日本語構造伝達文法を学習する
2015/05/07(木)
5月5日、今泉氏ホームページに案内がある研究会に初参加してみました。
〇予定の講話時間の前後で、このブログの「態の双対環」について対話させていただきました。
・先生からご指摘をいただいたのは、「仮説を立てたなら、それを通時的に論証、立証する必要がある」ということです。
・素人学問には立証が一番むずかしいところです。
・昨日お礼メールして返信をいただき、研究会への参加を勧められました。光栄です。
以下、仮説の論証に向けた思考実験をはじめてみましょう。
〇最近到達した「態の双対環」実験では、「動詞原形語幹(休m、食べr)の形態に態接辞が接続する」と仮説を立てた。仮説がはなはだ特異なものだと自覚していないことを先生が指摘なされたのですね。
(1)動詞+助動詞の接続方法:思考実験
日本語の動詞は膠着語なので、
①動詞+態接辞の接続(態動詞)から次へ進み、
②動詞+活用接辞の接続(活用動詞)から次へ進み、
③動詞+時相接辞の接続(時相動詞)という順で段階を通って
必要な述語機能が付加されていくと概観する。
厳密に表現し直すと、①~③の各段階の動詞は同じものではなく、一段ごとに膨らんでいきます。
①原形動詞+態接辞→態動詞となり、つぎへ渡す。
②態動詞+活用接辞→活用動詞となり、つぎへ渡す。
③活用動詞+時相接辞→時相動詞(テンス・アスペクト)となる、
という段階をへて必要な動詞述語の機能を果たすことになります。
〇原形動詞とは、子音語幹、母音語幹の動詞区別ではなく、切r、着r、帰r、変えr、のように辞書形語尾子音までの形態を原形語幹と見做すもの。態接辞を接続する①段階の動詞はすべてが原形子音語尾で扱うと規定するほうが論理的です。
〇なぜなら、切る・切れる・切らる・切られる/着る・着れる・着らる・着られる、帰る・帰れる・帰らる・帰られる/変える・変えれる・変えらる・変えられる、のように態動詞は同じ構造になるからです。
〇切らす・切らせる・切らさる・切らされる/着さす・着させる・着ささる・着さされる、帰らす・帰らせる・帰らさる・帰らされる/変えさす・変えさせる・変えささる・変えさされる、強制系態接辞には(as接辞)が前置追加され、同時に母音語幹の動詞語尾に対して(r→s)交替が起きます。(態接辞の頭:(r→s)asuではない)
〇このように派生した態動詞は、次の段階へ移ります。
・態の変化がなかった動詞は、
切r、着(r)、帰r、変え(r)という態動詞として次の活用段階へ移ります。
・態の変化があった動詞は、
切れ(r)、切られ(r)、着れ(r)、着られ(r)、帰れ(r)、帰られ(r)、変えれ(r)、変えられ(r)という態動詞として次の活用段階へ移ります。
〇仮説1:①態接続の段階では動詞原形語尾子音の形態で統一されて接続される。
なお強制系・使役系では(r)付き動詞で(r→s)交替が起き、「着らす」でなく「着さす」となります。
(r→k:寝かす)交替、(s→r:蒸す→蒸らす)交替などの例もあります。
〇仮説2:②活用接続の段階では動詞の子音語幹、母音語幹で区別した扱いが必要になる。それが個別の動詞活用の宿命?です。(文法が助けてくれるはず:今は個別法則については省略)
〇③時相接続の段階でも子音語幹・母音語幹の区別が必要と思われる(拍を合わせるため)。
やはり、①態接続の段階で子音語尾に統一する想定方法は、特異で珍しい仮説かもしれませんが、論理的です。
・態の接辞の出自が自動詞・他動詞対応派生の機能接辞:aru、asu、eruであり、自他交替では、すべて子音語尾に接続するので、態接辞の形態がすっきり母音始まりに統一されています。
・ですから、態の助動詞の接続方法としては原点回帰して「原形動詞に接合する規則」を推奨したい。
〇今回の思考実験の糸口は、研究会で「受動態は動詞原形+ある(存在)だと思います」と説明したとき、
先生:「動詞+ある(動詞)、なら動詞連用形+ある、になるのでは?」との逆質問があったからです。
小人:「いや、活用形でなく、態表現は動詞原形+ある(助動詞)、です・・・」と応えたものの、
それ以上の説明ができなかった。
・受動態(結果態:aru)接辞は単なる存在でなく、「動作そのもの、動作の結果がそこに在る状態」という意味なのだが、説明しきれなかった。
(連用形+ある=進行形、可能形の意味? さて原形・辞書形+ある、のイメージを的確に伝えるにはどうする?)
・「さあさあ、くるあるよ、みるあるよ、きくあるよ、買うあるよ、食べるあるよ~」 みたいなものだが・・・
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