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2014年8月

2014/08/31

日本語動詞:態の双対環で蘇る伝承文法7

2014/08/31(日)
 この連載のまとめを記述します。

日本語動詞:態の双対環で蘇る伝承文法1
(1)「学校文法」が失ったもの
(まとめ用に追記)
 20代の青年が「学校文法」により受動態、使役態しか習っていない、記憶に残っていないという状態では本当の言語感覚が育たない。
〇日本語の動詞は、一つの動詞語幹から自動詞・他動詞に変換して「対応する自他ペア動詞」を作り出すための態の接辞があります。
(語彙的態の例:渡る/渡す、閉まる/閉める、立つ/立てる、切れる/切る、動く/動かす)
〇語彙的態の接辞は、文章構文内での文法的態:の接辞としても機能しています。
(文法的態の例:可能態:eru→休める、食べれる、結果態:aru→休まる、食べらる、強制態:asu→休ます、食べさす)
〇思考実験で得た「態の双対環」方式では、可能態、結果態、強制態などを盛り込んで、受動態(結果+可能)、使役態(強制+可能)を解説できるようにしました。
(2)可能動詞の怪
 中学参考教材、国語辞典に可能動詞の説明がある。(間違いが残留)
・例:書く→書ける/読む→読める/立つ→立てる
 (子音語幹の動詞:五段活用:に+eruを付けた動詞形態を可能動詞という)
・間違い→それ以外(母音語幹の)動詞には「られる」をつけて可能の意味を表す。
 (+(r)ar・eruをつけるとは、受動態になってしまいます!)
 (可能態に「ら入れ:受動態化」を推奨するなんて信じ難いことです)
〇正しい(文法的)→母音語幹動詞でも+r・eru接辞をつけて(ら抜きで)可能態を表現すること。
・子音語幹・母音語幹両方に適用できる文法則ですから、可能動詞を作るだけでなく、「文章構文上の可能態」として扱えるものです。
〇学校文法・ひらがな解析:では限界あり。語幹の検出や接辞の構造を示すには音素解析(ローマ字つづり)が必須です。
〇広く大衆のなかにある伝承文法は「可能態:食べれる」を受け入れているし、「受動態:食べられる」との意味の違いを感得しているはずです。
(3)「態の双対環」可能態接辞:+(r/s)eru
〇語幹と接辞の接合原則:子音・子音、母音・母音の接合は避ける。
〇子音語幹動詞:母音始まりの接辞:+eruを直結OK。
〇母音語幹動詞:接合用の子音挿入:+(r/s)eruで接合する。
 この(r/s)付きの一般化表記はすべての態接辞が母音始まりですから、態の接辞の基本表記と言えるものです。
〇接辞を正しく学ぶためにローマ字つづり(訓令式でよい)が必須なのです。
(文法学者でもローマ字つづりを嫌う方が多いから、伝承文法が見えないようです)
(4)可能態の意味
〇可能態の基本的な意味は「その動詞の動作ができる」、「できる状態にある、その能力がある」です。
〇無情物が主格補語の場合、「ナイフが切れる」などは自発態と見なされる。
・すべての動詞が「可能態」になれます。(例:読める、食べれる、生きれる)
〇可能態:生きれる:今、生きることが可能だという意味です。
 受動態:生きられる:生き抜くことが可能だ、結果として生存できるという意味です。
〇可能態否定形:行けない:(自分の意思などで)行くことができないの意味。
 受動態否定形:行かれない:(不本意、不可抗力で、結果・規則で)行くことができないの意味。
 (これほど意味が違うものを同一視してはいけません)

