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2015/06/21

日本語動詞の態拡張

2015/06/21(日)

(1)動詞態の例を観察する

(図参照)動詞態観察図
・寺村秀夫著『日本語のシンタクスと意味(1)』第3章最終部にある動詞形態の機能表を引用しました。
(本居春庭の原案になる動詞態の形態機能表らしい)
この表を観察すると、いろいろな推測が浮かんでくる。すでに春庭の時代で、
〇結果態:aruよりも受動態:areruが一般化していたのか?、
〇強制態:asuよりも使役態:aseruが一般化していたのか?、
〇それなのに、可能態:eruの普及度は低かったのか?、
〇それゆえに、「おのづから然せる」と「みづから然せる」の意識差がうまく伝承できなかったのか?、 などと疑問がわいてきます。
(しかる:然る→→しかす:然す、然する→→しかせる:然せる)、
(しからす:然らす→しからせる:然らせる)、
(しかす:然す→しかさす:然さす、然さする)、
〇態機能を導く「しかる:然る」の活用形態で迷ってしまいそう。
・この図は少し工夫すると「態の双対環」へと変身します。

(2)「態の双対環」方式で動詞態を観察する。

(図参照)動詞態観察図「態の双対環」
〇「態の双対環」がどんな動詞にも適用できて、前図で欠落している強制系、使役系の態機能を「双対環」の相似的構造で生成できることを示しました。(自分の意思で、すべての態を生成させることができます)
★「原形・可能・結果・受動」を一直線でなく、「原形と受動」を対向軸にして「態4つを環状配置する」という造形は芸術的要請が強いわけですが、同時に態接辞の自他交替機能の対向軸を文法的に暗示するものでもあります。
〇基本形「双対環」を使い慣れると、すべての動詞の態活用を自ら生み出すことができるようになります。
 また、「読まさせる」、「書かさせる」などの二重強制可能の表現が「下請け出し」の言い方であり、「読まさせていただく」、「書かさせていただく」が下請けした「下請け仕事」をやりますという謙譲表現か、ふてくされ?表現になってしまうことも「双対環」を使い慣れると分かってくるだろう。
〇さらに「態の双対環」では、可能態表現に対して通例法則を適用している。
・態動詞の生成は「動詞活用語幹+(r/s)態接辞」((つまり「動詞原語幹(動詞辞書形語尾子音までの原動詞)+態接辞」)という一般文法則を「可能態」にも適用している。
・なぜか旧習に留まる学校文法では、一段活用動詞:食べる、見る、忘れるは可能形になれず、
 受動態:食べられる、見られる、忘れられる、の「結果可能」で代用し続けている。
・「態の双対環」では、食べれる、見れる、忘れれる、を「可能態」と認める。

(3)なぜ「態の双対環」は可能態:「食べれる」、「見れる」を認めるのか

・「態の双対環」構造が母音語幹動詞に出会う度に「可能態」が欠落して環状にならないとしたら、その理由を説明しなければならない。が、欠落の正当性を説明する根拠がない。
・そもそも学校文法が「可能態」を助動詞(態接辞)として認めていない。最初の出だしから変則扱いです。
 が、「泳げる」、「走れる」などを「可能動詞」として別格あつかいで採録している。
・本来は受動態、使役態も生成されると、受動動詞であり、使役動詞である。
 (また、受動態の「結果可能」は可能態可能とは意味が違います)
〇「態の双対環」では、態を生成する段階での動詞は「動詞原形」として扱い、生成後の動詞も「態動詞原形」として扱われると見なします。
 「食べれる」「見れる」も可能動詞なのです。
〇日本語の動詞語幹について新しい考え方を提起します。
(図参照)動詞原形語幹と動詞活用語幹
・「態の双対環」を検証実験するなかで、「動詞活用語幹+(r/s)」の意味するところは「動詞原形語尾子音までの語幹だ」と気づいたのです。

(4)「態の双対環」方式による態拡張の基礎事項:

 「態の双対環」では、態接辞を動詞原形(辞書形語尾子音までの語幹)に付加して新しい態動詞を生み出す仕組みだとみています。
文字通り膠着・合成語として一体化した動詞と見なしています。
(表参照)態拡張の基礎事項
「態の双対環」方式を理解する上での基礎事項を一覧表にしました。

★冷静に一覧表を眺めて思考すると「態の双対環」の「態の考え方」は、態の派生で結果的に態動詞を作り出すことを重点としている。
・②動詞態とは:主格の交替に適合させるための動詞表現/④態接辞とは:態動詞を造語するための形態素。
 これは態活用で派生した動詞構造を一時的であれ「態動詞」扱いするのだという考え方をしている。
・「態動詞」構造になって単純化しただけでは説明文法に適さない。と気がついた。

〇では「態の双対環」にどんな利点があるのだろうか?
①自動詞・他動詞の対を生み出す接辞:「語彙的態の接辞」と、構文内の「文法的態の接辞」とが同一根源でつながっているものだと言うことを示せるのではないか。
★「態の双対環」が能動系、強制系、使役系に併存するが、相互に混ざり合わない「双対環」で描かれる理由には深い文法的法則があるだろう。
・自動詞/他動詞の対応派生が「単独の態の双対環」:休む/休める(他)/休まる(自)/休まれる からできる動詞がある半面、「自他別々の態の双対環」:渡る(自)/渡れる/渡らる/渡られる、 渡す(他)/渡せる/渡さる/渡される の別「双対環」の動詞もある。
・強制系、使役系は例外なく能動系とは別の「双対環」を作り出す。
★この文法的法則を直感しているが、解明にはまだ時間が必要ですね。

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