日本語文法:「ら抜き言葉」推進:虎の巻
2015/02/15(日)
日本語文法:「ら抜き言葉」推進派の見方 、日本語文法:「ら抜き言葉」推進派の見方2、で、すべての動詞態について「推進派の見方」を開陳してみました。
いくぶん理屈ぽっく感じられたかもしれませんが、こじつけではなく論理の筋が通っているなと感じていただけたらうれしいですね。
日本語の動詞態を新しい視点で見直されたわけですが、もしも「動詞原形語幹方式の推進派」になろうと決意なさるならば、孤立無援を覚悟しておく必要があります。まず自己の思考実験能力を高めるための「虎の巻」を準備しましょう。
①音素解析のため、ローマ字つづりを使います。ヘボン式でなく、訓令式を使うとよい。
長文のローマ字文を書くわけではなく、動詞態の部分を表記して検討するだけです。
②態接辞の語源と意味を知ること。(今回は簡略的に記述します)
③「態の双対環」操作で態生成を試行すること。
この3つが「動詞原形語幹方式」の「虎の巻」です。
(1)「態の接辞」を救出する
態の接辞として、学校文法では受動態と使役態を明示してあり、未然形に接続する助動詞として扱います。(未然形に接続するのは間違いです)
国語辞典の付録にある助動詞活用表を見ると、態の接辞要素が解ります。
・文語体 受動:「る/らる」(ru/raru)、使役:「す/さす」(su/sasu)
・口語体 受動:「れる/られる」(reru/rareru)、使役:「せる/させる」(seru/saseru)
〇動詞原形語幹方式の視点により、誤解の海に沈む接辞を救出・修正していくと、
・国語辞典の受動:「る」は本来「ある」とすべきの「あ」が未然形の「あ」に取られた解釈になっています。また、「らる:r・aru」の「r」は本来、動詞原形語幹側に預けるべきですから、これも「ある」とすべきです。
・つまり本来の接辞は「ある:aru」の形態であり、意味も明確になり、さらに1本化できるのです。
同様の救出・修正を施していくと、
〇「動詞原形語幹方式」の態の接辞は、きれいな形態が現われます。
・結果態:「ある(aru)」、文語体受動を修正し改名する。
・強制態:「あす(asu)」、文語体使役を修正し改名する。
・受動態:「あれる(ar・eru)」、口語体受動を修正し再命名する。(結果態と可能態の合成)
・使役態:「あせる(as・eru)」、口語体使役を修正し再命名する。(強制態と可能態の合成)
・可能態:「える(eru)」、口語体への変換で活躍する接辞であり正式に命名する。
・最後に原形態:「う(u)」、原形語幹に付加して動詞原形を作る接辞。
〇各態の接辞は1本化できるし、意味音素が明確に保存されるので分かりやすい。
(態の接辞を辞典付属の助動詞表から掘り出しました。本来は自他対応接辞からの拾い上げがよいのですが、辞典付録を信用する人も多いでしょうから善しとします)
(2)「態の双対環」を操作する
動詞態の働きや派生を解りやすく体験できるように表記法を工夫しました。
①能動態と受動態の対立関係(動作のやり、とり、の対立)
②可能態と結果態の対立関係(動作の開始意図、動作の結果状態の対立)
この2つの対立関係を縦・横に配置して環状構造と見立てたものが「態の双対環」です。
自他対応接辞:態の双対環演習図新 を参照:
〇「態の双対環」を操作するとは、1行表記で態動詞を配列して、「態の双対派生」を確認する手法です。
〇原形態+u/可能態+eru/結果態+aru/受動態+areru、と1行書きで表記する。
〇例:「態の双対:1行書き」
・休m+u/休める/休まる/休まれる、
・休m+asu/休ませる/休まさる/休まされる、
・休まs+eru/休ませれる/休ませらる/休ませられる、
・食べr+u/食べれる/食べらる/食べられる、
・食べ(r→s)asu/食べさせる/食べささる/食べさされる、
・食べさs+eru/食べさせれる/食べさせらる/食べさせられる、
〇「態の双対:1行書き」ならば速攻で態の形態を調べられる。
(r→s)交替確認などにはローマ字つづりにすると判りやすい。
(動詞語尾音の(r)と(s)、(aru)と(asu)で表す対立関係:自力動詞と他力動詞の対立関係の根強さには感服します。 ある、するの対立、なる、なすの対立概念の深層に、r/s交替原理があるのでしょう)
〇演習:「態の双対:1行書き」を使って、動詞「見る」の態活用を試してみてください。動詞「見える」、「見せる」へたどりつけるでしょうか。(解答は参照図内にあり)
虎の巻の役目として肝心な奥義を指摘しておくべきですね。
〇休める/休まれる、食べれる/食べられる、の可能態/受動態可能の対立関係に対して悟りを開いておかなくてはいけません。
〇すべての動詞が可能態と受動態を持つのが当たり前です。これを得心できないならば、理由を開示してもらいましょう。
〇休める/食べれる、は動詞原形語幹+可能接辞:eruという文法則により統一的に生まれたものです。
〇休まれる/食べられる、は動詞原形語幹+受動接辞:areruという文法則により統一的に生まれたものです。
〇「態の双対:1行書き」で分かるように、受動態=結果態+可能態の合体です。動作結果に意味の重点があります。(習慣的、繰り返し、多勢で、規則で、の可能も意味します:多の可能)
一方、休める/食べれる、は動作可能の意思、意図の表出に意味の重点があります。
(目前の動作可能、一回限りの動作可能、個別の動作可能を意味します:個の可能)
だから、受動態が可能態を肩代わりすれば良いのではなく、どちらも必要な態動詞です。
〇「態の双対環」としては、原形態・結果態/可能態・受動態の対立関係(動作客体概念/動作主体概念)や、原形態・可能態/結果態・受動態の対立関係(動作/結果)も意味のうえで概念対立構造と見なせると考えるが、深入りしないことにします。
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