日本語動詞:態の双対環で蘇る伝承文法2
(1)「学校文法」が失ったもの
(2)「結果動詞」の怪
 中学参考教材、国語辞典には「結果動詞」や「結果態」に関する説明がありません。
○日本語の文法界ではまったく着目していない動詞態のようです。
〇しかし、思考実験で気づいたことは、文語体の受動接辞:(r/s)aruが動詞語彙の自他対応化(使役交替)への機能を発揮していると同時に、文法的にも強力な法則性を発揮していることに気がつきました。
(3)「態の双対環」結果態接辞:+(r/s)aru
〇口語体では「結果態」を語彙形態で見るとすれば、閉まる、つかまる、休まる、重なる、なる などの語尾にaruがつく単語です。
〇動詞語幹+(r/s)aru:結果態接辞ですべての動詞を結果態に変換できます。
・通常、結果態単独で使うよりも受動態(=結果態+可能態)を生成するために活用されています。
(4)結果態の意味
〇基本的な意味は「その動詞の動作が行われた結果の状態」を表すことです。
・「態の双対環」方式で、結果態、可能態を明示する理由は、受動態への合成生成のほかに、動詞の「動作の開始」、「動作の結果」を表現すべきだと考えたからです。
・動作の開始:可能態で表現する。
・動作の結果:結果態で表現する。
〇すべての動作の開始と結果が対ペアで表せるとなれば、「態の双対環」がダイナミックな形式になります。

日本語動詞:態の双対環で蘇る伝承文法3
(1)「学校文法」が失ったもの
(2)「受動態」の怪
 中学参考教材、国語辞典には「受動態」という括りではなく、「受身・可能・自発・尊敬」の多用途に使われる助動詞としての説明があります。
なぜ他用途なのかを説明しきれていません。
(3)「態の双対環」受動態接辞:+(r/s)ar・eru
〇受動態は2つの接辞が合成されたものです。
〇「態の双対環」方式では「結果態+可能態」で受動態が生成されたと見なします。
(4)受動態の意味
〇受動態の基本的な意味は、
・自分や他人が行った行為での「動作結果に到達した状態であること」を表現します。
・または、「くり返し実行される動作の結果状態」を表現します。
〇受動態の意味も形態も1つですが、「受身・可能・自発・尊敬」と多用途に解釈されます。
・受動態は「結果状態を表す」のが本業ですから、先行する補語との関わりで多様に解釈されると言うことです。
〇この意味解釈は、結果態・可能態・受動態の個々の態接辞を深く確実に理解しておくことで得心できるだろうと思います。
(可能態と受動態の可能表現とは意味が違います。受動態は動作結果の状態による影響を表現するものです)

日本語動詞:態の双対環で蘇る伝承文法4
(1)「学校文法」が失ったもの
(2)「強制態」の怪
〇「強制態」:相手に動作させることを表現する動詞態を言います。
〇文語体での使役形が「強制態」そのものです。
(3)「態の双対環」強制態接辞:+(r/s)asu
〇強制系「態の双対環」を独立に設定。ただし、構造は、能動系「態の双対環」と相似形です。さらに二重強制系「態の双対環」を想定してもよい。
(4)強制態の意味
〇強制態:相手に動作をやらせるという行為を意味します。
・相手が「物・無情物」の場合、他動詞となります。(乾く→乾かす)
・相手が「人・有情物」で動作をやらせる場合、「強制」の動詞になります。(読む→読ます)

○強制受動態と使役受動態の違い
・強制態:泣かす/泣かせる/泣かさる/泣かされる←強制受動態(すっきり)
・使役態:泣かせる/泣かせれる/泣かせらる/泣かせられる←使役受動態(ぎくしゃく)
否定形にして比べてみる。
・強制受動態の否定形:泣かされない←被強制者(受身者)の負けん気が見える。
・使役受動態の否定形:泣かせられない←強制者の不達成感がうかがえる。

日本語動詞:態の双対環で蘇る伝承文法5
(1)「学校文法」が失ったもの
(2)「使役態」の怪
〇使役態=「強制態」+「可能態」の接辞合成と解釈できます。
(3)「態の双対環」使役態接辞:+(r/s)as・eru
(4)使役態の意味
〇使役態:強制態と同様に動作を相手にやらせるという行為を意味しますが、「強制行為者」が仲介・受命者に対して「強制を代行させる」場合も含みます。
・動作の強制・使役、動作の許可、動作の放任なども含みます。
(5)強制受動態と使役受動態の違い(補足)
・強制受動態:強制態+(受動態:結果態+可能態)の合成
・使役受動態:強制態+可能態+(受動態:結果態+可能態)の合成、可能態が途中に入っているために、直接結果態に結びつかないもどかしさが現れる。

