日本語動詞:受動態の多面性-5
2014/08/24(日)
この項も整理のまとめをつけておきましょう。
まず、掲載済み部分をメモがきして新しい部分は最後尾につけます。
日本語動詞:受動態の多面性-1
(1)受動態の生い立ち
・「態の接辞」の形態、構造/文語体の受動接辞と使役接辞が現役活躍
/「態の双対環」の構造
(2)受動態の意味は何種類?
・受動態の根源的な意味は一つ/先行する補語との関わりで多様に解釈
日本語動詞:受動態の多面性-2
(1)受動態と可能態が同形の場合
・受動態:つながれる←つなぐ =可能態:つながれる←つながる
(2)受動態と結果態との関係
・文語体の受動態接辞:(r/s)aruは現在も現役活躍中。「結果態」と命名
・口語体の受動態接辞:(r/s)ar・eruは「結果態+可能態:eru」と合成されたもの
(3)単文での結果表現
(4)複文での受動態・使役態表現
日本語動詞:受動態の多面性-3
(1)動詞態の復習/大野晋、中島文雄、金田一春彦
・中島本:江戸時代に行為動詞+eru(可能接辞)で可能動詞ができ、戦後「来れる/見れる/食べれる」など可能形が広がっている。(母音語幹の動詞にも適用例あるを言及)
・金田一本:使役の意味①他にさせる②他の意思の行動を許すの二面性あり。
(通常、他にさせるとき、他の意思が同時に伴うことを期待している)
(寝かす、笑かす:+(k)asu:は相手の意思に反してもありうる)
(2)思考実験の復習/「態の双対環」の能動系、強制系
日本語動詞:受動態の多面性-4
(1)動詞態の復習の総括
(2)動詞態の再提起:「態の双対環」
(3)二種類の受動態形式(強制系:s・asu、使役系:s・as・eru)
・強制系:立たす/(立たせる:可能態/立たさる:結果態)/立たされる:強制受動態
・使役形:立たせる/(立たせれる:可能態/立たせらる:結果態)/立たせられる:使役受動態
(西日本では強制系をよく使うので、「立たされる」支持派が多いのでは?)
日本語動詞:受動態の多面性-5
前項の受動態二種類について、補足します。
(1)能動詞でも態の変換で所動詞へ変化する
日本語文法:能動詞・所動詞の受動態にあるように、可能動詞、可能態の動詞を受動態へ変換すると意味が成立しない語になります。
「態の双対環」形式は
①能動態→④受動態(上下軸)、②可能態→③結果態(右→左軸)の2軸を交差させた配置で表示しますから、時計の文字盤配置にたとえると、0時:能動態、3時:可能態、9時:結果態、6時:受動態が置かれます。
・態変換の生成順序は①能動態→②可能態、①能動態→③結果態、③結果態+②可能態=④受動態という具合です。能動で分流して受動で合流するという概念です。
この生成順序が基本文法(最簡潔文法)だと思います。
さて本題にはいりましょう。使役系動詞の受動態が二種類の形態になることです。
動詞例:立つの場合
・①立つ②立てる③立たる④立たれる (②立てる:可能と他動詞の二義あり)
・①(立てる:他動詞)②立てれる③立てらる④立てられる (上下行で二種の受動態あり)
・①(立てる:可能)②?立てれる(二重可能)③?立てらる④?立てられる (意味破綻)
〇自動詞「立つ」が②「立てる」で他動詞(能動性あり)の意味が残ったので二種の受動態が生まれます。(二種の受動態はそれぞれ自動詞/他動詞の受動態を意味し、混同しないはずです)
動詞例:立つ→立たす:強制態の場合
・①立たす②立たせる③立たさる④立たされる (②立たせる:強制可能態・使役態)
・①(②立たせる)②立たせれる③立たせらる④立たせられる(上下行で二種の受動態あり)
〇②立たせる:に能動性が残るので辛うじて使役受動態が成り立つ。
問題は二種の受動態「立たされる/立たせられる」が同じ意味を表現すべきなのに、形態が違っているということです。(もともと「立たす/立たせる」がほとんど同じ意味ですから)
・通常、現代の文法者は、「立たせられる:tat・as・e・r・ar・eru」を推奨しており、「立たされる:tat・as・ar・eru」を省略形式だと解釈しているようですが、省略と考えるのは間違いで、基本文法としては強制受動態「立たされる」を推奨すべきでしょう。
基本文法として使役受動態を推奨しない理由は、簡潔で適用範囲が広い法則にするためです。
①強制態②強制可能態=使役態③強制結果態④強制受動態 の生成の流れと、
①(②使役態)②使役可能態=強制可能態+可能態③使役結果態=強制可能態+結果態④使役受動態=強制可能態+結果態+可能態 の生成の流れ を比較したとき、
同じ意味を表すならば、簡単な形態のほうがよいに決まっている。
〇また、能動詞/所動詞の視点から、可能態(自発態にもなる)変換した動詞は受動態を生成できない場合が多いということを考慮すべきだろう。(形態ではなく、意味の変化に注目)
つまり、
・①(②読める)②?読めれる(二重可能態)③?読めらる④?読められる(受動態不成立)
このように②可能態を①能動位置に繰り上げて「態の双対環」操作してみると、受動態が生成できないことに納得していただけるだろう。(予想以上に事例は多いはずです)
・可能態を使おうと提唱する立場としては、可能態が「所動詞に近づく」ことを併せて理解してほしいです。
〇蛇足:態の双対環方式の時計文字盤の位置から受動態の生成順を手繰ってみましょう。
・基本法則:0時:能動態→9時:結果態→6時:受動態:筆順「C字形」のように生成する。
・変則:0時:強制能動態→3時:使役態・強制可能態→9時:使役結果態→6時:使役受動態:筆順「逆S字形」のような生成。
・変則:0時:使役態・強制可能態→9時:使役結果態→6時:使役受動態:筆順は「C字形」ですが、動詞内容が3時→9時→6時:筆順「逆フ字形」の生成です。
〇蛇足の蛇足:「態の双対環」連鎖生成の思考実験図を追記しました。
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