日本語文法:自他対応接辞と動詞態3
2015/01/28(水)
演習図に再度追記しました。
〇動詞語幹に(R/S)を結合すると言うことは動詞の基本形、辞書形を作ることだと気づきましたので、急ぎ追記しました。 詳しくは28日付の8回目をお読みください。
2015/01/09(金)
(3)動詞態を思考実験するための三原則:③
③自他対応接辞の意味と、動詞態として使うときの接辞の意味を明確にして「態接辞の体系」を検証に耐え得る定義にすること。
日本語学習者にとって動詞の自動詞・他動詞の区別を学ぶことも課題のひとつだから、簡便な区別法があるとよい。古来より研究されて来たようだが、金谷本、寺村本には、本居春庭や 佐久間鼎の研究の成果が記述されてある。それを出発点に思考実験をしてきました。
〇参考図をみていただきたい。
・自動詞と他動詞の対が見つかれば、その対の型から容易に判定ができる。
・自他対応型が(5)型~(11)型ならば、語根にR音があれば自動詞、S音があれば他動詞と見分けられる。
・(1)型~(4)型の場合ならば、語根にARUがあればそれが自動詞、語根にERUがある場合には次の注意点を確認してください。(3)型と(4)型がERUありの自他対応型ですね。
追記:(4)型の図に追記。自動詞へ交替した動詞は自発態になり次段「双対環」活用は不適になります。
〇接辞:ERUは二刀流のような融通性があり、
・自動詞語幹+ERU=~の状態にする:他動詞化の機能と、
・他動詞語幹+ERU=~の状態になる:自動詞化の機能と の二義(自他交替の機能)を内包しています。
・また「動詞の動作:自他交替」でなく「性状化を表す」場合の第三義は、
・自/他動詞語幹+ERU=~ができる、~が可能だ、という意味を表現できます。
日本語文法:可能態の謎を解くにも少し記述したように、
〇接辞:ERUには上段のように3つの意義がありますが、3つに共通する意味の深層構造が存在します。
それは動詞活用の已然形(既然形、仮定形)が持つ意味によるものです。(接辞:E・RU)
・動詞の已然形(既然形):~E(読め、飲め、食べれ、見れ、歩け、泳げ、立て、取れ)には、「すでに然る」ですから動作に取りかかる意味合いが生じており、それに「RU:る」が付いた形態になると取りかかる意味合いが定着します。
・取りかかる意味合い:~の状態にする/なる、~が実行できる・可能だ という想念が定着する。
〇思考実験:(思いめぐらしてみます)
・自動詞已然形+る:立て+る(自他交替なら他動詞、交替しないなら可能自動詞)、
・他動詞已然形+る:取れ+る(自他交替なら自動詞自発態、交替しないなら可能他動詞)、
・自動詞已然形+る:?乾け+る(乾く:状態動詞だから適用できず)、
・自他動詞已然形+る:蒸せ+る(交替しない?、交替ないなら可能他動詞)、
・無対自動詞已然形+る:歩け+る(交替しないから可能自動詞)、
・無対他動詞已然形+る:食べれ+る(交替しないから可能他動詞)、
(已然形・仮定形の活用は、終止形・連体形「食べる」のあとだから、「食べれ」までが已然形態です。
同様に、見れ、考えれ、調べれ、なども已然形態ですから、食べれる、見れる、考えれる、調べれるが成立します。「ら抜き言葉」と言われる理由はありません)
〇読める/読まれるを区別し、混同しないのと同様に、食べれる/食べられる、見れる/見られるを混同しないで使い分けができる日本語の使い手が必要なのです。
〇動詞態に活用する可能態接辞:(r/s)eruも当然にこの融通性を受け継いでいます。
・その融通性は、受動態=結果態+可能態の組み合わせでも十分に活かされます。
・つまり、受動態が「eru接辞」をつけても違和感なく能動的役割にも、受け身的役割にも、結果可能、習慣的可能にも(活用されて)解釈できる理由がこの融通性なのでしょう。
〇「態の双対環」演習には、自他の対関係だけでなく、無対自動詞や無対他動詞などに対しても応用できますので、試してみてください。
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