日本語動詞:態の双対環で蘇る伝承文法6
(1)使役受動態をもう一度見直す
(2)動詞語彙の態から見直す
(3)可能受動態と使役受動態も相似性あり
〇可能受動態:可能態+(受動態:結果態+可能態)の合成、先頭の可能態が能動性を持たない場合、合成した受動態が意味不明になります。
〇使役受動態:強制態+可能態+(受動態:結果態+可能態)の合成なので、先頭の強制態+可能態が辛うじて能動性を保つことが多いから、合成して意味不明になることは少ない。しかし、ぎくしゃく感は残ります。
(4)使役受動態のぎくしゃく語感
(5)「態の双対環」の種類が増えましたが、それぞれ相似の「双対環」です

2014/08/26

日本語文法『曲がり角の日本語』水谷静夫6

2014/08/26(火)

 水谷本への感想を集約します。
(著者水谷先生は7月逝去なされたとの報を今知りました。・・・なんども再読しようと思います:9/3)
日本語文法:『曲がり角の日本語』水谷静夫
(1)水谷静夫『曲がり角の日本語』を読んで
 水谷本の内容目次:
第1章 辞典になぜ改訂が必要か
第2章 日本語が曲がり角に、今?
第3章 文法論を作り直せ
第4章 日本語未来図
 1.変化を測る物差し 2.ゆらぐ格助詞 3.<ら抜き>言葉にも合理性-活用語の未来
 4.予測を統合してみると

〇通読直後の感想記事としてあげたのは、
第4章2:ゆらぐ格助詞、3:ら抜き言葉にも合理性 の部分。
(2)「可能態」<ら抜き>言葉のこと
・「ら抜き言葉」:可能・自発からの発展で、生成に合理性ありとを認めているが、態の接辞:可能態、受動態、使役態の明解な説明がない。読者が「ら抜き言葉」を堂々と話してみようと思うための誘導文になっていない。
・「さ入れ言葉」誤用の広がりを未来予測しているが、「さ入れ言葉」が持つ本来の意味を説明していない。何故誤用が起きるのかを深く分析していない。
(追記:ら抜き:可能態/さ入れ:使役態・強制可能態の問題は、共通の文法事項に対する知識の欠落が引き起こしています。動詞語幹:子音語幹/母音語幹と態接辞との接合法則を正しく学校文法へ反映させる必要がありますが、水谷本には指摘がありません)
(3)格助詞の重なり
・ゆらぐ格助詞:「何を気をつけるんだ」:を格の重なり、「象が鼻が長い」:が格の重なり、「仕事(が/を/に/は/も)変わる」:多様な格助詞とも組み合わせることができる。
〇水谷本の「作り直しの文法」の詳細像が説明されてない。
・当方も「ゆらぐ格助詞」の法則性を語れるほど、考察・思考実験ができていない。
日本語文法『曲がり角の日本語』水谷静夫2
(4)「曲がり角の日本語文法」
〇思考実験の一部を開示した。
・動詞語幹:子音語幹/母音語幹と態接辞との接合法則とは、
・動詞語幹:母音/子音の別あり、態接辞:(たまたま)すべて母音はじまり だから、
 母音語幹に接合するすべての「態の接辞」には:r/s接合子音:を挟み込みます。
 子音語幹に接合するすべての「態の接辞」には:接合子音を外し:直接接合します。
・文法にローマ字つづりの音素解析を導入すべきです。
(学校文法や国語辞典は、ひらがな解析ですから誤った文法を解決できません)
(5)「打ち出の小槌」の得失
〇思考実験を進める。
・日本語動詞が同一語幹から「自動詞・他動詞の対」へ転換派生できる機能を持っている。その機能接辞(語彙的態)が、文章構造に対する「文法的態の接辞」としても活用されている。と考察した。
日本語文法『曲がり角の日本語』水谷静夫3
(6)戻って「さ入れ言葉」を再度究明する
・水谷本でも、ひらがな解析の限界にとどまっています。
・文法にローマ字つづりの音素解析を導入すべきです。
日本語文法『曲がり角の日本語』水谷静夫4
(7)さらに戻って「使役態」を再度究明する
 水谷本での使役態への理解の薄さが非常に気にかかります。
〇辞書の改訂には、日々の用例集めが大事なことだという。
 水谷本(第1章 辞典になぜ改訂が必要か 18頁)
以下引用:
 ・例:司馬遼太郎『坂の上の雲』文春文庫1288頁→訂正:第1巻288頁
 ** 旧藩が鳴雪に期待していたのはその士大夫(したいふ)としての素養や精神をもって書生たちを感化せしめることであり **
 ・「書生たちを感化せしめる」でなく、ここは「書生たちを感化する」ではないでしょうか。
 「書生たちを感化せしめる」と言うと、書生が他の人間に感化を及ぼさなければならなくなります。
 書生を使って他に良い影響を与えさせた場合だけが「感化せしめる」ですから、ここは「感化する」なんです。司馬さんはこういう勇み足をよくやります。特に漢文口調でたたみかけてくる文脈に、この手の誤用がしばしば見られます。
引用終わり:
 以下思考実験を始めます。
〇水谷本では小説文の「感化せしめる」=「感化させる」の意と解釈されたのだろう。
・あたかも、鳴雪が書生たちに世間大衆を感化させるという「二重使役、二段使役」を想定したかのような解釈ですが、全くの誤解でしょう。(単純な一段使役です)
・しかも、解決策として使役形をやめてしまい、「感化する」を示します。(これも間違いです)
〇思考実験では、司馬遼太郎のこの例文を次のように解釈します。
・旧藩が鳴雪に「書生たちを」素養と精神で「感化させる」ことを期待したのだ。
・旧藩は「鳴雪が書生たちを感化すること」をさせようと目論んだ ということなのでしょう。
(旧藩から見て鳴雪に動作を強制する一段使役の構文です)
日本語文法『曲がり角の日本語』水谷静夫5
(8)補語の役割:格助詞
(9)態変化による補語の交代:格助詞の意味の交代

