日本語文法:動詞原形語幹+態の接辞3
2015/02/06(金)
(2)態動詞の使い方
態変化させた動詞を一括して態動詞と総称する。態によっては使い方や発音のしやすさに難易がありそうです。
〇なかでも可能動詞・可能態については使い方が難しいようですね。
・結果動詞は直接使うことは少ないかもしれませんが、結果動詞活用形として使っているはずです。
・例:「そんなこと言われても困るよ」、「忙しいのに電話がかかってきて、すっかり予定が変わってしまった」
〇受動動詞の使い方には抵抗が少ないようで、言い間違いが社会的な問題にならないようです。
〇それに比べ、可能動詞には「ら抜き言葉」だの「さ入れ言葉」、「れたす言葉」などの論争が絶えません。
思考実験の当ブログでは、可能態に「ら」が最初から付かないので「ら抜き問題」は存在しません。
むしろ「ら付け言葉」を峻別します。可能動詞「食べれる」と言うべきときに「食べられる」を使わないように提唱します。
〇4、5日前、イスラムテロ集団による日本人人質殺害の報道がありましたが、安倍晋三首相が報道記者の囲み会見で表明した短い談話のなかに、『テロ集団には、償わさせる』という文節があった。空耳ではないはずだ。
・これは政治家の「さ入れ言葉」です。武装主義を重んじる安倍首相の軽はずみな表明です。償う:金品で罪、過失を埋め合わすと国語辞典にあります。こんな軽い言葉を、しかも「さ入れ言葉」で表明して恥じることのない総理大臣にはうんざりします。
(償わせる:テロ集団に償わすの意味で、手段も考慮しないで言葉が独り歩き。償わさせる:二段階使役だから、他国に頼んで償わせるの意味になってしまう。そのために人道支援金を払うという文脈か)
「さ入れ言葉」が起きてしまう誘因には、2つ要因があるだろう。
①使役動詞を使い慣れていない。
・能動系動詞→強制系動詞(r/s交替)→可能態接辞付加(使役系動詞)を思い浮かべてから発言するとすれば、それだけで頭がフル回転してしまう。
・償う→償わす→償わせる が手順を踏んだ使役動詞の作り方の一つです。
・この手順で注意すべきは、未然形で考えず、終止形でつないでいく心づもりが大事です。
・償u→償わsu→償わs+eru
・償w→償w+aseru と一気に変換でもよいです。
・償w+asu:強制態をそのまま使うこともOKですから、これになじんでおくのもよいですね。
・未然形のつなぎを考えていると、償わ・せる、償わ・させる の択一問題になってしまい、安全選択で、償わ・させるを間違って選ぶのかも知れません。
②使役態が強制可能態であり、可能態の意味に惑わされる。
・おそらく強制態をもっと使い、使役態は控えるという風潮ができれば「さ入れ言葉」は少なくなるだろう。
・償わす:自分が行動して、相手に償いを実行するように仕向ける。
・償わせる:(強制可能態=使役態)自分の行動で相手に償いを実行させる。
・償わさす:自分が命じて仲介者を行動させ、第三者に償いを行わす。(二重強制)
・償わさせる:(二重強制可能態=二重使役態)仲介者任せに第三者を償わせる。
〇本来、償わす・償わせるがほとんど同一の意味なのだが、可能態が付加された使役態は、償わすことが可能だという意味合いが付きまとう。
・特に、未然形つなぎで考える人にとって「償わ~」で接辞を探し始めるかもしれない。
これは「償う」の未然形・打消し「償わない」の影響だが、「償う+せる」では通じないので「償う+させる」の意味で「償わ+させる」と言い抜けてしまう、と推測します。
・あるいは「償わす」の未然形:「償わさ」に無理やり「+(s)eru」をつないだとも推測できるかどうか、疑問ですが。
(いずれにしろそれでは二重強制可能態なのです。償w・as・as・eru:二重強制になっていると指摘してくれる文法学者がほとんどいないのですね。)
〇態動詞を作り出すときは、未然形ではなく、動詞原形語幹で考えて「償わs+eru」の形態を一人一人が作り出すことを求められます。
〇「さ入れ誘発の①②要因ともに可能態を避けて強制態らしくさせよう」との思いが二重強制態にしているのでしょう。
〇逆に「れたす言葉の誘因は二重可能態を作り出す間違いをしている」わけです。
・可能態接辞は、~することができるという性状を表現するだけでなく、~できるから取りかかる意思を表明するときにも使いたいという深層心理があるから複雑になります。
(可能態の接辞が動詞活用の已然形・既然形に由来しているから、態派生でなく動詞活用的に感じてしまう側面もあるのかもしれません)
動詞原形語幹に態接辞を付加する方式は、基本接辞を変形させることなく常に一定の形態で使えます。
態の接辞を組み合わせて使えますし、形態も一定に保たれます。
★能動系動詞の原形語幹に付加する態接辞いろいろ。
原形態:+u 例:読m+u/食べr+u/償w+u
可能態:+eru 例:読める/食べれる/償える
結果態:+aru 例:読まる/食べらる/償わる
受動態:+areru 例:読まれる/食べられる/償われる
強制態:+(r/s)asu 例:読ます/食べ(r/s)+asu/償わす
強制可能態:+(r/s)aseru 例:読ませる/食べさせる/償わせる
強制結果態:+(r/s)asaru 例:読まさる/食べささる/償わさる
強制受動態:+(r/s)asareru 例:読まされる/食べさされる/償わされる
使役態:+(r/s)aseru 例:読ませる/食べさせる/償わせる
使役可能態:+(r/s)asereru 例:読ませれる/食べさせれる/償わせれる
使役結果態:+(r/s)aseraru 例:読ませらる/食べさせらる/償わせらる
使役受動態:+(r/s)aserareru 例:読ませられる/食べさせられる/償わせられる
受動強制態:+aresasu 例:打たれさす/食べられさす/償われさす
受動使役態:+aresaseru 例:打たれさせる/食べられさせる/償われさせる
« 日本語文法:動詞原形語幹+態の接辞2 | トップページ | 日本語文法:「ら抜き言葉」推進派の見方 »
「日本語文法」カテゴリの記事
- 「またく心」とは「待ち焦がれる心」のこと(2024.09.15)
- 「新手法」の用語(4):活用節=(体言/用言)[連用/連体/終止](2024.08.29)
- 「新手法」の用語(3):-e[r]と-ar[-]uを分かる知恵(2024.08.28)
- 「新手法」の用語(2):主部律と述語律(2024.08.27)
- 「新手法」の用語(1):膠着方式(2024.08.26)
コメント