日本語文法:動詞の原形語幹とは4
2015/03/04(水)
(5)最先端の日本語学
発見の端緒が定かでないのだが、ネット上で『日本語構造伝達文法』今泉喜一:揺籃社・清水工房を見つけました。
〇ネットPDF本:『日本語構造伝達文法12年版』を走り読みしてから、態の構造について拾い読みを試みました。
〇内容は最先端の日本語文法だと思います。
今泉(杏林大学大学院国際協力研究科教授)PDF本記述の
①態の構造として、
・使役態:-(s)as-、 (s)は母音に続くときに出現する
・受動態:-(r)ar-、 (r)は母音に続くときに出現する
・許容態:-e-、
の3つを上げている。
②その後段で、(基は態と言い換えてもよい)
・使役基:-(s)as-e-
・受動基A、B:-(r)ar-e-、
・使役受動基:-(s)as-ar-e-/-(s)as-e-rar-e-、
・二重使役基:-(s)as-as-e-/-(s)as-e-sas-e-、
・二重使役受動基:-(s)as-e-sas-e-rar-e-、
と言う態の組み合わせについても記述してある。
〇最先端と思う理由は、
①態接辞:aru、asu、eruを基本におき、
②二重使役、二重使役受動の組み合わせまで考察している
からです。
・他の文法学者で①②両方をきちんと論点にすえて説明に取り組む人はいませんね。(多くが受け売り文法の範囲に留まっている)
今泉PDF本では「態の解説」分量が少なくて消化不良の感じがします。今泉氏のホームページで追加情報を探すのがよいですね。非常に開放的に研究成果を掲載してあるので確認できます。
〇今泉文法(愛称:にhongoこuzouでntatuぶnpou:にこでぶ)で特徴的なのは、構造立体モデルを立体図形で表す方法です。
詳細な構造解説を略して、図形のアナロジー的な把握で説明すると、
・金谷武洋本の盆栽型構文モデルを思い浮かべ立体化すると、登場人・物が縦棒であり、動詞要素が横棒・横盆になったような把握概念でしょうか。
・例えば、「飲まされる-nom-as-ar-e-ru」の場合、動詞の横盆は、実際に-nom-人の縦棒に交差し、それをさせる人の縦棒に-as-の横盆が交差し、飲む人の縦棒の下側に-ar-e-の横盆が交差する。
・-nom-の横盆の周縁には「酒、ビール」の縦棒が短く取りついている。
〇動詞も形態素に細分して考察すると、「分かる:wak-ar-u-」、「逃げる:nig-e-ru-」の中にある「aru」、「eru」にも注意が向いて態の形態素の関係を類推する。
〇態の形態素をしっかり識別しており、それゆえ「ひらがな解析や未然形接合を採用すれば形態素が見失われるから避けるべきだ」と提言している。
〇動詞終止形語幹の発想ではなく、通常の母音語幹に対して挿入子音(r)、(s)を用意する方法を残している。
〇今泉PDF本『日本語構造伝達文法』は構文説明文法として優れた機能を持っている。
・登場人・物を思い浮かべさせ、動作・形容の組み立て形態を思い浮かべさせる機能なので、自分の頭で考察するための道具になれる。
日常では何気なく使っている日本語の動詞変化、態の組み合わせを、きちんと説明するにはこう言う精密な説明文法が必要なのですね。
〇準備法則として、「態の双対環」方式は態の形態素を使いこなす練習に役立つはずです。
・飲む/飲める/飲まる/飲まれる
・飲ます/飲ませる/飲まさる/飲まされる
・飲ませる/飲ませれる/飲ませらる/飲ませられる
と、関連動詞を生み出す練習をしていると頭の体操にもなります。
ときどき、二重強制態の練習もしてみてください。
・飲まさす/飲まさせる/飲まささる/飲まさされる
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