追加分
日本語文法『曲がり角の日本語』水谷静夫7

蛇足:後続分を参考リンクしました。
日本語動詞:双方向視点
日本語動詞:双方向視点2

2014/08/24

日本語動詞:受動態の多面性-5

2014/08/24(日)

 この項も整理のまとめをつけておきましょう。
まず、掲載済み部分をメモがきして新しい部分は最後尾につけます。
日本語動詞:受動態の多面性-1
(1)受動態の生い立ち
・「態の接辞」の形態、構造/文語体の受動接辞と使役接辞が現役活躍
 /「態の双対環」の構造
(2)受動態の意味は何種類?
・受動態の根源的な意味は一つ/先行する補語との関わりで多様に解釈

日本語動詞:受動態の多面性-2
(1)受動態と可能態が同形の場合
・受動態:つながれる←つなぐ =可能態:つながれる←つながる
(2)受動態と結果態との関係
・文語体の受動態接辞:(r/s)aruは現在も現役活躍中。「結果態」と命名
・口語体の受動態接辞:(r/s)ar・eruは「結果態+可能態:eru」と合成されたもの
(3)単文での結果表現
(4)複文での受動態・使役態表現

日本語動詞:受動態の多面性-3
(1)動詞態の復習/大野晋、中島文雄、金田一春彦
・中島本:江戸時代に行為動詞+eru(可能接辞)で可能動詞ができ、戦後「来れる/見れる/食べれる」など可能形が広がっている。(母音語幹の動詞にも適用例あるを言及)
・金田一本:使役の意味①他にさせる②他の意思の行動を許すの二面性あり。
(通常、他にさせるとき、他の意思が同時に伴うことを期待している)
(寝かす、笑かす:+(k)asu:は相手の意思に反してもありうる)
(2)思考実験の復習/「態の双対環」の能動系、強制系

日本語動詞:受動態の多面性-4
(1)動詞態の復習の総括
(2)動詞態の再提起:「態の双対環」
(3)二種類の受動態形式(強制系:s・asu、使役系:s・as・eru)
・強制系:立たす/(立たせる:可能態/立たさる:結果態)/立たされる:強制受動態
・使役形:立たせる/(立たせれる:可能態/立たせらる:結果態)/立たせられる:使役受動態
(西日本では強制系をよく使うので、「立たされる」支持派が多いのでは?)

