日本語文法:動詞原形語幹+態の接辞
2015/01/30(金)
前回は日本語文法:自他対応接辞と動詞態8のブログ記述中の思考実験で、図らずも真の動詞態の構造を発見できました。
〇学校文法で言う「動詞の未然形に助動詞:れる、られるを接続して受動態を作る」は間違いであると言い切る確信が持てました。
〇新発見の動詞態の構造は、「動詞の辞書形(終止形)語幹に態の接辞を接続して派生させるもの」だと定義します。
★動詞原形語幹:
〇動詞の語幹には2種類あり、
①子音語幹動詞:読m、書k、切r、帰えr、終わr、
②母音語幹動詞:食べ(r)、考え(r)、見(r)、調べ(r)、
・そのため、動詞活用の仕方が異なるところがあります。幸い動詞態の活用では、食べr、考えr、見rを語幹として構成したほうが実態に即した文法解釈ができることに気づきました。
〇動詞の意味上の区別には、能動系、強制系・使役系の3種類の動詞が系統的に派生されますから、動詞原形(辞書形)語幹も3種類あります。
(二重強制動詞なども同様の派生方法で生成できますが、説明は割愛します)
(1)能動系動詞原形語幹
①能動系動詞原形語幹:
・読m、書k、歩k、さがs、たよr、
・食べr、考えr、見r、
のような形態で、終止形の最後の母音を除いた子音終りの形態です。
・会う、言うなどの母音語尾の場合は、aw、iw、で子音終わりに見立てます。
(2)強制系動詞原形語幹
〇強制系語彙接辞:2つあり
〇強制語彙接辞:動詞語幹+(r/s)asu:(読m+asu、食べ(r/s)+asu)
②強制動詞原形語幹:読まs、書かs、食べさs、見さs、言わs、
〇使役語彙接辞:動詞語幹+(r/s)aseru:(読m+aseru、食べ(r/s)+aseru)
③使役動詞原形語幹:読ませr、書かせr、食べさせr、見させr、言わせr、
・食べ(r)→食べ(s)+asu:(r/s)交替と言い、母音語幹(一段活用)動詞で強制系・使役系変換の際に起こります。
★動詞態の基本接辞
〇態の接辞には基本接辞4つがあります。
〇基本接辞:4つ
①原形態:+u:(読m+u、食べr+u)
②可能態:+eru:(読m+eru、食べr+eru)
③結果態:+aru:(読m+aru、食べr+aru)
④受動態:+areru:(読m+areru、食べr+areru)
〇能動系動詞原形語幹に態の基本接辞を組み合わると
・読む/読める/読まる/読まれる、
・食べる/食べれる/食べらる/食べられる
・言う/言える/言わる/言われる
・探す/探せる/探さる/探される
〇強制系動詞原形語幹に態の基本接辞を組み合わると
・読ます/読ませる/読まさる/読まされる
・食べさす/食べさせる/食べささる/食べさされる
・言わす/言わせる/言わさる/言わされる
・探さす/探させる/探ささる/探さされる
〇使役系動詞原形語幹に態の基本接辞を組み合わせると
・読ませる/読ませれる/読ませらる/読ませられる
・食べさせる/食べさせれる/食べさせらる/食べさせられる
・言わせる/言わせれる/言わせらる/言わせられる
・探させる/探させれる/探させらる/探させられる
★なぜ能動系、強制系、使役系の3つに動詞を区分するのか
〇「態の接辞:4つの基本接辞」へ強制、使役の語彙派生接辞を組み入れる利点がなく、また語彙生成の際に必要な「r/s」交替機能を含めることは、基本接辞と違いがあります。
・「r/s」交替とは、能動系:食べ(r)→強制系:食べ(s)・asで現れる交替現象です。
(子音語幹動詞の場合なら:帰えr+asuと「r/s」交替なしですが、元来、帰えr/帰えsで自他対応語彙がありますね。帰らす←有情対象/帰えさす?:替えさす?←無情対象みたいですね)
・強制系、使役系の「rをsに交替させて」派生する方法は重要ですから、動詞原形段階でしっかり身につけるのが得策です。
・語彙派生接辞として動詞原形を作り出しているんだという気持ちで強制系動詞、使役系動詞を利用するとよいのでは。(日本語初学者には日本語動詞の構造が理解しやすいはずです)
〇受動態の動詞のあとに使役動詞化することもできます。
・修練のため滝に「打たれさせる」は、「打たれs+asu」→「打たれs+aseru」の順に生成させるのが、分かりやすい。
つまり、強制系動詞を生成するときには、打たれ(r/s)aseru:の(r/s)交替が起こりますから要注意です。
★「態の基本接辞」の意味は、決まっていますか。
〇意味は明確ですし、覚えやすいです。
①原形態:+u:動詞原形(辞書形)を作ります。
②可能態:+eru:(目前の)動作ができる、性能がある の意味。
③結果態:+aru:動作の結果状態を表す。
④受動態:+areru:動作結果がそこにあるという意味。(結果+可能の合成)
・4つの基本接辞を、順に使って並べてみます。
・休む、休める、休まる、休まれる:この並べ方が「態の双対環」に同じものです。
・休める:2通りの意味がある。自動詞から他動詞へ自他交替する/自動詞のままで可能を意味する。
手を休める→いま手を止める意思がある。(交替他動詞の意味)、
明日休めるかい?→(自動詞・可能の意味で使用)
・休まる:身体を休めた結果が「休まる」状態です。(原理:休むがある)
・休まれる:(原理:休む結果がある状態になる)
客が休まれる→敬語。部下に休まれる→(間接)受身。よく休まれたね→結果可能。
★俗に言う「ら抜き言葉」は本来正しい可能態の活用で、「ら」が初めからなくてよいのです。
〇可能態は動作意図として可能かどうかに焦点があります。
・食べれる/見れる/来れる:可能だから取りかかる意図を感じます。
〇受動態の可能では、動作の結果可能に焦点があります。
・食べられる/見られる/来られる:
ダメだと言っても、動作結果を表していますから、元には戻らない。また、習慣的繰り返しの動作可能を表現します。
・西欧語の受動態が助動詞「ある」+動詞過去分詞の形式ですから、日本語と似たようなものです。
・だが、日本語の受動態は、動詞原形+助動詞「ある+できる」ですから、時制の表現範囲にも、動作授受感覚にも多くの自由度があります。
・「結果」と言えども過去だけでなく、未来を見通した予測結果的な表現も日常的に使われています。
〇関西語の「熱つうて飲まれへん」は、飲めないと言うと意図が出てしまうので、不本意ながら結果的に飲めないのだと言う表現にするために「熱つうて飲まれへん」のような打消し受動態表現が使われているのです。
・この結果不可能の表現は、昔からの成句に多く残っており、なんともしがたい不如意の思いを語るのです。
・言うに言われぬ苦労を重ね、止むに止まれぬ気持ちから、泣くに泣かれぬ仕打ちを受けて、居ても立っても居られない。(不本意、不如意の思いは単純に可能態打消しでは表しきれないのです。だから受動態打消しを使うのです)
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