日本語文法:「ら抜き言葉」推進派の見方
2015/02/10(火)
(1)可能態と受動態はすべての動詞から派生できます
現代の日本語文法が正しく説明しきれていないため、「食べれる、見れる、来れる」などの言葉を「ら抜き言葉」と呼んで使用しないように注意している人がいます。
学校文法でも「食べられる、見られる、来られる」と「ら入れ」を勧めますが、これでは受動態の形態になってしまいます。
〇「読める、書ける、探せる」は可能動詞であり、
「読まれる、書かれる、探される」は受動態ですから、可能態と受動態が揃っています。
(五段活用・子音語幹動詞)
〇同様に、「食べれる、見れる、来れる」を可能動詞、可能態とし、
「食べられる、見られる、来られる」を受動態と認めれば釣り合いが取れます。
(一段活用・母音語幹動詞)
〇これで何の問題も起きませんし、きちんと対応が取れるのです。
〇可能態の「~できる」の意味は、目前の動作ができる、できる意思がある、です。
(言わば、「個の可能」です)
〇受動態の可能は、結果可能:「~やり抜くことができる、だれでも繰り返しできる、習慣的にできる、規則としてできる」という意味です。
(言わば、「多の可能」です)(また、結果可能の他にも、受身、尊敬、自発などの意味がある)
〇これだけ意味が違いますから、すべての動詞で可能態と受動態の両方を派生する必要があり、本来の日本語は対応できるように進化してきたのです。
〇学校文法、多くの文法学者は「個と多の可能の違い」に無頓着です。意味の違いを解説していません。
(2)態接辞の助動詞は動詞の原形(終止形)に接続すべきです
動詞態は、動詞活用(未然、連用、終止、連体、仮定、命令)ではありません。
ですから、未然形に接続すると定義するのは間違いです。
〇学校文法、教材、国語辞典のすべてが他の助動詞と区別せず、未然形に付けると間違いを記述してあります。
〇態は新しい態動詞を生成するもので、動詞原形(終止形)の語幹に接続するものです。
江戸時代に始まったという可能動詞は、可能態を新しい動詞生成と見たわけです。
受動態も受動動詞と見なしてよいわけです。
〇動詞原形の語幹を求めれば、読m、書k、探s、と子音語尾で終わります。
・同様に、食べr、見r、来rも原形語幹では子音語尾で終わります。
・これに可能接辞:+eruを接続したものが、
・読める、書ける、探せる
・食べれる、見れる、来れる
となり、同等の可能動詞になります。
・また、受動態接辞:+areruを接続すれば、
・読まれる、書かれる、探される
・食べられる、見られる、来られる
となり、同等の受動動詞になります。
〇また、強制態接辞:+(r/s)asuを接続すれば、
・読ます、書かす、探さす
・食べ(r→s)asu=食べさす、見(r→s)asu=見さす、来(r→s)asu=来さす
となり、同等の強制動詞になります。
〇強制系(r/s)記号は、r:自力動詞、s:強制他力動詞への交替を発揮させるもので、
場合によっては、蒸(s→r)asuのように反転交替もあります。
文語体の受動態接辞:aru、強制態接辞:asuが共に「あ」始まりだったから、未然形の語尾「あ」と重なり、未然形接続の誤解が生まれたのでしょう。
・可能態接辞:eruは未然形につながるとは言い難いから、狭い範囲の可能動詞として使われ始めてきたのでしょう。
(未然形につなぐという概念が動詞語彙の生成に関する仕組み:例・自他対応動詞の生成、に合っていない。(r/s)交替現象があること自体が動詞原形接続の証拠であると言える)
〇態の接辞は動詞の原形語幹につながるのだと文法則を正せば解決することです。
最後に態の接辞としてもう一つ説明が必要なことがあります。
〇文語体の受動態接辞:+aruは口語体の結果態接辞として明示すべきです。
・日本語の受動態が、
・動詞原形+「ある:結果態」+「える:可能態」で構成されている重要な態接辞だからです。
・読m+ar・eru→読まれる
・食べr+ar・eru→食べられる
・西欧語の受動態が、
・「ある:助動詞」+動詞過去分詞で構成されるのと同等です。
・日本語の受動態は動詞原形ですから、時制に自由度があり、未来の結果予測も表現できます。
また、受動態が結果可能の意味を感じさせるのは「eru」があるからでしょうね。
「さ入れ言葉」、「れたす言葉」については、日本語文法:「ら抜き言葉」推進派の見方2 に述べます。
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