日本語動詞:受動態の多面性-5

 前項の受動態二種類について、補足します。
(1)能動詞でも態の変換で所動詞へ変化する

 日本語文法:能動詞・所動詞の受動態にあるように、可能動詞、可能態の動詞を受動態へ変換すると意味が成立しない語になります。
「態の双対環」形式は
①能動態→④受動態(上下軸)、②可能態→③結果態(右→左軸)の2軸を交差させた配置で表示しますから、時計の文字盤配置にたとえると、0時:能動態、3時:可能態、9時:結果態、6時:受動態が置かれます。
・態変換の生成順序は①能動態→②可能態、①能動態→③結果態、③結果態+②可能態=④受動態という具合です。能動で分流して受動で合流するという概念です。
この生成順序が基本文法(最簡潔文法)だと思います。
 さて本題にはいりましょう。使役系動詞の受動態が二種類の形態になることです。
動詞例:立つの場合
・①立つ②立てる③立たる④立たれる (②立てる:可能と他動詞の二義あり)
・①(立てる:他動詞)②立てれる③立てらる④立てられる (上下行で二種の受動態あり)
・①(立てる:可能)②?立てれる(二重可能)③?立てらる④?立てられる (意味破綻)
〇自動詞「立つ」が②「立てる」で他動詞(能動性あり)の意味が残ったので二種の受動態が生まれます。(二種の受動態はそれぞれ自動詞/他動詞の受動態を意味し、混同しないはずです)
動詞例:立つ→立たす:強制態の場合
・①立たす②立たせる③立たさる④立たされる (②立たせる:強制可能態・使役態)
・①(②立たせる)②立たせれる③立たせらる④立たせられる(上下行で二種の受動態あり)
〇②立たせる:に能動性が残るので辛うじて使役受動態が成り立つ。
 問題は二種の受動態「立たされる/立たせられる」が同じ意味を表現すべきなのに、形態が違っているということです。(もともと「立たす/立たせる」がほとんど同じ意味ですから)
・通常、現代の文法者は、「立たせられる:tat・as・e・r・ar・eru」を推奨しており、「立たされる:tat・as・ar・eru」を省略形式だと解釈しているようですが、省略と考えるのは間違いで、基本文法としては強制受動態「立たされる」を推奨すべきでしょう。

 基本文法として使役受動態を推奨しない理由は、簡潔で適用範囲が広い法則にするためです。
①強制態②強制可能態=使役態③強制結果態④強制受動態 の生成の流れと、
①(②使役態)②使役可能態=強制可能態+可能態③使役結果態=強制可能態+結果態④使役受動態=強制可能態+結果態+可能態 の生成の流れ を比較したとき、
同じ意味を表すならば、簡単な形態のほうがよいに決まっている。
〇また、能動詞/所動詞の視点から、可能態(自発態にもなる)変換した動詞は受動態を生成できない場合が多いということを考慮すべきだろう。(形態ではなく、意味の変化に注目)
つまり、
・①(②読める)②?読めれる(二重可能態)③?読めらる④?読められる(受動態不成立)
 このように②可能態を①能動位置に繰り上げて「態の双対環」操作してみると、受動態が生成できないことに納得していただけるだろう。(予想以上に事例は多いはずです)
・可能態を使おうと提唱する立場としては、可能態が「所動詞に近づく」ことを併せて理解してほしいです。

〇蛇足:態の双対環方式の時計文字盤の位置から受動態の生成順を手繰ってみましょう。
・基本法則:0時:能動態→9時:結果態→6時:受動態:筆順「C字形」のように生成する。
・変則:0時:強制能動態→3時:使役態・強制可能態→9時:使役結果態→6時:使役受動態:筆順「逆S字形」のような生成。
・変則:0時:使役態・強制可能態→9時:使役結果態→6時:使役受動態:筆順は「C字形」ですが、動詞内容が3時→9時→6時:筆順「逆フ字形」の生成です。
〇蛇足の蛇足:「態の双対環」連鎖生成の思考実験図を追記しました。
Photo_2


