日本語構造伝達文法を学習する5
2015/06/04(木)
★「態の双対環」質問箱(2):
(2)「能動形と受動形の対向関係」は理解できるし、説明しやすいが、もう一方の「可能態と結果態の対向関係」については得心できない。意味のある対向関係なのだろうか?
〇まず説明しておきたいこと:
長い間、受動態・使役態の2つしか「態」だと教えられていなかったので、可能態や結果態、強制態にはなじみがうすいのですね。
・結果態:+aru:文語体受動接辞、
・強制態:+asu:文語体使役接辞、
・可能態:+eru:文語体融通接辞(仮称)、
〇この3つの態は、古代から動詞語幹に組み込まれて自動詞・他動詞を派生させるために使われてきたから、現代の口語体動詞のなかでも生きています。
・例:休m+eru:休める/休m+aru:休まる/休m+asu:休ます 。
〇また、現代口語体の受動、使役は
・受動態:+ar・eru=結果+可能を合成した接辞、
・使役態:+as・eru=強制+可能を合成した接辞、 で派生される。
(可能接辞が受動にも使役にも組み合わされるので融通接辞と仮称する理由です)
(今泉本『日本語態構造の研究-日本語構造伝達文法 発展B-』:晃洋書房:2009年11月20日第一刷発行、には、「許容態:-e・ru」の名称で厳密な文法解説がなされてある)
★態の接辞は単純な助動詞ではありません。(と明言した元祖は時枝文法にあります)
・態動詞を作り出す機能接辞であり、接辞が付加された動詞は新しい動詞として独り歩きができる「新動詞」です。
〇応用例:
・(文語:上ぐ/)上g・eru/上g・aru/上g・ar・eru 、という態の活用で、
・上げる/上がる/上がれる、が個々の動詞として生み出されます。
・「上がれる」は可能表現に見えますが、もし「上ぐ」が通用する時代であれば、受動表現です。
〇「上がる:自動詞」、「上げる:他動詞」の自動詞・他動詞の生成対応を説明するものですが、結果態動詞と可能態動詞の対向関係を象徴するものでもあります。
★可能態と結果態の対向関係:幻覚か、まやかしか?
・可能態が融通接辞であるために、上げる:他動詞、取れる:自発(態)、のように、原動詞の種類によっては自他対応の方向性が全く逆になる働きをします。
・一方、結果態は動作がなされた結果状態を表現する接辞で、ほぼ自動詞的に機能します。
・だから、可能態の機能を自他交替とは無関係な側面で見抜かなければならないのです。
「上げる:下の位置にあるものを上の方向へ動かそうとする」→つまり、動作の開始、動作意思を陳述するのが「可能態の役目」と拡大解釈します。
〇動作の開始と結果の対向関係を想定します。
★~口先で言う「可能」に対して「結果」で示せ!~という対向関係です。
・現代の動詞では、+aru-/+eru-の自他対応にある動詞が一番多い。(寺村秀夫:『日本語のシンタクスと意味 第1巻』くろしお出版:1982年11月10日第1刷/2005年1月20日第17刷)
・それなのに、なぜ可能と結果がうまく対向概念にならないのでしょう?
(可能態接辞の融通性に惑わされ続けてきたからでしょうか)
★なぜ「可能態と結果態の対向関係」が必要なのか?
・態の全体像を把握するのに「能動態と受動態の対向関係」と同等に重要だからです。
・「態の双対環」方式では、態変化を演習的に学習し、
上げる→上げれる→上げらる→上げられる、
上がる→上がれる→上がらる→上がられる、
上げさす→上げさせる→上げささる→上げさされる、
上がらせる→上がらせれる→上がらせらる→上がらせられる、
と、いくぶん強引に学習者自身で拡散練習することができます。
・上の演習でも気づくように、
上げる・上げらる:客観概念と、上げれる・上げられる:主観概念との対向関係も見え隠れしています。
また、上げる・上げれる:動作概念と、上げらる・上げられる:結果概念との対向関係も見えています。
次回に続きます。
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