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2014/11/23

日本語文法:日本語をどう見るか

2014/11/23(日)

(1)日本語をどう評価するか

 最近手にした日本語関連の本を読んで感じたことを記述してみます。
①『日本語が世界を平和にするこれだけの理由』金谷武洋:飛鳥新社:2014年6月25日
②『日本語は進化する~情意表現から論理表現へ~』加賀野井秀一:NHKブックス:2002年5月30日第一刷、2009年4月15日第3刷
③『驚くべき日本語』ロジャー・パルバース:集英社インターナショナル:2014年1月29日第1刷、2014年6月8日第4刷
この3冊を通読しての感想です。

 ②加賀野井本は、明治維新後の日本語の言文一致・共通語創造への先人の取り組みを隈なく記述しています。
・日本語が大和言葉に漢語を取り込み、漢文訓読、音読み、訓読みなどで表現の幅を広げてきた。蘭学、英語などの翻訳の必要性、維新後の共通語の必要性、言文一致の必要性が短期間に大きく日本語を変革させた。
・まさに日本語は情意表現から論理表現へ使い方を広げて進化してきた。
①金谷本は、日本語の「学校文法」が明治維新以降、英語文法を土台にして教えられているのは残念なことと記述します。
・「日本語は読み書きが難しいけど、話すのは意外に簡単です」という教え子の学習反応を肌身に感じる教師なので、「日本語が難しくない、簡単で柔軟な言語である」と語る。
・日本語は文法がやさしい:音素、発音が簡単/基本文型は動詞文・形容詞文・名詞文の3つ/不必要なら文に主語はいらない/動詞の人称変化がない/時制、態が接辞活用で簡単・規則的/補語につける格助詞が多彩。
・日本語は活力がある:省略合成力、造語力が高い/「~は」で主題を言うのは「相手と共通視線になる」ため/人称より直接自然に注目/会話の場を共感し合う:課題が明確なら省略構文を使う(蛇足「ぼくはウナギだ」、「こんにゃくは太らない」とか)/「相手の身になって考える道具」として日本語は大きな力がある。
③パルバースは、半世紀以上日本で過ごし、英語、ロシア語、ポーランド語、日本語をマスターして、日本各地を旅して日本と日本人の特質と独自性に驚嘆。作家/劇作家/演出家の経歴を持つアメリカ生まれ。
本の章立て:言葉とは何か/日本語は曖昧でもむずかしい言語でもない/日本語-驚くべき柔軟性をもった世界にもまれな言語/世界に誇る美しい響きの日本語とは/「世界語」としての日本語。
・この本の重要な章は第3章「驚くべき柔軟性」であり、文法論を注目する立場から読んでも興味を引くところ。

 3冊の本を読んで、日本語の将来に期待が高まりますが、日本語文法に対する日本人の理解度がそれを裏打ちするように高まってほしいと感じます。
ネット上の書評書き込みを調べてみると、日本人著者の本には好意的な反応がありますが、外人著者の本については概して評価が上がっていないようです。
・パルバース本の内容が、日本滞在での具体的体験、研究に基づく記述があるにもかかわらず、対する読者の読後評が少なからず共感的でなく懐疑的な意見にとどまっている。 
・書き言葉・漢字修得の難しさを殊更に論じて「日本語はやさしい」に反論する人もいます。
・日本人が日本語の理解に自信がなく、外人からの誉め言葉にも戸惑いを見せているような状態です。やはり英語文法を借用した日本語解釈では役に立たず、白紙の状態で日本語を日本語として理解すべきです。(本来理解できているのに、説明の言葉が出てこないのです。学校文法が追いついていないし、文法学者も取り残されています)
・また知識があって英語文法が優れていて、日本語の構造(語順が英語とは逆で、膠着語である)自体を劣っていると意識的に判断する人もいる。
(耳の痛い話しだが、当方は逆に膠着語の日本語語順が優れていると思う立場で、国際語エスぺラントを日本語風に語順変更する方法でfrazfarado作文実習を自習している)

 この3冊の内容に共通する「日本語の特徴」の記述がある。
〇「テニヲハ」機能が日本語の言葉の柔軟性を生み出している、との考え方が記されている。
①加賀野井本に詳しい考察がある。
・「テニヲハという翻訳装置」:万葉の昔から中国語を取り込もうとして漢文訓読体を編み出してきた。
・AハBニCガXヲVスルトVシタ。(「ハニガヲスル」翻訳装置と命名するほうがよいかも)
・日本語の構造は、ローマ字部分が詞・自立語(名詞、形容詞、副詞、動詞)であり概念を表し、カタカナ部分が辞・付属語(助詞、助動詞、接続詞、終助詞)であり文中の相互関係を表現する。
・詞+辞、詞+辞、詞+辞の繰り返しで文を構成していく。詞の単語としては、中国語でもカタカナ英語でもなんでもかまわない。
・だから、日本語では、動詞+辞の一塊でも文章になるわけです。

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