日本語文法:能動詞・所動詞の受動態
2014/08/08(金)
(1)「態の双対環」で所動詞を見分ける
三上章文法で受身形を生成できるか(能動詞)、できないか(所動詞)で動詞を二分する方法が提起された。
①能動詞:みずから然る→有情→動的→自動詞(間接受身)、他動詞(直接受身、間接受身)
②所動詞:おのずから然る→非情→静的→状態動詞、性状動詞(受け身にできない)
三上文法が所動詞としたのは、「ある、見える、聞こえる、(においが、音が)する、要る、似合う、できる」、
「可能を表す飲める、読める、書ける、、、」などです。
「態の双対環」方式では、動詞をなにも区別せずに、4つの態接辞を付加してから、生成された態を考察するこ
とで運用するやりかたで進めてきました。(「強制態」、「二重強制態」も相似「双対環」としてあります)
〇受け身の受け身はあり得ないが、受け身の使役の受け身はあり得るだろう。(例:打たれさせられる)
ともかく、前提をつけずに「態の双対環」にかけてみよう。
〇能動詞・所動詞の態生成例:→能動態/可能態/結果態/受動態:「態の双対環」方式
(所動)ある/?あれる/あらる/あられる(尊敬態ならOK)
(能動)あらす/あらせる/あらしゃる(あらさる)/あらしゃれる(あらされる)
(能動)あらせる/あらせれる/あらせらる/あらせられる
(所動)あらせれる/?あらせれれる/?あらせれらる/?あらせれられる
(所動)見える/?見えれる/見えらる/見えられる(尊敬態ならOK)
(所動)聞こえる/?聞こえれる/?聞こえらる/?聞こえられる
(所動)要る/?要れる/?要らる/?要られる
(所動)似合う/?似合える/?似合わる/?似合われる
(所動)できる/?できれる/?できらる/?できられる
(能動)飲む/飲める/飲まる/飲まれる
(所動)飲める/?飲めれる(二重可能)/?飲めらる/?飲められる
(能動)読む/読める/読まる/読まれる
(所動)読める/?読めれる(二重可能)/?読めらる/?読められる
(能動)休む/休める/休まる/休まれる
(能動)休める/休めれる/休めらる/休められる
(能動)休ます/休ませる/休まさる/休まされる
(能動)つなぐ/つなげる/つながる/つながれる
(能動)つなげる/つなげれる/つなげらる/つなげられる
(所動)つなげれる/?つなげれれる/?つなげれらる/?つなげれられる
(能動)つながる/つながれる(つなぐの受動態)/つながらる/つながられる
(所動)つながれる/つながれれる/?つながれらる/?つながれられる
〇上例に示すように所動詞は態の活用で「?」がつくものが生成される。
「態の双対環」は動詞の能動性を「態生成」で解明するのに適した方式ですね。どんな動詞でも「態の双対環」
にかけてみて、意味の通じない「?態」が生成されたら、その動詞は所動詞に近づいているのかもしれません。
〇受動態は、受け身専用の態ではなく、受け身/可能/尊敬/自発を表す機能があり、このうち、尊敬態は行為者
の行為をそのまま表現(形態は裏返った表現だが)するものだから所動詞でも通用すると考察した。
〇上例「態の双対環」の後段で示したように、ひとつの動詞を何段階にも態活用させていきながらその意味を解釈
していく思考実験をしてみることを推奨したい。どんな能動詞も最後には所動詞になるのがわかります。
〇三上文法が態の活用を重ねていくと、所動詞になるということを想定していたのかどうかはわかりませんが、
「飲める、読める」が所動詞だと指摘したうらには、可能化派生で所動詞になると見ていたわけですから、おそ
らく最後にはすべての動詞が所動詞に行き着くことを見抜いていたかもしれません。
〇「態の双対環」方式は、受身だけでなく態のすべてを関連付けて派生させるので、習得してしまえば動詞解釈す
るための応用力を格段に向上飛躍させられます。
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