2014/08/20

日本語文法:動詞語幹と態接辞の接合法5

2014/08/20(水)

 今回のシリーズ:語幹と態接辞の接合法を総仕上げしておきたい。
急がば回れで、まず、いままでの(1)~(4)までを要約してみます。
(1)「動詞態の接辞」を深く理解する:日本語文法:動詞語幹と態接辞の接合法
〇要点:「態の接辞」の重要事項は、①動詞語幹の種類、②態の接辞の種類、③動詞語幹と態接辞との接合法則
 の3つ。
(2)「動詞態の接辞」最初のヒントは金谷本から:日本語文法:動詞語幹と態接辞の接合法2
〇要点:前節の基本は金谷本がヒントで考察したもの。
・だが、自他対応の「対関係」を「動詞の連続一本線:人為を超えた事態・受動態←・→意図的な使役状態」という考え方には共感できなかった。
使役にも使役受動態があるから、連続一本線では説明しきれないと思い、新しい「態の双対環」へ向かった。
(3)「動詞態の接辞接合法」の原理を貫く:日本語文法:動詞語幹と態接辞の接合法3
〇要点:可能態生成の基本原理は、動詞語幹に可能態接辞:+(r/s)eruを付加することです。
・VⅠ子音語幹:書ける・読める・飲める:語幹+eru(原理:子音語幹には接合子音がいらない) 
・VⅡ母音語幹:着れる・食べれる・伸びれる:語幹+(r)eru(原理:母音語幹には接合子音をはさむ)
(4)態接辞の接合子音:多様な試み(能動態・辞書形でも接合法原理あり):日本語文法:動詞語幹と態接辞の接合法4
〇要点:態の接合子音には、rまたはsがつきますが、場合によりkまたはy(古語)も使われる。
・寝さす/寝かす、笑わす/笑かす。(k・asu:相手の意思を考えに入れずに動作させるとの意味)
・見ゆ/見える、聞こゆ/聞こえる。

(5)未然形、連用形でなく動詞語幹に接辞を接合させる

 さて、いよいよ総仕上げにはいります。
〇外国人留学生などに日本語を教える場面での教材は、実地に役立つ基本文型を優先します。
〇動詞文では、五段活用、一段活用などの形態で教えません。
・食べます/食べません/食べました/食べませんでした
・行きます/行きません/行きました/行きませんでした
 を教えながら共通の活用語尾に気づかせていきます。
・動詞辞書形、ます形、た形、て形、ない形 などを初期から教えたほうが後々の伸びがよいらしい。

 日本人も文法を学び直すとしたら、五段活用表から離れる覚悟でやるべきでしょう。
〇接辞:ます、ない を考察しましょう。
・masu、naiともに子音始まりの接辞(助動詞と言わないことにします)ですから、接合には母音が必要です。
〇否定接辞:+(a)nai
〇ます接辞:+(i)masu
これで未然形、連用形から開放され、語幹接合が解決します。
〇食べ・nai、いk・a・nai
〇食べ・masu、いk・i・masu
(日本青年に教える日本語文法としてこの領域まで理解させると応用力がつくはずだと思います)

 ついでながら、終止・連体形、仮定形、命令形に対応する接辞と形態も示しておきましょう。
〇終止・連体接辞:+(r/s)u→ 食べ・r・u/いk・u
〇仮定接辞:+(r/s)eba→ 食べ・r・eba/いk・eba
〇命令接辞:+(r/s)e、+(y)oo→ 食べ・r・e、食べ・y・oo/いk・e、いk・oo

 動詞文のほかに、
〇形容詞文、名詞文も です形、だ、で形、く・ない形での
文型で始まるようですが、動詞文での接合よりゆるい結合のようですね。
(考察未完なので省略します)

以上でシリーズ完了します。

2014/08/13

日本語文法:自他対応に語彙的態が深く関与

2014/08/13(水)

