日本語文法:動詞の原形語幹とは
2015/02/23(月)
(1)国語辞典の動詞語幹表記に?
動詞態を思考実験している間に、学校文法や国語辞典での動詞語幹の決め方に矛盾を感じることが多くなり、別の方法で語幹を決めてきました。
〇学校文法、国語辞典では、動詞の活用形を考慮して、
・動詞語幹+活用語尾+助動詞
の構成で語幹を決めている。
〇例えば未然形活用に対して、
・切る→切:語幹+ら:活用語尾+ない:助動詞
・着る→着?+φ?+ない:助動詞
辞典には、着るに対して、語幹と語尾に区分できないと記述あり。
なんとも恣意的な決め方です。辞典の見出し語:着る、の語幹を切り出せないのは、ひらがな解析しか考えにないからです。
〇もっとも、動詞活用に対しての語幹だから、未然形との整合で活用語尾なし「:φ」も一計かも。
終止/連体形以降では活用語尾が追加されるのだから。
・正確にローマ字解析をして、
着る→着‐る(語幹:ki)一段動詞 (活用語尾:φと表記)
切る→切・る(語幹:kir)五段動詞
のように工夫した表記にすべきでしょう。
〇しかし、このローマ字解析で求める動詞語幹は、すべての助動詞を接合するのに有効とは限りません。
〇特に「態の接辞」に対しては効力がありません。
(2)態接辞(助動詞)は未然形接続ではなく、原形(終止形)語幹に付く
態動詞を生成するには、純粋に動詞原形語幹を求める必要があります。
一段活用の動詞も終止形、連体形以降では活用語尾「:る」が追加されるので、語幹の構造が子音語幹に変わります。
(★後日追記:一段活用・母音語幹に[挿入音素:r]を付加する、使役系には[挿入音素:s]を付加する)
〇「態の接辞」へつなぐためには、純粋に動詞原形態から語幹を求めてください。
・動詞原形:切る、着る→語幹:kir、(五段、一段[r]付加:→子音語幹)
・動詞原形:付ける、漬ける→語幹:tuker、(一段[r]付加、一段[r]付加:→子音語幹)
・動詞原形:変える、帰る→語幹:kaer、(一段[r]付加、五段:→子音語幹)
と言う(子音)語幹形態になります。
〇切る・着る、のように五段動詞でも一段動詞であっても関係なく、動詞原形が同形態なら同じ形の子音語幹になります。
・「態の双対環」操作してみると、(原形態:u/可能態:eru/結果態:aru/受動態:areru)
・切る、着る/切れる、着れる/切らる、着らる/切られる、着られる
・付ける、漬ける/付けれる、漬けれる/付けらる、漬けらる/付けられる、漬けられる
・変える、帰る/変えれる、帰れる/変えらる、帰らる/変えられる、帰られる
と完全に並行します。
また、世情で「ら抜き言葉」とやり玉に上がる(世情の半数は容認派ですが)
〇見る、食べる、(一段)や(受動・)強制態(:asu)派生させた態動詞の、見られさす、食べさす、(五段)を確認しよう。
・動詞原形:見る→語幹:mir、(一段[r]付加:→子音語幹)
・動詞原形:食べる→語幹:taber、(一段[r]付加:→子音語幹)
・態動詞原形:見られさす→語幹:見られ(r→s)as、(五段、受動強制態:→子音語幹)
・態動詞原形:食べさす→語幹:食べ(r→s)as、(五段、強制態:→子音語幹)
(r→s)交替は強制態への転換で必要な「語幹交換の法則」によるものです。
(態接合が動詞原形語幹で行う証拠でもあります)
〇「態の双対環」操作をおこなってみると、
・見る、食べる/見れる、食べれる/見らる、食べらる/見られる、食べられる
・見られさす、食べさす/見られさせる、食べさせる/見られささる、食べささる/見られさされる、食べさされる
と完全に並行した形態で生成できます。
〇このように複雑な態動詞であっても、順次語幹を更新し新原形の語幹に次の態接辞を接合していく文法則により紛れずに続けていけます。
・この簡潔で強力な「態接合の文法法則」を古希を過ぎて初めて感得することができました。
・金谷武洋本:主語はいらない~百年の誤謬を正す~のごとく、100年の誤謬がまかり通るのですから、正すのは一歩一歩ですね。
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