり)に接辞(接合子音:(r/s)を前置)を接合させて、作り出すこと。
②「ある:aru」と「する:suru」、「r」と「s」、自動詞と他動詞の「対の関係性」などの知識を得ました。
③「対関係」は伝統的な研究として国語学者のなかで続けられて来たし、佐久間鼎の自他動詞対応図を示したうえで、「動詞の連続一本線:人為を超えた事態←・→意図的な使役状態」の考え方を見せてくれた。
④寺村本でも動詞態の把握の仕方は「連続一本線」を越えられないでいる。

 この③④の「連続一本線」は、原理として成り立つのか?成り立つとしても自動詞・他動詞の分類指標になりうるのか?を吟味した。
○受動態と使役態が一本線の両端にあるという説明では、日本語構文の「自動詞、他動詞、使役動詞のすべてが受動態になれる」特徴を解釈できないし、「一本線」に拘る理由にならない。
○「動詞の連続一本線」を捨てることで、「態の双対環」方式にたどり着いたわけです。
「態の双対環」方式の構造は、
①すべての動詞(自動詞、他動詞、強制動詞)は、能動態と受動態を対で有する。
②すべての動詞は、動作の開始:「可能態」と動作の結果:「結果態」を対で有する。
の2つを基本原理にしたものです。
○能動態-受動態、可能態-結果態の2つの対の軸木が十字になって環を支えるような姿を想像しました。
○動詞ごとに「態の双対環」ができるわけです。(しかも、能動系の「双対環」と強制系の「双対環」の2つができる)
○また、時間に沿った流れを想定すれば、能動態→可能態→結果態→受動態でもよいでしょうが、印象が弱いですね。
(「連続一本線」を思い出させてしまいますね。でも能動系と強制系の2本の相似線ですから)
○能動態-受動態、可能態-結果態というように「双対関係を明示する環状の配置」が分かりやすいと思います。
(すべての動詞に、能動系「態の双対環」と強制系「態の双対環」の2つの環です)
◎「態の双対環」方式の弱点は、自発系(自然発生的な性状表現)を明確に表現する基本原理がないこと。
(いわゆる自発態については「可能態」や「受動態」に間借りするような扱いになるかもしれない)

(3)「動詞態の接辞接合」の原理を貫く

 本来ならこの節:原理を貫くを書きたかったのですが、前振りが長くなりました。
○「ら抜き言葉」部分で、態の接辞接合法の原理を忠実に貫けば、「ら抜き言葉」こそ正しい「可能態」表現です と記述しました。
次回へつづきとします。

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