(1)文法的態にも語彙的態の接辞が重要な役割を果たす

 前回、三上文法での動詞の二分法:
①能動詞:みずから然る→有情→動的→自動詞(間接受身)、他動詞(直接受身、間接受身)
②所動詞:おのずから然る→非情→静的→状態動詞、性状動詞(受身にならず)
を、「態の双対環」方式で思考実験してみました。
〇この「態の双対環」方式は、与えられた動詞語幹に対して4つの態の接辞:能動態/可能態/結果態/受動態に接合して態転換させながら意味を考察するというものです。
〇態の転換で→可能態→結果態→受動態になるにしたがい、能動性がなくなる方向へ変化していきますから、所動詞方向へ向かいます。その変化を実感していただけましたでしょうか。

 さて、動詞の態を復習することになりますが、図をリンクしたので御覧ください。
(以前の図に動詞例を追記してありますから、実際に自他対応の動詞例を確認できます)

図参照:日本語動詞:語彙的態と文法的態の対応図解

〇図の構造が示すように、自他対応の「語彙的態の接辞」が機能して自動詞/他動詞の対を生成するのが第一(図の上段)、それを文に活用するとき「文法的態の接辞」(図の下段)として機能する。
〇どちらの「態の接辞」も基本的には同じ成分です。概念として意味も機能も同じと思ってよいでしょう。
〇文法的態は自動詞、他動詞を区別せずに動詞語幹に接合します。
また、子音語幹・母音語幹どちらに対しても接合できるように「接合子音:(r/s)付き」の態接辞となっています。
(と提唱するのは「態の双対環」方式だけなので非常に残念です)

2014/08/08

日本語文法:能動詞・所動詞の受動態

2014/08/08(金)

(1)「態の双対環」で所動詞を見分ける

 三上章文法で受身形を生成できるか(能動詞)、できないか(所動詞)で動詞を二分する方法が提起された。
①能動詞:みずから然る→有情→動的→自動詞(間接受身)、他動詞(直接受身、間接受身)
②所動詞:おのずから然る→非情→静的→状態動詞、性状動詞(受け身にできない)
三上文法が所動詞としたのは、「ある、見える、聞こえる、(においが、音が)する、要る、似合う、できる」、
「可能を表す飲める、読める、書ける、、、」などです。

 「態の双対環」方式では、動詞をなにも区別せずに、4つの態接辞を付加してから、生成された態を考察するこ
とで運用するやりかたで進めてきました。(「強制態」、「二重強制態」も相似「双対環」としてあります)
〇受け身の受け身はあり得ないが、受け身の使役の受け身はあり得るだろう。(例:打たれさせられる)

ともかく、前提をつけずに「態の双対環」にかけてみよう。

〇能動詞・所動詞の態生成例:→能動態/可能態/結果態/受動態:「態の双対環」方式
(所動)ある/?あれる/あらる/あられる(尊敬態ならOK)
(能動)あらす/あらせる/あらしゃる(あらさる)/あらしゃれる(あらされる)
(能動)あらせる/あらせれる/あらせらる/あらせられる
(所動)あらせれる/?あらせれれる/?あらせれらる/?あらせれられる
(所動)見える/?見えれる/見えらる/見えられる(尊敬態ならOK)
(所動)聞こえる/?聞こえれる/?聞こえらる/?聞こえられる
(所動)要る/?要れる/?要らる/?要られる
(所動)似合う/?似合える/?似合わる/?似合われる
(所動)できる/?できれる/?できらる/?できられる
(能動)飲む/飲める/飲まる/飲まれる
(所動)飲める/?飲めれる(二重可能)/?飲めらる/?飲められる
(能動)読む/読める/読まる/読まれる
(所動)読める/?読めれる(二重可能)/?読めらる/?読められる
(能動)休む/休める/休まる/休まれる
(能動)休める/休めれる/休めらる/休められる
(能動)休ます/休ませる/休まさる/休まされる
(能動)つなぐ/つなげる/つながる/つながれる
(能動)つなげる/つなげれる/つなげらる/つなげられる
(所動)つなげれる/?つなげれれる/?つなげれらる/?つなげれられる
(能動)つながる/つながれる(つなぐの受動態)/つながらる/つながられる
(所動)つながれる/つながれれる/?つながれらる/?つながれられる

〇上例に示すように所動詞は態の活用で「?」がつくものが生成される。
 「態の双対環」は動詞の能動性を「態生成」で解明するのに適した方式ですね。どんな動詞でも「態の双対環」
 にかけてみて、意味の通じない「?態」が生成されたら、その動詞は所動詞に近づいているのかもしれません。
〇受動態は、受け身専用の態ではなく、受け身/可能/尊敬/自発を表す機能があり、このうち、尊敬態は行為者
 の行為をそのまま表現(形態は裏返った表現だが)するものだから所動詞でも通用すると考察した。
〇上例「態の双対環」の後段で示したように、ひとつの動詞を何段階にも態活用させていきながらその意味を解釈
 していく思考実験をしてみることを推奨したい。どんな能動詞も最後には所動詞になるのがわかります。
〇三上文法が態の活用を重ねていくと、所動詞になるということを想定していたのかどうかはわかりませんが、
 「飲める、読める」が所動詞だと指摘したうらには、可能化派生で所動詞になると見ていたわけですから、おそ
 らく最後にはすべての動詞が所動詞に行き着くことを見抜いていたかもしれません。
〇「態の双対環」方式は、受身だけでなく態のすべてを関連付けて派生させるので、習得してしまえば動詞解釈す
 るための応用力を格段に向上飛躍させられます。

2014/08/04

日本語文法:構文図略式表記

2014/08/04(月)

(1)読書2冊

 『日本語が世界を平和にするこれだけの理由』金谷武洋:飛鳥新社:2014年6月25日、
『還元文法構文論ー再検討・三上文法』山口光:めいけい出版:2001年7月15日 の2冊通読。
金谷新刊本は日本語が持つ言語感覚を深く理解して公平な視点、共通方向の視点を活かして行けば穏やかな世界になると説く。梅原猛の「人類哲学序説」につながるような感覚になる。
金谷流の文法書としての目新しさはまったくない。今までの集大成。
 山口本は三上章文法を正に引き継ぐものだが、整理された対立項目のポイント解説的な表現になっており、難解です。
 なかに、構文図の記述があり、思考実験のテーマに選んでみました。

(2)盆栽型構文図略式表記(熊手型構文も略記できる):山口本の構文図法則とはちがうものです。

 以前の日本語文の構図:文型記号を再考する に、今回あらたに再度提案し若干の修正をし直したい。
日本語の動詞は能動/受動の活用が大きな特徴だから区別できる双対記号を準備することと、複文構成にも対応できるように係り・係り先を照応表記できるように工夫した。

構文略式記号:
①主題記号「~は」: →:
②補語記号「~格助詞」: → 、係り(飛び)→①、→②、
③述語完結記号:
  能動 )  受動 ( 、 係り先:①)、②(、
④述語修飾記号:
  能動 >→ 受動 <→、
⑤述語連節記号:
  能動 }→ 受動 {→、
係り・係り先の用例:
多義文の例:構文図を一行内で書き連ねるための便法として、修飾の飛び先を①、②などで明示する。
○刑事は→:必死に逃げる>→賊を→追いかけた。)
○刑事は→:必死に→①、逃げる賊を→追いかけた。①)

以下に構文略式記号の検証用例を示します。
例文1:山口本に記載の例文を略式表記してみたもの。(話の論理が空回りのようだ、、、)
○灘五郷の銘酒さえ→最上品は→東京に→とられてしまって{→本場に→残る>→のは→
次の品>→とかいう→話もきく>→程で→
何によらず→東京は→最上品の→集中場で→あろうが>→①
しかし→①又→①東京へ→行ってから}→いろいろに→混合される<→らしい→最上酒よりも→①
地元に残された<→その→次の品に→①かえって→①
純粋な酒の味が→ある①>→
ように→②
大阪には→大阪の美人が→いるに>→②
ちがいない②>→
と思う>→のだが→③
それならばと→ひらきなおって}→何処に→いますかと>→問い返されると<→③
こちらが→当惑する。③)

例文2:
○つねは→:
夫が→まだ→棟梁として→幅をきかして→いた>→時分に→①
ふいに→後家に→なった>→妹のやすが→子がなかった>→ので→
下宿の権利を→売って}→田舎に→引っこむ>→という→のを→止めて}→①
その権利を→条件付きで→買い取った。①)

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